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Act.00 【運命の前夜】 投稿者:蓬莱 投稿日:04/30-01:39 No.424

『ここは死を呼び込む世界だ』


 神楽坂明日菜は率直にそう思った。
 辺り一面には吐き気がする程の真っ赤な血血血血血血血血血血。
 これが全て人の血だと思うと、憎悪と共に嘔吐してしまいそうだ。
 だが神楽坂明日菜はそうしなかった。
 否、するわけにはいかないのだ。
 何故なら自分は大切な人の剣なんだから。
 彼は無茶をし続ける。正義の味方ではないが、大切な人の為なら平気で命を投げ出してしまう。
 それは自分がとてつもなく嫌だった。
 初めて彼と出会ってから、自分は守られ続けてきた。
 だから自分は強くなろうとした。そして彼の剣になる事にした。
 ……競争率は激しく高いけど。
 軽いため息と共に後ろを見ると、そこには、彼の翼や杖になった少女達がいる。
 その中には『裏』の世界とはまったくもって無関係な人もいる。
 彼はその事を気にしているが、彼女達は気にしていないだろう。
 気にしている余裕などない。彼が進む場所には戦場が多い。
 だが彼はそんな事を気にせず、進み続ける。
 そして辿り着いたのはこの場所。
 何もない荒れ果てた荒野は、紅い紅い血で彩られている。
 だがそんな事を気にしない、と言わんばかりに、天には白い月が存在していた。
 パタリ。と彼が歩みを止めた。私達も同じように歩みを止める。
 彼の視線の先には、一つの人影。
 この世界の製作者である女がそこに居た。
 『白い月』、『月の歌姫』。
 前者の名は偶然に彼女を知った人物から付けられた渾名。
 後者の名は必然に彼女を識った人物から付けられた渾名。
 彼女は恐ろしい、関わるな。などの意味で知られている。


「まさか辿り着くとは思わなかったよ。門番にはそれなりの怪物を置いておいたんだけど」


 確かに。と神楽坂明日菜は頷いてしまう。
 だが所詮まがい物。本物の方々には遠く及ばない失敗作。
 あの『白き姫』も『混沌の吸血鬼』も『闇に染まった騎士王』も『黄金の英雄王』も。
 所詮まがい物。だからこそ彼の一向は辿り着いたのだ。


「あんな偽物で俺を……俺達を止められると思うな」
「それは失礼をしたね。でも十分に誇れる事だ。君達の先輩に充たる奴等は簡単に、彼等に敗北しているんだから」


 先輩と言うのはきっと、自分達よりこの場所にやってきた人達の事だろう。
 だが殆どの人は、彼女の姿を見る事なく、下の門番達に抹殺されたのであろう。
 つまりここに来たのは……。


「そう。■■家の人以外でここに来たのは君達が初めてだよ」


 彼女は美しい笑みで言った。だが、それに見とれている時間もなければ余裕はなかった。
 彼のパートナー達も各々の武器を取り出す。
 ここが最後の難関。目の前にいる『月の歌姫』を倒さなければ、彼の望む物には辿り着けない。


「さて、始めようか。君達も知っていると思うけど、この先に『 』に至る道がある。抑止力なんかない道がね」


 魔術師達は一つの道を模索していた。
 それは『  』への道。アカシックレコードとも言っていいかもしれない。
 だが、その道は果てしなく遠く終わりのない道。
 どれだけ人が世代を重ねても、決して届く事はない。


「……ああ、お前を倒して辿り着いてやろうじゃないか」


 それだけ言うと、彼は腰の鞘から二振りの短剣を取り出した。
 『干将・莫耶』
 それが短剣の銘である。
 とは言ったものの、その黒白の短剣は本物ではない。
 『魂ある贋作』
 この贋作を作った人物の仲間をそう評した。
 その贋作は今、彼の手の中にある。
 その短剣の銘に恥じないように使いこなす。それが一つの答え。


「さて、やろうか。この最高のお祭騒ぎ――殺しあい――を盛り上げる為に!!」


 『白い月』は刀を構える。彼等もそれぞれのポジションに付き、武器を構える。


「行くぞ!!■■■■!!」
「来い!!ネギ=スプリングフィールド!!」























魔法先生ネギま! NEO


















 その日の天気は快晴だった。雲一つない空。蒼穹の名が相応しいように。
 ここはウェールズの山奥。ここには決して小さくない街があった。
 この街は世界にある数少ない『魔法使い』の養成学校がある街である。
 そんな中、養成学校では一つの儀式が行われていた。
 その儀式の名前は『卒業式』。学生達が『立派な魔法使い』への道の機転である。
 しかし、学校で教えて貰えるのは『魔法使い』の基礎である。
 これから各々の修業地に出向き、それぞれ目指している『立派な魔法使い』になるべく修業するのである。
 『立派な魔法使い』。それは世の為、人の為に陰ながら力を使う者達の事をさしている。
 もちろん、全ての魔法使いがそんな考えを持っているわけではないが。
 さて。どうやら卒業式も無事終了した様子。そんな中、魔法学校の中庭には二つの影があった。
 その者の名前は『ネギ=スプリングフィールド』と『アーニャ=シュルネイト』。
 第○×期生の首席と次席の肩書きを持ち、学校1変り者で有名な二人であった。
 この二人は変り者である。それは学校の共通認識である。
 何故なら、彼等は自分達の事を『魔術師』、『魔術使い』と呼んでいるからだ。
 学校側としては『魔術師』も『魔術使い』も『魔法使い』と一緒なのだが、彼等はこの二つを使い続けていた。
 もう一つは彼等は時折フラッと行方不明になる事だ。
 その期間は短い時は一週間ぐらいだが、長い時は半年近くも行方不明になっている。
 そんな状況でも定期テストにおいて、は一位二位のコンビであり、校長の力添えもあり退学にはならなかった。
 無論、校長とて行方不明中何をやっているかは完全には分からない。
 だが彼等は行方不明から帰って来ると、逞しく成長しており、大人ですら舌を巻く成績を叩きだすからだ。
 まぁ、そんな理由に支えられ二人は無事に卒業式を迎えられたのだ。


