第23話



楓と激戦を繰り広げる機龍。

分身による多重攻撃に苦戦しながらも、得意の二刀流で次々と撃破していく。

と、そこに、のどかの悲鳴が木霊した。

「!? 宮崎くん!?」

「隙ありでござる!!」

悲鳴に気をとられた一瞬の隙をつき、楓が突進した。

「!! しまった!!」

刀を×の字にして防ぐが、衝撃をころしきれずに仰向けに倒れる。

「ぐっ!!」

「もらったでござる!!」

そこへ飛び掛る楓。

が、機龍は素早く懐に手を伸ばすと、黒い塊を取り出して投げ付けた。

「へっ!?」

一瞬、楓の視界を支配する黒い塊。

それは俗にパイナップルと呼ばれている手投げ爆弾………手榴弾だった。

「な、何〜〜〜〜〜!?」

慌てて空中でジタバタする楓。

そして、バランスを崩し、落下した。

「あだっ!!」

尻餅をつく楓。

咄嗟に頭を抑えて縮こまる。

が、予想した衝撃はこなかった。

「………あれ!?」

「よく見ろ。安全ピンが刺さったままだろ」

驚いて顔を上げてみると、手榴弾を左手で持って、右手の刀の切っ先をつき付けている機龍の姿があった。

「や、やられたでござる………」

「勝負あったな」

納刀する機龍。

そして、楓に背を向けるとケースを持って立ち去ろうとする。

「あれ? 指導しないんでござるか?」

「抑えられなかったのは俺の責任だし、まだ他にやることがある。それとも、してほしいのか?」

「い、いえ……!」

ブンブンと首を横に振る楓。

「なら部屋に帰っておとなしくしていろ」

そう言うと悲鳴のした職員宿泊室の方へと向かう。

「意外と優しい人でござるな〜」

などと呟いて、楓は部屋へと戻って行った。

『お〜と、長瀬選手撃沈!! 幸い指導は免れたがキスも失敗だ〜!!』


職員宿泊室へ向かう途中、ロビーから不穏な気配を感じた機龍はそこで異様な光景を目にする。

「なっ!? ネギ先生が5人!?」

それはロビーに集まっていた5人の身代わりネギだった。

『これは大変なことになりましたー!! 5人のネギ先生、機龍先生と出くわしました!!』

もはや、ヤケクソに実況する和美。

「あ、見つかってしましました」

「見つかってしましました」

「そのようですね」

「そうですね」

「ですねー」

次々に話し出す偽ネギ。

「身代わりの失敗か!? とりあえず、おとなしくしろ!!」

と言って、マグナムを向ける機龍。

「「「「「わあーーーー!!」」」」」

しかし、何を考えたのか、偽ネギたちは全員機龍へと向かって行った。

「いい!?」

そして全員で圧し掛かってきたからたまらない。

「どわっ、たた、つ、潰れる!!」

5人に圧し掛かかられ、窒息しそうになる機龍。

「く、苦しい………こ、こら、やめろ………どけって………おい………どけってつってんだろーーーーー!!」

「「「「「あーーーーれーーーーー!!」」」」」

力任せに偽ネギたちを振り払う。

「ゼェー………ハアー………ゼェー………ハアー………」

窒息寸前になり、息も絶え絶えな機龍。

「これなんでしょう?」

と、ここで偽ネギの1人が機龍のケースを拾い上げる。

「んが!?」

慌ててる機龍を他所にケースから次々に武器を取り出す偽ネギたち。

「子供がそんな危ない物を持つな〜〜〜!!」

「「「「「わーーーい!!」」」」」

アサルトマシンガン、バズーカ砲、コンバットナイフ、ミサイルランチャー、対戦車ライフルを持った偽ネギたちが機龍に襲い掛かる。

(マズイ………ここで戦うわけにはいかない!)

