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第9話 対立 投稿者:八尾 投稿日:08/21-16:49 No.2825
彼女に迫り来るは11の光弾
一つ一つの威力は弱いが、それでも集まれば人一人殺すには十分な力
魔法によって生まれた彼らは、主の名の下に得物へと襲いかかった
麻帆良の木々が桜色一色に染まっているとある春の一日、十六夜はエヴァから連絡を受けた。
「茶々丸が今一人でな。私の用事が済むまであいつの側に居てくれないか?」
現在彼女はネギと仲違いをしており、もしかしたら茶々丸が一人になった所を狙われるかもしれないとエヴァは考えているらしい。
事情を知っている十六夜はこれをすぐに承諾した。
ネギとは友達だが、それ以上に生徒であり妹のように思っている茶々丸が危険な目に会うのは放ってはおけない。
茶々丸が行きそうな場所をエヴァに聞いて、十六夜は学校を出た。
「遅かったか」
猫が集まるこの辺りに探し人(ロボ?)がいると聞き来てみると、既に戦闘は始まっていた。
どうやら始まった直後らしく、ネギと一緒にいたアスナが茶々丸に向かって飛び出していくところだった。
(あいつ、あんなに早かったっけ?)
スタートダッシュからトップスピードのような速さで駆け寄り、茶々丸に攻撃していくアスナ(一撃目は何故かデコピン)。
それからも様々な戦闘術をインストールしたロボットと互角に戦い続ける唯の女子中学生(。
予想外の事にポカンとしていた十六夜だが、ネギが呪文を唱えだした時に我に返る。
ネギの周りに現れた光の球は十六夜でもよく知っている魔法使いの基本攻撃呪文、『魔法の射手(』。
その威力も勿論十六夜は知っており、彼のI-ブレインが「このままでは茶々丸は死ぬ(」という結論を瞬時に出す。
「魔法の射手(、連弾(・光の11矢(!!」
ネギが発射した魔法の矢は追尾機能をもって確実に目標(を仕留めようと狩りに出るた。
至近距離によるこの攻撃を避けきれるだけの機能や武装は、今の茶々丸にはない。
僅かな希望を持って今までの記憶をメモリーに保存。
もしこれが無事なら、これを別のボディに入れれば生き返ることは出来る。
それは機械ならではの蘇生法。
それと同時に自身のマスターであるエヴァ、そして先ほどまで餌をあげていた猫たちを視界画面の隅に表示して、
「すみません、マスター‥‥もし、私が動かなくなったらネコのエサを‥‥」
遺言をポツリと口に出し、最後に「あげておいてください」と言おうとした瞬間、
バババンッ!!!
彼女の目の前に淡青色の氷の板が十一枚出現し、光弾がそれぞれに衝突。
茶々丸への攻撃を全て受けきり、彼女を守った。
「えっ!?」
「何だ!?」
「何あれ!?」
ネギ、カモ、アスナが驚きの声を上げる。
無理もない。
何の前触れもなく現れ、自分たちの攻撃が防がれたのだ。
しかしそれを見て、同時にネギは心の中でホッとした。
カモの煽りに押されて打ち出した矢は、あのままでは確実に茶々丸を殺していた。
彼は彼女を守ったまだ見ぬ人に感謝をすると同時に、身を引き締めて目の前で今尚茶々丸の前に浮かんでいる氷を見た。
磨いたかのように凹凸のない平面をもつそれは、明らかに魔法で作り出された類だ。
氷は魔法の基本属性の一つであり、この系統を使う魔法使いは数多い。
しかし魔法とは何処か違う気がする。
確かに呪文も聞こえなかったし、魔力も全く感知出来なかった。
しかしこれは一流の魔法使いならばやろうと思えばできること。
しかしそれとは別に何か違和感に触れる。
これは生まれた時から魔法が身近にあったからこそ感じ取れるものなのだが、今の彼にその何かは解らなかった。
そこまで考えて彼は気付いた。
「え・・・・」
いつの間にか、自分たちと向かい合い、茶々丸の側に立っている一人の男性のことを。
「十六夜、さん?」
ネギの担当するクラスの副担任。
この学園に来て最初に出来た友達。
世話になったのは一度や二度ではない。
その彼がパチンと指を鳴らした瞬間、十一枚の氷の盾全てがゴトンと地面に落ちた。
「なんでここに谷川先生が?」
アスナが疑問に思った事をそのまま口に出す。
夕方の時間、この場所には滅多に人は来ない。
小学生の時から麻帆良にいた彼女はそのことをよく知っている。
それにネギが人払いの結界というやつを張っており(どういう仕組みなのか彼女には解らないが)、ここに一般人は来られないはずだ。
それに先ほど、彼の指パッチンを合図に、茶々丸を守っていた氷が落ちた。
ここまで情報を与えられて眼前に出されれば、幾らバカレッドと呼ばれている自分でも気付く。
「先生が・・・・魔法使い?」
「おいてめぇ、何しやがんだ!?」
カモはこの麻帆良に来てから、何度か彼に会ったことがある。
同じ寮に住んでいるし、ネギに引っ付いている時は職員室などで何度か顔を見かけた。
それにネギから、彼は魔法使いであるという説明も一応受けている。
だから彼が魔法を使ったことには別段驚きはしない。
しかしである。
ネギが彼の話をする時は、どこか嬉しそうだ。
父親に憧れを抱いているネギは、そういう風に接してくれる十六夜を、父とまでは行かないが頼れる兄として見ていた。
それを知っているカモは、だからこそ目の前に立っている男が許せない。
茶々丸を守ったのはどういう事だ?
