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黒衣の副担任 第4話 投稿者:KAMUI 投稿日:06/29-02:38 No.827

黒衣の副担任 第4話 「黒衣の剣神から黒衣の副担任へ」


恭也は正式に教員免許を取得して、ネギと同時期に副担任として麻帆良に採用される。
その前には教育実習として2-Aに在籍していて、クラスのメンバーとは顔なじみ
(半数近くに惚れられている)

教育実習時の番外編を3~5話掲載できれば御の字

自己紹介を改めて(笑)
恭也の住む場所などの説明も入れること
エヴァと茶々丸が恭也のことを話す。
歓迎会は入れるべきか?


恭也→副担任、女子寮警備員
神楽→女子寮警備員、管理人
ざから→麻帆良全域の警備員



黒衣の副担任 第4話 「黒衣の剣神から黒衣の副担任へ」


木乃香達の入学式から、さらに二年は経とうとする頃、恭也達は木乃香との約束を正式に果たすため
に、再び麻帆良の地へと赴いていた。

入学式の前日に近右衛門と約束をした通り、一度麻帆良中学での教育実習を経て、教員免許を無事取
得し、本来ならば木乃香達が3年生になったと同時に行く予定であったが、近右衛門から急遽麻帆良
に来て欲しいという依頼があったため、詠春の許可も得てから、麻帆良へ向かうこととなった。

近右衛門は、詳しい話は麻帆良に来てから話すと言っていたため、教師に着任する前日に学園長室ま
で来ていた。ただ近右衛門の

「木乃香達には内緒での♪」

というのは、ちょっといただけなかったたりしたが。まあ一応、そう言われているため、生徒達が帰
宅した時間を見計らってはいる。

「高町です、失礼します」

「入りなされ」

ノックをしてすぐに近右衛門の在室を確認すると返事があったので、入室する恭也達。中に入ってみ
ると、近右衛門の他にタカミチもその傍にいた。

「お久しぶりです近衛学園長、タカミチさん」

「久しぶりだね、恭也君」

なお、タカミチとは初対面の後も何度か仕事や、プライベートでも一緒にいることがあった。恭也と
しては、男性の友人は元の世界からあまりいなかったため、タカミチの存在はありがたかった。

なお、入学式前日に約束した仕合は、恭也が教育実習生として来た時に果たされていた。結果は、
恭也の勝利。その時がきっかけで男の友情が芽生えた。


タカミチの挨拶に追従する形で近右衛門も挨拶をする。

「久しぶりじゃの、恭也君。神楽殿、ざから殿。突然のことで申し訳ない。ちょっとこちらにも事情
 が出来たものでな」

「電話でもお伺いしましたが、それについてはここで話していただけるのですよね」

「うむ、その通りじゃ。その理由なんじゃが、明日、恭也君と同じ日に先生、まあ正確には教育実習
 生としてくる者がおっての。その者が木乃香のクラスであり、現在高畑君が担当している2-Aの
 担任になるのじゃよ」

「それでは、タカミチさんは?」

「僕は、これからしばらく、海外と麻帆良を行き来することになるから、とてもではないけど、担任
 を続けていくことはできないんだよ。なので当分は美術部の顧問と広域指導員が麻帆良での仕事に
 なるかな」

「そういうことですか」

その説明に納得がいった恭也だが、直ぐに新たな疑問が浮かんだ。

「それでは、どうして俺が麻帆良に来ることになったんですか?タカミチさんの後任は決まっている
 のでしょう」

「うむ、今回恭也君たちに来てもらったのは、まさにその後任の先生に関係することなんじゃ」

まだ、話が見えていない恭也。

「どういうことでしょう?」

と催促する恭也にちょっとだけいいずらそうにしながらも事情を説明しだす近右衛門。

「その先生なんじゃがの……………、子供の魔法先生なんじゃ」

「「「は?」」」

恭也だけでなく、それまで黙って話を聞いていた神楽にざからまでもが間抜けな声を上げた。

「恭也君は、魔法使いのための学校があることは知っておるかの」

「はい、それは知っていますが、それが何か?」

「うむ、その魔法学校では、卒業試験として各自に様々な課題が課せられての。その内容はその時に
 ならないとわからないものじゃが、そのうちの1人の課題内容が「学校の先生になる」といった物
 じゃったのだよ。それでの、わしとその魔法学校の校長とは知り合いで、その子をうちで引き取る
 ことになったのじゃ」

魔法学校の存在は既に知っていたが、さすがに卒業試験の課題内容までは分からなかった恭也は、
その突拍子もない課題内容に少々あきれながらも、まだ腑に落ちない点を挙げた。

「はあ、まあその魔法使いの子供先生がこちらに来ることは分かりましたが、それだけの理由で俺を
 ここに連れてくるには少々弱いですね。俺については既に来年度から正式採用されることが決定し
 ていたのですから。それを曲げてまでここに連れてくる理由、もしかしたらその先生になにかある
 のですか?」

「相変わらず、『こういったこと』については鋭いのぉ、まさしくその通りじゃ」

せめて、この鋭さの10分の1でもいいから、木乃香の気持ちに関して敏感になって欲しいものじゃ
が、と思いながらも、話の腰を折る場面でもないからそのまま話を続ける。

「恭也君は『ナギ・スプリングフィールド』という名前に心当たりがあるかの」

「はい、詠春さんから「悠久の風」のメンバーについてお話は伺っていますし、その当時の写真も見
 せて貰ったことがありますから」

「それでは話が早いの。ずばり、今回来る子供先生はそのナギの息子なのじゃ。名は『ネギ・スプリ
 ングフィールド』。それで恭也君には明日から2-Aの副担任になってもらい、ネギ君のサポート
 役をして欲しいのじゃ」

