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その8 『激突【うずまき ナルト】!!』 投稿者:M・Tミゲ 投稿日:06/15-07:52 No.2540  

(中々良い雰囲気だな………そういや~オレが下忍になった時も、スリーマンセル(三人一組)でこんな感じだったけ。)

目の前の少女達から発せられる心地よい緊張感、そそれに酔いながら内心で笑みが浮かぶナルト。
その脳裏に浮かぶのは、かつての仲間との最初の“忍務”。

(あの時は大変だったな~。結局カカシ先生にいいように遊ばれて…………ああ、何か思い出したらムカついてきたってばよ。)

下忍選抜の試験の内容、その時の《激痛》を思い出して怒りが蘇ってくる。


思わず尻を押さえそうになり、慌ててその感触を振り払う姿が滑稽だ。


(それに比べると、こいつ等の方があん時のオレ等より数段上なんじゃ…………やべぇ、ちょっとヘコむってばよ。)

三人の様子に、かつての自分の苦い(イタイ)記憶を重ね気落ちするナルト。
因みに感情が表に表情となって現れているので、対峙している三人は彼の突然の百面相に眉を顰めている。

(ん? 待てよ、あん時の内容は確か―――――――――――――――しっしっしっしっ、いい事思いついたってばよ!)

ナルトの顔に、ニヤリとした笑みが浮かぶ。
子供が悪戯を思いつた時にそれに似たその表情、実に彼らしい笑み。



魔法先生ネギま

~麻帆良忍風帖だってばよ!!~

<その8> 激突『うずまき ナルト』!!



数時間前、2-A教室


「それは本当ですか!?」

夕日に照らし出される教室、そこに佇む三人の少女。
その少女達の内、最も背の低い頂点で髪を結えている少女が驚きを含んだ問い掛けを口にする。

「間違い無いでござるよ。ナルト殿は忍者、それも相当の実力者の筈。」

それに答えるのは、背の高い糸目の少女。
先の少女と違い、その声色は何所か楽しげだ。

「確証があるのか、楓?」

今度は、褐色肌の三人の中では最も背が高い少女が問いかける。

「……問い詰めようとしたら、あっさり自ら喋っててくれたでござる。」

糸目の少女つまり楓は、未だに何処か釈然としていない様子でその時の旨を述べた。

「………しょ、正直な方ですね、うずまき先生は。」

「……刹那、正直の前に馬鹿が抜けてるぞ? 嘘はよくない。」

楓の話を聞いての、二人の感想。
背の低い少女と褐色の少女、刹那と真名の人物認識、うずまきナルト=『馬鹿』正直な人と変化。

「しかし楓、うずまき先生が忍者だと言う事は分かったが……相当の実力者、と言う事は何故分かるんだ?」

「まさか……戦ったんですか!?」

「いや、言葉でござる。」

疑問と驚愕が混じったような表情で問うてくる二人に、楓は落ち着きただ一言告げる。

「「言葉?」」

聞き返す言葉が重なる、困惑表情がさらに深まり眉間に皺がよる。
そんな二人の様子に楓は、頷きながら静かにいつものようにのほほんした口調で返す。

「ナルト殿の言葉には、異様な重みか感じられた。それも今の拙者では到底出せない、感じた事がが無いほどの重みが……あれは相当な経験をせねば出せぬ。」

「だから、“強い”。そう判断した訳ですね?」

「そういう事でござる。」

刹那の言葉に楓は、軽く首を縦に振り答える。

「しかしそうなると……未だうずまき先生の実力が一体どれ程の物なのか、未だ正確には把握できてない訳か。」

顎に手を当て、ポツリと真名が呟く。

「そうですね……それを見極めるには、やはり直接ぶつかって判断するしか無いでしょうか?。」

その呟きに刹那も頷き、言葉を続ける。

彼女たちにとって、ナルトは未だに完全に信用出来る存在では無い。
幾度か授業は受けてはいるが、それでも力量が分からない、素性が分からない、その性格を掴みきれてない、おまけに過去の経歴も一切分からない、そういった人物を『教師だから』と言う理由で簡単に信用する彼女たちは甘くは無い。
故に密かにその行動に注意を払い、それとなく観察して訳だが。

未だ彼女たちは、ナルトという男の実力を計りかね無いでいた。
日常を見る限りでは、ナルトの実力は測れない――――――――――――――――――それ以前に、ナルトが『忍者』であることすら見抜けなかった訳だが。