彼女は凶悪な吸血鬼の従者であり、自分の兄貴分であるネギの命を狙う一人だ。
それを守ると言うことは、彼はエヴァ達に協力していると言うことになる。
どうしようもなく一方的な考えではあるが、カモは裏切られたような気持ちで、十六夜を睨んでいた。
ネギ達の声を無視して、十六夜は茶々丸に声をかけた。
「動けるか?」
茶々丸は簡単な動作チェックをして、
「はい、大丈夫です」
「じゃあ家に帰れ。もうエヴァも帰っているはずだ」
「十六夜さんは・・・・?」
「俺は少し、ネギ君達と話がある」
茶々丸が去っていくのをネギ達は黙って見送った。
今は彼女よりも優先しなければならないものが目の前にある。
「十六夜さん、どうして貴方がここに?」
少し落ち着いたのか、ネギは慎重に尋ねた。
「エヴァから連絡をもらってな、彼女から茶々丸の護衛を頼まれた」
「エヴァンジェリンさんに・・・・・」
ネギは少し考えるためにそこで言葉を句切った。
今、自分と敵対関係にある彼女に協力する十六夜。ということは・・・・
「おい!お前、エヴァンジェリンの仲間だったのか!?!」
ネギが考えたことをカモがそのまま口に出して問い質す。
「仲間・・・というより友達だな」
「友、達?」
「ああ、そうだ。それに撫子のこともあるからな、結構仲良くさせてもらっているよ」
撫子さん・・・
ネギは毎日のように顔を会わす寮長(裏)を思い出す。
確かに彼女は茶々丸の妹という説明をしてもらったことがある。
「それよりも、だ」
十六夜の声にネギは改めて考えを止める。
「君たちは先ほどやったことは、正しいと思っているのかい?」
「それは・・・・・」
改めて聞かれると、これほど答えにくいものはない。
「だ、だってしょうがないじゃない!そうしないとネギが殺されるかもしれないのよ!?」
「そうだぜ、殺らなきゃ殺やられちまうんだ!!」
アスナとカモは自分たちの行いは止むないことだと声を上げる。
「だから殺すのか?生徒を、クラスメイトを」
「うっ」
「それは・・・」
十六夜が止めていなかったらどうなっていたことか。
聞きたくなかった現実を言われる。
「補習授業だ」
十六夜が静かに言う。
「戦場では最後に生き残った者が勝ち。その間に例えどのような卑劣なことが行われようと、相手を殺して自分が生きていれば勝利を掴んだことになる」
そこで一息置く。
「そう言う意味で見れば、今回君たちの行いは正しい。茶々丸は敵側の片割れ。単純に戦力が二分の一に出来ると言っても過言ではない」
「じゃ、じゃあ」
「さて、ここで一つ、君たちに質問だ」
アスナの声を遮る。
「話し合いはしたのか?」
「え?」
「話し合いはしたのか?武力行使の前には絶対に話し合いが行われる。それがないのは何らかの特別な事情か、相手が聞く耳持たずの時だ。俺が知る限りお前達にそんな事情があるとは思えないし、エヴァも茶々丸も話は聞く方だ」
少なくともこれは十六夜から見た限りであって、ネギ達がどうなのかは知らないが。
「し、しましたよ。さっきだって茶々丸さんにやめてくださいって言いました!」
「それで?」
「それで・・・駄目だって言われて」
「それで?」
「だから仕方なく・・・・」
「仕方なく?」
「攻撃を・・・・」
十六夜に押されてだんだん小さくなっていくネギの声。
「そ、そうよ、仕方がなかったんだから。一応説得はしようとしたのよ?でも茶々丸さん、意志が固くて‥‥」
「そうだぜ!だったらあのロボをやっつけて今後俺たちに有利になるようにしようとだな」
アスナとカモが必死にネギの援護をする。
それを聞いた十六夜は、何か考えるように赤く染まりだした空を暫く見上げた後、再び彼らの方を向いて。
「だったらネギ君、エヴァに狙われない、いい方法を教えてあげよう」
「え、本当ですか!?」
すぐさま食い付くネギ。
「ああ、おそらくこれ以上にないほどの最善策だ」
にっこりと笑い、十六夜は言った。
麻帆良から出て行けばいい、と。
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