第25話



ネギたちは本山の入り口に辿り着いていた。

多くの鳥居が並んで続いている。

「ここが関西呪術協会の本山………?」

「伏見神社ってのに似てるな」

「うわーー、何か出そうねーーー」

「敵の本拠地でもあるからな」

各々の感想を洩らす一同。

と、そこへ、小さな光の玉が現れる。

ポンッと音をたてると、デフォルメされたような刹那が現れた。

「神楽坂さん、ネギ先生、龍宮、大丈夫ですか?」

「わっ!?」

「せ、刹那さん?」

「式神か………」

「はい、連絡係の分身のようなものです。ちびせつなとお呼びください」

「そのまんまかよ………」

ツッコミを入れるカモ。

「この奥には確かに関西呪術協会の長がいると思いますが………東からの使者のネギ先生が歓迎されるとは限りません。ワナなどに気をつけてください。一昨日襲ってきた奴等の動向もわかりませんし………」

「わかってます、ちびせつなさん! 十分、気をつけますから」

「役に立つかわからないけど、私のハリセンも出しとくし、まかせてよ」

「心配するな、刹那」

ネギは杖、アスナはハマノツルギ、真名はデザートイーグルを構える。

「よ〜し、行くよ!!」

「ハイ!」

「了解!!」

そして3人は突入した。


場面は変わって、ゲーセンでは、

(皆さん………お気をつけて………)

「せっちゃん、何してるんや?」

「わああ! おっお嬢様!!」

式神を操るのに集中していた刹那は、このかの存在に気づかず慌てる。

「ホラ、せっちゃんも遊ぼーー。機龍先生みたく」

このかが指差した先では、レースゲームをしている機龍の姿があった。

「いくぜ!! 慣性ドリフトーーー!!」

「わあー、スゴイ!! タイムレコード更新だ!!」

すっかり夢中になっている。

(機龍先生………時々………あなたのことがわからなくなります………)

呆れ気味になる刹那。


一方、ネギたちは、敵のワナにはまっていた。

無間方処の咒法により鳥居が続く空間の中に閉じ込められていた。

アスナがトイレの為に駆け込んだ休憩所で作戦を練っている。

「どうしましょう?」

不安げにネギが言う。

「多分、結界を張っている奴がどこかにいるはずだ。そいつから情報を聞き出すしかないな………」

冷静に状況を分析する真名。

「コラ〜〜〜〜!! 誰かいるんなら出てきなさ〜〜〜〜〜い!! 卑怯者〜〜〜〜〜!!」

危うく漏らしそうになった為か、八つ当たり気味に叫ぶアスナ。

「ね、姐さん、落ち着いて………」

「神楽坂さん、抑えて………」

それを諫めるカモとちびせつな。

と、

「誰が卑怯者や!!」

怒声と共に巨大な蜘蛛に乗った学ラン姿にニット帽を被った少年が現れた。

「!! 鬼蜘蛛!?」

「くも………でかっ!!」

「え………!?」

「あんな挑発で出てくるとはな………」

驚く一同の中で、少年の軽率な行動に呆れる真名。

「誰が卑怯者や!! そーゆうデカイ口叩くんやったら、まずはこの俺と戦ってもらおか!!」

学ランの少年………犬上小太郎は言い放った。


再びゲーセンでは、

(!!………敵が来た!!)

「桜咲くん」

ちびせつなを通じてネギたちの様子を窺っていた刹那に機龍が話しかけた。

「!!………機龍先生!! ネギ先生たちが………」

「こっちもマズイ………狙われてるぞ」

「えっ!?」

驚く刹那。

(さっきまでとは大違いだ………ますます分からない人だな………)

