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 魔法使いと感染者(魔法先生ネギま!+ダブルクロス 2nd):2話 投稿者:天邪鬼・R 投稿日:08/20-09:56 No.1138

麻帆良学園学園長室。
部屋には二人の人影が会った。

「それにしても、良かったんですか? 例の少年をあのクラスに入れて」

一人は男性。名前は高畑・T・タカミチ、この学園の教員の一人である。

「フォッフォッフォッ、まあこれも、ネギ君が立派な魔法使いになる為の試練の一つじゃよ」

もう一人は老人。名前は近衛近右衛門、この学園の学園長である。

「それにじゃ、あのクラスには桜咲君や龍宮君もおる、下手に他にクラスにまわすよりは安全じゃろう」

「それもそうですね」

そう会話する二人の目線は、机の上の一枚の書類に向けられていた。










瞬が麻帆良学園に転入して一日目。
瞬は職員室で、しずなという名の女教師に連れられて、ある部屋の前に来いたのだが、その場所は…


「更衣室」


何故?

そんな疑問で、瞬は軽く混乱していた。

瞬が組織の少年エージェント、チルドレンとして活動しだしてから約二年。
学校への潜入任務は、既に何回も行っている。
何時もなら、転入するクラスへ向かはずだ。
この学校の制服に着がえろ、と言うのならわかるが、あいにく瞬は既に制服に着がえている。
だから間違っても、更衣室に案内されるという事は有りえ無い。

瞬がどうしたものか思案していると、更衣室の中から三人の人間が出てきた。


一人目は十歳位の赤毛の少年。何故か学校の制服ではなく、スーツを着ている。

二人目は不機嫌そうな顔をした、ツインテールの少女。

最後の一人もやはり少女。腰まで伸びた黒い髪の少女。


瞬はその少女から、咄嗟に目を逸らした。
かつて助けられなかった二人の少女。
まるでその一人、「このか」が成長したような姿。
そう思わせるほど、目の前少女は「このか」に似ていた。
それ故、直視していられなかったのである。


「あれ? しずな先生、その人誰なん?」

「彼は転校生の黒堂 瞬君。貴女達の新しいクラスメイトよ」

黒髪の少女の問いに、微笑みながら答えるしずな。

「そうなんか~、うち近衛 木乃香ゆうんや、よろ「なによそれ!!」…アスナ声大きい」

木乃香の台詞を遮り、大声を上げる明日菜。

「ウチは女子校なのよ、なんで男子の転校生が来るのよ!!」


明日菜の台詞は、瞬の頭を一瞬にして大混乱に陥れた。
黒髪の少女の名が、「このか」と同じ近衛 木乃香。
偶然にしては出来すぎている。
あの時、彼女達は生き延びる事が出来ていたのか。
考える事は幾らでもあった。
が、瞬には先に考えなければならない事があった。
先ほどの明日菜の台詞。
彼女はさっき何と言っていたのか。
女子校? そう、彼女は確かに女子校と言った。

霧谷から渡された麻帆良学園の資料から、男子校、女子校に分かれているのは知っていた。
しかし、自分が転入するのは男子校の方のはず。
というよりは、書類は男子校に転入する様に申請したはずだ。
女子校に男子を転入させようと考える、この学園の責任者の気が知れない。

「……どういう事なんですか?」

瞬はやっとの事で、その言葉を搾り出した。
まるで油の切れたブリキ人形の様に、ゆっくりと頭をしずなに向けて尋ねる。

「…ごめんなさい。学園長がお決めになった事だから、私からは…」

そう、申し訳無さそうな顔で答えるしずな。


瞬は別に、任務のついでに学園生活を楽しもう、なんて事を考えていた訳ではない。

特に目立たず、馴染まず、その他大勢に紛れるように。
瞬は今までそうやってきた。

ただそれでも、これから任務の続く間ずっと、自分一人が女子に囲まれて過ごすとなると、ひどく気が滅入る。
それと同時に、潜入任務これ程までに不安を覚えたのも初めてだ。
もちろん、違う意味出だ。

「高畑先生に下着姿見られるし、担任がガキになるし、男子が転校してくるし、ああもうっ! 今日は厄日かっ!」

明日菜の叫びに、瞬は心中で激しく同意した。










五人は揃って教室へ歩を進める。
ただ、一行の纏う雰囲気は、和気藹々といったものではなく、微妙な空気を纏っていた。


まず、先頭を歩くのは明日菜と少年――どうやら担任で、名をネギ=スプリングフィールドというらしい。
二人に何があったのか瞬には判らないが、傍から見ても友好的でないのは見て取れる。
互いにそっぽを向き、一言も喋ろうとしない。
明らかに喧嘩しています、とい雰囲気である。