「ネギ。修業の地は何処?」
「そろそろ、出てくる筈だけど」


 中庭のベンチに腰掛け、二人で修業地が浮かびあがる用紙を見ていた。
 アーニャのほうはロンドンで、占い師をやる事になっている。
 ネギは何処で何をするのか?
 これにはネギよりも、アーニャのほうが緊張していた。
 ネギは冷静沈着に見えて、実は猪突猛進な所があるからだ。
 しかも、突進中は自分の事を意にかけないもんだから始末に悪い。
 アーニャはネギの横でため息をついた。
 ネギの本質を知ったのは四年前だ。そこで知った本質は、彼女を驚愕させ恐れさせるには充分だった。
 だからこそアーニャは修業先でネギが、無茶をしないか不安なのだ。
 そもそも自分達に、この『世界』での修業はいらないと思ったりする。
 本気になれば、大人の魔法使いにだって負けない自信があった。
 だからと言ってやめる訳にはいかない。この修業が終わって初めて免許が貰えるからだ。
 とは言ったものの、アーニャにとって『魔法使い』の免許が、何処まで役にたつかわからない。
 何故ならアーニャが目指しているのは『立派な魔法使い』ではなく、『ネギを支える従者』だからだ。
 ネギを支える。そう決めたのは彼の本質が分かってからだ。
 彼の幼馴染として、そして一人の女として。
 アーニャはネギを支えたいと願う。


「おっ、出た」
「っ!?」


 ネギの声に反応して、アーニャの意識はネギの持つ用紙に釘づけになった。


「えーっと……」
「……」
『A TEACHER IN JAPAN』


 幼馴染パワーか、二人同時に、はもって声に出して読み上げてピシリと固まった。
 数十秒の硬直後、二人は顔を見合わせ、目を擦った後、改めて読み直すが内容は変わる事はない。


『なにいぃぃぃぃぃぃ!?』


 二人の魂の叫びは学校中に響き渡った。




















「マジ……よね?」
「多分……」


 なんとか意識を復活させると会議を始めた。
 正直な話、学校の先生が『立派な魔法使い』になる為の要素を、含んでいるのかが、さっぱり分からない。
 そう言う点では占い師のほうがあっている。
 そしてアーニャは内心動揺しまくっていた。
 まさかネギが日本に行くなんて。そんな遠く離れた場所にネギが行くのは恐怖以外の何物でもない。
 ネギを助けに気軽に日本に行くなんて事は不可能だ。
 だが決められた場所を変更するのは不可能であろう。


「ねぇ、ネギ。一人で大丈夫?」
「俺の大丈夫……じゃ、納得しないよな」
「当たり前じゃない!あんたの大丈夫にどれだけ前科があると思ってんのよ!!」


 ネギの大丈夫は確実に信用出来ない。
 だからこその不安。ネギを一人にしていいのか。


「アーニャ?」
「決めた!!」


 突然、叫ぶアーニャ。それに少し驚くネギ。そんな中、アーニャは一つの決心をした。
 今すぐには行けないなら、さっさと自分の修業を終わらせてしまえばいい。
 単純かつてっとり早い方法を決めると、アーニャはネギと向かいあった。


「出来るだけ無茶しないでね」
「アーニャ……」
「あんたが無茶するのは、よーく知ってる。だから早くそっちに行けるように頑張るから」
「ああ、分かったアーニャ……っ!?」


 その時、ネギは自分に起こった出来事を、直ぐには理解出来なかった。
 だが数十秒かけて理解した。自分とアーニャがキスしているんだと。
 キスをしたまま、数十秒たつと自分達の周りに光が放たれた。
 光が収まり、唇を離すと一つのカードが出来上がっていた。


「へへへ、私の気持ちはこう言う事だから」


 パクテイオーカードを見せて言うアーニャ。
 カードには、赤いローブを身に纏い、星のような煌めきを持った杖を構えたアーニャの姿が描かれていた。
 【尊き占い師】。それが彼女に与えられた銘。
 何よりも大切な人を守りたいと願う新たな想いである。
 アーニャはオリジナルからコピーを作ると、オリジナルをネギに渡した。
 ネギとアーニャの契約の証。それを受け取ると、ネギは頷いた。


「ああ、待ってるよアーニャ」















 こうして物語は始まりを迎える。
 何よりも弱く。何よりも臆病で。何よりも強い少年の物語が――。

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