第21話



「ええ〜〜〜〜っ!? ま、魔法がバレた〜〜〜!? しかも、あああの朝倉に〜〜〜っ!?」

「は、はい、ぐし………」

涙雑じりに言うネギ。

あの後、機龍はアスナと刹那に連絡し対策会議を開いていた。

「何で!? ど〜〜〜してよりによってあのパパラッチ娘に〜〜〜〜!?」

「し、仕方なかったんです………人助けとか、猫助けとか………」

「過ぎたことをどうこう言っても仕方あるまい。問題はこれからどうするかだ」

会話を遮り、機龍は言った。

「確かにマズイですね」

「う〜〜〜ん、朝倉にバレるってことは世界にバレるってことだよ〜〜〜」

「あうう〜………」

情けない声を出すネギ。

と、

「………消すか」

機龍の発言に全員が、ばっと注目した。

「冗談だ。そんなことをしたら、余計に騒ぎが大きくなる」

(((………ホッ)))

それを聞いて心から安堵する三人。

「残された道は1つ。彼女をこちら側に引き込むしかないな」

「「ええ!!」」

「朝倉さんを!?」

「彼女の性格からして、おそらくもっと詳しくことを追求するだろう。それならいっそ、こちらの事情を説明し、口止めするのが妥当だ」

機龍の対応の順応性に感心する三人。

と、そこへ、問題の本人がカモと共にやって来た。

「おーーい、ネギ先生ーーー」

「ここにいたか、兄貴ーーーー♪」

「うわっ! あ、朝倉さん!」

「朝倉!」

「ちょうど良かった、君に話がある………」

「うんうん、分かってるって」

「安心してくだせぇ、兄貴、ダンナ。このブンヤの姉さんは俺らの味方なんだぜ」

機龍の言葉を遮り、和美とカモが言った。

「え………? 味方?」

「どういうことだ?」

「報道部突撃班、朝倉和美。カモっちの熱意にほだされて……ネギ先生の秘密を守るエージェントとして協力していくことにしたよ。よろしくね」

あっけらかんに言う和美。

「え………え〜〜!?本当ですか!?」

しかし、ネギにとってはとてもありがたい知らせだった。

「今まで集めた証拠写真も返してあげる」

そう言って魔法関連のことが写された写真をネギに渡す。

「よ、よかった………問題が一つ減ったです………」

「よしよしネギ、よかったね」

心から安堵するネギ。

しかし、機龍は疑問を感じていた。

(どういう心境の変化だ?………それに説得したのがカモというのも気になるな………)

思案を回らせる機龍。

(今夜あたり、警戒が必要だな………)

その予感はある意味、最悪の形で的中してしまった。


修学旅行二日目の夜。

血気盛んな中学生が旅行に出て、簡単に寝入るはずもなく大騒ぎする3−A。

「全員、廊下に出ろ!!」

と、そこへ、機龍の怒声が聞こえ、慌てて廊下に出るとビシッと整列する3−A。

機龍はその列の前を行ったり来たりしながら言う。

「気持ちの高ぶりは分かる。しかし、それが騒いで良い理由にはならん!」

「でも、先生………」

「発言を許可した覚えはないぞ! 明石!!」

「ヒッ!!」

異議を唱えた裕奈を一喝で黙らせる。

「我々は団体として行動している。このホテルにいるのはお前たちだけではない! 今度周辺に迷惑が掛かる行為をした場合………」

列の前の中央に立つと3−A側に向き直り言った。

「学園に帰還した後、1週間の特別補習指導の罰則を与える!!」

「「「「ええ〜〜〜〜〜!!」」」」

途端に不満の声が上がる。

「異議のある者は前に出ろ!!」

しかし、機龍の迫力に負け、何も言えなくなった。

「では、解散!!」

そう言って機龍は部屋へと戻って行った。

「こ、恐かった〜〜」

「機龍先生って、妙に規律とかに堅いよね」

「元自衛官だし、しょうがないんじゃない?」

仕方なく部屋へと戻ろうとする3−A一同。

と、そこに悪魔が囁いた。

「くっくっく………怒られちやんの………♪」

そう言って現れたのは和美だった。

「あ、朝倉さん!! ムキ〜〜〜〜っ、今まで、どこにいらしてたんですか!?」

「大変だったんだよ〜!!」

「まあまあ、落ち着いてみんな」

そう言って和美は悪魔のプロジェクトを語りだした。

「このまま夜が終わるのはもったいないじゃない? 一丁、3―Aで派手にゲームをして遊ばない?」

「「「「ええ〜〜〜〜〜!!」」」」

戸惑う3−A。

ゲームはしたい。

だが、今度見つかれば機龍に、1週間どころか1ヶ月の指導を喰らうかもしれない。

しかし、その葛藤は和美の次の台詞でぶっ飛んだ。

「名づけて、『くちびる争奪!! 修学旅行でネギ先生と機龍先生にラブラブキッス大作戦〜〜!!』」

途端に闘志を燃やす3−A。

一番乗り気なのは委員長あやか(言うまでもなく、狙いはネギ)。

そして………

(機龍先生とキス………………ポッ)

秘かに顔を赤くする真名。

「よし! じゃあ各班十時半までに報告、十一時からゲーム開始だーー!!!」

「「おーーーーーっ!!!!!」」

こうして、悪魔のプロジェクトは開始された。

無論、このゲームの裏の目的が仮契約カードであることは言うまでもない。


ネギの宿泊室に集まっている機龍、アスナ、刹那。

「うう………!!」

「どうしたの、ネギ?」

「いや、なんか、急に寒気が………」

「何か妙な気配が渦巻いているな………」

原因不明の寒気を感じるネギと不穏な気配を察知する機龍。

「とりあえず、旅館内の見回りは俺がやる」

「じゃあ、外は僕が見回ります」

「でも、こんな深夜にネギがいなくなると他の先生が騒がない?」

疑問を指摘するアスナ。

「そうだ、ネギ先生、これを渡しておきます「身代わりの紙型」です」

「身代わりの紙型?」

と言って紙型を渡す刹那。

「ん?」

そこで何かに気づく機龍。

「機龍さん?」

「どうかしましたか?」

「シッ!! 静かに………」

機龍に促され、静寂を保つとドタバタと足音が聞こえてきた。

機龍はケースから愛刀の片方(龍虎)取ると抜刀する。

と、そこで襖が開いてしずな(朝倉変装)が現れた。

「ネギ先生ーー! もう寝まし………」

「曲者!!」

と言って、刀を投げつける機龍。

刀は偽しずなの顔の横を通り過ぎ、壁に突き刺さった。

「ひ、ひいい〜〜〜〜〜!!」

慌てて立ち去る偽しずな。

「あ! し、しまった!!」

「ちょ、ちょっと、しずな先生だったじゃないですか!?」

「気配が違ったんだが………」

そう言いながら刀を回収すると鞘に納め、左腰に差す。

「悪いことしたな………」


トイレの隠しモニタールームに駆け込む偽しずな。

慌てて変装を解く。

「ハア、ハア、危なかった〜〜〜!!」

「大丈夫ですか? 姉さん?」

九死に一生を得た和美。

嫌な汗を掻いている。

「ここで引き下がったら、麻帆良報道部の名が廃るわ。何としても企画決行よ!!」

「がってんだ!!」

しかし、引き下がらないのがこの一人と一匹の悪いところだ。

そして、時計が11時を刻んだ。

「では、『修学旅行特別企画!! くちびる争奪!! 修学旅行でネギ先生と機龍先生にラブラブキッス大作戦〜〜!!』 スタート!!」


波乱が幕を開けた。


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