その後ろを歩くのは、木乃香、瞬、しずなの三人。
木乃香は瞬の顔を、チラチラ伺ってはしきりに首をかしげている。
瞬はそれを、表面上無関心を装いながら、内心何時話しかけられるのかと戦々恐々していた。
ただ、しずな一人が我関せずという感じで、皆と共に歩を進めてる。

「なあ、瞬君」

不意に、木乃香から声を掛けられ、びくりと震える瞬。

「うちらって、以前どっかでおうた事ないか?」


直撃


それは瞬が聞きたくても聞けない、一番重要な事だった。

木乃香は彼女なんじゃないのか?
瞬は、その疑問を肯定する事に、多大な恐怖を感じていた。

「…さ、さあ。気のせいじゃないのか?」

ゆえに、瞬が口にしたのは否定の言葉だった。


もし、木乃香が他人の空似で「このか」に似てるだけだったら。
もし、名前が偶々一緒なだけだったら。
もし、自分の事を他の誰かと勘違いしていたら。


考えすぎなのは瞬も理解している。


だが、一度芽生えた希望が潰える。


それは、七年間ずっと後悔の念を抱いてきた瞬にとって、何よりも恐ろしかった。
理性が肯定しても、感情がそれを否定する。
認めるな。もし違っていたら、その時お前の心は耐えられるのか? と。


「そやかてなぁ、絶対何処かであっとる様な気がするんやけどなぁ」

木乃香は納得がいかないのか、しきりに首をかしげる。



「あんたなんかと一緒に暮らすなんてお断りよ! じゃあ私先行きますから先生!」

突然、明日菜が声を張り上げ、木乃香を連れて駆け足で先に行ってしまった。
木乃香は一度だけ瞬の方を振り返り、そのまま先に行ってしまった。

そこに残されたのは、少々呆然としたネギと、少し安堵した瞬と、しずなの三人だった。










教室の前までやってきた三人。
クラス名簿を渡され、緊張しだすネギ。
木乃香の事をどうしようか、悩む瞬。
ネギを暖かく見守るしずな。
三人の反応は三者三様だった。

しずなに勧められ、教室の中を覗くネギ。
ネギの後ろに立ち、同じ様に中を覗く瞬。

教室の中は、三十人の女子生徒でごった返していた。

肉まんを売っている少女や、パソコンを弄くっている少女。
トラップを仕掛けている少女達や、談笑している少女達。
読書している子など、多種多様だった。

瞬はその教室の中で、懐かしい人物を二人見つけた。

一人は「せつな」、自分が助けられなかったもう一人の少女。
いや、まだそうと決まった訳ではないが、瞬にはそう思えて仕方なかった。

もう一人は……誰か判らなかった。
その人物を視界に納めたその一瞬、無性に懐かしくなったのだ。
ただ、同時に複数の人物が視界に入っていた為、はっきりと誰かは判らなかったのだ。


いそいそと、ネギがクラス名簿を開きだしたので、瞬はネギの頭の上から覗き込んだ。
幸い、クラス名簿は顔写真付だったので、目的の人物をすぐに見つけられた。


桜咲刹那――「せつな」のフルネーム。

そして、京都神鳴流の文字。

ここに至って、瞬は確信した。「このか」と「せつな」生きていたのだと。


もしこれが、顔が似ているのと名前が一緒だけならば、瞬はずっと否定していただろう。
しかし、京都神鳴流の文字が瞬に確信をもたらす。
神鳴流という名の流派など、他に存在しまい。

「神鳴流か懐かしいな。それにしても……まさかまた「せつな」と「このか」に会えるなんてな」
(もう二度と会えない…そう思ってたのに)

瞬の呟きには、懐かしさ、嬉しさ、感動、色々な感情が交じり合っていた。

その呟きに反応して、ネギは瞬の方を見る。

「……誰か知っている人でも居たんですか、…頬緩んでますよ?」

ネギの言葉に、思わず手を当てる瞬。
その表情は、自分でも信じられないという表情だ。
しかし、その表情の中に確かに喜色が見え隠れしている。

「…ああ、「このか」と「せつな」の二人をな。まあ、七・八年前の事だし、「このか」は何となく憶えててくれた
 みたいだけど、「せつな」はどうかな? ま、そういう俺もさっき思い出した所だけどな」

