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子供先生と仮面の男 第十三話(ネギま!×仮面ライダー (オリ主・オリ有) 投稿者:紅(あか) 投稿日:04/27-07:36 No.400

子供先生と仮面の男
第十三話 『二つの戦い 中編』


そこはつい先程まで嵐とザジが彼らと共に語らっていた広場だ。

楽しいひと時を過ごした場所だ。

だがそこは今、地獄絵図と化していた。

一人の男の手によって。


その男は嵐たちが去ったすぐ後、入れ替わるようにその場に現れた。

ボロ布のようなローブを纏い、頭部以外の全てを隠した異様な風体。
ボサボサで手入れなどまるでされていない黒髪に痩せこけた頬。
一見すると病人のような顔色をしている。

だがその瞳だけは。
夜、それも月明かりしか辺りを照らすモノが無いの空間にあっても。
爛々と不気味な輝きを宿している事がわかる。

彼は目の前の異形たちを嵐たち同様、恐れなかった。
その存在を受け入れていたのだ。

悲鳴も上げず、罵声も上げず。

悠然と彼らに近づいていく男。
だがその行動は『友愛』を表しての行為ではなかった。

「さぁエサだ。たっぷりと喰らえ」

また友達が増えると男の遅い歩みを待ちきれず、意気揚々と近づいた一体の異形が。

ザンッ!!!

一瞬で唐竹に両断される。

「「「!?」」」

訳もわからず、棒立ちになる異形たち。
だが男はそんな彼らの驚きなどやはり気にも留めず。

「そうか。まだ足りないか」

独白と共に骸と化した異形にその血のように紅い剣を突き立てた。
何故か殺された異形からは血が流れなかった。

――――――ドクン!!

まるで生きた心臓のように脈動する『剣』。

その紅く薄透明な刃が異形たちには心なしか濃くなっているように思えた。

彼らのその感想は間違っていない。

何故なら倒れ伏した異形の血を、その刃は吸っているのだ。

唐竹にした初撃で噴き出すはずだった血を。
そして今、骸に残った分を吸い尽くさんとばかりに。

「美味いか? そうか」

剣に語りかける男。
その目は狂気に彩られているが、その顔色はここに現れた当初よりも格段に良くなっていた。
こけていた頬にも瑞々しさが戻り、瞳の輝きもさらにギラギラとしたモノに変わる。

「は、ははは……アハハハハハハハハッ!!!」

地面に突き立てていた剣を天に掲げ、高笑いする。
全てに、世界の全てに己の存在を誇示するかのように。

異形たちはそんな男に恐怖を抱いた。
仲間を殺され、その血でもって活力を取り戻す吸血鬼のような男に。
次は自分だという危機感を抱く事もできない程に彼らは恐怖していた。

「さぁ、次のエサだ」

ゆらりと掲げていた剣を下ろし、動く事のできない彼らに向かって歩きだす男。
異形たちは数秒後に迫った自らの死に震え、身動ぎする事もできずにただ顔を俯かせてその場に立ち尽くすだけ。

一歩、また一歩。確実に迫る死へのカウントダウン。
だがその歩みは唐突に止まった。

彼らが俯かせていた顔を上げると、そこには視線を横に向けている男の姿。
その視線を追うと、そこには息を切らせながらこちらに駆け寄ってくる。
今日出会ったばかりの『友達』の姿があった。


「お前……なんて事を!!」

歯噛みしながら男と『友達たち』の間に立ちはだかる嵐。

「………」

男は先程までの狂気を消しさり、無言で激昂している彼を見つめる。

「…………」

ぼそりと男が何事か呟くが、怒りで頭に血が昇っている嵐には聞こえていない。

「なんでこんな事をした! 彼らがあなたに何かしたのか!?」

感情のままに吼える嵐を、感情の抜けた無表情で見つめ返しながら。
男は一言だけ言葉を返した。

「コレにエサをやっただけだ」

持っている剣を顎で示しながら、なんでもない風に告げる。
そこに命を奪った事への念は何も無かった。

殺した事への『罪悪感』も、『喜悦』や『愉悦』すら。
その顔には表れていなかった。

嵐は確信する。

この男にとって、ついさっき行った惨劇は『邪魔な雑草を引き抜く』事と同じ程度の行為なのだと。

「ふざけるな!!!」

気づいた時には彼は駆け出していた。
怒りの感情の渦巻くままに。


彼は今まで何度も命が失われていく様を見てきた。
車に撥ねられる犬や猫、寿命で、あるいは病気で亡くなる老人や子供。
身勝手な理屈で他人を『殺す者』、そして『殺される者』。

