第一話 「開幕」 投稿者:こたつみかん 投稿日:06/04-02:54 No.665
side ???
「4番 綾瀬夕映・・・」
予想外の相手に少々呆然となってしまう。
だがそれも仕方ないかもしれない。
彼女が魔法使いだと誰が思うだろうか。
(・・だが)
そう、だがである。間違いなく”今”使用したのは魔法。しかも詠唱短縮という実力があってこそできる芸当をやって見せたのだ。これを冗談だなどと流すわけにはいかない。
(・・予想外ではあるが、中々面白いことになりそうだ)
それは絶対的強者の余裕だろうか。想定外の事が起ころうとも動揺しない態度は並々ならぬ経験からか、それともまだ見ぬ未知への好奇心か。
その顔に不敵な笑みを浮かべた。
IF 哲学者と正義の味方
~第一話~ 「開幕」
(予想外です・・・)
夕映は途中で先に帰ったのどかが心配になり、明日菜達に声を掛けのどかを追いかけたのだが。
(まさか噂が本当だとは思わなかったです)
とっさの事もあり、のどかに手を出そうとしてるのを見て、つい(汗)魔法を放ってしまったのだが、事もなげに打ち消されてしまった。
(どうしましょう?今のが効かないなら、のどかを連れて逃げるべきですが。のどかは気絶して自分では動けないみたいですし、私が担いで逃げようにもそんな筋力は持ち合わせていないですから言語道断です。さらに襲撃者の正体、目的、実力共に未知数というのもどうにもいただけないです。
・・・困りました八方ふさがりですね)
ここまでかかる時間は、実にジャスト1,0秒!!・・・なにげにスゴイ。
夕映が思考を展開してる内に魔法の衝突による霧が晴れ相手が見えてくる。
霧が晴れた先には上から下まで黒で統一した人がいた。
「4番 綾瀬夕映・・・」
「!!」
相対した相手が確認するかのように私の名前を呟き、その帽子で隠した顔でも明らかなほど不敵な笑みを浮かべた。
「驚いたぞ。まさかお前がこっち側の人間だとは思わなかったよ」
「・・・あなたは誰です?」
「私か?・・・私は「待てーーっ!!」!!」
私が声のした方へと顔を向けると、必死の顔をした担任のネギ先生が杖と共にこちらに飛んでくるのが見えた。
「ぼっ僕の生徒に何するんですかーー!!」
先生は高速で私達と黒い人の間に滑り込んでくる。・・・どうでもいいですが、私に魔法を見せていいんですか?ネギ先生。
「ふむ、イレギュラーがあるものの丁度役者が揃った事だ。自己紹介から始めようか」
黒い人は帽子を取ると優雅に一礼してみせる。・・・見とれてなんかいませんからね。・・・ホントですよ。
「えっ・・き、君はウチのクラスのエヴァンジェリンさん!!」
驚きました。黒い人の正体はエヴァンジェリンさんだったとは。
「どっどうしてこんなことをするんですか!僕と同じ魔法使いなのにどうしてこんなことを!?」
「知りたいかい?この世にはいい魔法使いと悪い魔法使いがいるんだよ。ネギ先生」
言葉と共に懐からフラスコを取り出し、即座にこちらに投げつける。
氷結 武装解除 !!
「うあっ!!」
パキィィィッンという高い音と共にネギの周りに凍った銀の粒が周囲に飛散する。
(すごい抵抗力です!!)