「サポートですか」

「うむ、一応ネギ君は大学卒業レベルの知識を持っていて、学力レベルは問題ないじゃろうが、いか
 んせん、まだ子供、年上の生徒を教える上で気後れすることもあるじゃろう。そういったときに
 そっと支えておいて貰いたいのじゃ。幸い、恭也君は一度教育実習生として2-Aの皆と面識もあ
 るし、問題ないじゃろ。これが一点」

といいつつ人差し指を上げる近右衛門。

「それで二点目じゃが、やはりナギの息子と言うだけあって、潜在的な魔力はかなりのものでの。そ
 れを狙うもの、またはナギの関係者として狙うものが居るかもしれん。そういった者達からネギ君
 を護ってもらおうと思っておったのじゃ」

続いて中指を上げながら説明する近右衛門。

「それでは、俺の役目は、ネギ君と木乃香を中心とした護衛と言うことですね」

「そういうことじゃ。ただ、護衛と言っても、あくまでも影からサポートする程度でよいぞ、よほど
 のことで無い限りはの。そうでないと、ネギ君自身の試練にならないしの。なので、優先順位とし
 ては、木乃香の護衛、副担任としての仕事、ネギ君のサポートとなるかのぉ。それと、神楽殿とざ
 から殿にも別の仕事をお願いしたい」

「なんでしょうか」

「申してみよ」

「神楽殿には木乃香達が暮らしている女子寮の管理人兼警備員、ざから殿には対悪魔、対妖魔専門の
 麻帆良学園全域の警備員をしていただきたい。一応、他の魔法先生には話は通してある」

「まあ。妥当ですかね」

「学園長よ、ここにはどれくらいの強さの者が現れるのだ?」

「ふむ、ざから殿の強さと比較したらそれほどでもない者がほとんどだが、たまに上位階級の悪魔が
 手勢を連れてくることもある。それらが結界内に侵入してくることは本当に稀だが、ざから殿なら
 進入前に迎え撃つことも可能であろう?」

「ふっ、それは我に対する挑戦か?」

「ふぉふぉふぉっ。そう取って貰ってもかまわんぞい」

そう言いながらニヤリと笑うざからと近右衛門。そんな様子にちょっとため息をつきながらも、話を
戻す恭也。

「俺達の役割はおおよそ理解しました。それでは次に俺達の住む場所ですが、何せ急なことだったの
 でそういった準備が出来ていないのですよ」

ちょっと困った表情の恭也に、先ほどのニヤリ笑いをさらに深めていく近右衛門。そのあからさまな
態度にちょっと引き気味の恭也。

「その点については既に解決済みじゃ。三人とも女子寮に行ってもらうぞい♪」

「……………(頭を抱えている)」

近右衛門の答えに言葉も無い恭也を無視してさらに話を続ける。

「安心せい。実際は女子生徒達が使用していない1階に管理人用の部屋を二部屋用意した。そこに
 恭也君、神楽殿とざから殿が住めばよい。一応、女子寮の住人には連絡済じゃから、それに対する
 摩擦も起こることはないと思うぞい(但し、それが恭也君とは言ってはいないがのぉ)」

そんな近右衛門の黒い考えには気付かずに取りあえずほっとしている恭也。神楽とざからも特に異論
はないようだ。

「だが、それは明日からとなっておるから、今日のところは近くに別の部屋を取ってあるからそこで
 休むと良いじゃろう。それと、明日のことじゃが、恭也君は朝はこの部屋に再度来てもらってから
 教室へ行ってもらうぞ、神楽殿とざから殿は、13時くらいにこちらに来てもらえるかの?」

「わかりました。その時に俺はネギ君と対面ですね」

「そういうことじゃ」

「私のほうも特に問題はないです」

「我もだ」

「それじゃ、部屋のほうには僕が案内するよ。僕の部屋の近くなんだ」

「そうですか、それではお願いします。それでは学園長、今日はこれで失礼させていただきます」

「失礼します」

「失礼する」

恭也達は、近右衛門に挨拶してからタカミチの後について行くことになった。



そして、夜、いつもの鍛錬のために教育実習生の時に見つけた鍛錬場所で一人黙々と剣を振るってい
た。その途中、ふと気になる気配を感じ振り向くとそこには黒いマントを身につけ悠然とした態度で
いるエヴァとその後ろに追従するようにしている茶々丸の姿があった。

「ふん、どうせここにいるだろうと思っていたよ、恭也」

「お久しぶりです。恭也さん」

「エヴァに茶々丸か、どうして俺がここにいることを知っている?」

「ふん、学園長のジジイから話を聞いていないのか?麻帆良にいる魔法先生には、お前が来ることは
 事前に話されていたんだ。私が聞いていても不思議ではあるまい」

「そうか」

ふむ、と納得の言った様子の恭也。それを見ながらふん、と鼻を鳴らしながら話を続ける。

「どうせあのジジイのことだから、「あいつ」の子供が来るから、その護衛のためにお前を呼んだん
 だろう?」

「ほう、そこまで分かっているのか。だが正確には、俺の役割はネギ君のサポートだ。実際に俺が
 護衛するのは木乃香だからな」

「まあそれなら話が通しやすいな。今日、ここに来たのはお前達に忠告があったからだ」

「忠告?」

「ああ、あのボーヤは私の獲物だ。まあ、獲物と言っても殺すわけではない。ちょっと「あいつ」の
 血族に用があってな。どうせお前のことだ、直ぐに状況を察知するだろうから、先に来てやったん
 だ。お前達に邪魔されると面倒だからな」

