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麻帆良に羽ばたく太陽の翼 第3話 投稿者:TWIN,S 投稿日:04/21-13:49 No.354

学園長の計らいで3年A組に1日授業体験をする事になった火鳥勇太郎。
多くの生徒と共に学ぶと言う行為は今まで独学で学んできた火鳥にとって貴重な体験であった。

……しかし、彼の貴重な授業体験は一部の者達にとって刺激的なモノだった……。


 麻帆良に羽ばたく太陽の翼 第3話


3時間目 生物

「<これによって、孵化したヒヨコは自らの力で殻を破らねばなりません。
  それでは、実際にヒヨコが孵化する場面を見てみましょう。>」

生物の先生から渡された教育ビデオを見ている生徒一同。
今、卵からヒヨコが孵化しようとする場面を見ている最中に火鳥は突如椅子から立ち上がると。

「頑張れ! 頑張るんだ、ヒヨコさん!!」

画面に映っている、孵化しようとしているヒヨコに向かい応援を送る。
火鳥の必死の応援に唖然とした表情で火鳥を見る一同。

「か、火鳥さん。 だ、大丈夫です、ヒヨコはちゃんと孵りますから。」

ネギが火鳥を宥めていた間に倍速で行われていたヒヨコの孵化は完了する。
そして、ヒヨコが孵りその愛くるしい姿を火鳥が目にすると。

「やった、ヒヨコが自らの力で孵化した。 これは凄い感動だ!!」

その後、火鳥はネギを抱き上げると授業が終わるまでヒヨコの誕生に感動していた。


4時間目 家庭科

「お、お姉ちゃん、止めた方が良いです~。」
「大丈夫だって……火鳥さん。」

家庭科の授業は調理実習であったが火鳥は急な参加の為に今回はネギと一緒に見学であった。
皆の調理している様を眺めていた火鳥の前に風香と史伽がやって来て。

「ねえ、火鳥さん。 このお味噌汁、味見してよ。」

と言って味噌汁が入った御椀を差し出す。

「これを僕がかい? それじゃ……。」

言われるがままに味噌汁を口にする火鳥。
味噌汁を口にする光景を見て、風香は笑みを浮かべ、史伽は気まずそうな顔で火鳥の様子を窺う。

風香は悪戯用に作った凄くしょっぱい味噌汁を口にした火鳥のリアクションを期待していたが。
期待はモノの見事に破られ……。

「う~ん、これは塩分が多い気がするな。」
「「え!?」」

余りの意外な反応に声を上げる風香と史伽。

「これは、この鍋から取ったのかい?」

火鳥は生徒全員分の味噌汁が入っている鍋を指差し。
呆けに取られている風香と史伽は黙って頷く、すると火鳥は。

「これじゃあ、栄養のバランスが偏っているな……これをこうして……。」

火鳥はその辺に置いてある材料や調味料を片っ端から味噌汁に入れ始める。
他の生徒は料理に夢中で気付かず、唯一の目撃者である風香と史伽は。

「す、すごいです。 火鳥さん、料理出来るんですね。」

火鳥の料理捌きに感嘆の声を上げていた。
そして、皆で出来た料理を食べる時。

「あれ、今日の献立て豚汁だったけ?」
「う~ん、そうだっけ……でも美味しそうじゃん。」
「それでは……。」
「「「「「いただきま~す」」」」」
「「「「「!!」」」」」」

全員が味噌汁に口をつけた瞬間。
余りの凄まじさに生徒の殆どが倒れた……。

「フム、味噌汁なのに口の中に走る甘みや酸味。
 隠し味に苦味が効いてその他諸々と何とも言えない絶妙な味わいです。」
「これは、味噌汁なのに色んな栄養素がばっちりです。
 これさえ飲めば1日に必要な栄養が全部取れますね……飲めればの話ですけど。」

普段から奇妙な飲み物を飲み続け耐性が出来ている者。
食への追求心が尽きぬ者。
そして、作った本人は無事なようだった……。


5時間目 体育

「今日は前回の体力測定の続きを行いますので皆さん準備をお願いします。」

生徒達がグラウンドに向ってソフトボールを投げている中、火鳥の出番がやってくる。
学園長が持って来てくれたジャージを着た火鳥がソフトボールを持って円の上に立つ。

「これを投げれば良いのかい?」
「そや、思いっ切り遠くへ投げてえな。」

ソフトボール投げのやり方を知らない火鳥に亜子がボールを投げてと指示する。
すると火鳥は左足を上げ身体を捻り、野球の投球フォームをとる。

「火鳥さん、野球とはちゃう……。」

亜子が注意を言い切らぬうちに火鳥が思いっ切り投げたボールは剛速球となり。
記録を見る為にグラウンドにいた生徒達は悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らすように逃げる。
結局ボールはグラウンドの端にあるコンクリートの壁に当たり壁にヒビを入れて止まった。

