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-第8章-七色集いて、王再臨す 投稿者:kaname 投稿日:09/20-12:22 No.1320
―――――SIDE:悠二
ネギ君の初授業は散々だった。
明日菜ちゃんがネギ君を疑ってるらしく、輪ゴムを発射台代わりにして、様々な物をネギ君に向けて撃ってきたので、(結構痛いんだよね、アレ)露骨に邪魔していたら、ネギ君を狙うのは止めてくれた。
あくまで、ネギ君を狙うのはね・・・・
後半は僕を狙ってきて、大変だった。
それを見たネギ君が怒っている所に、クラス委員長の雪広さんの告げ口をしてきて、それをネギ君が真に受けちゃって、その所為で雪広さんと明日菜ちゃんが大乱闘を始め(誤字に非ず、かなりの頻度で起こるらしい)ちゃって、それを鎮めている間に授業の終わりのベルが鳴ってしまった、という訳で今に至る。
因みに今は、
「高畑先生、こいつ等全然駄目ですよ。
高畑先生の方が100倍、いえ1万倍マシですから、どうかまた2-Aに戻ってきて下さいよ~~~」
てな感じで明日菜ちゃんがタカミチに泣き落としを仕掛けている最中だ。
ネギ君は僕の隣で頬を膨らまして怒っている、ネギ君が言うには授業中に自分はともかく、僕を狙ったのが許せないらしい。
嬉しい事言ってくれるね。
因みにネギ君が頬を膨らましながら怒っているその姿を、柱の陰でハアハア言いながらビデオカメラで一心不乱に撮影している雪広さんはいないものと思った方が良いのかなあ?
その瞬間、僕の背筋に寒い物落ちたようになる。
封絶の気配、しかもこの中等部校舎の屋上を中心に半径600m程の大きさでだ。
かなり大型の封絶である事から考えると、王クラスの徒が戦闘の為に張ったものだと思われる。
僕はネギ君に意思を伝えると、屋上目指して走り始めた・・・・・
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――SIDE:〔天上星団〕
〔天上星団〕の拠点にして、要塞たる超大型の宝具『至天連環』内部に凄まじい轟音が響く。
五宝星の一角たる紅世の王『神名の剛腕』バグレンが『至天連環』の内壁を殴る音である。
「何故だ!!?
何故私に出撃許可が下らず、あの死に損ないの『千変』如きに出撃許可が下るのだ!?
20年だ!! 私はもう20年も待ち続けたというのにっ!!」
バグレンはそう吐き捨て、目元に涙をうっすらと浮かべながらも壁を殴り続ける。
「『千変』はかつて程の力を持ち得ません。
力を20年もの間、蓄え続けた『零時迷子』のミステスには到底敵わない事を見越しての配慮でしょう。
それに、貴方が討滅されでもしたら・・・」
傍らにいた『砕氷の暴風』アニュエラが心の底から心配そうにバグレンに向けて言葉を放つ。
「そう言う問題では無いのだ・・・
そう、私は只宿敵と闘う為にこの永き時を過ごしてきたとすら思っている。
その私から宿敵を取り上げようとは、幾ら帝といえども譲れん!!!」
しかし、その様なアニュエラの思いも届かず、バグレンは猛り、今にも要塞を飛び出して〔麻帆良〕に向かおうとしているようだ。
「止めといた方がい~よ~。」
間の抜けた声が二人を射抜き、緊張を霧散させる。
其処には、『絶刻の王環』エクリプスがいたが、いつもの彼とは明らかに違った。
それもその筈、彼の胴体は殆ど抉り取られており、左腕と左脚が僅かに形を保っている程度。
頭は生首と言っても可笑しくは無く、それでも何時もの人を小ばかにした様な笑みは健在だった。
「『絶刻の王環』、その姿は一体?
