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【短編】エヴァンジェリンvsディオ(×ジョジョの奇妙な冒険) 投稿者:Ammo 投稿日:06/05-01:32 No.678

1888年、ウィンドナイツ・ロット。
切り立った崖の上に有るこの街はかつての騎士達の修練場があり、人も多く住んでいた。だが時代が進むに連れ戦の様式も変わっていき、騎士達が不要となった今は人々に忘れられ、極々静かな田舎町へとその姿を変えていった。
時代と共に忘れられた街。彼女は今、その街を歩いていた。


胸の下部だけを覆う、何とも扇情的な服を身に纏う20前後の美女。彼女こそ吸血鬼の真祖にして歴戦の魔法使い、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。

「人形使い」「闇の福音」「不死の魔法使い」の二つ名を持つ彼女は、この辺りに突然でてきた吸血鬼について調べに来ていた。
新入り吸血鬼というのは大抵、好き勝手暴れたあげくに退治されるのがオチなのだが、ここのは少し様子が違った。既に確認されてから半月以上。十二分に暴れているものの未だ退治されていない。
久々に好敵手の感覚をかぎ取ったエヴァンジェリンは、この吸血鬼についての調査を行おうと思い立ったのだが…

「全く、なぜこんな事を・・」

口から漏れるは愚癡ばかり。それもそうだ。崖から吹き付ける風はくさり水の様な臭いがついている。これでは誰だって気分を害する。エヴァンジェリンとて例外ではなかった。

まぁ、お陰で相手の吸血鬼の場所が解るのだが…


ガサッ

「………………」

その不快な臭いのする方向…崖の中原にある騎士達の修行場へと足を進める中、他の民家より一回り大きい家の影から、地面を踏みしめる音を聞いた。エヴァンジェリンは右の目をスッと細め、その民家の影を凝視する。


「ウバァァァァ!血ぃベェロベェロ吸ってぇ~」

その民家の影から、唐突に人影が飛び出した。
影から出ることにより、月に照らされたその姿は何とも醜悪なものであった。膿がたまっているのか、ぼこぼこと隆起した皮膚。変色している肌。異様に長い舌。所々穴の空いた衣服をから判断すると、おそらく昔、この辺りで死んだ男を吸血鬼の力で屍生人(ゾンビ)へと変えたのだろう。
エヴァンジェリンはその姿を視認するや短いため息をはいて、その姿を視界の外へと追いやり再び足を動かす。
そんなことはお構いなしに、屍生人は彼女目がけて飛びかかった。だがエヴァンジェリンは歩を速めるという事もせず、まるでそんなものいないと言わんばかりである。そのかわり、彼女の傍にある人形がタンッと地面を蹴ってその屍生人へと飛びかかる。



シュヴァン

「あ、あへ!?」


心地よい、風を切り裂く音と主に振り抜かれた直刀は、屍生人の胴体を真ん中からさっぱりと輪切りにする。屍生人はただ、状況も解らずに離れていく自分の下半身を呆然と見つめ、素っ頓狂な声を出して人生二度目の眠りについた。
切り落とされた下半身からは噴水のように血が飛び出す。おそらく相当な量の人間を喰ったのだろう。血は辺りへとまき散らされ、僅かながらエヴァンジェリンの顔にも付着する。

エヴァンジェリンはその顔についた血を軽く舐めとり、すぐ様に顔をしかめて言う。


「ここの吸血鬼は相当シュミが悪いな…」
「全クダゼ、御主人」

その言に相槌を打つ人形。御主人などといっている割には、かなり高慢不遜な口の利き方である。

チャチャゼロ。それがこの人形の名前である。身長はエヴァンジェリンの半分以下。せいぜい70cmと言ったところか。見た目は女の子な所為か、手に持つ直刀に対し非常に違和感を覚える。




パチパチパチパチ

後方から甲高い拍手の音。皮肉か挑発か…。エヴァンジェリンはその拍手の意味を頭で解するよりも早く、その拍手の聞こえた方向へと魔法の矢を放つ。
放たれた魔法の矢は、拍手が聞こえてきた辺りにあった建物(かなり大きい。おそらくは教会であろう)の一角を破壊する。

「出てこい、そこにいるのは解っている」

崩れた壁の一角が巻き起こした砂煙の中よりもったいぶるように、その壊れた建物の物陰からその男は姿を現した。見た目は20前後、女性のような透き通る白い肌。黄金色の髪に整っている顔。目は相手の心に土足で踏み込んでくる、凍てつくような眼差しをしていた。身長はエヴァンジェリンより頭二つ半程高く、身体はガッチリしまっているが、けして線は太くない。

