第27話
その後、あの場を上手く誤魔化して立ち去り、本山へと向かった機龍たち。 途中、刹那の荷物にGPS携帯を忍ばせていた和美たちが合流するというハプニングがあったものの、何とかネギたちと合流し、本山へと向かう。 「それにしても、あのロボットには驚いたな〜〜。機龍先生、あれなんだったの?」 一番聞かれてはマズイ質問をされる機龍。 「ん、ああ、いや、超とハカセにちょっとな………」 何故かまだ軍服姿の機龍は何とか誤魔化そうとする。 「ああ〜〜、超とハカセの発明か!! なるほど!!」 (………ホッ) なんとかはぐらかすことに成功した。 (本当にそうですか? あれは完全に軍事用に見えました………とても、お遊びで使う物には………) しかし、夕映は懐疑的な考えを持つ。 (ロボットだと!? 機龍先生………あなたには一体、どんな秘密があるっていうんだ………) そして、1度は詮索をやめた真名も気にし始めていた。 「あ、見て見て! あれ、入り口じゃない?」 そうこう言っているうちに本山の門らしきものが見えてくる。 「お〜いかにもな雰囲気〜」 「レッツゴー!」 走り出す何も知らない組。 「あーーーーッ、ちょっとみんなー!! そ、そこは敵の本拠地なのよ!?」 「何が出て来るか………!」 明日菜はカードを取り出し、ネギが杖を構えて警戒する。 「心配するな。俺の予想が正しければ、多分、大丈夫だ」 「「えっ!?」」 出てきたのは巫女装束の女性たちだった。 「「「「「「お帰りなさいませ、このかお嬢様ーーーーッ」」」」」」 敵どころか歓迎されている。 「「へ?」」 マヌケた声を出すアスナとネギ。 「やはりか………」 刹那を見る機龍。 「機龍先生、気づいていたんですか?」 「いや、そうじゃないかと思っていただけさ」 「ち、ちょっと、桜咲さん! これってどーゆー……」 事情を一番知っていそうな刹那に尋ねるアスナ。 「えーと、つまりその………ここは関西呪術協会の総本山と共に、木乃香お嬢様の御実家でもあるのです」 「「えぇ〜〜〜〜〜っ!?」」 その後、一同は屋敷の本殿にあたる場所であろう大広間に案内された。 「まるで平安時代劇のセットだな………」 などと機龍が呟いていると、正面の上に続く大きな階段から1人の男が現れる。 「お待たせしました。ようこそ明日菜くん、このかのクラスメイトの皆さん。そして担任のネギ先生に副担任の機龍先生」 (冬月コ○ゾウが若くなったような人だな………) やや失礼なことを考える機龍をよそに男………詠春に抱きつくこのか。 「お父様! 久しぶりや―!!」 「は、はは、これこれ、このか」 それを優しく受け止める詠春。 「このかさんのお父さんが西の長だったんだーーー」 (なる程、予想すべきだったぜ) 意外そうにしているネギとカモ。 と、 「し……渋くて素敵かも」 「アンタの趣味はわからんわーーーッ」 「失礼ですよ」 検討違いなことを言っている者もいた。 「あ、あの長さん。これを………」 ネギは立ち上がると親書を持ち、長の前に出る。 「東の長、麻帆良学園学園長近衛近右衛門から西の長への親書です、お受け取りください」 「確かに承りました、ネギ君。大変だったようですね」 そう言って受け取り、中を検める詠春。 正式な親書と一緒に入っていた義父からの一言に苦笑しながらも、 「いいでしょう。東の長の意を汲み、私たちも東西の仲違いの解決に尽力するとお伝えください。任務御苦労!! ネギ・スプリングフィールド君!!」 「あ………ハイ!!」 途端にワッと歓声が挙がる。 「おーーー、何かわからないけど、おめでとーーー、先生!」 「御苦労さまーーー」 その後、日が暮れ、ホテルには詠春が身代わりを立ててくれたため、一行は本山へと泊まることになった。 その後、詠春が開いてくれた宴会で盛り上がる一行。 何やらアルコールまで出ている。(大丈夫か?) 