第六話 労働基準法って知ってますか? 投稿者:モフ・ハイマニューバ 投稿日:05/14-22:22 No.515
人間の生活力の強さ!人間はどんなことにもすぐ慣れる動物である。
私はこれこそ人間に対する最上の定義であると思う。 (ドストエフスキー)
第六話 労働基準法って知ってますか?
<side 沖田>
朝、現在の時刻は七時五十八分。
沖田は学園長室に来ていた。
あれから三ヶ月が過ぎた。
沖田は教育実習生という肩書きで昼は中等部で国語教師と図書館探検部(中等部担当)の顧問、
夜は警備(広域指導員という名目で)と女子寮の管理人みたいな仕事をやっていた。
いろいろと覚えることがあったがすっかりいたについている。
女子寮の仕事も最初のうちは戸惑っていたやつもいたが意外にもあっさり認めてもらえ、
今では適度にサボるコツまでつかんでいる。
文化に関しても元の世界と大して変わらないので不便に思ったことはない。
面倒な仕事だといいながらも沖田はこちらでの生活を満喫していた。
「なんでさァ~、こんな朝っぱらから。あと三時間も眠れるじゃないですかィ」
「あと三時間も寝ていたら君の授業時間は終わっているじゃろ」
「大丈夫でさァ、ちゃんと自習にするように言っておきやしたから」
「君、教職なめてんの?」
「俺がなめてんのは教職じゃなくてあんたでさァ」
「魔法の射手 光の一矢」
<side 学園長>
「君のせいでドアがいくつあっても足らんよ」
「人のせいにするのはよくありませんぜ。それで何のようですかィ?」
明らかに原因は向こうなのにこの態度。学園長はこめかみをピクピクさせながら話を続けた。
「実はのう、君にやってもらう仕事が増えるのじゃ」
「いやでィ」
「決定事項じゃから変更は聞かん」
学園長がそう言うと沖田はめんどくさそうな態度で話を聞こうとする。
とりあえず聞いてくれればいいやと思った学園長は話を進める。
「そんなたいした仕事ではないんじゃ。これから新しく来る先生の補佐をしてほしいのじゃよ」
「新しく?何時ですかィ、聞いてやせんぜ」
「いや、一ヶ月前と昨日の職員会議で話したから。聞いてなかったの?」
「きっと仕事で忙しかったんでしょう。そんなことはいいんでさァ。早く話を進めてくだせェ」
沖田は真剣な顔でそう言った。
ただ、体はソファーでだらけているうえに来客用の菓子まで食べている。
「もういいけどね。…その新しい教師というのは魔法使いでのう。
修行のために日本で教師をすることになったんじゃ」
「他のところでやらせろよ」
「君に優しさというものはないのか?…そういうわけじゃから、君には補佐のために君には2-Aの副担任になってもらいたいのじゃ。給料十%アップと今までのことはチャラにする。引き受けてくれんか?」
「俺は副担任をやるために生まれてきたのかもしれない」
(あいかわらず変わり身の早い男じゃ)
「で、その新しく来る先生ってのはどんなのなんですかィ?」
「おかしいのう。このかと明日菜ちゃんに向かいに行かせたのじゃが…」
「学園長、特定の生徒を呼び捨てにするなんてよくありやせんぜ」
「いいではないか。自分の孫なんじゃし」
「そんな妄想を。あんな孫がいたらって思ってるだけでしょう。
いけませんぜ、現実と妄想を区別しなきゃ」
「苗字も一緒じゃろ?」
「苗字まで同じするたァ……近藤さんと同じ人種ですかィ」
「勝手にストーカーにするんじゃない!!このかはわしの娘の娘!つまりわしの孫じゃ!!」
「いい加減に目を覚ましてくだせェ!!どこにそんな頭のやつと結婚する女がいるんですかィ!!!」
「コロセェェェ!!誰かこいつを殺してくれェェェェ!!!」
と、そのとき学園長室のドア(さっき自分で直した)が乱暴に開かれ
「学園長先生!!いったいどういうことですか!!?」
一人の少女が現れた。
「どうしたんでィ、レッド」
「レッドって言うな!!……あれ?何でアンタまでこんなところにいるのよ」
「あ~、沖田センセーや、おはようございます~」
「し、失礼します!」
突然入ってきた少女―明日菜はため口以下の口調で沖田に話しかける。少女―このかと見たことのない少年もあとに続いて入ってくる。
この沖田と明日菜、一見かかわりがなさそうに見えるが実は結構な顔なじみ。
沖田は明日菜の親友であるこのかの部活の顧問である。それだけじゃなく明日菜は沖田の教育指導員をやっていたタカミチの部活に所属している。それに沖田は女子寮の管理人もやっているのでほとんど一日中顔を合わせている状態だ。
「おお、明日菜ちゃん、このか。案内ごくろうじゃった」
学園長はそう言うと少年―ネギの方向を向く。
「ネギ=スプリングフィールドです。よろしくお願いします!」
元気に挨拶をするネギ。
「うむ、ネギ君、君の話は聞いておるよ。ずいぶん大変そうな修行をもらったものじゃのう」
「は、はい」
「そう緊張しなくても大丈夫じゃ。補佐をつけるからわからないことがあったらその者に聞けばよい」
そう言うとネギはいくらか安心した表情を見せる。
「そんなことより、学園長先生!!
このガ…この子供が高畑先生のかわりに私たちの担任になるって本当ですか!!?」
<side 沖田>
嫌な予感はしていた。来るはずの教師の代わりに来た少年。
そんな馬鹿なと思いながらも聞けば聞くほど今日来る教師の特徴と同じ。
そこにこのレッドの言葉。推測が確信に変わった。
「じーさん。さっき話していたのはこの子…ガキのことですかィ」
「その通りじゃが、なんでわざわざ言い直す?子供と言えばいいじゃろ」
「そうですかィ。……俺はアンタの補佐になることになった沖田総悟ってもんでさァ。
好きなように呼んでくだせェ。よろしくな、ガキ先生」
「よ、よろしくお願いします」
頭を下げるとネギも頭を下げた。
沖田の元の世界にはあまりいなかったタイプである。
「ちょ、ちょっと、待ってください!おかしいじゃないですか!!子供が教師をやるなんて!」
明日菜が唐突に学園長に言うが、学園長はフォっフォっと笑っている。
適当にごまかすつもりだろう。
「ところでネギ君、君は彼女はおるのか?
どうじゃ?うちの孫娘なぞ」
「ややわ~じいちゃん」
照れながら学園長の頭にトンカチを叩き込むこのか。
ネギは呆然としながらその光景を見ている。
沖田は携帯のカメラで机にめり込んだ学園長の写真を撮る。
「ネギ君、この修行はおそらく大変じゃぞ……
ダメだったら故郷に帰らねばならん
二度とチャンスはないがその覚悟はあるのじゃな?」
「は、はいっ」
「では今日から早速やってもらおうかの。
あとは任せたぞ、沖田君」
これで完全にごまかした。
さすがジーさん。年の功ってやつですかィ