男はうっすらと口元に笑みを浮かべて、聞き分けのない子供を言い聞かせる母親のごとき声で喋り出した。

「君の名を…聞かせてもらえるかな?」

その余裕がエヴァンジェリンの癪に障ったのか、彼女の魔力によって周囲にヒヤリとした風が漂う。彼女はその男をキッとにらみつけたまま、男の問いかけに対し魔法の射手で答えた。
男はそれを、蠅でも払うかの様に右手の人差し指ではじき飛ばした。


「そんなに警戒しなくてもいいじゃないか……。どうだね? お嬢さん。このディオの友達になって、その力を私のために役立ててくれないか?」

「断る。第一、お嬢さんではない! お前より年上だ!」

返事にあわせてもう一度、無詠唱の魔法の射手を浴びせかける。先ほどと違い今度は三発。ディオは左手をポケットから静かに抜き、両手を持って苦もなくその魔法の矢をたたき落とした。

エヴァンジェリンは今、目の前にいるディオと名乗ったこの男に、この新参の吸血鬼風情に、わずかながら恐怖を感じていた。そのことは彼女としては到底許せることではない。その感情がらしくない、好戦的過ぎる行動をとらせる。

ディオはそのエヴァンジェリンの心境を見通してか、一歩一歩、ゆっくりエヴァンジェリンの方へと近づいていく。


「人間は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる。それは吸血鬼である君とて変わらないだろう?この私の友達になることに何の不安があると言うのだ? 君と私が友達になれば、それこそこの世界を手に入れるのもたやすいことだぞ?」

「はっ、誰に向かって言っている! 私は吸血鬼の真祖にして最強の魔法使い、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだぞ!? それをお前如きに屈しろと? ふざけるな!」


その返事を聞くと、ディオは断られたにもかかわらず、楽しそうに薄ら笑いを浮かべる。まるで釈迦の掌で踊る孫悟空を見るような、その仕草一つ一つが余計にエヴァンジェリンの不快感を引き立てる。そして、その不快感が怒りに代わるまで、さして時間は必要としなかった。
ディオは弓なりに体を反らせ、空高く昇る満月を仰ぎ見る。そしてだんだんと視線をエヴァンジェリンの方へと降ろしていく。ディオと目が合う頃には、既にエヴァンジェリンの不快感は、残らず怒りへと代わっていた。


「フッ。ならばしょうがない…死ぬしかないな! エヴァンジェリン!」

「やってみろっ!! …いくぞ、チャチャゼロ!」

「アイサ、御主人」

「無駄無駄無駄無駄ァッ!」

「リク・ラク ラ・ラック ライラック・・闇の精霊! 二十九柱!」

「キャハ」


エヴァンジェリンの怒りに任せて放つ闇の29矢に、ディオはボクシングのファイティングポーズを取りつつ、砂埃を立てて突進していく。その姿は、草原のバッファローを連想させる力強さがあった。その間にチャチャゼロは空高く舞い上がり、手に持った、月明かりで怪しく光る直刀を大きく振り上げた。

程なくして、ディオは闇の二十九矢の中へと突っ込む。
一発目、難なく右手で押し返す。二、三、四発目、顔に飛んできたそれらを、両手でたたき落とす。五~九発目、右側面部、先ほど延ばした右腕を振り回すようにしてはじく。十~十四発目、足を一歩下げ、身体を軽く沈めることで当たる面積を抑えて直撃を免れる。十五~十七、及び十八から二十。両側面から飛んできたそれを、先ほどの溜めで飛び出すことで距離をつめ、かわす。二十一~二十九。かわしもせず、迎え撃ちもせず、ダメージ覚悟でエヴァンジェリンに一撃を入れる。溜めの入った一撃はエヴァンジェリンの腹部を捕らえた。

「かはっ!」

「うぐっぅ!!」


互いに一撃を貰い、よろめく両者。腹部にはお互い子供の頭ぐらいあろうかという風穴が開いていた。そこへチャチャゼロの一撃。体勢が崩れ、立ち直れてないディオにとってこの不意打ちは、絶対に回避不能であった。ディオはやむを得ず左腕を突き出し、頭部を護る。

鈍い音が響き渡った。おそらく骨まで到達したのだろう。
チャチャゼロはその直刀にさらに力を込め、その手を両断しようと試みる。が、直刀は硬い岩に刺さったかの如くぴくりとも動かない。それどころか直刀はみるみるうちに凍り付いていった。