誰にやられたのですか?」
アニュエラがあくまで冷静を装っているが、その実今にも声を上げて笑い出しそうである。
因みにバグレンは隠そうともせず、笑い転げている。
「なんかムカつくけど・・まあいいか。
ついさっきまで召喚の儀式をやってたんだけどさ、如何やら当初の目的とは違うもの喚んじゃったみたいなんだよね。
そいつにこんなにされちゃった。」
その言葉にアニュエラとバグレンの顔から笑みが消える。
それもその筈、エクリプスに傷を付けるのは並大抵の事では無い、たとい爵位級の悪魔の放つ全力の一撃であっても、彼に掠り傷を負わせる事すら難しいのだ。
とどのつまり、アニュエラとバグレンは大方エクリプスがうっかり失敗して自分を巻き込んだ程度だと思っていたから、笑っていられたのだ。
「それならば、一体誰が彼方にそれ程の傷を?」
「それは言えないよ~♪
取り敢えず僕は回復に努めるから何かあったら、僕の寝所まで宜しく!」
そう言うと、エクリプスは自分の寝所へとワープした。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――SIDE:『絶刻の王環』エクリプス
あ~あ、失敗しちゃったなあ。
まさか、呼び出そうとした奴の脇から全く別の存在が割り込んで来るなんて想像の範囲を完璧に超えてるよ。
気付いたらもう遅い、馬鹿らしい程でっかい光の帯に呑まれて、気付いたら身体の半分以上を消し飛ばされちゃった。
まあ、でも、少しは収穫あったしね?
喚び出しちゃった奴の炎の色は憶えたし・・・って、あの炎の色憶えられない方がどうかしてるよねぇ?
全く、トンでもないもの喚び出しちゃったな、【虹色の炎】だなんて・・・・・・
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――SIDE:悠二
僕の考えは当たっていた、けど嫌な方向にだ。
封絶を張ったのは敵だった。
封絶自体は珍しいものじゃない、だがその封絶の中に満ちる炎の方が大問題だった。
まさか、【紫の炎】だなんて、性質が悪すぎる!
「お、おい、確かあ奴はお前が討滅した筈では無いのか?」
僕が来る前から屋上にいた初等部の制服を着た少女が問いかけてくる。
この少女は僕よりも遥かに永い時を生きている紅世の王『雷華夢幻』ケリムノース。
確かに彼女の言うとおり、この炎を使えるのはこの世で只一人、しかもその王は僕が討滅した筈だ、世界を乱す事を覚悟で放った一発で。
僕は疑問を解消する為に巨大な虎の身体に巨角、蝙蝠の様な羽、蛇の尾を持つ敵に言葉を放つ。
「何で、お前が生きてるんだ!?
答えろ、『千変』シュドナイ!!」
「答える事は何も無いぞ、似非『天目一個』・・・
今、俺がするべきは憎き貴様をこの世から欠片も残さず破壊する事のみだ!!」
そう吼えると、僕に一直線に突っ込んで来る。
「左に飛べ! ケリムー!」
「そ、その名で呼ぶなあ!!」
僕の呼び方に怒りながらも彼女はちゃんと左に飛ぶ。
アイツの狙いは僕の筈だから、彼女を狙う事は無い!・・・と思う。
頭の中で自在法『賢人達の思考会』を発動、同時に宝具『無源の剣塵』を取り出し即行で一つ複製、両手に持つ。
シュドナイを追い詰める為の工程はほぼ一瞬ではじき出し、まず『無源の剣塵』を更に7本複製しシュドナイに投擲。
当然の如くガードされるが、それは予想の範囲内。
更に19本複製し、シュドナイの足元へ投擲するが、シュドナイは人間の姿に戻り、標的を失った複製剣はシュドナイの足元の地面に突き刺さる。
そして再び獣の姿になり、僕に向かって来る。
そのままシュドナイは、紫の炎を僕を包囲するように噴き出す。
これはかわせないと即座に判断し、『アズュール』に存在の力を籠める準備をする。
僕がかわせないと分かったシュドナイの顔が喜悦で歪む。
しかし、それも予測の範疇だ。
「『龍の悲鳴(ワークス&ライトニング)』」
ケリムノースの良く透き通る声が封絶内に響く。
その声が聞こえるとほぼ同時に、シュドナイの顔が今度は驚愕で大きく歪む。
これこそが僕の本当の狙い、先程投擲した複製剣、計26本はシュドナイを打倒する為に投げたものでは無く、つまるところケリムノースに存在の力を渡す為に投擲したものだった事だという事だ。