もはや確かめるには直接ぶつかるしか無い、彼女達の結論はそこへと加速する。


「なら丁度いいでござるな。」

そんな二人のやり取りを見て楓は、その顔に狐……と言うよりは鼬のような笑みを浮かべて。

「実はナルト殿に問い詰めた時に、直接の手合せの約束をしたのでござるが……二人も一緒に如何でござるか?」

そんな事を、口にした。





(そして、結局済崩し的に、三人でうずまき先生と戦う事になった訳ですが……)

刹那は目の前の男から注意を逸らさず、この場に至る事となった経緯を思い起こす。

(相変らずと言うか、なんと言うか……兎に角。)

真名もその視線を男から離さず、同じように思い起こした記憶を考える。

(ナルト殿は……)

この時、楓を含めたこの三人の思考は完全に一致していた。


(((何所か抜けた〈ボケた〉、(人ですね)(男だな)(御仁でござるな))))


それが目の前で一人百面相している、ナルトに対しての感想がである。

(隙だらけだな……。)

真名は相手の様子を伺い、その余りの隙の多さに別の意味で驚きを憶える。

(楓の見立て違いか? とても実力が高いようには見えない。)

実力の順は兎に角、三人の中で“対人”の実戦経験が最も豊富なのが真名である。
元・『魔法使いの従者』〈ミニ・ステルマギ〉の名は伊達では無い、文字通り彼女は世界を回る事で経験を積んで来た者。
その経験に基づく、観察力・洞察力。
彼女のソレは、相手と相対すればある程度は相手の技量が見抜けるレベルにある。
そんな彼女故に、普段の監視とは違う戦闘という場面で対峙すれば、ナルトのその力の程度を見て取れる思っていった。



しかし実際は目の前で相対しても、ナルトは普段と全く変わらない印象しか受けない



(例えば今、この瞬間にでも私でも……)


取れる。


そう思った瞬間、真名は僅か動いた。

本当に僅か、隣の二人すら気付かないほど小さな動き、その程度の動き。
意識してと言うより、は体に染み込まれた反射的な動き。
本人さえも、自覚した動きでは無い。
明確な攻撃の意志あっての動きですら無い。
そんな動きの筈なのに……


「そう焦るなってばよ、真名。時間は十分に有るんだから、のんびり行こうぜ?」


「ッ!!?」


一瞬だった、瞬きすらしていない程に。

注意を逸らした訳で、油断した訳でも無い。
見縊ってかもしれないが、全く気は抜いてなかった。
間違い無くその瞬間まで目の前にいて、なにやらニヤニヤと隙だらけに笑っていた筈だった。
殺気は極僅かは漏れてしまっていたかもしれないが、それでも彼女は未だその手に取ろうとした武器に触れてすらいないのだ。
ただ僅かに手を腰の方に動かしただけ、取りに入る動作を始めただけなのに。



なのに今真名の後ろには、投擲用ナイフを彼女の腰から奪い抜き軽く彼女の首筋に突きつけ、更にはポンポンと軽く頭を叩いてくるナルトが居る。



(((い、何時の間にッ!?)))

三人の顔に、驚きの華が咲く。

(そんな……速いなんてものじゃない、 動いた事すら気づけなかった!?)

刹那は驚愕、接近戦を主体とする彼女ですら、その初動の兆しすら見えなかった。

(これ程とは……桁違いの速さでござるな。)

楓は戦慄、ナルトの言葉から強い事は感じ取っていたが、その予想を越えるスピードを見た。

(参ったな、完全に見誤ったか……次元が違う。)

そして真名は恐怖、今まで見てきた者達の中でも群を抜くスピード、恐ろしと感じれる速さ。

額に冷汗を滲ませ、三人が各々に思う。
文字通り次元が違う、と。
三人は、ここに来て初めてこの少し風変わりな教師の、うずまきナルトと言う男の、その実力の片鱗を垣間見る。

「あ、ああ~今ので分かって貰えると思うが、今のお前達とオレとじゃハッキリ言って実力の差が有りすぎる。」

そんな三人にナルトは、真名にナイフを突き付けたまま腰に手を当てて言う。

「「「……」」」

三人から反論は無く、ただ黙って後ろにいるナルトの言葉に耳を傾ける。
それもその筈だ、今彼女達の後ろに立つ男は自分達でも及びつくことすら出来ないかもしれないほどの実力保持者。
先の抜き足の速さを見るだけで、彼女達には十分とそれが理解できる。