私は口には出さないながらもネギ先生の高い抗魔力に驚きを隠せなかった。
一方エヴァジェリンさんは「・・・やはりな」なんて言っているので半ば予想済みみたいです。
「なんや今の音!?」
「こっちじゃない!」
さっきの魔法の大きい音のせいか、誰かがこっちに向かって来てるみたいです。聞いた事ののある声なんですが・・・。
「あっネギ!!あんたご飯いらないなんて言って何してるのよ!!」
「あうっ!?こ、これは」
「ご飯いらんなんか言って、ネギ君のご飯はこのかと夕映やったんか~~~!?」
「ち、違います誤解ですーーー」
題して、地獄絵図。先生は泣き、アスナさんは怒り、このかさんは騒ぐ。・・・一瞬でシリアスが壊れました。
こんな事をしてる場合ではありませんね。エヴァンジェリンさんはドサクサに紛れて逃げちゃいましたし、これでは収拾がつきません。
「ネギ先生」
「あひゃい。な、何ですか夕映さん」
「逃げました」
「へ?」
「だから、犯人です」
「あっ!あーーーー!!」
ネギ先生はよほど慌てているのかあたふたしながら、この事態をどうしようかパニクッてるみたいです。
ふ~、仕方ありませんここは手助けしておきましょう。
「ネギ先生ここは任せて行って下さい」
「えっでも夕映さんは。・・!!」
今頃私が一般人だと思い出したようです。
・・・ちょっとおもしろいかもです。
おちょくるのはこのくらいにして、私は先生の耳元に口を近づけて「私も関係者ですから」と囁く。
「えっ?」
「ですから、後は任せて犯人を追ってください」
「はっはい!」
そんな元気な声と共に、エヴァさんの逃げた方へと走るネギ先生。
「ネギく・・うわっはや!?」
「ちょっとーネギーーッ!!」
ちょっとの間にもう米粒ぐらいの大きさになってるです。
あそこまで早いなんて魔法を使ってであっても、ちょっと嫉妬してしまいそうです。
さて、あとはこちらですね。
「二人とも、事情を説明しますのでこっちを向いてください」
「そっか、夕映ちゃんに聞けばいいのよね」
「ゆえ~、どういう事情なん?」
二人に魔法の事を抜かして説明する。
「なるほど~。ネギ君、桜通りの吸血鬼の真相を暴きにいったんやね~」
このかさんは簡単に納得しているが、アスナさんはなにやら難しい顔をしている。説明に不備はないはずですが。
「ねぇ夕映ちゃん」
「はい、なんですか?」
アスナさんがこっちの耳に顔をよせながら囁く。
「夕映ちゃんはネギが魔法使いって知ってるの?」
私は一瞬、驚きで言葉がでませんでした。
「アスナさんは知ってるんですか?」
「うん。知ってる」
「・・・なら、本当のことを話します」
今度は魔法を含み、吸血鬼のことも入れてアスナさんに説明する。
すると、「決めた!!」と言って、ネギ先生が走っていった方向を向く。
「ちょっとネギのこと心配だから行ってくるわ」
っと「ちょっとコンビ二行って来るわ」なんていう気軽さで駆けていく。
ちなみに、その速さは私なんかじゃ魔法で強化しても絶対出せないようなスピードでした。
私が多少呆然としていると、このかさんから声がかかった。
「じゃぁ、私達はのどかを連れて帰ろっか」
この言葉にどれほどの信頼が込められてるか、私はちょっとわからないです。
「ふ~」
やっと、一息つけました。
あの後、このかさんと一緒にのどかをベットまで運んで寝かせて。今は寮のベットに腰をかけお気に入りのパックジュースを飲んでいるところです。
「・・・相変わらず、変なモノ飲んでるな」
突然、どこからか声が聞こえてくる。
「もう二年も続けてるのですから、いい加減慣れてください」
「まぁ、好みは人それぞれだけどさ」
声の主が苦笑しているのがよくわかる。
「それで、結果はどうでした?」
「結果は危なかったけど、アスナさんだっけ?あの子の乱入で痛み分けになったよ」
「そうですか」
ホッとした、あの後どちらかでも怪我なんかしたらどうしようかと思っていたのだ。
「・・・それにしても」
「どうかしましたか?」
声の主が少々憮然とした物言いになったので興味が沸いてきたのだ。
「いや、あのアスナって子。何かの能力持ちなのか?」
「そうなんですか?」
「あぁ、あのエヴァンジェリンって子の障壁を蹴りなんかで簡単に貫通してたからさ」
だから気になったなどと言ってるのだが、エヴァンジェリンさんの物理障壁は簡単には破れる様なモノじゃないのは十分に知っているつもりだ。
それを苦もなく破るとはどんな能力だと思案しかけるが、今はそんなことより明日のことである。
「どちらにしろ、ご苦労様でした」
「ん、まぁ気にしないでいいよ夕映」
彼はそういうが何かないものかと周囲を見渡す。そして、あるところに気がついて内心ちょっとドキドキしながら声をかける。
「じゃぁ、ご褒美としてどうです?添い寝をしてあげますよ?」
布団に入り、掛け布団をちょっと上げて誘ってみると「ばっ!!何言って!!」っと、こんな風にからかえたりします。
「・・・俺はもう眠る」
その言葉と共に彼の気配が消える。
「まぁ、こんなところでしょうね。それではおやすみです。シロウ」
そうして、夕映も眠りに落ちていく。
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