「…封印か」

エヴァの言葉を聞いて、小さく呟く恭也。それがエヴァに聞こえピクッと反応したが、すぐさま返答
した。

「ああ、あいつが私に約束した日から随分と経つ。その責任をボーヤに取って貰おうと思ってな」



しばらくの沈黙が続く。



エヴァの封印については、既に近右衛門から話を聞いていた恭也であるが、教育実習中でエヴァを見
る限り、それほど危険がないのではないかと思っていた。場合によっては、神楽の力を借りて、条件
付きで封印の解除をしても良いとも思っていた。ただ、まだこの場で言うべきではない。なにより、
恭也自身の判断がついていない。

一方、ネギのことだが、正直エヴァの言うことが本当であれば、逆に手を出すべきではないと思って
いた。何かあるなら、自分達ではなく、近右衛門がどうにかするだろう。そう判断し、エヴァに話す

「一つだけ確認する。ネギ君は無事に帰ってくるんだな」

「それは約束しよう。ただ、数日は寝込むことになるやもしれんがな」

恭也はふむ、と頷き、

「わかった。お前がその言葉を曲げない限りは、「俺達」はその件については干渉しない。神楽と
 ざからにも伝えておこう」

「ああ」

それで話が終わったのか、エヴァは去ろうとして、恭也に背を向けたが、ふと何かを思い出したのか
再度恭也に振り返った。ただ、その時の顔が、幼い顔に似合わないほどの妖艶な笑みであった。
恭也は、その顔に見覚えがあったのか、ため息をついた。どうやらその後の台詞がわかるらしい。

「恭也よ」

「はあ、なんとなくその後の言葉が分かるが…、一応なんだ?」

「そろそろ、私の従者(モノ)にならないか?」

やれやれ、と恭也は再度ため息を吐いて、以前と同じ返事をする。

「そのことについては以前かわ断っていたはずだが?それに、従者なら茶々丸もチャチャゼロもいる
 だろう?」

「なぜ、断るのだ?私の従者になれるのだぞ?場合によっては、永遠の命も得られる。それに私と
 お前とで契約を結べば、ほぼ間違いなく強力なアーティファクトも手に入るのだぞ」

「アーティファクトに興味がないと言えば嘘になるが、永遠の命は必要ない。俺は人間として生き
 そして死ぬ」

「…まあ良い。その気になればいつでも声を掛けろ。この話は、神楽とざからにも悪い話ではないの
 だがな」

このまま平行線を辿るとわかったのか、エヴァのほうから話を切り上げた。本来の力があれば、強制
的に迫ることも可能かもしれないが、今はまだ封印中の身。それに、今はいないが、神楽とざからが
その場にいれば、茶々丸とチャチャゼロがいても難しいだろう。

エヴァもそうだが、基本的には神楽もざからも人より圧倒的に長き時を過ごす者。それに恭也が加わ
れば、すばらしいことだろう。今度は時期を見て、そっちの方面から説得をしてみるかと考えている
エヴァであった。

そして今度こそ、恭也に背を向けて去ろうとするエヴァに恭也は声を掛けた。何かと思い、顔だけを
向けてみれば、

「明日は学校へちゃんと来いよ。一応、新任の教師がくるのだから」

お前もそのうちの一人ではないのか!といった突っ込みを何とか飲み込み、「ふんっ」といいながら
茶々丸を引き連れて自宅へと帰っていった。

恭也も、鍛錬をその場で切り上げ、与えられた部屋へと戻っていった。





そして翌日、

恭也が朝の鍛錬のために走りこみをしていると、進行方向からものすごい勢いで走ってくる少女が
いた。よく見てみると、新聞配達のようだが、その姿に恭也は見覚えがあった。

向こうも、恭也に気付いたらしく、驚きの目で見た後、さきほどよりも凄い速さでこちらに向かっ
てきた。

「あれっ?もしかしなくても恭也さん!?確かまだ、京都にいたはずよね」

「おはよう、明日菜。本当はその予定だったが、急遽こっちに来ることになったんだ。だから木乃香
 もそのことを知らない」

言わずと知れた神楽坂明日菜である。初対面の時の印象、木乃香の話、そして教育実習生として麻帆
良に来ていた時に、恭也のことは信頼するに値する人と判断したのか、今は兄のように慕っている。