「ぐぅぅっ…惜しかったなぁ、後少しで俺の腕を切りとばせたのにな…」

「ケッ」


チャチャゼロはためらいもなく直刀を手放し、その直刀を足場に大きく距離を取って相対する。見ると、左手の直刀は既に握りまで凍っていた。もし直刀を手放すのが遅れていたら氷の人形が完成していたところである。
この間にエヴァンジェリンはディオとの距離を取って、なるべく自分の間合いを持つ事に成功する。
この五秒にも満たない攻防戦の中で、人間なら死んでいるであろう傷をお互いに付けた二人であったが、エヴァンジェリン、ディオ共に傷は跡形もなく癒えている。お互い、致命傷になりにくい所為でかなりの長期戦を覚悟する必要がありそうなのは確かだ。

「ふん。流石にあれだけの大口を叩くだけのことはあるな」


エヴァンジェリンはこの新参者の吸血鬼に対する考えを改めざるおえないと判断した。あの時感じた恐怖が、今なら解る。このディオは間違いなく強敵である。それも今まであった奴らの中でも屈指の。近接戦では自分に分はない。どうしたものか。彼女は考える。これ以上距離を取ろうにも、もうそれを見逃すほど甘い相手ではないだろう。


二人の距離は約70mといったところ。人間同士なら遠距離だが、吸血鬼の身体能力だと大した距離ではない。せいぜい詠唱が一回できるかどうかの距離。やはり彼処はマントを編んでおくべきだったか。今更ながら後悔するエヴァンジェリン。
そうこうしている間にディオが動き出す。


「リク・ラク ラ・ラック ライラック・・氷爆!」

どうか? と思われたタイミングであったが、ギリギリのタイミングで詠唱が完成した。エヴァとディオとの空間に大きな氷が現れ爆発四散し、強い冷気が辺りを覆い、飛び散る破片がディオを襲う。しかしディオは、向かってくる氷を悉くたたき落とし、なお速度を緩めず突進してくる。

「貧弱、貧弱ゥ~・・・この程度でどうにかなると思ったか!マヌケがァ~~~」


あっという間に距離は詰められる。ディオはその速度に乗せて、右の拳を勢いよく振り抜いた。ディオの剛腕は先ほどの一撃で証明済み。それにこの速度の乗った一撃。さしのエヴァンジェリンとて、無事では済むまい。エヴァンジェリンは障壁を一層強く張り、軽く身体を浮かせて衝撃に備える。



「WOOORRRYYYYYYY!!!!」

「くぁっ!」


加速の乗った拳は魔力の障壁を意図もたやすく打ち破り、勢いよくエヴァンジェリンの腹部に叩きつけられた。苦悶の声をあげるエヴァンジェリン。が、先ほどのように腹を打ち抜かれるのではなく、今度はアーチ場に彼方へと吹っ飛んでいった。



先ほどの魔法でディオの手に張り付いた氷と気化冷凍法によってこびりついた水滴、そこへあらかじめエヴァ自身の腹に張り付けておいた氷を、対衝撃用の障壁で覆う。用はスケートである。それに念のため浮身をおこない、拳の速度を殺さずに乗って、ディオ自身の力で距離を取らせようとしたのだ。腹以外の、氷の張っていない場所を打たれる可能性もあった。だが、エヴァンジェリンはその狙い通り、大きく跳ね飛ばされたのだ。


「ヌッ!?」

「くふっ……。かかったな!リク・ラク ラ・ラック ライラック……」

「KUAAAAA!させるかぁ!……!!」

………キィキィキィキィキィキィキィキィ


この辺り一帯の建物全てから聞こえるコウモリの声。アステカの石仮面によって吸血鬼となったディオだが、自分を退治せんとする魔法使い共と戦う中で、伝承に近い吸血鬼も存在すると知った。なら、伝承のように蝙蝠の力を使い、何か、特殊なことをするのかも知れない。何が狙いか、詳しくは解らないが、ともかくそれを阻止せんと追撃を掛けようとするディオ。狙いは蝙蝠ではなく、あくまでエヴァンジェリン本体だ。

ヒュン

「……むッ!?」

「コッチダ、オラ!」


刃が風を切り裂く音が辺りに響く。何時の間にやら武器を調達してきたチャチャゼロがディオに仕掛けたのだった。その存在にかろうじて気づき、追撃の手を休め、反射的にチャチャゼロの迎撃にかかるディオ。受ければ良いにも関わらずだ。
この待ちに待った隙。この間にエヴァンジェリンは蝙蝠のマントを練り上げ、ディオの攻撃の届かない、空高くへと舞いあがった。


「勝負あったな!…リク・ラク ラ・ラック ライラック・・来たれ氷精、闇の精 闇を従え 吹雪け 常夜の氷雪…離れろ!チャチャゼロ!……闇の吹雪!!」


エヴァンジェリンの腕から黒い、強力な冷気が発生する。やがてそれは吹雪となり、あたりの空気を飲み込みながら轟音を立て、圧倒的な力を持ってディオに襲い掛かる。魔法を持たず、体技と地力で戦っているディオに、それを防ぐ術は無く、吹雪は勢いよくディオを飲み込んだ。それでもその破壊の力は収まらず、辺りの建物をいくつもなぎ倒し、その後を冷気で包み込んでいった。


