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交わる異能者たち 第参話「何ヶ月ぶりだよコンチクショー!の巻」 (魔法先生ネギま!×GS美神) 投稿者:海老 投稿日:06/23-03:24 No.786
交わる異能者たち
第参話「何ヶ月ぶりだよコンチクショー!の巻」
麻帆良から遠く離れた屋敷の中。
今まで眠っていたのだろうか、目を擦りながらイスに座っている女性が一人だけいる。
いや、正しくは一人と『一匹』。
彼女の目の前には鳥らしきものがいるのだ。
「やはり失敗やったか。本来の作戦に戻しますか」
鳥からの報告を聞いた女は少し落胆しながらも、本来の作戦のための準備をし始めた。
彼女の目的の達成のために……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
麻帆良学園の一室。
ソファーでグーすか眠りこける男がいた。頭の赤いバンダナがトレンドマークの横島忠夫である。
上に掛けてある毛布は蹴っ飛ばしたのか、彼の足元らへんでグシャグシャになって落ちてあり、ソファーからは手を投げ出している状態で眠っている。
その顔には先ほどの戦いの時のような締まりがなく、よだれを垂らしながら時折「美神さ~ん、それはOKってことっすね~」などと寝言を吐いている。
だが時が経つにつれ「ちょ、痛いっす! ハイヒールでゴリゴリすんのは止めてーーー!!!」とソファーの上で器用に転げまわり始めた。
そんな器用さを持つ横島でもソファーの上で長時間も転げまわっていられないのか、とうとう落ちて床に激突をしてしまった。
「ん……ここは何処? 私は誰?」
「ふむ、起きて早々記憶喪失ネタはやるとはやるのぉ」
「あれ? あんた何でここにいんの?」
起きて早々ボケをかます横島、それに冷静にツッコミを返す学園長。
横島は返されるとは思ってなかったらしく、想定外の人物に驚いている。
見詰め合うこと数分、学園長がその何ともいえない沈黙を破った。
「そろそろ話を進めてもいいかのぅ?」
横島は「話し?」的な感じで首をかしげている。
本当に分からないのか何度も首をかしげる動作を繰り返しながら、学園長のほうを見つめている。
そしてそのまま数十秒―――。
「……本当に記憶喪失になったわけではあるまいのぅ? ま、ほとんど気を使った後みたいじゃったし、多少の記憶の混乱があってもしょうがないの」
「……記憶の混乱?――――っは、そうだタマモたちは!?」
やっと思い出したのか、慌てて辺りを見渡しながら学園長に詰め寄っていく。
だが、まだ歩けるほど回復していないのか途中で力尽きて倒れてしまった。
それでも立ち上がろうとするのか机に手を突きながらも、何とかしようと足掻いている。
「そう叫ばないで貰いたいのぅ……。君の質問に答えるために話を進めるのじゃからな。してタマモ君たちがの容態と居場所を聞いていると思うのだが、無事に保護し、ちゃんとした部屋に寝かせてあるでな」
今度こそ安全なのか尋ねた後「そっかぁ……」とひとまず安心したのかその場にへたり込む横島。
それを見て優しげに微笑んだ学園長だが、一転顔を引き締めると。
「それではこちらからも質問したいのじゃが良いかの?」
「あ、どうぞ。答えられる範囲でなら答えます」
「答えられる範囲でか……ま、いいじゃろう。さて、直球ですまんが、あの蝿みたいな悪魔はなんじゃ?」
いきなりその質問がくるとは思っていなかったのか、一瞬戸惑いを見せた後
「以前、知り合い―― 美神令子の関係で関わっただけですね。単なる顔見知りぐらいです。なぜか恨みをもたれてますけど」
横島はこの返答に2つの希望をかけていた。
まずベルゼブルとの関係を先に明言しておいて、更なる追求を防ぐのがひとつ。
もう1つ ――こちらのほうが重要なのだが、美神令子の名前を出したときの反応を見たかったのだ。
もしここが自分たちの世界なら美神令子の名前を知らないはずが無い。
GS関係に疎い人間でも人界での大事件、アシュタロスによる事件は全世界の人間の知るところである。そして、そこで活躍したGSたちの筆頭の美神令子も全世界の人間は知っていても可笑しくないのである。
もし反応が期待通りのものでないのならば、ここは……
「ふむ、単なる顔見知りのぅ…………しかし、美神令子とやらの名前は聞いたことが無いのだが、新米の者なんじゃろうか?」
決定的だった。
まだ確証ではないが、別の世界に飛ばされた可能性があがってしまった。
学園長の言葉を聞いた横島は少し考えると。
「そうですか……。それで俺たちはこれからどうすればいいんですかね?」
「先刻も言ったとおり住居はこちらのほうで用意しておくのでの、心配はせんでよいじゃろ。ただ」
「ただ?」
「監視はつくことになると思うので、そのへんは承知してくれんかのぅ? なに、日常生活を四六時中監視してるわけでは無いので、プライバシーまでは侵害せんと思うんじゃが」
学園長の提案に対して、横島は迷わず即答した。
「その辺は怪しい人物に住居を貸すのですから、監視ぐらいはしょうがないですよ」
その後、連絡方法などを話し合ってから、横島はタマモたちがいる部屋へと足を運ぶため部屋を出て行った。
学園長はしばらく横島が出て行ったドアを見つめていたが、新たな客が来たため視線を手元――書類の束へと向けた。
その客はソファーに座り、学園長の手が物凄い速さで動いているのを見守っている。
部屋の中には筆の音と、紙のすれる音だけが響きわたる。それにいい加減あきたのかタカミチは口を開いた。
「いいんですか? 彼みたいな怪しいのを放っておいても」
