【投稿掲示板名:クロス掲示板】
【投稿者名:紅梅】
【投稿作品名:絵描きと猫の平穏な日々】
【推薦文本文:】
麻帆良の森の中を一組の男女が歩いていた。
男の名は田村福太郎。
黒いシャツと迷彩柄のズボンを穿いた、何処にでもいそうな青年だ。
彼を一目見ても人は特に強い印象を抱かないだろう。
強いて言えば平凡という印象だろうか。
まぁそれは、彼の隣を歩く少女が与える印象という名の衝撃によるものだろう。
頭にはネコ耳。首には大きな鈴をつけた首輪。
手にはネコグローブ。そしてネコの尻尾まで装着しているのだ。
正に頭の天辺からつま先までネコ娘。
福太郎の印象が平凡だといわれてしまうのも無理は無いだろう。
そんなチグハグなふたりは森の中を歩いている。
彼らは足洗邸と呼ばれる不良物件の住人だ。
足洗邸には鵺と呼ばれる妖怪やメフィストヘレスと呼ばれる大悪魔が生活しているバケモノ屋敷。
そして全身をネコ一色で染めている彼女――竜造寺こまはその足洗邸の管理人をしており、彼女自身も人間ではなく猫又だったりする。
そんな常識からかけ離れた世界の住人が、麻帆良の森の中を歩いている。
彼らが巻き起こす流れの改変は、運命という岐路を狂わせるのだろうか。
それは誰もわからない。
神ですら。