「えっ、やっぱりそうなんだ?木乃香も恭也さんが来るのは三年生になってからって言っていたから
 まさかとは思ったけど」

「本当は木乃香に連絡したかったのだがな、学園長が…」

ちょっと言いにくそうにしている恭也を見て、なんとなくその理由を察した明日菜。ちょっと苦笑い
を浮かべながらも納得した。

「ああ、そういうことね」

「それにしても、相変わらず明日菜は偉いな。こんなに朝早くから新聞配達か」

恭也の言葉で今の自分の状況を理解した明日菜。

「あっ!やばい!時間がない!それじゃ恭也さん、私配達の続きがあるからまた後でね」

「ああ、引き止めてすまなかったな。もしなんだったら手伝おうか?この辺の地理は以前に把握した
 から配達する分には問題ないぞ」

「えっ、いいの?」

「引き止めたのは俺だからな。それに早く終わったほうがいいだろう」

ちょっと考えた明日菜だが、背に腹は変えられなかったのか自分の抱えている新聞の3分の1を恭也
に渡そうとしたが、恭也は残りの3分の2の束を受け取った。

「大丈夫だ、俺はこう見えても足は速い、ふむ、担当地区はあっちだな。それでは明日菜、配達が
 終了し次第、またこの場所に集合だ。時間が無いのだろう?」

「う、うん!わかったわ」

そういって、お互いの担当地区へと配達を始めた。そして、明日菜が配達を終えて、元の場所へ戻っ
て来た時には既に恭也が、配達地区の地図を持って、待っていた。

「あっ、お待せちゃいました?」

「大丈夫だ、俺も戻ってきたばかりだからな。それにしても明日菜も足が速いな。思っていたより
 戻ってくるのが早かったから驚いたぞ」

「ははは(汗)、普段からこの配達で鍛えてあるから。それにしても恭也さんも本当に早かったのね
 木乃香と刹那さんから聞いていたから知ってはいたけど、こうやって目の当たりにするとさすがに
 驚くわ」

現在、木乃香と刹那の関係は良好である。(但し刹那は木乃香に自分の正体をまだ教えていないが。
それを知ってしまうと、裏のことも知ってしまう恐れがあるため、言い出せていない)これも恭也が
木乃香と刹那を平等に妹のように接していたためである。

そして明日菜も、木乃香を仲介として刹那とも仲が良くなっている。

「まあ、俺も毎日鍛えているからな。それよりも時間のほうは大丈夫か」

恭也に聞かれ、時間を確認する明日菜だが、いつもの時間より随分早く終わっていることに気がつい
た。これも恭也が手伝ってくれたためである。

「恭也さんが手伝ってくれたお蔭で、いつもより早く終わることが出来たわ」

「そうか、それは良かった。余裕があるのであれば、学校へ行く準備もゆっくりできるな」

「あっ、ホントにありがとう、恭也さん」

「いや、礼はいい。それよりも女子寮へ行ったほうがいいのではないか?俺も戻るから」

「あっ、一つだけ聞きたいんだけど」

「ん、何だ」

「恭也さんはやっぱり先生になるためにこっちに来たのよね」

「ああ、そうだ。ただ、どのクラスになるかは、今日学園長に聞くのだがな」

真顔で普通に嘘をつく恭也である。一応、近右衛門に口止めをされているので全てを話す訳にはいか
ないためでもあるが、恭也はその必要性をあまり感じてはいなかった。

「あっ、そうなんだ」

「ついでに、木乃香に俺と会ったことを言わないで欲しい。どうやら学園長が」

「いや、なんとなくわかるから、それ以上言わなくてもいいわ」

と、恭也の話を止める明日菜。どうやら、心当たりがあるようだ。ちょっと恭也に同情している。

「そうか、すまないな。このお礼は必ずさせてもらうから」

「いや、それは私の台詞だから。お礼は私がしたいくらい」

腕を前へ大振りしながら答える明日菜。

「まあ、それならいいんだがな。それではこれ以上話をしていても、今までのことが無駄になるから
 そろそろ行くか。明日菜、また学園で会おう」

「うん、またね、恭也さん」

こうして二人は自分の部屋へ戻っていった。



そして、少し時間が過ぎた後

真っ黒なスーツに身を包んだ恭也は、近右衛門に言われたとおり少し早めに学園長室へと足を運んで
いた。そこには既に近右衛門が待っていた。

「おはようございます学園長」

「おはよう、恭也君。今日から正式に2-Aの副担任として頑張ってもらうが、一度教育実習生も
 やっておるから今更気負うこともあるまい。生徒達も君の事を認めていたし問題なかろう」

「そうでしょうか?」

「そうじゃ」

と、近右衛門と雑談をしているうちに、なにやら外が騒がしくなってきた。それに反応して、恭也と
近右衛門が入り口の扉の前を眺めているとその騒がしいままの勢いで、ノックがされた。

近右衛門が入室を許可すると、そこに入ってきたのは、入ってきて視界に入った恭也の姿を見て驚
愕している木乃香。早朝に恭也と再会した明日菜。その明日菜に首根っこを捕まれている少年、そ
の背には身の丈ほどの大きな包みを背負っている。おそらくこの少年がネギなのだろう。そして、
最後にタカミチが殿を務めていた。

最初に話を切り出したのは、木乃香である。

「えっ!?恭也さん!?なんでここにいるん?」

と事情を知らなかった木乃香が詰め寄るのを見ながらも、明日菜のほうを見てみると、恭也に向かっ
て手を振っていた。どうやら内緒にしてくれたみたいである。恭也は、目で明日菜に感謝しながらも
再度木乃香に向き直った。

「ああ、学園長に急に呼び出されてな。予定より早いが、今日からこの学園に教師として就任するこ
 とになった。なにせ、本当に急な話だったんでな、木乃香達にも連絡をする暇が無かった」

木乃香はあごに指をあてながら、恭也の表情をじっと見ている。どうやら嘘かどうか判断するための
ようだ。恭也は、真面目な顔をして平気に嘘をつく。さらに普段から表情があまり動かないため、嘘
を見破るのは容易ではない。