自分では『どうしようもない場面』に遭遇してきた。
もう『終わってしまった所』に遭遇してきた。

彼はそんな時、いつもどうしようもない『無力感』に襲われる。
だがそれと同時に彼の冷徹な部分がこう思っている事を認識してしまうのだ。

「これが現実だ」

人など容易く朽ち果てる。
容易く他人を陥れる。
自分以外などどうでも良いと思っている。

『お前では救えない』

呪詛のように紡がれる、頭に直接届く言葉とそれを裏付けてしまう『植えつけられた知識』。

それらに何度となく打ちのめされ、その度に彼は悩み自問してきた。

「人を助ける事に意味はあるのか?」と。


今はあると思っている。
千鶴や新田を助けた時から彼はそう思うようになった。
彼らは優しかった。
理不尽な暴力で死んでいい人間ではなかった。

だが全ての人間がそうであるはずがない事も事実なのだ。
だから彼は未だ、心の奥底では迷っている。


その答えは未だに見つからない。
そんな簡単に答えを見つけられるほど彼はまだ『生きていない』。
そしてその答えを理解するには心が『幼すぎる』。

だがそれでも。
目の前の男の言い分を認めるわけにはいかないと嵐は強く思った。

「俺はあなたは……いや! お前を許さない!!!」

武器を持つ相手に決して怯む事無く、突撃する。
男は右手の剣を無造作に振り上げ、嵐が射程内に入るのを待つ。

「うおおおおおおお!!」

猛る怒りを拳に込め、嵐が渾身の右ストレートを放つ。
それに合わせるように剣を振り下ろす男。

ガギィイインッ!!!!

二つの視線、その攻撃の軌跡が交じり合うのは一瞬。

男の胸部に嵐の拳が、嵐の左肩に男の剣が突き刺さる。

「な、に?」

驚愕の声を上げたのは嵐だった。
自身の拳を突き立てた男の胸部を見つめる。

ローブを突き抜き、確かに身体に届いたその拳が伝えたのは人間の柔らかい身体の感触ではなく。
鋼のように硬く冷たい感触と鈍い音だったのだから。

「ふっ!」
「がッ!!」

呆然とする一瞬の間に繰り出される膝蹴り。
嵐はその一撃を顎に受け、仰け反りながら後退する。

「お、まえ……その身体は」
「……そうか。少し……思い出した」

血の滴る右腕と浅く切られた左肩に意識を向けながら、嵐は異形たちを後ろ手に庇う。

「俺は………」

身体を覆い隠していたローブを取り払い、全身を顕わにする。
それは月光を受けて白銀色に輝く無骨な鎧に包まれていた。

「人間、じゃない……のか」

痛む右手を無理矢理握りこみ、不退転の意思を持って嵐は『敵』を睨む。

「俺はお前のように何かを護ろうとする人間が……憎いんだ」
「なに? がはッ!?」

突然、身体を襲う衝撃に吹き飛ばされる。
草が生い茂る地面を数メートル転がって、立ち上がる。

そこで彼はまた呆然とした。

視線の先には男が立っている。
その無骨な身体も、血のように紅い剣も変わらない。
唯一つ、その頭部がいつのまにか人のソレでなく、身体同様の銀色に輝く鎧に覆われていることを除いては。

だが嵐が驚いたのはソコではない。
その頭部が、自分の良く知る人たちの顔とよく似ていたから。

緑色の瞳、額から突き出る触覚。丸みを帯びた頭部。

視線を男の胸部から下へ移す。

そして彼は目を見開いた。

その腹部に煌くのは瞳同様の『緑色の宝玉』。
自分のソレと極めて酷似した『ベルト』。

「何者、なんだ……?」
「死ね。俺を不快にさせる男」 

一足飛びで男は数メートルの距離を縮める。
高速で振り下ろされる必殺の剣を、嵐は地面を転がることでなんとか避けた。
だが地面に突き刺さる剣の衝撃は無様に転がる嵐を吹き飛ばす。

「ぐぅッ……! このままじゃやられる」

全身を痛みに蹂躙されながらもなんとか立ち上がる。
背後を見やる。

そこには恐怖に震える友達たちの姿がある。
脳裏によぎるのはあの『悪夢』。

「(させない。絶対に!!)」

敵を見据え、覚悟を決める。
そして彼はここに来て二度目になる力ある言葉を紡いだ。

「変ッ身!!」

彼の腰にベルトが浮き上がると同時に両手の甲を自身の眼前で叩きつける。
光が彼を包み込み、異形へと姿を変えた。

「彼らを、俺の友達にはもう指一本触れさせない!! お前はここで倒す!!」

異形の戦士と異形の剣士。
極めて似た外観を持ちながら、極めて異なる思想を抱く二人はここに激突する。

嵐は知らない。
目の前の剣士が、かつて『彼の家族』の親友であった事を。
運命の悪戯で何度と無くその家族の前に立ちはだかっていた事を。

男は知らない。
目の前の戦士が、もはや記憶に無い『かつての親友』の新しい家族だと言う事を。
微かに記憶に残った『宿敵』の家族だと言う事を。


あとがき
皆さん、おはようございます。紅です。
なんとか書き終りましたが、また中途半端に切れてしまいました。
続きは……少し忙しくなってきたのでいつになるかわかりません。
なるべく早く更新しようとは思っていますが、確約は出来ません。

今回は、『嵐、謎の敵(バレバレですかね?)と相対する』という物でしたが如何だったでしょうか?
皆様からのご意見、ご感想をお待ちしてます。

子供先生と仮面の男

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