旅館の外へと離脱する機龍。

「「「「「待て〜〜〜〜〜!!」」」」」

偽ネギたちもそれを追う。

『これは凄まじい展開になってきました!! 5人のネギ先生は武器を持って機龍先生と戦いを繰り広げています!! これはもはやゲームではありません!! 戦争です!!』


一方その頃、機龍が標的の2人の乙女は………

「ゼエ………ハア………ゼエ………ハア………」

肩で息をする真名。

「………………」

対するザジは、相変わらずの無表情だが、額に大量の汗を浮かべている。

2人の周りには大量の弾痕と薬莢、投げナイフとトランプが散乱していた。

かなりの激戦を繰り広げたようだ。

と、そこへ、外から銃声と爆音が響いてきた。

「! なんだ!?」

「!?」

2人して手近な窓から外を見る。

見ると複数の人影がホテル前の空き地で争っていた。

真名は魔眼を使い、人物を特定する。

「!? 機龍先生!! しかも、相手はネギ先生が5人!?」

事態が把握できず混乱する真名。

しかし、ザジはすぐさま窓から飛び降りると現場へと向かった。

「あ、おい、ザジ!!」

少し遅れて真名もその後を追う。


武装した偽ネギを相手に苦戦する機龍。

コンバットナイフを両手に逆手に持って襲い掛かってくる偽ネギを二刀流でいなしながら、アサルトマシンガンと対戦車ライフルを持った偽ネギからの狙撃をかわし、バズーカ砲とミサイルランチャーを持った偽ネギの攻撃をマグナムで迎撃する。

