第4話



夜の桜通りを見回る機龍。

スーツ姿ではなく、私服と思われるGパンに白いTシャツの上に黒いロングコートを腕捲りに羽織り、手にはライダーグローブをはめて、インカム付きバイザーをかけている。

「異常なし……今夜は出ないか?」

今朝、まき絵が何者かに襲撃された事件をうけ、機龍は夜の見回りに出ていた。

今朝の事件と例の噂を聞き、機龍は真っ先にエヴァを思い浮かべた。

超の情報によれば、彼女はそれぐらいのことはしそうだった。

と、機龍がふと空を見上げると……

「!! アレは!?」

ネギとエヴァが戦いを繰り広げている光景が映った。

普通なら認識阻害魔法で見えないはずだが、超とハカセ作の特殊バイザーのおかげでよく見えた。

「やはり、吸血鬼の正体は奴か!」

気を開放するとすさまじいスピードで走り出す。

……なぜか、8○ン走りで。

超から魔法や気の存在を聞いた後、試してみたらできたのである。

元々、幼いころから自家の流派を学んでいた機龍には気を使うことは方法さえ解れば容易いことだった。


やがて、二人は高い建物の上に降り立つ。

機龍もそれを確認すると、急いで建物に入り、階段を駆け上がる。

上まで登り詰めると、窓から屋根に出て、物陰から様子を窺う。

ネギは、エヴァとサウザンドマスター……自分の父との関係を問いただそうとしたが、突如現れたエヴァの従者……茶々丸によって逆に危機に陥ってしまう。

「……悪いが死ぬまで吸わせてもらう……」

ネギから吸血しようとするエヴァ。

「うわあ〜〜ん! 誰か助けて!!」

「(これはイカン!)動くな!!」

コートの内側からショットガンを取り出し、両手で構えながら、三人の前に躍り出る機龍。

「!! 何?」

[あなたは!]

「機龍さん!!」

「ネギ先生を解放しろ」

ショットガンを油断なく構えて言う。

「フ…フフフ…人間風情が、何をほざくか!!」

機龍へと襲い掛かるエヴァ。

が、機龍はすばやくショットガンに気を込めるイメージをし、発射した。

「はぶぅっ!!」

至近距離で撃たれたため、ほぼ全弾が命中した。

(ば、馬鹿な! 障壁がきかないだと!!)

倒れるエヴァ。

だが、機龍は容赦なくエヴァに向かってショットガンを高速リロードしながら撃ち続ける。

「へぶぅっ!! あぷろぱぁっ!! めちょっ!!」

やがて、ぴくぴくと痙攣しながら動かなくなった。

[マスター!!]

「動くな! 一応、スタン弾(ゴム弾)だが、命中すればそれなりにダメージはあるぞ」

ショットガンを茶々丸に向けながら言い放つ。

「もう一度だけ言う。ネギ先生を解放しろ」

沈黙が場を支配する。

「くうっ!!」

やっとこさダメージから復活するエヴァ。

[マスター。大丈夫ですか]

「……一度退くぞ、茶々丸」

[ハイ]

ネギを開放すると、エヴァを連れて飛び去る茶々丸。

「行ったか……ネギ先生、大丈夫ですか?」

ネギに駆け寄り、目線を合わせる。

「うっ……ひっく……」

「先生?」

ネギは機龍にしがみついた。

「うわーん! 機龍さーん! こっこわ…こわ、こわかったですーーー!」

泣き出すネギ。

(無理もない……魔法使いで先生と言えど、まだ子供だ)

機龍は無言で左手をネギの背に回し、右手で頭を優しく撫でる。

「心配ありません。もう大丈夫ですよ」

「うわーん!!」

ネギはしばらく泣き続けた。


「すみません。送ってもらっちゃって」

「気にしないでいい。仕事だからな」

その後、アスナが来た頃にはネギは泣き疲れて眠ってしまった。

仕方なく、機龍がおぶって運んでいる。

「あの……あなたも魔法とかの関係者なんですか?」

不意にアスナが聞いた。

「君もかい?」

機龍は聞き返す。

「私の場合は偶然知っちゃって、そのままズリズリと、っていう感じで。」

「そうか……神楽坂くん。もし、また、ネギ先生に何かあったら、私を頼るよう言ってくれ」

「えっ!?」

「おそらくマクダウェルは何か大きなことを起こそうとしている。そのためにネギ先生を何らかの形で利用するだろう」

「そんな……」

「その時のために味方は多いほうがいい。それに……」

背のネギに目を向ける。

機龍の背がよほど安心できるのか、健やかに寝息をたてている。

「これぐらいの子には頼れる存在が必要だ」

手のかかる弟に言うように言う機龍。

「まったく、なんか本当にネギのお兄さんみたいね」

「俺が? よせやい」

照れ隠しのように言った。


ネギとアスナを寮の部屋まで送ると、機龍は急ぎ秘密施設へと向かった。

路地裏にある電話ボックスに入ると、受話器を外さず、ボタンを押す。

すると、ボックスの床がエレベーターのように下がり、機龍の姿が消える。

やがて、ある程度下がると、エレベーターは停まり、前に扉が現れる。

扉が開くと、そこはもう秘密施設だった。

奥の壁のガラスの向こうではJフェニックスが修理されている。

その手前で、超とハカセがコンパネを操作している。

「超、ハカセ」

機龍に気づく二人。

「あ、機龍さん」

「ウム、どしたネ?」

「フェニックスは?」

二人に近づきながら聞く。

「そうですね。後、一週間ほどもあれば」

「その後、テストも必要ネ」

「一週間か……」

それだけあれば、エヴァは何らかの行動を起こすだろう。

「どうしました?」

「いや、何でもない。なるべく急いでくれ」

「分かったヨ」


蘇れ不死鳥! 炎の中より!!


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