「普通に戦ったんじゃ勝負にならねぇ、そ・こ・で・だっ!」

そこで一旦言葉を切り、ナルトは腰のポーチに手を突っ込み一つの小さな鈴を取り出した。

「お前ら三人、どんな手を使っても良いから―――――――――――――オレからこの“鈴”を奪ってみろってばよ。それが出来たら俺の負け、出来なかったら俺の勝ちって事でどうだ?」

そう、これが冒頭でナルトが思いついた“いい事”である。

ご存知の方も居ると思うが、これは彼が下忍選抜試験の折に、彼の担当上忍である覆面コピー忍者から出された課題を捩った物だ。
言ってしまえばパクリ、コピー、真似っ子、類似品…………。

最も、あの時とは状況も目的も異なるので、全く同じと言う訳では無いが。

ナルトの言葉に、三人は僅かな驚きを顔に浮かべながらもその目線を互いに交じらせる。
アイコンタクト、目線のみでの意思疎通で互いに確認するように三人は頷きあった。

「それは本気ですか……うずまき先生?」

最初に問うのは刹那。

「当然。」

変わらぬ声色―――――しかしその問いかけに、帯びる空気が僅かに変わる。

「三対一でも……手加減無しでござるよ?」

次に楓の警告。

「そんな余裕、あんのか?」

警告を警告で返す――――――二度目の問いより、次第に空気が張り詰め出す。

「どんな手を使っても………本当に構わないんだな?」

最後は真名の確認。

「………ああ、一つ言い忘れたってばよ。」

真名の確認で思い出したのか、それとも偶々思い出したのか、口元に笑みを浮かべながら――――――――されどその目を鋭く細め、纏う空気を更に鋭くし。



「三人で協力するのも、個々で来るも自由だが……………………仕掛ける時はオレを『殺す』位の覚悟で来い、じゃなきゃ勝負になんねえぜ?」



言葉を発する。

「「「ッ!!!!?」」」

その言葉が放たれた瞬間、何か、張り詰めていた何かが“弾けた”。

それを感じ取った瞬間、三人は全く同時にその場から飛び散る。
距離を取り、そして其々の得物を抜きナルトを囲むように立つ三人。


ナルトの言葉は、『合図』だった。


それ以上は言葉を要さないと言う、やるからには本気でと言う意志の表れ。


弾けた物、それはナルトが放った戦闘開始を告げる殺気と言う名の“合図【ゴング】”。





油断無く構える取る三人、それとは対照的に悠然と佇むナルト。
今や極限にまで高まりきった戦闘の空気が、辺りを冷たくそして鋭利に侵食している。

(さっきは不覚を取ったが……今度はそうはいかないよ、うずまき ナルト“先生”?)

開戦の火蓋を切ったは真名。
先程の礼とばかりに、持ちうる最高の速度、最高の錬度、最高の技量―――――即ち全力を持って投擲用ダガーを放つ。

明確な攻撃意識を持って放たれたダガーは、吸い込まれるが如く風を切りナルトへと向かう。
常人にはその軌跡すら捕らえる事は出来ないだろう、相手を仕留める為に練り上げられた見事な投擲。


しかしそのナイフは標的に当たる事無く、すべて空を切り木へと突き刺さる。


「刹那!」

「分かってる!」

真名が呼びかけるより速く、刹那は動き出していた。

「ハアァァァっ!!」

愛刀である『夕凪』に己の気を纏わせ、一気に距離を詰め気合と共に抜き放つ。

相手の速さは先ほど知った、とてもじゃないが手が抜ける様な類の速度では無かった。
故に刹那は、持てる最大のスピード、最大の威力の一撃を抜き放つ。

一閃!

手加減無し、問答無用、文字通りに『本気』で抜き放たれた一刀。
真名の投擲から繋がり、波状に繰り出される連携の一撃。
度々とチームを組む二人の、阿吽の呼吸で叩き出される会心とも言えるタイミングの一撃。


「ん~、それじゃやれて60点ってとこだってばよ。」


一点集中、その一撃に全魂の集中を賭けいた刹那は、一瞬自分の状態が分からなかった。

間違いなく、つい先程まで刹那はナルトに肉薄していた。
完全に自分の間合い、手にした夕凪も既に意識の上では振りぬいていた――――――――――――振りぬいてた筈だった。
しかし手応えは返って来ず、その上自分自身は体が完全に前後不覚と言う状況。
唯一分かるのは、視界に移る急速に離れていく相手(うずまきナルト)の姿と、その彼が先に発した軽口のみ。