「ほんまに?」

恭也では埒が明かないと見たのか、木乃香は自分の祖父に標的を替えた。だがそこはさすがに年の功、
平然とした表情で、

「すまんのぉ、木乃香。本当に急なことだったんじゃ」

謝る理由が違うのだが、頭を下げる近右衛門。祖父に頭を下げられてはさすがに信じることしかなか
った木乃香はこの件はこれで終わりにする。

その様子を確認した恭也は、本題を切り出すべく、今も明日菜につかまれている少年のほうを向いた

「で、明日菜。その子はどうしたんだ?」

木乃香達のやりとりを見ていて、自分がつかんでいる存在を忘れてしまっていた明日菜は、すぐにそ
の手を離した。

「ああ、この子ね。なんか、いきなり私に失礼なことを言うから、とっ捕まえたら、学園長に用があ
 るって言うのよ。それも言うに事欠いて先生だなんて言うし、途中で来た高畑先生までもその通り
 だって言うし…、それで私達も呼ばれていたからここまで連れてきたのよ」

一気に事情を言い切った明日菜。その話を聞く限りやはり、この子がネギなのだろう。少し集中して
見てみると、潜在的な力は相当なものだ。その視線を当のネギも感じたのか「?」とっいった感じで
恭也を見つめたが、その視線が恭也を捉える前には既に当人は学園長のほうを向き直っていた。

「学園長。これで全員ですか?尤も、木乃香と明日菜が来るとは聞いていなかったですけどね」

「あいすまん、恭也君。木乃香にはここで恭也君と会ってもらおうと考えておったのじゃ。まあ、
 明日菜君はいつも木乃香と一緒じゃし、恭也君も妹のようにかわいがっておったしの」

はあ、という表情の恭也と、ちょっとだけ顔が赤い明日菜を眺めながら本題を切り出す近右衛門。

「それでは本題といこうかの?まずは明日菜君」

「はい」

「そこにいるネギ君は、正真正銘今日から教育実習生として勤めることになったのじゃよ。それも
 担当するクラスは2-A、つまりは、君達のクラスの担任になるのじゃ。ではネギ君、ここにい
 る皆に挨拶をしてもらえるかの」

「は、はい!僕は今日からここに先生として通うこととなりましたネギ・スプリングフィールド
 です!」

一瞬固まった明日菜、木乃香はへぇ、そうなん?といった感じでネギを眺めている。恭也とタカミチ
は、ただその光景を見ている。

それから、硬直から立ち直った明日菜は納得がいかないといった感じで近右衛門に詰め寄る。

「なんでですか!私達より年下じゃないですか!それも担任!?それじゃあ高畑先生は?」

「僕は、ちょっと別件で忙しくなってね。あまりここにいられなくなるんだ。まあ、先生を辞める
 訳ではないけど、担任をするには少し忙しすぎてね」

「ネギ君は、子供じゃが、知識は大学卒業程度の物を持っておるぞ」

愕然とする明日菜。それを明日菜をサポートするためか、ただ気になったのか祖父に質問する木乃香

「それじゃあ、恭也さんは?先生になるためにきたのではないん?」

いや、普通に気になったのだろう。なにせ、教育実習生の時は自分達のクラスを担当したのだ。教師
になった暁には、自分達の担任になると思っていたのだ。もちろん、ネギがいやと言うわけではない
が、自分は恭也が来る日を心待ちにしていたのだ。そういう気持ちがあってもしかたがないだろう。

明日菜も、木乃香の疑問にそういえばそうだったと思いながら恭也を見る。その恭也は近右衛門を見
て、向こうも頷いたため、自分からその疑問に答えた。

「ああ、それなら、俺は2-Aの副担任になった。俺も、高畑先生とまではいかないが、それなりに
 受け持っている仕事があってな、そこにいるネギ先生のサポート役ということで落ち着いたんだ。
 そうだ、ネギ先生に自己紹介をしていなかったな」

とネギに向き直り

「紹介が遅れてすみません。俺は、高町恭也。今日から2-Aの副担任としてネギ先生のサポートを
 勤めることとなったので、これからよろしくお願いしますね」

「は、はい!こちらこそ宜しくお願いします、高町先生」

「恭也でいいですよ。ネギ先生は日本に慣れているようですが、名前で呼ぶほうが慣れているでしょ
 う?」

「ありがとうございます。それを言うなら恭也先生も僕に敬語を使わなくていいですよ。さっきみた
 いに話してください、年上なんですから」

「そうか、それならそうしよう」

「ちょーーーーとまったーーーーーーーーーー!!」

それにマッタを掛けたのは明日菜である。

「なに、それ?それなら恭也さんが担任になればいいじゃない。それなら私も納得してあげるわよ」

「さっきも、言ったがな明日菜。俺は」

と恭也が言いかけた所で、近右衛門からダメだしが出た。

「明日菜君、もうこれは決まったことなのじゃ。ネギ君は担任、恭也君は副担任。それは変わること
 はないぞ」

「ううっ」

「それじゃあ明日菜君、僕もこれから仕事だからもうここを出ないとならないんだ。ちゃんとネギ君
 と恭也君の言うことを聞くんだよ」

「うううっ」

近右衛門と、タカミチのダメだしで反論の余地がなくなってしまった明日菜。木乃香は恭也が自分の
クラスにいることに変わりがないので特にその件に関しては反論がなかった。