「移動しよう………人ごみに紛れればおいそれとは手が出せまい」

「は、はい!!」

このかたちを上手く促し、機龍たちはゲーセンを離れる。

それを影から覗く2人がいた。

「あ〜〜〜ん、気づかれたも〜た〜」

「慌てるな………この程度は予測済みだ」

残念そうにする月詠と余裕に笑うヴァリム軍服の男。

「フフフ………さて、パーティの場所はどこかな?」

さらに不敵な笑みを浮かべる男。


そして、ネギたちは………

巨大蜘蛛をアスナが撃退し、小太郎とどこからともなく現れた猿鬼・熊鬼軍団を相手にしていた。

「ネギ先生!! こいつらは私が相手をする!! 君は少年の方を!!」

「了解!!」

真名が猿鬼・熊鬼軍団の相手をし、ネギは小太郎に向き直る。

「へへ、知ってるで!! 西洋魔術師の弱点は接近戦や!! 呪文詠唱させる暇はあたえへんで!!」

ニット帽を脱ぎ捨て、狼の耳を露出させて飛び掛る小太郎。

しかし、小太郎は知るよしもなかった。

ネギがプロの軍人から指導されていたことなど………

繰り出された小太郎の拳を杖で受け流す。

「何!?」

そして後方に流した小太郎の背に、杖を立てて横大車輪で勢いにのせたドロップキックを叩き込む。

「ぐわっ!!」

ふき飛ぶ小太郎。

その隙にネギは体制を取り直す。

ふき飛ばされた小太郎も受け身をとって、ダメージを緩和する。

(アホな!? 西洋魔術師が体術を使うやて!! 話がちがうで!!)

(いける!! 完全じゃないけど、動きを見切れる!!)

驚愕の思いを抱く小太郎と自信を持つネギ。

「アスナさん!! こっちは僕に任せて龍宮さんを!!」

「わ、分かったわ!!」

真名の方へ向かうアスナ。

「なめんなぁーーーーー!!」

「やあぁーーーーー!!」

激しく激突する2人。

勝敗の行方は!?


一方の真名は苦戦していた。

倒しても倒しても猿鬼・熊鬼軍団は次々と出現する。

「!! 弾切れか!? クソ、もっと弾薬を持ってきておくべきだったか!!」

ついに弾薬を使い果たしてしまう。

「龍宮さーーーん!! 今行くわ!! 頑張って!!」

遠方からアスナがハマノツルギで猿鬼・熊鬼を蹴散らしながら援護に向かっているが、間に合いそうにない。

絶体絶命かと思われた真名。

しかし、ここで真名はポケットからカードを取り出す。

「頼むぞ………来れ(アデアット)!!」

アーティファクトを呼び出す真名。

その瞬間、真名を黒い竜巻が包み込む。

何匹かの猿鬼・熊鬼が巻き込まれ、消滅する。

「な、何なの!?」

その光景に驚愕するアスナ。

やがて竜巻が晴れると、そこには黒いマントをはおり、両肩に円盤のような装甲を着け、両足に踵の部分にローラーの着いた脚甲を履き、両手に銃身の先に刃の付いた巨大な2挺拳銃を持った真名の姿が現れた。

「T・R・O・M・B・E………トロンベ。それがコイツの名前か………」

頭を過ぎった言葉を装着された武具を見ながら言う真名。

「行くぞ! トロンベ!!」

2挺拳銃……ランツェ・カノーネを構えると両踵のローラーで高速移動しながら魔力の弾丸を連射する。

「ウキッ!!」

「クマッーーー!!」

次々に猿鬼・熊鬼が紙型へと戻っていく。

「シュルター・プラッテ!!」

今度は肩の円盤をフリスビーのように飛ばし、敵を切り裂く。

「うわぁ………私の出る幕じゃないわね………」

「あのカードのアーティファクトがあんなに強力だったなんて………」

「まさに竜巻………」

援護に来ていたアスナたちは呆然とするしかなかった。


そして、ネギと小太郎の戦いの模様は………

「ぐっ!!」

「があっ!!」

一進一退の攻防を続けていた。

小太郎は接近戦で思うようにダメージが与えられず、距離を取れば魔法攻撃を喰らってしまうため、離れられずにいた。

対するネギも慣れない接近戦ではあまり効果が挙げられず、魔法攻撃は距離が近すぎるため、呪文詠唱が出来ず使えずにいた。

つまり、お互いに決定打が与えられず、ダメージばかりが増えていった。

しかし、格闘慣れしている小太郎に対し、ネギは機龍から数日間の訓練と教えを受けただけである。

やがては経験の差が出てくるだろう。

(いけない………長期戦になったら不利だ………こうなったら、まだ成功したことないけど『あの技』を使うしかないか………)

