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【一章】王との出会い 投稿者:アイオーン 投稿日:08/27-19:06 No.1169

  
 †
 
 
 時が停止する。
 
 目の前に立つ騎士を見て、最初に浮かぶ感想は“黄金”。
 その騎士は身に纏う鎧はもちろん、その頭髪までもが金で出来ているのではないかと見紛う程に、金の輝きに満ちていた。
 
 次に気付くのが騎士の瞳だ。
 その瞳は色素が失われ、血の色がそのまま出ているのではないかと思うほどの赤を湛えていた。
 まさしくそれは神によって与えられた紅玉(ルビー)で創られた瞳だった。
 その瞳が男が人ならざる者である事を物語っている。
 
 さらにその男の容貌は、金で出来た髪、紅玉で創られた瞳を備えるに相応しい造形をしていた。
 いままで数多の芸術家が目指し、そしてその中途で挫折した至高の美の形は、まさにこの男の容貌にこそたどり着くのだろう。
 
 神に愛され、神によって創られ、神によってその存在を許された、そんな神々しさを感じさせる騎士。
 
 しかし騎士が持つのは美だけではない。
 騎士から発せられる強大な“王気(オーラ)”。
 その騎士がこの空間に存在するだけで、他の存在は霞んでしまう。
 そして、魔法使いであるが故に感じられる圧倒的な魔力。
 先ほど暴走した魔力など比にならない程の暴力的な魔力の奔流。
 それを目の前の騎士は、まるで呼吸するかのように自然に放出し続けている。
 
 まさに蛇に睨まれた蛙。
 存在の違いに押し潰されそうになる。
 酷く喉が渇いている。
 ボクは動き出すことも、声を出すことも出来ないでいる。
 
 しかし時は再び動き出す。
 “黄金”の言葉によって…
 
 
 「何故我(オレ)の問いに答えんのだ?王が問うているのだ、疾く答えるが礼儀であろう。
  今一度問う、雑種、貴様が我(オレ)のマスターか?」
 
 「え!?あ、あう、その、ボク・・・・・・・・ですか?」
 
 
 自分を指差す。
 突然話しかけられた事に驚く。
 そもそも最初の言葉が自分に向けられた物だと思っていなかった。
 だから返答はどもりながらになってしまった。
 
 これほどまでに圧倒的な存在との対峙である。
 当然の反応だと言えるだろう。
 あのような存在がボクに話しかけることがなんだか信じられなかった。
 だがその男はあろうことか、ボクのことをマスターだと言っているのだ。
 それと雑種と言ってるが、それもボクのことなのだろうか?
 
 
 「当然だ。貴様以外に誰がこの我を呼び出したと言うのだ?」
 
 
 やっぱりマスターとはボクのことのようだ。
 そうしてボクがオロオロとしている所に男が構わず声を発する
 
 
 「サーヴァント・アーチャー、召喚に従い参上してやった。
  今この時をもって貴様の命運は我(オレ)と共にある事を許された故有難く思うが良い」
 
 
 さっぱり訳が分からなかった。
 
 
 
 【side ???】
 
 
 
 此度も召喚に応じて英霊の座より意識の一つが剥離する。
 聖杯戦争におけるサーヴァントの召喚と推測する。
 自我が形作られ我という存在が“我”を知覚する。
 そうして空虚だった感覚を構成された肉体が満たす。
 与えられたクラスは『弓兵(アーチャー)』。
 
 聖杯戦争
 あらゆる願いを叶える願望機を求めて、七人の魔術師と七騎の英霊が最後の一組になるまで殺し合いをする戦争。
 
 我には叶えるべき願いはない。
 そんなモノは生きていた内に全て叶えてしまった。
 それを可能にする力が我にはあった。
 
 故に無価値…………
 
 こんな戦争に参加することは戯れ以外の何物でもない。
 だが……
 
 娯楽上等
 
 口元に笑みが浮かぶ。
 時には娯楽に興じるのも良い。
 我以外の六騎の英霊。
 退屈を紛らわすには丁度良い相手だ。
 何者であろうと、我が前に立ちはだかるならば、その悉くを蹴散らすまでだ。
 
 そうして我は世界に現界しようとする。
 近づいてくる。
 
 不覚にも郷愁の念を感じてしまった。
 懐かしい、あの、戦場(いくさば)へと、我は、舞い、戻る。
 
 だが、そこで異変を感じる。
 何か大きな力に引き寄せられる感覚。
 遠い場所から呼び寄せられる。
 その場所には聖杯の様な巨大な力は感じない。
 つまり聖杯戦争とは無関係な世界に呼び寄せられようとしている。
 それは純粋な力による強引な召喚だった。
 
 “世界”が遠ざかることが分かる。
 
 何処の何者かは知らぬが、無礼にもこの我を力で無理矢理に呼び寄せるとは……不愉快だ。
 だが英霊は所詮“呼び寄せられる物”でしかない。
 それがサーヴァントとしてであっても、抑止力(カウンターガーディアン)としてであってでもだ。
 
 甚だ不愉快ではあったが、仕方がないのでその召喚に応じてやる。
 
 世界に現出する直前……
 理由は分からない。
 理由は分からないのだが、懐かしさを感じていた。
 それは先刻までの再び戦場に立てる事への懐かしさとは異なる……
 ・
 ・
 ・
 現界した場所は木々に囲まれた林の中だった。
 召喚の余波なのか、周囲には未だに風が吹いていた。
 召喚者たる魔術師を探してやるために、自分の中にある『ライン』を辿る。
 