「な、なんだ今のは……。」
「計測しました所、今の球速は時速500kmと出ました。」

つまらなそうに見ていたエヴァは事態に驚き、茶々丸は今の球速を測定した。
その後も走り幅跳びをすれば宙返りをしながら砂場を飛び越え。
踏み台昇降運動をしても一向に脈拍が変わらない等の珍事を起こしつつ最後の種目、持久走となった。

流石にこのままではマズイと感じた超達により周りに合わせろと言われた火鳥は皆のペースに合わせて走る。
やがてペースによって人が疎らになり始めた頃、前を走っていた風香が足を押さえて蹲った。

「どうしたんだい?」
「か、火鳥さん。 どうやら足を痛めたらしくて。」
「本当かい!? じゃあ直ぐにお医者さんに診て貰わないと。」

医者に診せる為に風香を抱え上ようとすると風香は。

「ちょっと待って、史伽も一緒に連れて行って。」
「わかった。 史伽ちゃんは俺の背中に。」

史伽は申し訳なさそうに背中に乗ると火鳥に聞こえない様に風香に話し掛ける。

「(お姉ちゃん、やっぱりこんなズルはいけないです。)」
「(良いんだよ、火鳥さん体力ありそうだし。)」
「何か言ったかい?」
「ううん、何でも。 それじゃあレッツゴー!」

火鳥を利用してゴールまで楽をしようとする鳴滝姉妹、直後2人は風になった。

「「ああ~~~!! あ! あ! あ~~~!!」」

鳴滝姉妹を担いだ火鳥は土煙を巻き上げ全速力で走る。
前を走っていた生徒達に鳴滝姉妹の悲鳴だけを残して走り去り、一瞬にして先頭ランナーに追いついた。
先頭ランナーは突如すざましいスピードで追いかけてくる存在を見て声を上げた。

「な、何なのあれ!?」

先頭を走っていたのはアーティファクトの力を利用して走っていた美空で。
彼女はゴール手前までアーティファクトで走り、後はくつろぎながら頃合を見るつもりだった。

自分の後ろには誰も追いついて来ないだろうと思っていた美空に追い詰められると言う恐怖心が沸き立ち全速力で走る。
しかし、鳴滝姉妹を助けんが為に走る火鳥はその差をぐんぐん縮め、遂には美空を追い抜いてしまう。
前を走っていく火鳥を見つめて美空の心は追い抜かれたショックよりも、何事も無く過ぎ去ってくれたと言う安堵感があった。

「おや!? あれは何でしょう?」

ゴールにいたネギの前を高速の何かが通り過ぎた。
余りの一瞬の出来事に何かと思うネギだったが、その物体は突如引き返すとネギの前に止まる。

「ネギ君! この辺にお医者さんは居ないか?」
「火鳥さん。 うわぁ!! ふ、風香さんに史伽さん!!」

高速を体験した鳴滝姉妹は既に燃え尽きており、2人は本当に保健室の世話になる事になった。


「どうじゃ。 学校は楽しかったか?」
「はい! 皆さんと一緒に知識を学ぶとても感動しました!」

学校体験を終え、学園長室に呼ばれた火鳥は今日一日の感想を学園長に伝える。
変り者が多い3-Aにとって火鳥の奇行はさほど大した事は無く。
生徒達からは、また一緒に勉強しようね、と言われ火鳥は上機嫌だった。

「フォフォフォ。 ならば良い、ワシも誘った甲斐が有るもんじゃ。
 それと火鳥君、君の住む所じゃが此処に行ってくれ。」

学園長から受け取ったメモ紙を手に火鳥は歩いていた。
その時、何処からか少女の悲鳴が聞こえ、火鳥は悲鳴の方向に向って走る。

火鳥勇太郎の一日はまだ続きそうだ。

麻帆良に羽ばたく太陽の翼

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