ネギは機龍との訓練では成功しなかった練習中の『あの技』を試みる。

「何ボーっとしとるんや!! 隙だらけやで!!」

そこへ小太郎が襲い掛かる。

「ぐふっ!!」

顔面に鉄拳を受け、杖を手放し仰け反るネギ。

しかし、素早く小太郎に組み付く、体制を立て直す。

「何!!」

「………捕まえたよ」

そうはネギは組み付くため、小太郎の攻撃をワザと受けたのである。

組み付いたままネギは上へと飛ぶ。

そして小太郎を逆さまにすると左脇下から右腕まで足で絡み付き、右手で左腕を固定し、左手で足を持ち垂直に立てる。

そして、そのまま落下した。

「うおぉ!!」

「ビッグベン・○ッジ!!」

鳥居の上に小太郎の頭を叩きつける。

しかし、その威力はそれでは終わらず、鳥居を破壊し、今度は石畳の上に叩きつけた。

「がばっ!!」

超人技を喰らい、さすがの小太郎も血を吐いて倒れた。

「ハア………ハア………ハア………ハア………やった………」

小太郎からのダメージとビッグベン・○ッジのスタミナ消費でふらふらしながら立ち上がるネギ。

が、やはり身体を支えきれず倒れそうになる。

「あ………」

と、そこに人影が現れ、ネギを支えた。

「お疲れさん、ネギ」

「大したものだ」

「アスナさん………龍宮さん………」

現れたのはアスナたちだった。

「式神たちは全てかたずけた」

「よぉっしゃ、後はこっから脱出するだけだぜ!!」

「そ、そうですね! 何とか脱出方法を」

「ま………待てェッ!!」

カモとちびせつながそう言ったとき、小太郎が叫んだ。

「た………ただの人間に………かどうかわからんが(汗)、ここまでやられたのは初めてや………やるやないか………ネギ…スプリングフィールド」

ゆっくりと起き上がるその姿が徐々に変化していく。

「だが……まだや! まだ終わらへんで!!」

そして、完全に獣と化した。

「こっからが本番や、ネギ!!」

「ええ〜〜〜〜〜っ、何よ、それーーーーー!?」

「獣化!! 変身した?」

驚くアスナたちに小太郎は拳を振り下ろす。

何とか回避するが、その威力は石畳を爆弾で噴き飛ばしたように軽く破壊した。

「うわうっ!!」

「いやーーーん!! こんなの反則ーーーーーッ!!」

小太郎の豹変ぶりにヤケ気味に叫ぶアスナ。

「オラオラ!! 行くで!!」

「く! タワー・ブ○ッジ!!」

繰り出された小太郎の飛び蹴りをしゃがんでかわし、そのままタワー・ブ○ッジにもちこむ。

「ぐう! これぐらい!!」

力任せに技を外そうとする小太郎。

「ぐうぅぅぅぅーーーーー!!」

何とかもちこたえているネギだが、長くはもちそうにない。

「マズイ! 急いで脱出方法を見つけないと……」

「ネギせんせーーー!!」

真名がそう言いかけたとき、1人の少女が現れた。

「え……のどかさん!!?」

現れたのはアーティファクトを持ったのどかだった。

「ほ、ほほほ、本屋ちゃん!? 何でここに!?」

突然の来訪者に戸惑うアスナ。

「いや、そんなことより、早く脱出方法を!!」

しかし、真名は冷静に状況を判断する。

「あ、それなら私に任せてください。………あの、少年さん! 私、宮崎のどかです! あなたのお名前は!?」

「あ、名前!? 犬上小太郎や!!」

名乗られた手前なのか律儀に応える小太郎。

「あ……あのぉーーー小太郎クーン!! ここから出るにはぁ、どうすればいいんですかー?」

「アホか姉ちゃん! 俺がそんなこと言うわけないやろ!!」

しかし、のどかのアーティファクトの本にはその方法が浮かび上がってきた。

「こ、ここから東に6番目の鳥居の上と左右3箇所の隠された印を壊せばいいそうです」

「なっ………」

「ふおおおおお!!? なな何とおおお!!!」

「すごい!!! 本屋ちゃん!!!」

「やるな」

のどかのアーティファクトの能力に驚愕するアスナたち。

「何ィィ!?」

「!! 隙あり!!」

小太郎の驚愕の瞬間、力が抜けたところに一気に力を込めるネギ。

「ゴバッ!!」

ゴキッという音がして、小太郎は気絶した。

素早く杖を取って乗るとのどかを抱え、出口に飛ぶ。

「神楽坂、掴まれ!!」

「は、はい!!」

真名もアスナを背負うとローラーを全開にして走る。

「そこか!!」

そして、目標の鳥居の隠された印に向かってランツェ・カノーネを撃つ。

すると、鳥居の中が光輝く。

「あれです!! あれが空間の亀裂です!! 神楽坂さん!!」

「任せて!!」

ハマノツルギで亀裂をぶっ叩くアスナ。

パキャアンという音と共に結界は崩壊した。

「「「脱出成功ーーーーー!!」」」

見事に脱出に成功したネギたち。


だが、同じ頃………

機龍たちにも危機が迫っていた。


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