「ほれ、もう良いじゃろ。木乃香と明日菜君はクラスに戻りなさい。あぁ、あと、ネギ君と恭也君の
 ことはクラスの皆には内緒じゃぞ」

木乃香は了承の意を近右衛門に伝え、まだ唸っている明日菜の手を引きながら学園長室を後にした。
タカミチもその後を追うように出て行った。

そして近右衛門は、残った恭也とネギに対して残った話をすべく向き直った。

「ふむ、時間がもうないから手短に話すが、ネギ君」

「はい、なんですか」

「まずは、ここにいる恭也君だが、君が魔法使いだと言うことは既に知っている」

「えっ、と言うことは恭也さんも魔法使いなんですか?」

「いや、俺は魔法は使えない」

「そうじゃ、恭也君は剣士での。ネギ君は「黒衣の剣神」の名に聞き覚えがあるかの」

それを聞いて驚いたのがネギである。

「えええっ!!それじゃあ恭也先生があの「ブラック・ライトニング(黒い稲妻)ですか!?」

「?」

「恭也君が知らないのも無理は無い、というか興味がないからしょうがないの。恭也君のイギリスで
 の呼び名じゃよ。ネギ君は両方とも知っているようじゃの」

「はい、向こうでも有名ですよ。だって、僕の魔法学校に現れた悪魔200体をたった二人であっと
 いうまに倒したんですから。その時、黒い姿がかろうじてしか見えないほどのスピードで悪魔を倒
 していくことからその名がついたくらいなんですから」

実を言うと、詠春を通じて、イギリスの魔法学校に恨みを持った悪の召還士が大量の悪魔を呼び出す
計画があるとの情報があり、人手がその時無いことから急遽、恭也達が赴くこととなったのだ。

但し、西洋の魔法学校が東洋の呪術師に助けられることは体裁に良くないということなので、バレな
いようにするため、恭也とざからは神速の速さで悪魔達を片付けたのだ。ついでに神楽もその速さで
動くことも可能だが、恭也が神速を連続使用する際に万が一に体に変調をきたさないように、小太刀
となって、恭也のそばにいたのだ。

「それじゃあ、もう一人の「ホワイト・ライトニング(白い稲妻)」もいるんですか?」

ついでに、これは恭也と同じ速さで戦っていたざからのことである。

「ふむ、恭也君と一緒に来ておるぞ、さらにもう一人おるぞ。一応、女子寮の管理人と警備員をやっ
 てもらうことになっておる。後で会わせるからその時にわかるぞい」

ネギはそんな有名人がこの麻帆良にいることとは思わなかったのかやたらキラキラした目で恭也のこ
とを見つめていた。その恭也は、少々渋い顔。あまりそういったことで有名人扱いされることに慣れ
ていないためだ。

「まあ、そういうことで。恭也君は裏の人間じゃ。一応ネギ君のサポートとしておるが、それに頼り
 過ぎてもだめだぞい。それでは卒業試験の意味がなくなるからの」

「はい!」

「良し、そろそろ時間じゃな。「コンコン」開いておるぞ」

「失礼します」

学園長室に入ってきたのは妙齢の美女である。「源 しずな」である。

「これからしずな君が君達をクラスへ案内してくれる。まあ恭也君は知っておるから問題ないがの」

「初めまして、ネギ先生。私は、源しずなと言います。名前で呼んでくださいね。そして高町先生、
 お久しぶりです」

さっきから感じていた違和感の正体がようやく分かったネギ。それは恭也がこの学園の人間と顔見
知りなのだ。近右衛門やタカミチなら裏の関係で知っていてもおかしくはないが、そうでない人も
知っているようである。しずなに挨拶をする傍らでその疑問をぶつけてみた。

「初めまして、しずな先生。ネギ・スプリングフィールドです。あのそれでちょっと聞きたいこと
 があるのですが」

「はい、なんでしょう」

「どうしてしずな先生は恭也さんのことを知っているのですか?どうやらここの学園の人たちは恭也
 さんのことを知っているようなので」

「ああ、それならそこにいる高町先生は、以前教育実習生として麻帆良に来たことがあるのですよ。
 それで教員は皆知っていますし。生徒にもかなり知られていますね」

「ついでにその時の担当が今の2-Aだったんだ」

しずなと恭也の説明に納得がいったネギ。それを確認した近右衛門が先へと促す。

「ほれ、そうとわかったのなら、もう行ったほうが良いぞ。そろそろ時間じゃ」

「「「はい、失礼します」」」

そう言ってから学園長室を後にする恭也達。そして、2-Aへ行く道すがらしずながネギに簡単な
説明をしていく。その時恭也は、これから向かうクラスに一抹の不安を抱えていた。

「(あいつら、ひょっとして「また」仕掛けをしてるんじゃないか?前に釘は差したが、どうもあの
 クラスだけはそういったところで信用が置けん。場合によっては、久しぶりに「お仕置き」を発動
 させる必要もあるな)」

そう考えているうちに2-Aの前まで辿りついた恭也達。その入り口の様子を見た恭也はため息をつ
いた後、意気揚々と教室へ入ろうとするネギを止めて、自分から入って行く事にした。





2-A教室内

木乃香と明日菜が教室へ着いた頃には、既にクラスメイトが全て揃っていて、これからやってくる
恭也達のことを噂しているようだ。皆に挨拶をしながら入っていくとずいっと体を割り込ませるよ
うにして木乃香達を強襲したのは通称「麻帆良パパラッチ」の「朝倉 和美」である。