 そしてその先にあったのは、小さな小僧だった。
 年の頃はおそらく10程度。
 下手をすればもっと幼いやもしれん。
 こんな小僧に呼び寄せられるとはな。
 不満はあるが、とりあえず確認のために目の前に立っている小僧に問う。
 
 
 「問うぞ……」
 
 
 自然、口の端が笑みの形に歪む。
 今回は聖杯による召喚ではないが、この我を呼び出す程だ。
 恐らくはそれに準ずる事態なのであろう。
 それに、聖杯に呼び出された訳ではないが、この身はアーチャーなのだ
 故に本意ではないが、我はサーヴァントとしての台詞を口にする。
 
 
 「貴様が、我のマスターか?」
 
 
 此度の召喚は我を愉しませてくれるだろうか?
 それもこの目の前に居る雑種次第。
 そんな事を、一人頭の中で考えていたが…
 ・
 ・
 ・
 しばらく返答を待ってみるが、マスターの雑種は我の事を見るだけで質問に答えようとしない。
 王の問いに答えぬとは……
 本来ならば即刻死を与えている所だが、仮にも我のマスターとなった者だ。
 特別に不問に処してもう一度声をかけてやる。
 
 
 「何故我(オレ)の問いに答えんのだ。王が問うているのだ、疾く答えるのが礼儀であろう。
  今一度問う、雑種、貴様が我のマスターか?」
 
 「え、あ、あう、その、ボク、ですか?」
 
 
 マスターである小僧は我に声をかけられると気圧されたようにどもりながら話し始めた。
 未だ我を呼び出したことを理解していないようだ。
 故にこの愚かなマスターにも理解できるよう宣言する。
 
 
 「当然であろう。貴様以外に誰がこの我を呼び出したと言うのだ?」
 
 
 そして誓約の言葉は此処に成る。
 
 
 「サーヴァント・アーチャー、召喚に従い参上してやった。
  今この時をもって貴様の命運は我(オレ)と共にある事を許された。有難く思うが良い」
 
 
 そうだ。
 この我と共にあるのだ。
 如何な敵であろうと払い除け、如何な災厄からも守られることがこの場で約束されたのだ。
 これを幸運と呼ばずして何と呼ぶと言うのだ?
 にも拘らず、目の前にいる雑種はそのことを理解していないのか、ただ呆けるばかりであった。
 
   
 †
 
 
 そうして誓約が交わされることで我とマスターとの間にラインが完全な形で形成される。
 
 「ここに契約は成った。これより我が往く王道(みち)は貴様の運命(みち)となる。
  貴様の敵の悉くを薙ぎ払い、貴様に降りかかるありとあらゆる災厄より守ってやる。
  貴様の勝利は約束された…貴様は我が切り開いた道を精々後から着いて来るが良い」
 
 身体に魂が馴染んでくる。
 構成された身体に確認の意をこめて魔力を流してみる。
 
 全身を魔力が駆け巡る。
 
 その感覚に我は違和を感じる。
 いや、本来ならば今の感覚こそが正しいのだが……
 これではまるで生前と同じではないか?
 
 
 
 どうやら今回の召喚はエーテルで出来た身体ではなく、受肉した状態で現界したようだ。
 その事実に我は少しばかり驚く。
 目の前に立っている10に届くか届かないかの小僧が聖杯の補助無しに我を呼び出し、あまつさえ受肉した状態で現界させるとは……
 これは魔法の域に達する所業ではなかろうか。
 
 そうして我が黙っていると、今度は小僧が我に声をかけてくる。
 
 
 「あの…あなたの名前は……『アーチャー』さん…で良いんですか?」
 
 「そうだ。それが如何したと言う?」
 
 
 どうやら今に至っても状況が理解できていないようだ。
 まるで突然の事態に頭が着いていっていないような顔。
 そのことを訊くと雑種は再び沈黙した。
 一体どの様にしてこの我を呼び出したのか少し疑問に思い始める。
 
 だがとりあえず召喚の儀は終了している。
 ならば次に行う事は決まっている。
 
 
 「それで貴様…名は?」
 
 
 令呪の縛りは聖杯戦争ではないので当然ない。
 とりあえず名を問うてやった。
 
 
 「え? ええ!? ボ、ボクの……名前ですか」
 
 
 何にそんなに驚いたのか知らんが、小僧は我に名を訊かれると動揺し始めた。
 その事実を確認させる為により確かな言葉で告げる。
 
 
 「そうだ。貴様のような者の名を仮にもこの我が訊いているのだ、疾く答えるが礼儀であろう?」
 
 
 そうすると雑種は視線を彷徨わせていたが、しばらくすると意を決したのか我を正面からしっかりと見据える。
 そしてその口が開かれ言葉が紡がれる。
 
 
 「ボクの……ボクの名前はネギ……ネギ・スプリングフィールドです」
 
 
 ネギと名乗る小僧は名を告げた後もしっかりと我を見続ける。
 その眼にはなんの力も無いが、それでもその眼ははっきりとした意思を湛えている。
 恐怖する事、戸惑う事を止め、我の存在を受け入れようとしている。
 だが……
  
 「それが貴様の名か……我を受肉させて召喚したその実力は認めてやろう。
  故に貴様のことはネギと呼んでやる。」
 
 
 ネギはまたも間抜けな顔をする。
 
 
 こうして我とネギはこの瞬間に出会った。
 
 
 

英雄王先生ギルま!

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