(一体何が……)

次の瞬間、強烈な衝撃が刹那を襲う。

「クッゥ!!」

激突音が耳に響き、同時に背中に激しい痛みが走る。
視界に写るのは弾け飛んだ木の破片、そして2,30メートル程離れた場所に立つナルトの姿。

叩き付けられた木から、地面へと重力に従って体が落ちる
そこで、刹那はようやく理解した。

(カンウターで吹き飛ばされ訳か……)

痛む体を捩じらせ、起き上がろうと身を動かす。

(だとすると振り抜いた瞬間に……いや振りぬく直前、懐に入られやられた訳か。)

刹那が跳ね、抜刀の一閃にてナルトの迫った瞬間。
その白刃か放たれるか放たれないか間、その僅かな一拍のにナルトは刹那の懐に入り込み、その体当てのみで吹き飛ばした。
抜き放たれた夕凪が当たらなかった訳、何の事はないそれはただ単に刹那の体自体がナルトから離れてしまった為に、その刃が空を切ったに過ぎない。

(『入り』も『抜き』も桁違の“瞬動”……否、縮地。やはりこの人は次元が違う。)

後ろの木で実を支えながら、未だダメージが抜け切らない体で立ち上がる刹那。

「……容赦がありませんね、うずまき先生。」

その眼光、全く衰えること無く鋭くナルトを見据え、勤めて平静に刹那は喋りかける。

「そう言う真名や刹那も十分容赦が無いってばよ……今の攻撃、どっちのヤツを喰らっても間違いなく死んでぜ?」

「『殺す覚悟で来い』、なんて言われたからね。その通り実行したまでさ。」

僅かに口元に笑みを浮かべ、しかしその目はナルトの一挙一動、僅かな隙も見逃さぬと目を光らせながら真名は答える。

「まぁな。けど本当(マジ)で文字通りに殺しにくるとは、正直思って無かったてばよ……まさかルールを忘れてないよな?」

刹那を吹き飛ばした手をプラプラと振りながら、余裕すら伺える表情のナルト。

「鈴をとればいいのでごあろう? 早々と忘れぬでござるよ。」

その言葉に答える楓、その表情も普段のそれと全く代わりの無い糸目の笑み。

「ああ、そうだってばよ。特に制限とかは付けなかったけどな、流石に夜が明けちまったそれで終わりだぜ?」

忘れられてない事に満足したのか、一回大きく頷き続けて不敵に笑いながら言葉を繋げる。

「フム、時間は長いようで短い、マダマダ先が長いと高を括っているとあっと言う間に時間切れでござるな…………では折角の機会ゆえ、次は拙者から行かしてもらうでござるよ。」

途端。

「無論――――――――――全力で。」

楓が一変する。
普段の糸目とは違う、見開かれそして鋭く細まった目。
飄々とした雰囲気がは消え、鋭く、まるで鋭利な刃物のように研ぎ澄まされた冷たいモノへと変貌する。

「いいぞ、コイコイ、ど~んと来い。」

そんな楓の様子に、その顔に嬉しそうな笑みを浮かべ手招きまでするナルト。

「では、甲賀中忍・長瀬 楓―――参る。」

名乗りを上げながら、横目に真名と刹那に軽く目配せをし読唇にて短く伝える。
(頼む)と、その短い言葉で理解したのか、二人は黙って頷き再びナルトを見据えた。

「忍!」

裂帛の言葉と共に、楓の体が一瞬で16体へ“増える”。

「………おッ!?」

「行くで」 「ござるよ」 「ナルト殿?」

一瞬呆気に取られるナルトに、16体の楓が口々に言葉を紡ぎ、同時に四方八方へと飛び散り囲う様にナルトの周りに陣取る。

『いざ!!』

気迫の乗った一言により、全方位より16忍の楓が攻勢に移る!
ある者はクナイで、ある者は体術で、ある者は巨大な手裏剣を独楽回しに、文字通り一切合切余す事無く強襲をかける。
 
「破ッ!」

「クッ!」

「疾ッ!!」

「チッ!」

「せいっ!」

「ぬぉぉっと!」

「ござ~♪」

「どわぁっ!!」

前後左右、上から下まで一糸乱れぬ怒涛(?)の攻めを見せる楓。
それを慌しくそしてコミカルに、しかし確実に見切り攻撃を掠らせる事すらなく、時には反撃すら交えて避け続けるナルト。

(こいつ等、明らかに実像を持ってやがる!?)