「ねえねえ、明日菜と木乃香って学園長室へ行っていたんだよね」

「ええ、そうだけど」

「じゃあさ、知っていたら教えてくれないかな?今、教室はその話題でもちきりなんだよ」

「なにが?」

「ほら、今日やってくる代わりの担任の話。来るのが今日だとまでは分かったんだけど、それ
 以上の情報が来ないのよね」

「そうそう!と言っても、朝倉が言った情報もついさっきわかったばっかりだったんだけどね」

「それで今日来るんであれば、学園長に挨拶するために学園長室へ行く可能性もあるじゃない」

「そうそう!で、見た?」

和美の話にいつのまにか加わっているのはクラスのアクション担当である「明石 裕奈」である。

「いや、知らんよ。うちらが言った時には高畑先生とお祖父様しかいなかったわ」

「それに私達、学園長に挨拶して直ぐにこっちに来たから」

「ええー、そうなんだ。つまんない」

「やっぱりだめか。どうも、今回のことは私の情報網をしても全く分からなかったのよね」

「いいんじゃない?そのほうが楽しみでいいよ」

「そうや、楽しみは最後まで取っておくのもええで」

「どうせ直ぐにわかることだからいいんじゃないかな」

いかにもつまらないと言った感じで呟く裕奈に、今回の担任の件については、自分の情報網が全く
役に立たず悔しそうにしている和美、逆にそのほうが楽しみだと言っているのは「佐々木 まき絵」
と「和泉 亜子」であり、どっちでもいいと思っているのは「大河内 アキラ」である。

「私としてはいい男を望むわ」

「美砂、それはぶっちゃけすぎ」

目の保養を望んでいたのは「柿崎 美砂」で、それに突っ込みを入れる「釘宮 円」、「椎名 桜子」
もその意見に頷いている。まあ、どっちに頷いているかが疑問だが。

「そんなことはいいですから、皆さん!もう時間ですわよ!そろそろ席にお着きになって!」

「ええ、まだいいじゃん、時間はあるよ」

「と言いつつ、ドアの前でなにをやっているのですか!風香さん!史伽さん!」

「えっ、普通にトラップを仕掛けているんだけど」

「そんなことを普通にやらないでください!担任の先生がクラスの印象を悪くしたらどうする
 んですか!」

「いや、別に。面白いじゃん」

「お姉ちゃん、それ答えになっていないよ」

「雪白 あやか」が担任がもうすぐ時間になるというのに全く静かになる気配がないため、注意を促
すが、それを完全に無視して、もくもくと教師歓迎トラップを仕掛けているのは「鳴滝 風香」であ
る。そんな風香に突っ込みはしているが、やはりこちらももくもくとトラップを仕掛けているのは
「鳴滝 史伽」である。そして、その光景を見て顔を顰めている人間が若干2名。木乃香と明日菜で
ある。

「鳴滝姉妹、それはやめたほうがいいと思うわよ」

「うちも明日菜の意見に賛成や。恭也さんの時に懲りていないん?」

その名を聞いてビクッ!と大げさに震える鳴滝姉妹。その他、ちょっと顔を青くしている人間が数人



以前、恭也が教育実習で2-Aに来た時も当然こんな風にトラップが仕掛けてあったが、恭也はその
ことごとくを危なげなく突破して、なおかつ犯人までも直ぐに見つけ(この時は鳴滝姉妹)就任早々
「お仕置き」が実行された。(クラスのメンバーを言葉で誘導し、その表情で犯人を言い当てた)

ついでに初めての「お仕置き」メニューは、グランド5周。ただ、ここで普通と違うのは、恭也も
一緒に走るというものであった。それも3倍の15周。これには意味があって、走るのをサボった
りして、恭也より遅く終了した場合さらに5周追加と言う、体力が余り無い人間にとっては恐ろし
いものであった。(もちろんサボっていなければ抜かれても問題ない)

鳴滝姉妹はそれで直ぐに泣きが入ったが、次に同じ事をしたら倍に増やすと言われ、もう、恭也の
前ではしないと誓ったが、恭也は、他の先生達にもやったら発動すると冷酷に言い放った。
(もちろん、性質の悪いいたずらをさせないための恭也の策であったのだが)

鳴滝姉妹はもうそれで再起不能(笑)となった。これでもう出ないだろうと思っていた恭也だが、
翌日には今度は初回より遥かに高度なワナが仕掛けてあり、これにはさすがの恭也も2-Aの凄さ
を再認識した。(一応近右衛門から2-Aの「やんちゃ」は話だけは聞いていた。)

それでも、そのワナを堂々と突破し、教室へ入っていった恭也は再度犯人を特定しようとしたが、
今度は自分から名乗りを上げたのだ。その人物は「龍宮 真名」と「長瀬 楓」である。自分達は
グランド5周が10周になっても全然問題がないし、恭也の人物像、実力を見るには丁度良いと
考え自分達が持ちうる最大のトラップを用意した。

ついでにそれ(トラップ)を見たクラスメイトの大半は顔を青くしていた。

だが、次の瞬間恭也から出た言葉はグラウンド5周でも10周でもなかった。それは、

「この中に甘い物が苦手な生徒はいるか?」

というものだったのだ。さすがにその質問にはあっけに取られた真名と楓は他のメンバーと同様
に素直に答えていた。「甘い物好き」と、そのあと、5分ほど使ってどんな種類の物が好きかと
言う話に発展し、あらかたクラスのメンバーの好みを理解した恭也はふむ、と一言だけ言って、
そのまま授業を再開したのだ。真名と楓は、自分達に「お仕置き」はないのかと不思議に思いな
がらも授業を受けた。