「刹那君」 そんな中、刹那に声を詠春。 「こ、これは長。私のようなものにお声を…」 ザッと改まる刹那。 「ハハ………そう畏まらないで下さい。………この二年間、このかの護衛をありがとうございます。私の個人的な頼みに応え、よく頑張ってくれました。苦労をかけましたね」 「ハっ…いえ、お嬢様の護衛は元より私自身の望みなれば…もったいないお言葉です。それにこちらに来てからは私1人の力ではありません………」 そう言って近くにいた機龍(さりげなくその隣に座っている真名がいた(笑))を見る。 詠春もそちらに視線を移す。 「あなたが機龍くんですか、義父から聞いています。このたびはありがとうございました」 「いえ、礼には及びません。これが自分の仕事ですから」 毅然と言う機龍。 「フフフ………本当に義父から聞いたとうりの人ですね」 「?? 学園長は何と仰られたのですか?」 「………『頼りになる軍人』………ですよ」 宴会の後の深夜、警戒を兼ねて辺りを散歩する機龍。 「ほう………これはまた、美しい夜桜だな」 舞い散る桜吹雪に思わず溜息を零す。 「あの………先生」 「そろそろ教えてくれないか?」 そんな機龍に話し掛ける、同じく警戒を兼ねて辺りを散歩する刹那と真名。(真名は若干他にもあるが………) 「わかっている。こうなった以上、君たちにも話ておかねばならんだろう………」 機龍は話し始めた……… 自分の素性………目的………そして、敵に関して……… 「………と、言うわけだ」 「「………………」」 あまりのスケールの大きさに絶句する2人。 「驚いたかい? まあ、無理もない。いきなり、私は宇宙人ですって言われてもピンッとこないだろう」 「確かにな………だが、信じられない話じゃない」 「えっ!?」 呆気とられる機龍。 「少なくとも神薙機龍という先生は信じられます」 「ああ………だから私も力を貸した」 機龍を見据えて言う2人。 「桜咲くん、龍宮くん………ありがとう」 と、その時……… 空を切り裂くような音が鳴り、砲弾が着弾した。 「うわっ!!」 「これは!?」 「何だと!?」 さらに連続して着弾する砲弾にミサイル。 「キャアァァァーーーー!!」 「何事だ!?」 「た、助けてくれーーーー!!」 一瞬でパニックとなる本山。 「な、何てことを………」 蒼然の顔をする刹那。 「刹那!! しっかりしろ!!」 「手分けして皆を裏手の山に避難させるんだ!! 急げ!!」 「は、はい!!」 慌てて砲弾とミサイルが降り注ぐ中を駆けて行く3人。 何とか生徒たちの泊まっている部屋に辿り着く機龍。 幸いにもここは着弾を免れたようだ。 「大丈夫か!! 皆!!」 「あ、機龍先生!!」 「機龍さん!!」 「ダンナ!!」 アスナとネギがのどかたちを庇うように覆い被さっていた。 「ネギ先生、神楽坂くん! 皆どうしたんだ!!」 慌てて駆け寄る。 「それが、怪我はありませんが、さっきからの爆音と振動で気絶してしまったみたいで!」 「一体何が起こってるの!?」 「敵襲だ! 奴らめ、本山に向けて砲撃を敢行して来やがった!!」 「「ええ〜〜〜〜っ!!」」 「無茶苦茶しやがんな!!」 そうこう言っている間にも次々に爆音と振動が奔る。 「キャアァァァーーーーー!!」 「うわっ!!」 「ともかく、急いで皆を裏手の山に運び出すんだ!!」 と言って、機龍は和美とハルナを両脇に抱え込む。 「「ハ、ハイ!!」」 2人もそれに倣い、のどかをネギが、夕映をアスナが背負って避難する。 部屋から出てより大きくなる爆音と振動。 「キャアァァァーーーーー!!」 「立ち止まるな!! 走るんだ!!」 「ハ、ハイ!!」 だが、その時………機龍はこのかがいないことに気づく。 「!? ネギ先生!! 近衛くんは!?」 「あ、長さんに話があるって部屋に呼ばれて!!」 「くっ! 