襲い来る斬撃打撃、投撃に気砲。
それらを避け、弾き、時には止めながらナルトは

(『多重影分身の術』!? まさかこっちの世界にもあとはな………流石に驚いたってばよ。)


忍術・『多重影分身の術』
忍者の術の中でもっとも有名な術、それが恐らく分身の術だろう。
影分身の術とは、分身の術の言わば上位術。
自分の残像・虚像しか生み出さない筈の分身の術とは違い、実像・実体を生みだすのが影分身の術。
それ故に、影分身により生み出された分身体はオリジナルと同じ能力、同じ攻撃力を持つ、正真正銘の“影”を生みだす術。(更に影分身には、これぞ真骨頂とも言える反則的な性能を有してはいるのだが、それは今回は割愛・・・・・・)
多重影分身の術とは、読んで字の如くこの影分身を複数体作り出す術のこと。
ナルト自身も、得意とする術の一つでもある。

もっとも楓の影分身・16分身は、オリジナルの完全な影を作り出すナルトのソレと異なり、全ての分身にオリジナル程の攻撃力がある訳ではないが。

(数はそれなりに居るが、全部が全部同じ力を持ってる訳じゃ無いみたいだな……術自体の体系が違うのか?)

飛び交うクナイを弾き、突っ込んでくる楓の分身体を往なしながらナルトは、己の術と楓の術の差異に気付く。
全てが同じで無いのなら、大して脅威となる術では無いか?――――――――――――――答えは否。
頭をよぎった考えを、即座に否定し消し去る。

(確かに本体の体術自体はそうかも知れねえけど、クナイや手裏剣の攻撃力は確かに本物、おまけにどっかに本物の攻撃力を持つ本体が混じってるきた……ちっくしょ~!! 多重影分身が相手にやられると此処まで厄介な術だったとは知らなかったってばよぉ!)

本来ナルト自身が得意とする術だけに、相手として御目に掛かる事が全くと言って無かった術。
改めてその有用性と実用性の高さを、身を持って実感した。





「……大したもんだな、楓。」

未だ疲れすら見せず、そして一切手を弛める事無く――――――――――――――――――“弛められる”事無く、“弛めれる”事無く攻める続ける楓に、ナルトはまごうことなき本心から賞賛の言葉を送る。

「とても」「素直には」「喜べぬ」「で」「ござるな~」

前後左右さらに上下と、文字通り縦横無尽に飛び交う楓の攻撃。
虚実と実撃を巧みに混ぜ合わせた、分身とは言え一糸乱れぬ見事な連携。
確実に押しているのは楓だ、それは誰が見てもそう言える、むしろその苛烈な攻撃を見てはそうとしか言えないだろう。





しかし、実際に追い詰められているの寧ろ楓の方であった。





(分かっていた心算でござったが……まさかこれ程の物とは!)

それは外見的な物では無く、心情的な余裕の差。

(止まれぬ……止まった“やられる”でござる!)

普段の自由奔放で飄々とした楓からは、想像すら出来ないほどにその心に余裕が無かった。

未だに攻撃を続けているのは楓、ナルトはそれをただ単に逃げ回り避けているだけ。
それは最初から、全く変わっていない。


唯一つ違うのは事。
それは、攻撃を続けているのでは無く続けざるとをえない、“止めることが出来ない”と言う事。


彼女の意思や思考では無く、もっと根本的なもの言ってしまえば“本能”・“第6感”、そう言った漠然としたモノが焦りを感じ攻撃を手を弛めることを拒否している。
『弛めてはいけない』・『止めたら拙い』、焦燥にもモノが楓を駆り立て続けてる。
想像の域を出ない“確信”、それを信じて彼女は動き続ける。


現に今ナルトは、彼女の猛攻を、完全無欠完璧にして徹頭徹尾に躱わし続けてる。


クナイの切っ先一片すら、その体に掠らせる事すら無く。
危なげすら無く、虚実(フェイント)や投擲さえ完璧に見切って。

攻撃を続けながら、楓は必死にナルトの動き一挙一動にすがり付く様に注意する。
そして暫くの猛攻のち、ようやく楓はその正体に気が付く。
自分の感覚の正体…………何故自分の体が攻撃の手を弛める事を拒否しているのかを。

(……この人、本物の“化け物”でござるか!?)

