第19話
「朝か……結局、襲撃はあれっきりか」 一日目を完徹した機龍。 その後の襲撃はなく、ネギたちを休ませ、自分一人で警戒をしていた。 「今日は班別行動か………」 今日の予定を思い出しつつ、機龍は食堂へと向かった。 食事を終え、ロビーにてネギと今後のことを検討していると生徒たちがやって来た。 「あのー………」 「ネギくん! 今日、ウチの班と見学しよー!!」 と言ってネギに抱きつくまき絵。 「ちょっ、まき絵さん! ネギ先生はウチの3班と見学を!」 「あのー………」 「あ、何よーー! 私が先に誘ったのにーーーっ!!」 「ずるーーーい! だったら、僕の班もーーーー!!」 ネギを巡って、争奪戦が展開する。 「あうう………」 生徒たちのスゴイ権幕に押され、オドオドするしかないネギ。 「うわぁ………スゴイことになってるな」 機龍もどうしていいか分からず、見ているだけだった。 「あ………あの、ネギ先生!!」 と、ここで、のどかが叫んだ。 「よ、よろしければ、今日の自由行動………私達と一緒に回りませんかーーー!?」 「え………み、宮崎さん………」 (ほう、やっぱりこの子は大物かもしれん………) のどかの勇気に感銘を覚える機龍。 結局、ネギはこのかの護衛もあり、のどかのいる5班に同行することにした。 もちろん、機龍も一緒だ(真名が残念そうにしていた)。 奈良公園に来た一同は、鹿に囲まれていた。 どういう理由か、取り分け機龍に集まっている。 「た、助けてくれ〜〜〜!」 鹿に押し潰されそうになりながら叫ぶ機龍。 「あわわ!! 機龍さん」 「何やってんだか………」 何とか鹿の大群から抜け出した機龍は、刹那とアスナ(+カモ)と共に、公園近くの茶屋で休憩していた。 「ふ〜〜、あんなに危機を感じたのは、初めて戦場に出た時以来だ」 「そんなレベルの危機だったの?」 呆れながら聞くアスナ。 「あの………戦場って?」 刹那が怪訝に思って聞く。 「ああ、いや、こっちの話さ。それより、近衛くんから離れてていいのか?」 「はい、式神に任せてあるので大丈夫です」 「そうか………」 そう言って茶を啜る機龍。 「桜咲さん。どうせなら傍にいて守ってやりなさいよ」 「い、いえ、それはできません」 アスナのもっともな考えを否定する刹那。 「どうしてよ?」 「それは………その………私と親しくなってしまったら魔法のことがバレてしまうかもしれませんし………それに、身分が………」 「はて? 俺が知っている限りじゃ、この国に身分制度はあったが、ずっと昔に廃止されたはずだが?」 「い、いえ、そうじゃなくて………」 「魔法のことはともかく、後半のは理由にならんぞ」 刹那の言い訳をズバッと斬り捨てる機龍。 「うう………」 言葉に詰まる刹那。 「君が近衛くんに負い目を感じているのは知っている。しかし、君は護衛であると同時に彼女の幼馴染だ。身体だけでなく、心も守ってやれ」 深く静かに言う機龍。 刹那は黙って聞いているだけだった。 と、そこへ、一人の少女がやって来た。 「あ………明日菜さん、桜咲………さん? 機龍先生」 やって来たのはのどかだった。 「………君は、宮崎さん?」 「ど、どうしたの、本屋ちゃん?」 「何かあったのか?」 目に涙を浮かべているのどかに驚く一同。 「マジでっ!? えーーーーっ、ネッ、ネギに告ったのーーーーッ!?」 (この地球の若い子って随分と積極的なんだな………) のどかの報告に驚くアスナと変な感心をする機龍。 「は、はいー、いえ、しようとしたんですけど、私、トロいので失敗してしまって………」 「ほ、本気だったんだー」 「あ………すいません。桜咲さんや機龍先生とは、あまり話したことないのにこんな話をしちゃって………」 「いえ………」 「気にするな。生徒の相談に乗るのは教師の仕事だ」 そう言いながら、機龍は再び茶を啜る。 「でも、ネギ先生はどう見ても子供では………」 「そんなことはないぞ。歳の割にはしっかりしてるし、責任感も強い。鍛えれば良い軍人になれる」 「軍人って………」 機龍のフォローに呆れるアスナ。 「そうなんです」 「「えっ!?」」 一瞬、刹那とアスナは軍服を着たネギの姿を思い浮かべ、慌てて頭を振る。 「ネギ先生は………普段はみんなが言うように子供っぽくてカワイイんですけど………時々私達より年上なんじゃないかなーって思うくらい、頼りがいのある大人びた顔をするんですー」 顔を赤らめながら語るのどか。 「それは多分、ネギ先生が私達にはない目標を持ってて………それを目指して、いつも前を見ているからだと思います」 (目標か………多分、父親だな………) 超から聞いた話と特訓中にネギが洩らした言葉から推測する機龍。 ネギにとって父親の存在はそれほど大きかった。 「本当は遠くから眺めているだけで満足なんです。それだけで、私、勇気をもらえるから………」 「そうかい? 俺にはそうは思えないな」 「えっ?」 機龍の言葉に驚くのどか。 「人は、『何かをした』という後悔より、『何もしなかった』という後悔の方が後に残るらしい。だったら、俺は何かした方の後悔をした方が良いと思う」 「何かした方の後悔………」 機龍の言葉を呟くのどか。 それを聞いて、機龍はニッと笑った。 「宮崎くん、愛ってなんだい?」 「ふえっ! あ、愛?」 「ためらわないことさ!」 驚いていたのどかだが、やがて何かを決意したかのように立ち上がった。 「ありがとうございます、機龍先生。明日菜さんも桜咲さんもありがとうございました」 「あ、ちょっと、本屋ちゃん!」 「機龍さん………さっきの誰の言葉ですか?」 刹那が機龍に聞く。 「一つは忘れたが、もう一つは、宇宙刑事ギャ○ンの歌の歌詞さ」 「って、特撮ヒーローの歌ですか!?」 「いやー、でも、良い言葉だったっスよ、ダンナ! 俺っち、感動しやした!!」 「そうかい?」 「でも、ちょっと、ネギはまだ10歳よ! 告白なんて早すぎるんじゃ!!」 「あっ!!」 思い出したように機龍が言った。 「そうだった………忘れてた(汗)」 「「先生ーーーー!!」」 時すでに遅し。 駆けつけた一同が見たものは、知恵熱を出してぶっ倒れているネギの姿だった。 「ネギーーーーー!!」 「ネギ先生、しっかり!!」 「マズイ!! ヒドイ熱だ!!」 「兄貴!! 傷は浅いでっせ!!」 果たして、どうなることやら? NEXT |