一つ一つの複製剣に籠められる存在の力は僕にとっては微々たるものだが、26本も集まればその量はそれなりになる。
これこそ、『無源の剣塵』の「触媒にし易い」の特性を使った作戦だ。
ケリムノースの放った必殺の一撃がシュドナイの背を捉え、その隙に僕は炎の包囲網から脱出する。
「危ういな、私が気付かなかったら如何する心算だったのだ?」
「その時は『アズュール』使ってたよ。」
ケリムノースの問いに簡単に答える、しかしシュドナイへの警戒は解かない。
あの程度で討滅出来たとはハナから思っていない。
漸く『龍の悲鳴』で起こった粉塵が晴れる、しかし其処にはシュドナイがいるだけでなく、金色に輝く鎧に身を包んだ赤い瞳に肩ほどまで垂れ下がる金の髪、そして白い甲殻に覆われた大剣を携えた男が、まるでシュドナイを護るかの様に立っていた。
相手の顔は見知っていた、20年前の大戦の折、あのカルメルさんと互角以上に渡り合った紅世の王だ。
その名は『暁の剣』アプサラス。
僕はコイツに勝った憶えが無い、良くて引き分け、完璧に負けた事もある。
対峙して数秒後アプサラスが剣を正眼に構え、僕に向けて言葉を放つ。
「漸く見つけたぞ、『零時迷子』。
我等の願いの為に壊させて貰うぞ!!」
その言葉とほぼ同時にアプサラスの姿が掻き消える。
瞬間、僕のすぐ左後方付近にアプサラスの姿が現れる。
相変らず恐ろしい速度だ、見えていたのに体がついていかない!
咄嗟に取り出した『吸血鬼(ブルートザオガー)』でアプサラスが振るった剣を受けるが、如何せん体勢が災いし、シュドナイが倒れていた付近に吹っ飛ばされてしまう。
しかし、『吸血鬼(ブルートザオガー)』にややながら存在の力を籠めておいた為、足止め程度にはなった筈だ。
そうして立ち上がろうとするが、何故か体が全然動かない。
おかしく思い、身体をスキャンしてみて驚愕する。
全身に解除の難しい捕縛の自在式が絡み付いていたからだ。
しまった! 僕は内心舌打する。
アプサラスの持っている剣の効力を忘れていた。
あの剣は宝具『薄転宴光』、自在法や自在式を籠めて対象者と切り結べば、内部に籠められた自在法を相手に流し込む事が出来るし、相手に突き立てれば対象者の存在の力を吸収してしまう事が出来るという代物だ。
慌てて全身に絡み付く捕縛の自在式を解除しようと自在式の構築理解を始めるが、それを遮るかの様に頭上からシュドナイの声が降ってきた。
「無様だな、似非『天目一個』?
俺の可愛いヘカテーを討滅した原因を作った奴がこんなつまらん奴などとは・・・
怒りがこみあがってくるぞ・・・」
シュドナイの身体が怒りと喜びで打ち震え、ややもったいぶりながら僕に向けて右手を突き出す。
「サヨナラだ、似非『天目一個』。」
右手に存在の力の収縮が始まっているのが分かる。
この状況を打破する事の可能性を模索するが結果は絶望的、最高の確率でも4.1%だなんて・・・
此処で終わりなのか、本当に?
嫌だ!! 僕にはまだやらなきゃいけない事があるんだ!!
こんな所で死んで堪るか!!
必死に足掻こうとするが、身体を束縛している自在法の解除にはどんなに少なく見積もっても2分位時間がかかるし、目の前にいるシュドナイが僕を攻撃するまで後30秒もかからないだろう。
最早絶望するしか無いのか?
と、そう思っていた刹那、二筋の光の帯が走った。
その光の帯の一筋はアプサラスを直撃し、もう一筋はシュドナイを打ち抜いた。
アプサラスとシュドナイは吹き飛ばされ、僕もケリムノースもその光景に絶句する。
見れば僕の前に一人の男が降り立っている。
その男は紫の衣を纏った中世の西洋騎士の姿をしており、美しい銀髪と抜き放たれた金色のサーベルが目を引く美形だった。
そう、男の僕でも思わず見惚れる程の・・・・
「に、『虹の翼』メリヒム・・・・・」
ケリムノースが絶句しながらも男の名を呼ぶ。
そして、メリヒムと呼ばれた男は僕に向かいこう言った。
「一つ聞かせて貰うぞ、貴様は『炎髪灼眼の討ち手』を愛し、彼女に愛された者か?」
――――――SIDE OUT
――――――(その頃ネギは明日菜をノーパンに)
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