それは、余りに彼女らしからぬ比喩表現。
しかしそんな表現をしてしまう程に、それほどに今の楓には余裕と言うもの存在しない。
先程まではあった僅かな余裕も、気付いたある事実の前に霧散していく。

ある事実―――――――――――――――それは、うずまきナルトは“常に自分の本体を見極め、またどの様な動きでも反撃出来る動作にて躱わしている”と言う事実。

つまりナルトは、攻撃を躱わす一挙一動その総て、そのいかなる体制からでも“反撃”に移れる、攻勢に討って出れる訳だ。
例えば打撃を躱わす一動作、例えばクナイを弾く防御動作、例えば地面を蹴る単純な動作、その一個一個どれからでも反撃が繰り出せる。
言うなれば、全ての回避動作が攻撃への予備動作。
おまけに、時々あちこちに泳ぐ視線は、必ず自分の本体の方向で止る。


これ程の乱戦・混戦下で、16分身のコンビネーションを見切り躱わし続けるだけで無く、本体を見極め+反撃に移れる予備動作で回避を行う。


一体世界に何人、そんな冗談染みた同時並行動作を行える人間が居るだろうか。
ナルトの元来の世界、ネギたちの住まう世界・魔法界、楓程のレベルの相手にそんな事が出来る人間がソコにどれだけ居るだろか。

それが出来るのが、今のナルトと言う忍
戦闘に特化した忍者、忍相手の一騎当千と名高き猛者。
『金色の悪夢』・『閃光の再来』・『四忍目の伝説』・『木の葉の風雲児』・『人型九尾』(『九尾が花婿』)。


『六代目・次期火影、うずまきナルト』


しかも彼は別段この戦闘に置いて、特別な術は何一つ使用してない。
得意とする『影分身』や『螺旋丸』も、風遁に始まる数種の性質変化も、『天才』さえ不可能だった形質変化と性質変化を組み合わせて術も、身の内に収めたる正真正銘本物の“化け物”の力さえ、全く一切これポッチも使ってない。
使ったのは“チャクラ”による肉体活性などの基本事と、基礎忍術の“瞬身の術”、それに自身の肉体による体術のみだ。
忍者学校(アカデミー)に通う見習い忍者でさえ、ある程度過程が進めば出来る様な術ばかり。
そんな術だけ、そな基礎の基礎だけで刹那・真名・楓の三人を圧倒しているのだ。

彼女達もさぞ驚く事だろう。
今自分達を圧倒している男が、嘗ては成績万年ドベのおちこぼれ忍者であった等と知ったら……。

「さ~てっと、いい加減避け続けるのにも飽きたし……そろそろ攻守交替といくってばよ?」

世話しなく避けながらも、その声は「飯でも食いに行くぞ?」と言うような余りに気軽な、普段どおりの“余裕”ある声色。
よくよく見ると、アレだけ激しく動いていたにも関わらず、汗は愚か息切れ一つしてない。

「……クッ!?」

そんなナルトに対して、16体で動いていた筈の楓の方が、その息が少いづつ乱れ額にも汗が浮かびだしている。
明らかに運動量が多いはずのナルトの方はピンピンしており、それに対して楓の方がバテだしてしまった。

「楓は勿論、刹那と真名も覚悟しとけ……今からは俺が攻めるからな。」

必要ないのに態々宣言し、終いには首をゴキゴキと鳴らしだす始末。
その間も楓の攻撃は、ただの一瞬も止まってはいないので、躱わしながら鳴らすと言う器用な動作になっている訳だが……。


……この時のナルトの余裕が、“勝負”の決定的な分かれ道となる。


ナルトに油断は無かった…………いや、むしろこの場合は油断が無かった為とも言える知れない。

楓の攻撃を避けながらも、ナルトは楓のみならず刹那や真名にも注意を払っていた。
少しも動きがあれば、即座に反応できるように相応の注意を払っていた。

―――――――――――――――――それが返って仇となる。

ナルトが攻撃を宣言し、首を鳴らした瞬間。
その瞬間、真名にとっては待ちわびてた瞬間がが到来することとなった。

ほんの数秒、獲物(ナルトの鈴)と自分を結ぶ空間の直線に一切の遮蔽物が無くなる。
楓の分身体も、なると自身の体も、何も邪魔する物が存在しない、完璧な一線が結べる状態。
おまけに、相手には極々僅で無いに近い物だが、それでも確かな隙。

