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第1話 (×BLACK CAT) 投稿者:アヌビス 投稿日:04/15-23:24 No.320

 セフィリア・アークスが雪の降る夜、村一つが悪魔の手によって全滅する事件の唯一の生存者、ネギ・スプリングフィールドを治療の為に最寄りのクロノス支部へと連れ帰ってから、既に5年の時間が経過している。

 当時ネギが負っていた外傷はそれ程大した事はなく、精々が掠り傷程度の物で生命には全く別状はなかった。だが問題は彼の心の方だった。

 あの小さな村だ。恐らくは村人の一人一人が隣同士のように、親しい付き合いだったのだろう。それが石化して全滅し、更に目の前で姉が死亡しているのである。それが彼の幼い心にどれ程深く大きな傷を残したのかは、想像に難くない。

 そうして2年もの間、彼は心を病み、まともな生活が送れない状態となっていた。

 だが現在ではそのトラウマも心の奥底に仕舞い込み、彼は年相応の笑顔を見せる、明るい少年となっている。身寄りの無い彼はセフィリアの提案で、クロノスからの援助によって魔法学校に通い、そして生活していた。

 彼には天性の才能があったようで、2年の遅れを取り戻そうとするかのように勉学に打ち込んだ為、飛び級で魔法学校を首席で卒業する、と、彼がセフィリアへと送った一番新しい手紙には書かれてあった。

 そして今日は彼がその魔法学校を卒業する日。同時にこれからはそれぞれの卒業生によって個別の「修行の地」で、魔法使いとして修行する為に旅立つ日でもある。それ故、彼の手紙に書かれていた「少しの時間で良いから会えませんか?」というその願いを、特別にセフィリアは聞き入れる事にした。







「セフィリアさん!!」

 息を切らせながら走ってくるネギに、待ち合わせのカフェの一席に座っていた彼女は、笑顔で応える。

「お久し振りですねネギ。以前にお会いした時より随分背が伸びたようですが……成長期ですからね」

 優しい笑顔を向ける彼女にネギはちょっと赤くなって、「はい」と元気よく応える。そうして、彼女の両脇に座っている二人の人物へと目を向けた。

 一人は大柄な体躯を持つ中年の男性で、セフィリアが着ているのとは色違いといった感じのモール付きのコートを羽織り、その下はブラックスーツで固めている。服の上からでも、彼の肉体は戦士として鍛え上げられている事は一目瞭然であった。そしてその右手の甲には「Ⅱ」の時の刺青が彫られている。

 もう一人は齢60に手が届こうかという小柄な老人で、逆立った頭髪と整えられ、胸の部分まで伸びる口髭が特徴的だ。一見して好々爺という感じではあるが、だがその眼光は鋭く、立ち振る舞いにも隙が無い。それが彼がただの老人ではない事を、何よりも雄弁に語っていた。

「ベルゼーさんに、メイソンさんまで!! 僕の為に来てくれたんですか!?」

 滅多に会えない二人に会えた事で、興奮気味に尋ねるネギ。セフィリアはそんなネギに、「まずは座ってはどうですか?」と優しく言う。そう言われるとネギは先程とは違って恥ずかしそうに顔を赤らめると、ちょうど彼から見て正面にセフィリア、右にメイソン、左にベルゼーとなるように席に着いた。やって来たウエイトレスに、クリームソーダを注文する。

「まあ……今日は特別な日だからな。これといった任務も入っていなかったし、今後の君の動向を把握するのも私の仕事だ」

「そう言う事じゃよ。フォッフォッフォッ」

 と、ネギの質問に答える両者。そうした所でセフィリアがネギに尋ねる。

「それで……ネギ、卒業後は各地へと修行に出る事となると聞いていますが……あなたはどこへ旅立つ予定なのですか?」

「ええ……それが……」

 言い辛そうにしながら、卒業証書を持っていた鞄から取り出し、セフィリアへと渡すネギ。セフィリアはそれを受け取ると、さっと目を通す。そこに書かれていたのはネギの卒業をここに証明する、と普通の学校の卒業証書と何ら変わらない文章と、そして彼の修行地が、これだけは光を放つ不思議な文字で浮かび上がっていた。それを読み上げるセフィリア。

「A TEACHER IN JAPAN…………日本で教師となる事……何かの間違いではないのですか?」

 セフィリアはその突飛な内容に、半信半疑という表情を見せる。それも当然だろう。どうして10才の子供が教師などやれるだろうか。彼女の疑問も尤もである。だがネギは、既にそういう質問は魔法学校の校長にしていたらしい。「いいえ間違いありません」と、ちょっと諦めも入った表情で口にする。思わず溜息を吐いてしまうセフィリア。魔法使いという存在に常識は通用しないとは分かっていたが、まさかこれ程とは。

 だがネギはにっこりと笑うと、言う。

「大丈夫です、僕、頑張りますから!! この5年間、クロノス、そしてセフィリアさん達には、とても良くして貰いました。だから僕は……僕は父さんのような立派な魔法使いになって、必ず恩返しさせて貰いますから!!」