上手く避難してくれていればいいが………」 どうにか裏手の山まで避難する機龍たち。 本山の人たちも次々に避難してくる。 「「機龍先生!!」」 刹那と真名が駆け寄ってくる。 「2人共、無事か!?」 「ハイ! 大丈夫です!!」 「本山の人たちは、負傷者が何名かいるがほぼ避難させた」 本山の医療担当者たちが忙しく走り回り、負傷者を手当てしている。 「後は………」 「!! まさか!! 長と近衛くんが!?」 「ああ………」 「くっ!! やはり、私が探しに!!」 刹那が探しに行こうとする。 「わ、私も!!」 「僕も!!」 刹那に賛同するネギとアスナ。 「よせ!! 今からあそこに行くのは自殺行為だ!!」 「「「でも、このか(お嬢様)(さん)が!!」」」 止める機龍を振り切ろうとしたとき、 「………み、皆さん………」 声のした方向を見ると、夥しい血を流す左腕を右手で押さえながらヨロヨロと歩いてくる詠春の姿があった。 頭部からも流血している。 「長………!」 「長さん!!」 「くっ………」 出血多量による貧血か、前のめりに倒れそうになる詠春。 「危ない!!」 慌てて機龍が駆け寄り支える。 「「「長!!」」」 「長さん!!」 それを見て駆け寄るネギたちと本山の術者たち。 「ハア………ハア………申し訳ありません………ヴァリムという連中が………こんな強行手段に出るとわ………うっ!!」 痛みに顔を歪める詠春。 「静かに! 傷に障ります!!」 「………機龍くん………皆さん………このかは………奴らの手に………」 「!? 何ですって!!」 「お嬢様が!?」 驚愕する一同。 「ハア………ハア………すまない………このかを………娘を………頼み………ま………す………」 そう言い残し気絶する詠春。 「長さん!!」 「長!!」 「「「「長殿」」」」 慌てて治療を始める本山の術者たち。 機龍は詠春を任せると燃える本山を見下ろし、深く………静かに呟いた。 「任務………了解!!」 左の袖を捲り、腕時計を現す。 「コール!! フェニックス!!」 主の呼び声に応え、魔法陣から出現するJフェニックス。 慌てる本山の術者たちを尻目にフェニックスに乗り込もうとする機龍。 「機龍さん! 僕も行きます!!」 「わ、私も!!」 「私もだ!!」 ネギたちも続こうとする。 「ダメだ!! 危険すぎる!!」 「ちょっと、今更それはないじゃない!!」 「そうですよ!!」 食い下がるネギたち。 「敵は兵器を使っているんだ! 下手をすれば死ぬぞ!!」 「なら下手をしなければいいんだな?」 真名が歩み出る。 「いや、そうじゃなくて………」 「お願いします! 機龍先生!!」 刹那を中心に、機龍に真剣な眼差しを向ける一同。 「………近衛くんは幸せ者だな。こんなにも友達思いな友達がいて………」 フッと微笑む機龍。 「!! 機龍さん!!」 「フェニックスの手に乗れ!!」 そう言ってコックピットに滑り込むとフェニックスの手を伸ばす。 その手に乗ると、指にしがみ付く一同。 そのまま飛び立つフェニックス。 本山の術者たちは唖然と見ているだけだった。 「ハハハハ!! 燃えろ! 燃えろ! 皆燃えちまえ!!」 灰色の重武装タルカスのコックピットで狂気染みた笑い声を上げる男。 スキンヘッドの頭に派手なバンダナを被り、レンズがやたら鋭い形をしたサングラスをした筋肉質体系な男は丘の上から自分が爆撃した本山を嬉しそうに眺めている。 「やっぱしいいぜ!! 破壊は爆破にかぎるぜ!! ヒャアハハハハ!!」 [調子に乗るな、ビックボム] 通信機から女の声が響く。 [天ヶ崎が近衛 木乃香を確保した。爆撃が終わったのなら帰還しろ。無駄に弾薬を使うな] 「チッ! せっかくいい気分だったのによ。りょーかい、りょーかい] そう言って、ビックボムと呼ばれた男は通信機を切ると森の奥へとタルカスを走らせる。 決戦が始まる……… NEXT |