ずっと探っていた。


「……フンッ」

真名の顔に笑みが浮かぶ。
それは獰猛な笑み、狩猟者が獲物を前に浮かべる一笑。
狙いは見えた、後は“撃ち”落すのみ。

ホルスターから二丁の銃を抜き、照準合わせ、引き金を絞り発砲!
その間、秒単位コンマ以下の超高速度動作。


クイック・ドロウ(早抜き・早射ち)、と言う技をご存知だろうか?
銃をホルスターから引き抜き、照準合わせ(構え)、そして発砲(引き鉄を引く)。
これらの一連の動作が銃を扱う上での最も基本的な動作になるが、クイックドロウとはそれらを一動作(ワン・アクション)で行う事。(厳密に言うと異なる部分がありますが……)
抜くと同時に照準が合い、照準あった瞬間には既に発砲。
必要な三つの動作を、高速で流れるように一気に行うことで一つの動作と成す妙技。
刀であれば『居合』に当たる、言うなれば銃バージョンでの居合術。
当然、出来るようになるには相当の鍛錬、熟練が必要になる難しい技。


そんな技を、真名は行使した。
抜きから射ちまではナルトでさえ、目で追うのがやっとの驚くべ速度で。

発砲音が響き、放たれる弾丸。

飛び出さそうとしていたナルトに向かい、吸い込まれる様に飛来する弾丸。

弾丸(ソレ)は。

見事に。

ナルトの体を――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――鈴から“引き離した”。


「後はまかせたぞ、刹那! 楓!」


直後に響くは、確信した真名の声。





真名の手が動いた瞬間、ナルトはそれ反応した。
ナルトからすれば、十分に見え、そして十二分に反応できる速度だった故に、反応して動いた。

周りの楓達を弾き飛ばし、真名に接敵する為に踏み出そうとするナルト。

その行動に、別に深い考えや焦りと言った類のものは無い。
ただ単にいいタイミングだった為、宣言通りに攻撃に転じようかとだけ。
近くにいる楓相手ではなく真名に接敵しようとしたのも、丁度いいタイミングで真名が動きだしただけの事。
単純明快、短絡的な思考だ。


しかし、その足を踏み込み跳ぼうとした瞬間、ナルトは思いもよらない一撃を受ける事となる。


背中に廻された真名の手が、一気に加速し引き抜かれる。

(速ぇっ!)

その動きは目で追うのがやっとの高速動作、距離を縮める事はおろか一歩を踏み込む出す事さえ敵わぬ程。
明らかに今までの投擲動作とは、錬度が次元が異なる動き。

引き抜かれたとほぼ同時に響くのは、まるで起爆札でも爆発したかのような破裂音。

「なにィっ!?」

音と同時に、体との結び目から引きちぎられる鈴。
一体何をやられたのか、どういった仕掛けの攻撃か、全く分からない内に受けた一撃。

「後はまかせたぞ、楓! 刹那!」

呆けるのは一瞬、驚愕に固まるは一瞬。
耳に響く真名の声に、ナルトは即座に疑問を無視し動き出す。

自分が引き離された鈴に、狙っていたのか、一気に跳び付く刹那と楓の姿か見えた故に。

しかし簡単にはいかない、周りいる楓の分身がナルト囲い攻撃を仕掛けてくる。

「チッ! 木ノ葉旋風!!」

上段、下段と連続で繰り出される高速の回し蹴りが、周りの分身を一斉に吹き飛ばす。
木ノ葉流体術・木ノ葉旋風。
本来はナルトの友人の一人、通称ゲジ眉の得意技の一つだが使い単純かつ強力な体術なのでナルト自身も習得した。

僅かにタイム・ロス。
しかしそれでも十分に間に合うと、旋風後の屈めた体勢まま鈴に目掛けその手を伸ばす。

「させないよ、“ナルト先生”?」

その瞬間、ナルトの体に猛烈な悪寒が走る。

耳に聞こえるは、真名の声。

本能の警報がなる、野生のソレに近い感が訴える。

僅かに目を向けると、そこに見えるのは妙に金属的な小さな“筒”の様な物。
手のひらより幾分か大きく、先の小さな穴が自分の方を向けられている“何か”。
多分、恐らく、“この世界”の武器に属するもの。
自分は、見たこと聞いたことも無い『武器』。

「ッ!!?」

“ヤバイッ!”
そう感じた瞬間、ナルトはその穴の“直線上”から体を逸らせる。
それは、間違いなく幸運な感覚だった。
本能、野生の感、経験測、観察力、判断力、その全てが合わさった結果、ほんの偶然にて生まれた思考。

“あの『武器』が体に向けられている事ては拙い!”