「……そうですか……期待していますよ。頑張って下さいね、ネギ」

「ハイ!!」

 ネギはそう答えると、「旅立ちの準備があるから」と、3人に対して何度も別れの言葉を告げると、子供とはとても思えない速さで走り去っていってしまった。そんな彼の後ろ姿を優しい瞳で見ながら、セフィリアは呟く。

「……酷い人間ですね、私は。あんな少年の純粋な想いすら、組織の為に利用して……」

 自嘲気味に発せられたその言葉に、ベルゼーとメイソン、彼女の右腕と左腕たる二人は言った。

「……全てはクロノス、そして世の安定の為だ。20年前、我々が道士(タオシー)、そして数ある魔法体系の一派、”道(タオ)”を滅ぼしたあの戦争以来、魔法協会とクロノスとの関係はほぼ断絶状態にある。そこに5年前、任務からの帰還途中にあなたが彼と出会ったのは……組織にとっては幸運だった。再び魔法の力を、クロノスの物とするチャンスが生まれた訳だからな」

「その為にも、今彼を失う訳には行かんな……ワシも彼を見ておるが、彼には魔法だけではなく、天性の”武”の才能がある。然るべき師の元に置いて鍛錬すれば、ゆくゆくは、特例……13人目のナンバーズと成るかも知れん……」

 セフィリアを含め、彼等3人は世界経済の3分の1を牛耳る秘密結社”クロノス”に於いても特別な存在、時の番人(クロノナンバーズ)と呼ばれる世界最強の抹殺者(イレイザー)集団の、そのメンバーである。彼等はそれぞれ体のどこかに、「Ⅰ」から「ⅩⅡ」までの「時の刺青」を持ち、それがそのまま彼等のナンバーズでのコードナンバーとなる。

 その中でセフィリアは№Ⅰにして時の番人の隊長、ベルゼーは№Ⅱで彼女を補佐する副隊長、メイソンはナンバーズの「ⅩⅡ」、そしてクロノス全体に於いても随一の古株であり、ベルゼーの言葉に出て来た「戦争」を経験した生き証人でもあるナンバーズの重鎮である。そんな彼等が一堂に会する程にネギ、そして魔法の力へと寄せる期待は大きいのだ。

「……如何に魔法の力があるとは言え、彼はまだ子供です。万一の事も考えて、誰か信用の置ける者に護衛について貰いたいですね……」

 と、セフィリア。数瞬の間を置き、その言葉に返事が返ってきた。だがそれはベルゼーでもメイソンの物でもなく、

「その役目、僕に任せて貰えませんか?」

 声のした方に3人が振り向くと、先程のウエイトレスがクリームソーダを持って、彼女達の席に来ていた。おかしな事にその声は、多少高くもあるが明らかに男性の物。だが3人の誰もそれに驚いた様子も無く、セフィリアはしばらく顎に手をやって考えた後、言った。

「分かりました№Ⅹ、あなたに彼の護衛と、定期的に近況を報告する任務を命じます。あなたはまだナンバーズを拝命して日が浅い。これも良い経験となるでしょう」

 そうセフィリアが言うと同時にそのウエイトレスの姿は虹色の光彩を持つ半透明の布に包まれ、そして次の瞬間にはその容貌はおろか、着衣までもが別の物へと変わる。黒髪を無造作に束ねた、美少年のそれへと。彼の身に付けるチャイナ系の服は胸の部分に小さな切れ込みがあり、そこから「Ⅹ」の刺青が覗いている。

「謹んでお受けいたします、№Ⅰ」

 その少年、№Ⅹはセフィリアへと、恭しく一礼する。と、彼等の座る席からメイソンが立ち上がった。

「それではワシも行くとするかの」

「メイソン……あなたが?」

 その意見に当惑した様子のセフィリアに、にやりと笑って、メイソンは答える。

「構わんじゃろ? 現在は各国の情勢も安定しておるし、それに若い者を導くのは年寄りの役目じゃからな。フォッフォッフォッ」

 カラカラと笑う彼に、セフィリアは止める事をしなかった。確かに現在は彼の言う通り調和を乱す危険因子として見なされる者もその数を減らしており、ナンバーズとしての任務もそれ程多くはなくなってきている。「Ⅹ」と「ⅩⅡ」が特別任務に就いたところで、残る9人と1匹のナンバーズで十分にその役目を全う出来るだろう。

「分かりました。ではあなた方二人に、この任務をお願いします」

「了解した、隊長殿」

 そう、こちらはちょっととぼけた風に言うメイソン。そうして、傍らに立つ№Ⅹに言う。

「では行くとするかの」

 その言葉に少年は頷き、そしてカフェから立ち去ろうとする。と、メイソンの方は足を止めて、セフィリアとベルゼーに言った。

「そうそう、ネギがいなくなったとあらば、”お姫様”が騒ぎ出すかも知れん。その相手はよろしく頼むぞ」

 それを受けて無表情のベルゼーと、苦笑してしまうセフィリア。

 こうしてネギの後を追い、「Ⅹ」と「ⅩⅡ」、二人の時の番人もまた、日本へと向かう事となった。

ネギま! 時を司りし者達 / 

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