期待の篭った眼差しで、教室の方を見つめる瞬。

そんな瞬に向かって、ネギは眼をキラキラ輝かせながら言った。

「それじゃあ、運命の再会ってやつですね」

そんなネギの言葉に、瞬は苦笑しながら答える。

「まあ、そんな所だな」

実際の所、運命の再開なんていうロマンチックものではない。
向こうにしても、こっちにしても、死んだはずの人間と再会するのだ、下手すると一悶着起こるだろう。
普通に実は生きてました、めでたしめでたしですめば良い。
極端な話、場合によっては偽者、紛い物等として憎悪を持たれるかも知れない。
そこら辺は相手の感性によるもの、完全に賭けである。

瞬にとって、任務と同じくらい重要な事柄ができてしまった瞬間だった。


この時瞬は気がつかなかった。
しずながどんな眼で自分を見ていたのかを。


「さて、そろそろいいかしら?」

しずながネギと瞬の二人を見ながら微笑む。

「あっ!…す、すいません。話し込んじゃって」

「…すいませんでした」

しずなの言葉が何を意味するか悟って、すぐに謝るネギと瞬。

「うぅ…、また緊張してきた」

そう言い、体を強張らせるネギ。
瞬も瞬で、緊張した面持ちになる。

そしてネギが、意を決したように扉をノックする。









教室内は新任の先生への期待でざわついていた。
そこにちょうど扉がノックされた。
来た。誰もがそう思い、期待の眼差しで扉へ視線が集中する。
そして、扉が開かれる。

入ってきたのは一人の少年。
それと同時に、少年の頭上から黒板消しが落ちてくる。

少年はそれに気がつかない。
誰もが当たる、そう思った瞬間、小気味良い打撃音と共に、黒板消しが教卓の方へすっ飛んでいく。
気付けば少年の頭上に拳が突き出されている。

「気をつけたほうが良いぞ、ネギ先生」

少年――ネギの後ろから声がかかる。
どうやらこの人物が、黒板消しを殴り飛ばしたようだ。

ネギは自分の目の前を飛んでいく、黒板消しを見つめながら、

「ああ!…瞬さんどうもすいません」

そう後ろの少年――瞬に礼を言いつつ一歩踏み出す。
もちろん足元の縄に気が付かずに。

「だから、気をつけろって」

縄に躓き転びかけるネギの襟を、咄嗟に掴む瞬。

「ぐえぇぇっ」

当然絞まるネギの首。ついでにあがる、蛙をつぶしたような悲鳴。

そのネギの前で、天井から落ちてきて水溜りを作るバケツ、さらにその先に放たれる三本の矢。
もしあのまま転んでいたら、ネギはその全てを身に受けていただろう。

「こ、これは一体…」

体勢を立て直したネギは、思わぬ歓迎に驚いている。

「ちょっとした餓鬼の悪戯だな。まあ、犬に噛まれたと思って忘れた方が良いだろう」

基本的に学校に通わず、潜入任務の為に転入校を繰り返した瞬は、この手の悪戯には慣れていた。

「はあ、そんなものなんですか?」

何処か憮然としない表情で、教卓まで歩を進めるネギ。
その少し後ろを付いていく瞬、そしてしずな。


教室が一段とざわつく。
入ってきたのが新任教師かと思えば、十歳位の子供。しかも制服ではなく、スーツを着ている。
同じく入ってきた同年代の少年、こちらは男子生徒の制服を着ている。
あちこちで、何で子供が、何で男子が、という囁きが交わされる。

ネギは教卓の前に立つと、しずなの方をうかがう。
それにしずなは、うなずく事で答える。

ネギはゴクリと喉を鳴らし自己紹介を始めた。


一瞬の静寂。


その後、所々で黄色い悲鳴が上がり、ネギが揉みくちゃにされる。

少女達は瞬の事など眼中に無かった。
もちろん瞬も、ネギを取り囲む少女達の事など眼中に無かった。

今、瞬に注意を向けている人物は七人。

しずなに事の真偽を確かめている、めがねをかけた少女。
中央の席最後列、三つ編みをした少女。
この二人は何で男子がここにという、猜疑の視線を送っている。


左端最後列の金髪の外人。まるで西洋人形の様な容姿をした幼女。
右端の後ろから二番目の席。褐色肌で黒髪長身の少女。
この二人は、まるで瞬を値踏みする様な、興味と警戒の混じった視線を送っている。


左端、金髪幼女の手前のロボット。無表情の為なにを考えているのか推測できないが、視線だけは瞬の方を向いてい
るのは判る。


ネギを揉みくちゃにしている輪に加わりながらも、瞬の方をちらちら気にしている木乃香。


そして、何故今自分にそんな感情をぶつけてくるのか、判らずに困惑する瞬。
そう、怒り、憎悪、嫌悪、その他諸々の負の感情を、惜しげもなく瞬に叩きつけてくるのは…





刹那であった。

魔法使いと感染者

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