「何、心配は無用じゃろ。彼の目は嘘をついている目とは思えんのじゃよ。全部を語ってるわけではないと思うがの。そうじゃ、頼みたいことがあるんじゃがのぅ、美神令子という人物について調べて欲しいのじゃ。こちら側の世界の人間が可能性が高いので案外簡単に見つかるじゃろ。頼めるか?」
「えぇ、大丈夫です。しかし、そのような人物の名前聞いたこと無いですねぇ。美神なんて苗字珍しいし。とりあえず国内から探し始めます」
では、と声をかけてからドアから出て行く。
その後ろを見届けると、また手元の書類に目を向けた。
「それにじゃ、世界樹にはってあった札が関西のものだとすると、横島君の問題だけじゃなくなるしのぅ」
「どうしようかの~」などと本当に困っているのか、困っていないのか分からない能天気さで言いながら、筆をはしらせた。
そして部屋には筆の音と、紙のすれる音しかしなくなった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ドアを開け、清潔感あふれる部屋に彼女たちはいた。
横島よりも先に起きていたのか、すでにベットに寝ていないで、その上に座っていた。
「あ、先生……」「ヨコシマ……」
「……よっ、わりと大丈夫そうだな」
シロとタマモは横島が入ってきたことに少し驚き、横島のほうは暫くの沈黙のあと、静かに声を掛けた。
しかし、その言葉を発してから三人は無言になり、黙ったまま時計の針の音だけがする。
先ほどの学園長と横島の間にあった沈黙ではなく、単にお互いを心配して、何を話せばいいか分からないのである。
シロはシロで横島の方をチロチロ見れば、顔を俯かせ。タマモはタマモで腕を組んだままムスッとしている。
それを見た横島は頬を指で掻き
「あ~……その、スマン!!!」
「「へ?」」
いきなり頭を下げて謝ったのである。
それにたいして予想外れだったのか、二人して意味が分からないと言っているような顔をした。
「なんだ……ここに来ちまったのもオレの所為みたいなもんだし、危険な目に合わしちまうし……」
前半を聞いたときには少し機嫌が良くなった顔をしていたが、後半部分は二人とも拗ねたのか口を尖らしていた。
頭を下げている横島はそれに気づいていないみたいが。
タマモを相変わらず腕を組んだまま、横島の頭に向かって
「確かにここに来たのはヨコシマの所為ね」
それを聞いた横島は、改めて他人の口から言われるとショックなのか、肩を落としている。
だがタマモは声を落として
「ま、半分は私たちの所為でもあるんだけどね」
とぶっきらぼうに言い放った。
横島は「なんで?」と顔をあげてみると、そこにはうな垂れたシロがいた。
「拙者が無闇に近づいて、引きずり込まれなければ良かったんでござる」
筋肉魔族と横島の間に割って入ってきた二人だが、シロのほうは霊波刀で敵の攻撃を防いだところ「宇宙のタマゴ バリアver」によって引きずり込まれてしまったのである。
その後、シロを助けようとしタマモも引きずられ、横島も引きずり込まれてしまったのであった。
そのことについてシロはうな垂れていたのである。
「それよりも最後の『危険な目に合わしちまうし……』ってのが気に食わないわね。そのぐらいの気構えはできているし、ミカミとの仕事でも危険な目には合うわ。いちいちその度に謝るのは面倒だし、私たちに失礼でしょ」
後ろではシロがしきりに頷いているし、時折「武士たるもの……」などと呟いている、タマモはタマモで「ヨコシマなんて仕事以外でも危険じゃない、ミカミの折檻とか」と、これまた思わず納得してしまう事を言っている。
横島はそれに反論は無いのか目の幅の涙を流しているだけである。
ランクはあがっても横島は横島なのであった。
「……それで、話はもうしたんでしょうね?」
「あぁ、親切な人でな。住居も用意してくれたし、戸籍も用意してくれるってさ。監視はつけるとか言ってたけど」
「よかった~。いくら春だからって野宿はイヤだったからね」
心底安心するタマモに引き換え
「弱っちいでござるなタマモは。このぐらい野宿なんていくらでも出来るでござる」
「あっそ。じゃああんただけ野宿してなさいよ。その間私は横島と甘いひと時を過ごすから。ねっ?いいでしょヨコシマァ」
妖艶に笑うと、横島の胸に顔をうずめて上目遣いに言ってくるタマモ。
シロはそれを見て歯軋りをしているが、当の横島はというと
「タ、タマモ……お前いつからそんなキャラになったんだ?」
顔を引き攣らせながらも、なんとか言葉を出している。
それは恥ずかしがっているというよりも、不気味がっていると言ってもいい。
それを見たタマモは少し不満そうにすると
「九尾の狐は誰かに庇護を求める存在なのよ。前はミカミだったけど、今はいないからヨコシマになっただけの話よ。ま、不本意ながらだけどね。本能ってことで諦めるしかないみたいね」
「不本意とかいって、なんだかチクッショー!!!! でもオレはロリコンじゃないから無問題!!!」
「タマモなんて眼中にないでござるよな、先生~」
「それはそれで九尾の名が傷つくはね……」
「やれやれ、とりあえず仮住まいの場所に案内してもらうか……」
心配して損した、といった感じで頭をかきながら出口に向かう横島、そのあとに騒がしも続くシロタマコンビ。
ドアを開けて進む、それは新たな世界での生活を受け入れるための儀式のように…………。
つづく
あとがき……みたいなもの
やっとこさっとこ投稿することができました。
遅いとおもっている少数の人、こんな作品あったの?って思う大多数の人も読んでくれると嬉しいです。
後書きを作品の後ろに書こうか迷いましたが、他に方法が思いつかなかったので、書かせてもらいました。
まぁ、長くならないようにしますがね^^;
では書き込んでる時間が遅いので、このへんで~バイチャ!
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