プロローグ(後編) 投稿者:伯約 投稿日:05/07-13:19 No.452
―星の墓場
どんな場所か説明しようとする厄介である。
なぜ厄介かと言うと、一言では言い切れないのである。
まあ、説明していくとまず、目に付くのが地面に埋もれる土星。
いや、ミニチュアと言えるほどちっさくしたものだが。
次に、灰色の小人。これは説明のしようがない。
そして、真っ赤な人形のでっかい鉄の塊。これは固有名詞を使って説明できてしまう。
赤い○星と。
などなど、そんな変わったものばかりがある。そんな場所だ。
「ふむ、相変わらず変な所だな」
「いえいえ、ある意味ここはワンダーランドですよ!!」
ラハールのぼやきに意味不明なことを言うフロン。
「で、エトナ。その空間の歪みはどこにある?」
「たしか、このへんですけど…。あれじゃな…」
エトナと呼ばれた少女が答え終わろうとしたとき口をあんぐり開けていた。
そこにあるのはどでかい空間の歪みであった。
大きさにして魔王城ほどである。
「デ、デケーっす!」
プリニー三匹のうち一匹がそう言った。
「大きいですね」
「はーはっはっはっはー!!これぐらいオレ様が吹っ飛ばしてくれる」
ラハールはそう言うと、手に魔力をこめはじめた。
「殿下、さすがにそれは無理じゃ…」
エトナがあきれながら言った。
「ふん、無理ではない。オレ様は不可能を可能にする魔王なのだから!!」
「いやいや、それ以前にあれがどうなっているのかわかりませんし(ちったー頭を使え!!このクソジャリ!)」
エトナは内心悪態をつきそう言った。
「そうですよ、ラハールさん。ここは慎重にいかないと」
「ふむ、そうだな…」
ラハールはエトナとフロンの言うことに頷いた。
その時、プリニー達はいやな悪寒が走った。
「よし、お前ら入って確かめて来い」
予感的中。
「え、オイラたちっすか?」
一匹が恐る恐るラハールに確認する。
「ああ、そうだ」
即答。
「そんなの、オイラいやっすー!」
「自分で確かめてほしいっすー!」
「そんなの、横暴っすー!!」
プリニー達は口々に文句を言い、首を横に振る。
プリニー達に首は無いのだが。
「えーい、うるさいやつらめ。エトナ、やれ!!」
「はいはーい、ここはエトナにおまかせあれ!」
エトナはラハールの言ったことを二つ返事でOKした。
「んじゃ、あんたたち逝ってきなー!」
そう言うと、エトナはプリニー達を空間の歪みに蹴り飛ばした。
『ゲシッ』『ドカッ』カキーン』
「ひ、人でなしー!」
「呪ってやるっすーー!!」
「字が何気に間違ってるっすーーー!!!」
と、口々に言いプリニー達は空間の歪みに飲まれていった。
「い、いいんですかそんなことして?」
フロンが不安そうに言う。
「いいの、いいの。それでついでに…」
エトナはそう言いながら、にやにやして、プリニー達が空間の歪みに飲まれていくのを見ているラハールの後ろに回りこみ―
「あんたも一緒に、くたばりなーーー!!!」
そう言い終らない内にエトナはラハールを蹴り飛ばした。
「ぐわ~、何をするエトナーー!覚えておけーーー!!!」
ラハールはそう言いながら空間の歪みにのまれていく。
「な、何してるんですか!エトナさん!!」
フロンは驚いて、エトナに言った。
「この先おもしろいものがあるとか言って殿下が勝手に飛びこんだのよ」
エトナは適当なことを言った。
「え、そうなんですか?」
エトナの嘘を真に受けるフロン。
「そうなの、そうなのよフロンちゃんも行ってみたら(本当に信じてるよ、この天然堕天使)」
内心そんなことを思いながらそれに便乗するエトナ。
「う、う~ん」
フロンは考え込み始めた。
「このさきにヒーローがいるかも」
ボソッと言うエトナ。
そうすると
「行きます!!私もいってきます!」
実はフロンはヒーロー物アニメや特撮番組が大好きである。
「んじゃ、いってらっしゃ~い!(ふう、これで当分うるさいやつらはいなくなる。その間にあたしは…)」
エトナがそう考えていると、
「さあ、行きましょうかエトナさん!」
「え、あたしも?」
エトナは間の抜けた顔を一瞬する。
「それじゃあ行きますよー、とおーー!!!」
フロンはエトナの手をがっしりとつかみ勢いよく空間の歪みに飛び込んだ。
「な、なんであたしまで~」
「いやー、わくわくしますねエトナさん」
「するかー!!」
エトナの叫びは無常にも空間に響き渡る。
そうしてラハールたちは空間の歪みにのまれていった。
どこに行くのか。
そして、何が起こるのか知らないまま…。
今、かみ合うはずのない運命という歯車がかみ合いまわり始めた。
それがどうなるのか誰も知らない……。
『次回予告』
エトナ「変な時空の歪みに呑まれたあたしたち!!」
ラハール「貴様が、オレ様を突き飛ばしたのだろうがー!!」
プリニー「ヒドイっすよ、エトナ様!」
フロン「イヤー、わくわくしますね!!」
ラハール「するかー!」
エトナ「そこは魔法の世界だった!」
ラハール「いや、普通に魔法ぐらい使えるだろう?」
フロン「ダメですよ、ラハールさん。普通の人は魔法が使えないんですから」
ラハール「そうなのか?」
フロン「そういう設定なんです!」
エトナ「そして、あたしは魔法使いとして覚醒する!」
プリニー「なんともツッコミどころが満載っすね…」
エトナ「ラス・テル・マ・スキル・マギステル
次回『魔法美少女エトナ』
第1話『目覚めよ、エトナ』
あなたのハートに魔法をかけちゃう!」
フロン「私も覚醒します!!」
ラハール「するなー!!」
中ボス「またしてもワタクシの出番が……」
ラミントン「所詮、私たちはワキ役ですからね……」