その時木乃香と刹那の納得顔を見ていればあるいは、違う結果が得られたかもしれない…。

そして翌日、恭也は、自分の授業の前に(トラップはなかった)いいものを用意したから、午後
の授業の10分くらい前に教室へ居てくれと頼まれたメンバーは、なにかあるのかな?とイベント
好きの性格から約束どおり全員(エヴァと茶々丸はサボりで一日いない)揃っていた。

そして、丁度10分前に恭也は大きな包みを持って現れたのだ。教室の前のほうにいる生徒はその
包みから甘い匂いが漂っていることに気付いたが、その中身までは特定できなかった。

それで、恭也がその包みを解くと、そこには、

”いろとりどりの西洋菓子”

恭也は、あちらの世界では、幼い頃から母であり、有名なパティシエでもある桃子にお菓子作りを
手伝わされていた。もともと手際がいいのか、味覚が鋭いからなのかはわからないが、恭也はその
ほとんどを覚えてしまい、桃子に「翠屋(桃子が店長の洋菓子家風の喫茶店)を継がない?」と
言われたほどの実力を持っている。

クラスのメンバーは恭也の自己紹介の時に特技が「お菓子作り」と聞いていたが、今目の前に出さ
れている物はそのレベルを十二分に超えているものであった。

もちろん、それに群がろうとするが、恭也に一括され、落ち着くと、メンバー一人一人にそれを手
渡ししだしたのだ。

   ………ただ、真名と楓を除いて………

周りが「美味しい!」「なにこれ!ここらへんじゃ絶対に食べられない!」「懐かしいわ~」などの
声が上がる中、あまりの出来事にショックが隠しきれない真名と楓。ある意味甘い物好きの女の子に
とっては、兵糧攻めよりも性質の悪い「お仕置き」に言葉がでない。

そんな二人の目の前にお菓子を持って現れた恭也。もういたずらをしないなら分けてやるとのありが
たい言葉に、二人は土下座をすることによって九死に一生を得た。

その光景を目の当たりにしたクラス全員は

「恭也(先生)にいたずらしたら、おそろしい「お仕置き」が待っている」

との共通認識を持ったのである。それ以降、恭也が麻帆良を去るまで2-Aがいたずらをすることが
全く無くなったのである。

ちなみに、サボってそんなことを知らずに翌日に学校に登校してきたエヴァは、他のメンバーの話を
耳にした後(要するに恭也のお菓子の腕)恭也に掴みかかったことはちょっとした余談である。



話が長くなったが、そんな過去を持っている2-A(特に当事者の四人)はその名が出た瞬間顔面
蒼白になりかけたが、そこは持ち前のテンションで乗り切ろうと明日菜と木乃香の話を振り切った。

「大丈夫だよ、恭也先生は今はいないんだし、二人ともこのことをチクッたりはしないでしょ」

「ええ、まあ、そんなことはしないけど…(それよりも本人が来ているし)」

「うちもそんなことはしないえ(二人ともかわいそうに。「お仕置き」決定や)」

などと、鳴滝姉妹に対し、かなり薄情な木乃香と明日菜である。

そうしているうちに、トラップも仕掛け終わり。いざ時間となろうとした時、近づいてきた気配に
顔色を変えたのが三人。

一人は喜びに満ち溢れ、二人は鳴滝姉妹をかなり同情の目で見ていた。
(木乃香と明日菜ではないです。さて、誰でしょう?って分かりますよね)

そして、扉が開け放たれようとした瞬間、黒板消しトラップは簡単に避けられ、その他のトラップも
全て回避されていた。ネギはその光景に唖然として見ている。

それを見て、顔を真っ青にしているのが、鳴滝姉妹である。体全体をガクガクブルブルさせている。

そして、トラップを回避した人物は一言、

「ふう、『前回』あれほど反省したはずなんだがな「鳴滝姉妹」?」

その言葉にビクーーー!とする鳴滝姉妹。もうバレバレである。

他のクラスメイトも恭也が来たことに驚くより、鳴滝姉妹に同情する気持ちの方が強かったようだ。

「それでは、まずは自己紹介から始めようか。それではネギ先生、まずは自己紹介を」

と、そんな空気をものともしない恭也はネギに話を促す。

「あ、はい」

つい、それまでの光景を目の当たりにし、ちょっと固まっていたネギであったが恭也の言葉で再起動
を果たすと、自己紹介をすべく、はっきりとした口調で話した。

「初めまして、僕はネギ・スプリングフィールド。2-Aの担任を担当することになりました」

「皆既に知っていると思うが、俺は高町恭也、2-Aの副担任を担当することになった」




こうして、「黒衣の副担任」の学園生活が始まった。



あとがきのようなもの

うっし、ようやく本編に少しかじったぞ。それにしても長い…。良くこの短期間で書けたな。
自分で自分を褒めたいです。

教育実習生編は番外で出すといいまいたが、一応本編でもその片鱗は少しずつ出そうかと
思っています。といっても、『お仕置き』のエピソードが少し長くなりましたが…

これから真の意味での「黒衣の副担任」のスタートです。
皆様の暖かい応援を背にこれからも頑張っていきたいと思っていますので宜しくお願いします。

黒衣の副担任

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