第9話



停電から一夜明け、機龍は秘密施設に戻っていた。

破壊したヌエの残骸は、学園警備関係者によってここに運ばれていた。

「それで………何か分かったか?」

残骸を分析している超とハカセに聞く機龍。

「うむ、結論からいうと………このロボット、ヌエは無人だったネ」

「では、AIで動いていたのか?」

「いえ、確かに演算回路は積まれていますが、あくまで補助機能としてです。機龍さんのジェイスのように独立して機体を動かせるほどではありません」

「なら、一体どうやって?」

「これネ」

超が取り出したのは半分ほど燃えていたが、人型に切られ、なにやら文字の書かれた紙だった。

「これは?」

「式神ネ」

「式神?」

「陰陽道に使われる道具ネ。紙に魂を入れて擬人化させ、命令どうりに動かすことができるネ」

「なるほど………しかし、いくらPFの操縦が簡単だからといって、そんな操り人形みたいのにできるのか?」

「そこはまだ解析中ネ。時間がかかるヨ」

「肝心ところはわからずじまいか………ふ〜〜」

ため息をつく機龍。

「な〜に、今回のことでヴァリムになんらかの味方がいることがわかったヨ。そこからあらってみるネ」

「頼むぞ………さて、そろそろ行くか」

「お出かけですか?」

「学園長のところにな。昨日のことと俺のことを説明せねばなるまい」

「ま、当然ネ」

「フェニックスの整備と残骸の解析、頼んだぞ。それからハカセ」

「はい?」

「さっきの台詞には箒とレが4つ必要だ」

「??」


学園長室まで来た機龍は戸をノックする。

「機龍です」

「入りたまえ」

「失礼します」

機龍が部屋に入ると、学園長のほかにネギ(+カモ)とアスナ、そしてエヴァに茶々丸がいた。

学園長に向かい敬礼する。

「神薙機龍、ただいま参りました」

「うむ、では説明してもらおうかの。昨日のこと、そして、君のことを………」

「了解しました。順を追って説明します」


「なんと………すると君はその惑星Jから来たのか?」

「はい。本来ならば小隊として来るはずでしたが、不慮の事故により自分一人が来てしまいました。」

機龍の正体に驚きを隠せない一同。

「じゃ、じゃあ、昨日のあのロボットは………?」

「ああ、ヴァリム軍だ」

「しかし、なぜこの学園都市を狙ったんだ? 侵略偵察が目的ならもっと他に調べる場所があるだろう?」

エヴァが疑問を浮かべる。

「それについては、検討がつく」

「何?」

「おそらくヴァリムは何らかの形で魔法、呪術の存在を知ったようだ」

「なんだと!?」

「撃破したヌエのコックピットに式神の痕跡があった」

「式神が!?」

驚く学園長。

「ヴァリムにそういった関係の協力者がいることは確かだ」

「なるほど、魔法の力を使えば、表の連中を支配するなんて容易いってか」

「そして、ここ、麻帆良にはそういった力が集まっている………」

「た、大変じゃない! すぐにそのヴァリムって連中をなんとかしないと!!」

[しかし、この地球の兵器では歯が起たないと思われます]

「確かに………」

考え込むネギ。

PFの性能は昨日の機龍の戦いで知っている。

地球の戦車や戦闘機といったものではまず勝ち目はない。

「つまり、今のところヴァリムに対抗できるのは君だけだということか」

「そうなりますね」

「それで、お主はこれからどうするんじゃ?」

機龍に問いかける学園長。

「自分の任務はヴァリムの野望を阻止することです。勝手な願いでありますが、ご協力を願いたい………」

深々と頭を下げる機龍。

「「「「…………」」」」

沈黙が続く。

「ふう………わかったから頭をあげんか」

不意に学園長が言った。

「! では!」

「ヴァリムとやらを放っておいたら何をしでかすかわからん。関東魔法協会理事長として全面協力しよう。」

「ありがとうございます!!」

再び深々と頭を下げる機龍。

「ふぉふぉふぉ、そのかわり、お主もこの都市を守ってくれ」

「は、神薙機龍、粉骨砕身の覚悟で頑張ります!! それから………」

「わかっておる。この件はしばらく公表しないでおこう。昨日の件についても情報操作を行なう。無用な混乱は避けるべきじゃからの」

「よろしくお願いします」

「では、話はここまでにしよう。ホームルームの用意をしておくれ」


昼休み。

機龍たちは喫茶店で話し合っていた。

「よかったですね、協力してもらえて」

「ああ………」

しかし、機龍は浮かない顔だ。

「どうしたんですか? あまりうれしそうじゃないようですけど………」

「軍人が民間人に力を借りるなんて情けない話さ。そもそも、これはアルサレアとヴァリムの問題だ。無関係な人たちを巻き込むわけには………」

「何言ってるんですか」

ネギが機龍の言葉を遮り言った。

「ヴァリムが麻帆良に攻めて来る以上、これはもう僕たちの問題でもあります!」

「ネギ先生………」

「機龍さん、いっしょに頑張りましょう!」

右手を差し出すネギ。

「ありがとう」

それを握り返す機龍。

「ふん、青臭いことしおって………」

「なに年寄りみたいなこと言ってるの」

エヴァの皮肉につっこむアスナ。

「なっ!! 貴様、人が気にしていることを!!」

「なによ! やる気!!」

今にも取っ組み合いを始めそうになる。

「ア、アスナさん、落ち着いて………」

[マスター、大人気ないですよ]

止めに入るネギと茶々丸。

「「黙ってて(ろ)」」

しかし、一蹴される。

睨み合いを続ける二人。

と、

「ハハハ、仲がいいんだな二人とも」

「「どこが!!」」

「おお、見事にハモってるじゃないか」

「「あ………」」

「ほら、また」

途端に怒気が去っていく二人。

「あーもー、なんか気が失せたわ」

「まったくだ」

「ハハハッハ」

やや大げさに笑う機龍。

しかし、その思考は深く渦巻いていた。

(………ヴァリムめ、何を企んでいる………)


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