「アハハハハ!なかなかに強かったが、私の敵では………!?」


勝利。エヴァンジェリンはその姿を見て、そう確信した。すると今までの緊張が溶けだし、愉快そうに高笑いを上げる。
が瞬間、何かがエヴァンジェリンの右頬を掠めた。エヴァンジェリンはその傷をすっと触る。どうということはない、かすり傷だ。
エヴァンジェリンは傷を負わされたのに、不快感を感じさせず、むしろ猶、一層愉快気に顔を歪ませた。






「まだ、こんな手があるとはな・・」

「よ……よくも俺の顔に疵をつけたな…よくもこの俺に!!」


冷気による煙が収まり、ディオが姿を現す。来ていた衣はボロボロに裂け、ところどころ凍りつき、その右手とわき腹は大きな裂傷を見られ、そこから骨が覗いていた。
ディオは左腕は己の顔にあて、手の隙間から目を大きく見開らかせて、エヴァンジェリンを憎々しげに睨みつける。食いしばっている歯からは吸血鬼の証の鋭い犬歯が覗いており、その端正な顔はどす黒い憎しみを張り付かせて、醜くゆがんでいる。


「貴様はばらばらにして亡者のエサだ!亡者ども!その人形の足止めをしろ!」

「サセルカヨ」

「甘いんだよ!! リク・ラク ラ・ラック ライラック… 魔法の射手!! 連弾・闇の109矢!」


あたりの空気を揺らす地獄から響くような怒鳴り声をあげる、と同時にディオは勢いよくエヴァンジェリンの足元へと向かい駆け抜ける。チャチャゼロはそれを追いかけようとするが、おそらく近くの墓場からか現れた、大量の亡者の手によって阻まれ、思うように進めない。エヴァンジェリンはディオに空中から魔法の矢を放ち、迎撃しようとする。


ディオの突進と、魔法の矢によって巻き上げられる砂埃。結果として、それはエヴァンジェリンにディオを見失わせてしまう。対してディオはエヴァンジェリンを発見しやすい状況。
どうするか? エヴァンジェリンは手を顎の下にあて、思わず舌打ちをした。


「しまったな……!?」


砂埃から、またあの何かが飛んでくる。反応できなければ、首を削ぎ落とされていたであろう一撃。それをマトリックスばりに上半身を仰け反らす事でかろうじてかわすが、体勢を崩してしまった。




ブワッ




その時を見計らったかの様に、いや、実際見計らっていたのだろう。砂煙の中から、建物の壁を勢いよく蹴ったディオが、その右手に必勝の力を込めて躍りかかった。


エヴァンジェリンはそれを見て、慌てず、騒がず、なぜかにやりと笑い、そして言う。

「本当に 体制を崩した ように見えたのか? ……リク・ラク ラ・ラック ライラック・・氷の精霊 二十九頭!!」

「なにィィィィィィィッ!」

「アハハハハハ。やはり私の方が一枚上手だったようだな!」

「そんなバカな!このディオが!何百年と生き延びるはずの、このディオがァァッ!!」

「ふん、年季が違うんだよ!・・・!?」


その一撃は完全にディオを捕らえる。今度は完全に防御は不能。元より空中で姿勢を制御する技を持たないディオは、重力に任せて落ちていく。がそのさなかに、ディオも先ほどからの攻撃の正体、目から体液を噴出させて応戦する。さしのエヴァンジェリンも今度は避けられず、左腕を切断されてしまった。


「お前っ!」

「覚えていろ……貴様は必ずこのディオが倒す!ジョナサンを倒した後でな!必ずだ!」


そう言い放って崖下へと転落していくディオ。その目は自分を追い込んだエヴァンジェリンを確実に捕らえていた。


「追ウカ、御主人?ホットイタラ絶対マタ来ルゼ」

「いや、追う必要はない」

エヴァンジェリンは足の下に広がる崖を見、言う。

「どうも長く生きていると、退屈することが多くて・・な。それより、この左腕をさっさと治すぞ。いくぞチャチャゼロ」


暫く、ディオの落ちていった崖下を見つめていたが、やがてエヴァンジェリンはその場を一瞥し、去っていった。



後にディオはジョナサンをこの街で迎え撃つ。

その邪悪な目は、ジョナサンともう一人、憎い倒すべき者、エヴァンジェリンの顔を強く、強く焼き付けていた。

【短編】エヴァンジェリンvsディオ

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