ほんの偶然、本当に偶然にたどり着いた考え。
理由は分からないが、ナルトはそう感じ取った。


そして、その判断は奇しくも功をそうす。


再び響き渡る破裂音(発砲音)。
ナルトを掠めていく何か(弾丸)。
後ろの木に開く小さな穴(弾痕)。

(何だってばよ今の!?)

余りに速すぎて、全く持って目にも止まらない攻撃。
ほんの一瞬、僅かにブレて見えてのは、何か丸っぽい小さな物。
玉の様な、何か。
跡に残るは、漂ってくる異臭(火薬の匂い)。

(今のヤバイ……何かよく分からねぇけど、アレはヤバイ!)

悪寒の正体、それは恐らく“死”に対する嗅覚。
体が、本能が、体の底に眠るモノが、それ等が訴えた警告。
ナルトが居た世界には存在しなかった武器、初めて見る―――『銃』―――と言う武器から感じる死への匂いの。

(そうだ! 鈴は!?)

「させませんよ―――――神鳴流奥義・百烈桜花斬!!」

舞い散る桜の如く、視界を埋め尽くすほどの連撃・連斬。
真名の作った決定的な隙、ソレを見逃すほど刹那は愚鈍では無い。
才覚、能力、頭脳(ソフト)面・身体(ハード)面、双方に置いて彼女はその歳では跳びぬけたモノを持っている。
それは彼女の弛まぬ修練が、決して消せぬ使命感(おもい)が作り上げた力。
瞬動にて駆け抜け、一気に距離を詰め、最大威力で奥義を叩き込む。

「っ!!!!クッ!!」

手加減抜きで放たれた神鳴流の技に、堪らずにバランスを崩すナルト。
普通では防御どころか反応すら出来なであろう隙を突いた絶妙の攻撃、それを悉くガードしている辺りは流石と言えよう。


そして、それは最早致命的。


「ニンニン♪」

チリ~~~ン……


「…………あっ」

攻撃が止み、次の瞬間に聞こえる音と声。
防御姿勢を解き、視線を音(声)の方にゆっくりと向けると。

「油断大敵でござるよ、ナルト殿。」

してやったりとばかりに鈴を掲げて見せてくる楓、その顔にニヤリとした非常にいい笑顔が浮かんでいるをナルトは見た。


 
TRY NEXT NEGI MAGI RECONCILIATION 


後書き

毎度毎度の事ながら、お久しぶりのM・Tミゲです。
難産となった麻帆良忍風帖その8、漸くの更新となります。
今までの話の加筆と平行して、続きとなるこの話を書いていた訳ですが……思った以上に難産で、書いてる最中も改定の連続でした。
NARUTOもネギまも、ドンドンと新しい設定が明らかになっていき組んだのプロットの中にも全く使えないものがチラホラ……。
原作とは食い違った設定等も出てきてしまいますが、なるべく原作の流れを組んで物へと練っていきますのでご容赦の程お願い致します。

さて基本的にバトルがメインとなった今回の話ですが、非常に本当に文字通りの難産でした。
戦闘描写は文字や言葉の使いまわし、また文法的な部分が非常に難しいと実感した次第です。
あーでも無い、こーでも無い、と何度も何度も描写を書き直しはしましたが、未だに雑だな自分でも反省する次第。(ああ、文才が欲しいです……)
また同時にパワーバランスの調整も、相当に難しかった次第。(愚痴っぽくて申し訳ない……(汗))
力量の差や戦闘力の差もですが、何より苦労したのはNARUTOの世界とネギまの世界における戦闘方法・武装の差です。
作者のインタビューでいつか見た覚えがあるのですが、NARUTOの世界には『銃』に始まる近代兵器。武装が存在しないとの事。
うろ覚えですが作者の方曰く、『銃とかミサイルがあったら、チャクラとか忍者とか必要ないじゃないですか。』との事。(うろ覚えですが……)
故に、ナルトは真名の『銃』に対しては初見でありる、が絶対条件となる訳です。
予備知識すらない武器に、どうやって対処するのかで非常に悩みました。
最終的には一度その武器の効果を見た上での、危機感と生存本能に任せての偶然に頼った対処としました。
所謂、偶然のご都合主義と言うものです。
そうでもなけば、如何に動体視力や運動能力が桁違いでも初見で躱わす事は出来ないのではと考えました。(個人的な意見ゆえに非常に恐縮なのですが……)

長々となってしまいました、今回はこの辺りで。
ご意見、感想等が御座いました、今後の参考になりますので是非にもお願い致します。

麻帆良忍風帖だってばよ!!

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