「クソ!! 偽者のくせに妙に連帯が取れている!!」

悪態を吐きながら機龍は攻略の糸口を探す。

と、そこへ、ミサイルランチャーを持った偽ネギが砲口を向けた。

「発射〜〜〜〜!!」

勢い良く機龍へと発射されるミサイル。

着弾まであと3メートル。

「!! コナクソ!!」

機龍はオーバーベッドキックの要領でミサイルを蹴り上げた。

蹴り上げられたミサイルは弧を描いて、撃った偽ネギに直撃した。

「あーーーーれーーーーー!!」

爆発と共に紙型に戻る偽ネギ。

「まず1人!!」

今度はコンバットナイフを持った偽ネギが襲い掛かる。

「あちょ〜〜〜〜!!」

「むっ!!」

自慢の二刀流で迎え撃つ機龍。

そこへ、バズーカ砲を持った偽ネギが機龍の後ろから狙いを定める。

「ふぁいや〜〜〜〜!!」

発射されるバズーカ砲弾。

「甘い!!」

機龍はコンバットナイフを持った偽ネギの両腕を掴むと、巴投げで投げ飛ばす。

「あらっ?」

バズーカ砲弾はコンバットナイフを持った偽ネギに当たり、爆発した。

「ほんぎゃ〜〜〜〜!!」

紙型に戻る偽ネギ。

「ほわ!?」

一瞬呆然とするバズーカ砲を持った偽ネギ。

そこへ爆煙が収まらぬうちに飛び出してきた機龍が斬り捨てた。

「あへ〜〜〜〜〜!!」

爆発し、真っ二つにされた状態の紙型に戻る偽ネギ。

「これで3人!!」

機龍は対戦車ライフルを持った偽ネギとアサルトマシンガンを持った偽ネギに向き直る。

「「わ〜〜〜〜〜!!」」

狂ったように得物を乱射する偽ネギたち。

しかし、狙いが定まっていないため、当たらない。

構わず突撃する機龍。

「でやーーーーー!!」

二刀を横薙ぎに振る。

偽ネギたちはそれをジャンプしてかわす。

「それぐらい、予測済みだ!!」

素早く右手の刀を納刀し、懐からマグナムを取り出すと、アサルトマシンガンを持ったネギに全弾連射した。

「もぺ〜〜〜〜〜!!」

穴だらけの紙型に戻る偽ネギ。

「4人!! 残り1人!!」

対戦車ライフルを持った偽ネギは機龍へと狙いを定める。

が、そのとき、銃弾と投げナイフが飛んできて偽ネギの足元に着弾・突き刺さった。

「!!」

「何!?」

驚く偽ネギと機龍。

そこへ現れたのは、真名とザジだった。

「…………先生!!」

「機龍先生!!」

駆け寄ってくる2人。

「危ない!! 来るな!!」

「お邪魔虫ですね………」

対戦車ライフルを2人に向ける偽ネギ。

「!!」

「な!!」

思わず足を止める2人。

偽ネギは引き金に掛けた指に力を込める。

「うおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーー!!」

左手の刀に渾身の力を込め、突きを繰り出す機龍。

それは見事、偽ネギを貫いた。

が、体当たりするように繰り出したため、離脱が間に合わず、機龍は偽ネギの爆発に巻き込まれた。

「どわーーーーーっ!!」

煤だらけになって目を回して倒れる機龍。

「!!………先生!!」

「機龍先生!!」

慌てて駆け寄る2人。

真名が状態を調べる。

「大丈夫だ、気絶してるだけだ」

「…………ホッ」

安堵する2人。

「一時休戦だ。機龍先生を部屋まで運ぶぞ」

「…………」

無言で頷くザジ。

2人して機龍を引きずりながらも運ぶ。

他の先生に見つからぬよう、5班が開けた非常口から機龍の宿泊室へと戻った。


「ふう〜〜〜、何とか見つからずにすんだ」

機龍を布団に寝かせて言う真名。

と、ザジが視線を送ってきた。

「分かっている………勝負の続きと行こうか」

「…………」

得物を構える2人。

「う、ううぅ〜〜〜」

と、機龍が呻き声を挙げたため慌てて身構える。

「…………」

静かになる機龍。

どうやら寝言だったようだ。

「ここで争うのはマズイな………」

「…………」

得物をしまいながら小声で言う真名と無言で頷くザジ。

「よし、これでいこう………」

握り拳を出す真名。

ザジもそれに倣う。

「行くぞ………最初は」

「………グー」

2人してジャンケンを始める。

シュールな光景だが本人たちは大真面目だ。

そして、あいこが30回続いたその時、

「あ………」

「…………」

龍宮のパーにチョキを出して、スマイルを浮かべるザジ。

「そ、そんな………」

崩れ落ちる真名。

それを横目に機龍に迫るザジ。

「あ………」

ゆっくりと機龍の顔に自分の顔を近づけていく。

「……………ダメ」

呟く真名。

ザジは尚も機龍に迫る。

「………ダメ」

そして、その唇が機龍の………

「ダメ〜〜〜〜!!」

頬に触った。

「へっ??」

思わず固まる真名。

ザジはそれを見て、ニコッと笑うと部屋を出て行った。

少しの間、呆然としていた真名だが、はっと我に返ると機龍に向き直る。

そんな騒動は知らず、機龍はいつの間にかスヤスヤと寝息を立てていた。

「機龍先生…………」

ほんのりと頬を染めながら、ゆっくりと機龍に迫る真名。

そして、ゆっくりと顔を近づける。

視界一杯に機龍の寝顔が広がる。

きりっとしたいつもの表情とは違い、まるで子供のようなあどけない顔だ。

そのギャップに戸惑いながらも真名は、機龍に唇を重ねた。

「ん……んん〜〜…………」

機龍は異変を感じたのか、少しもだえたが、睡魔に負けておとなしくなった。

真名はそっと唇を離すと、踵を返して部屋から出て行った。

その顔は熟したトマトよりも赤かった。


一方その頃、他のメンバーたちは新田に見つかり、ロビーで正座させられていた。

結局、ネギにキスできたのはのどかだけだったようだ。

首謀者の和美とカモ、そして何故かネギまでも正座させられていた。

と、カモの前に2枚のカードが出現した。

「ありゃ? 仮契約カード? なんで今頃??」

現れたカードは、ザジのスカカードと真名の成立カードだった。


こうして、恋する乙女たちの戦いは終わった。

多大な迷惑と被害を出して………

無論、騒ぎに関わった生徒全員に機龍が学園に帰還後、指導を与えたことは言うまでもない………


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