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2ページ目『就職と住居』 投稿者:アラン 投稿日:08/15-15:30 No.1111



「ここです」

「ここかぁ。どんな人なんだろ」

「初めて見る人は驚くかもしれないね」

「???」


2ページ目『就職と住居』


刹那と真名が最初に部屋に入り、十分ぐらい経ってからヒビキも入った。見ると中央の机に腕を組んで座っている老人が居た。普通の老人に見えるが、後頭部が異様に長い。ヒビキは長寿族の進化形態かと思ったが、口には出さなかった。挨拶を交わすと学園長が言った。

「フォフォフォ、まずは礼を言おう。ワシの大切な生徒達を助けてくれて感謝するぞい」

「いえ、そんなたいした事では」

「事情は刹那君と真名君から聞いた。あの世界樹の前に倒れていたんじゃろう?」

「はい。気が付いたらあの巨大な木の前に居たんです」

「うむ、スマンがもう一度ワシ等に話してはくれんか?君が言う住んでいた国についてな」

「別に構いませんが、大体で良いですか?」

「かまわんよ。ん?」

学園長がヒビキと話していると妙な力を感じた。それはヒビキが腰に提げている中くらいの袋からだった。

「ヒビキ君、その腰に提げている袋には何が入っているのかね?」

「これですか?これには仙玉が入ってます」

「ほぅ、仙玉とな」

「そういえば大蜘蛛と戦う時にヒビキさんの剣が炎に包まれていたが、あれもこれの力なのかい?」

「そのとおり。仙玉は精霊の力が結晶化した物でね、色々な効果を発揮するんだ。主に武器や道具に組み込んだりすると各々の精霊の力が発揮されるんだよ」

「凄い物なんですね」

ヒビキは学園長の机に袋から出して仙玉を並べた。それを手に取り、まじまじと学園長は見つめる。仙玉の中には強力な力を感じる物も多々あった。

「これの他には精霊の力を借りて攻撃する神術がありますけど」

「何と!精霊の力をヒビキ君は借りれるのか?」

「簡単な術だけですけどね」

精霊の力を借りると言う事は並大抵の人間には無理。相当の修行を積まなければ出来ない芸当だ。もしかしたら相当の実力者なのかもしれないと学園長は思った(この事については刹那と真名も同様だが)。

「話がだいぶ逸れてしまってスマンのぅ」

「いいえ、気にしていません。それじゃ話を戻して、僕の住んでいた国について話します」





「なかなか興味深い話じゃった。ヒビキ君の話からすると……君はもしかしたらこの世界の人間じゃないのかもしれんな」

「「!?」」

「えっ!それってどういう事なんですか?」

学園長が突然言い出した事に驚きを隠せないヒビキ、刹那、真名。ヒビキに至っては少し混乱気味だ。

「自動人形なる物や仙玉と言う物は今まで見た事も聞いた事もない。大和と言う名は知ってはいるが、ワシ等の知っている大和とは異なっているようじゃからな」

確かにとヒビキは思った。大和で生活する場合には欠かせない航空船も飛んでいないし、自動人形もいない。仙玉に至っても聞いた事がないと言うのだから決定的だろう。

「信じたくないですけど、学園長さんの言う話が正しそうですね……ハァ」

暗い面持ちでヒビキは溜め息をついた。その様子を見た学園長、刹那、真名は複雑な心境だった。急に自分の居た世界とは異なる異世界へと飛ばされたのだ、戸惑うのもしょうがない。

「これからどうするのじゃ?」

「そうですね……ここの事は何も解らないし、まずは慣れないと」

「私に出来る事があれば協力させてください」

「私も協力するよ。助けてもらったお礼としてね」

「ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ」

「ならワシも手助けをしようかの」

学園長は机から紙を取り出すとヒビキの前に出した。

「これは?」

「君にやる気があるのならここの警備員をしてみてはどうかな?この申し出を引き受けてくれれば君の住居も用意するし、給料も出す。どうじゃ?」

「う~ん……」

正直ヒビキにとってこれだけ豪華な勤め先はなかった。しかし、この世界の人達が自分を受け入れてくれるかどうかの不安も無い訳では無いが、今は住居の確保等が最優先だった。気ままな旅を続けようにも異世界なのだから知っている場所も何も無い。

「解りました。警備員の仕事をお引き受けします」

「そうかそうか。じゃあこの契約書にサインを……」

ヒビキはペンを受け取り、契約書に名前を書いた。それを学園長に渡すと学園長は満足げな顔をした。

「うむ、確かに受け取った。麻帆良学園へようこそ、ヒビキ君」

「歓迎します。ヒビキさん」

「同じ警備員としてね」

「ありがとう。それにしても、刹那ちゃんと真名ちゃんも警備員だったのか。驚いたな」

「学園長先生に頼まれているので」

「私は依頼料を貰ってやっているけどね」

まだ自分よりも若いであろう少女達が警備員をやっている事に驚いたヒビキだが、大蜘蛛との戦闘の際はかなりの戦闘能力を発揮していたのでこの年齢で警備員が出来るほど能力が凄いのだろう。

「悪いが刹那君に真名君、ヒビキ君を住居に案内してやってくれんかね?場所は君達の住んでいる女子寮のすぐ近くじゃ。そこに空き家があるんでの」

「解りました。行きましょうヒビキさん」

「うん。失礼します、色々とありがとうございました」

「フォフォフォ。しっかり励むんじゃぞ」


続く

ヒビキの麻帆良生活記!

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