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人修羅先生!(×真女神転生3) 投稿者:ナポリ 投稿日:06/04-21:14 No.672

人修羅先生

正義の味方『人修羅仮面』爆誕!!





「フンフンフーン」

朝から鼻歌が漏れるほど俺はご機嫌である。

何故かって?

理由は色々と有ったりする。

朝の占いが一位だったり、茶柱が立っていたり、国民の祝日で休みだったり、些細な理由もあるが

大きくは二つ、其れはこの間エヴァと買った服が思いのほか似合っていた事。

ジーンズにTシャツとそれに合わせた上着。顔面の刺青とも不思議にマッチしており、首の後ろさえ見なければ俺は一般人な見た目になっているだろう。

もう一つの理由はそれと似たような事だが俺の戦闘用の服が完成したらしくこれからそれを取りに行くのだ。

エヴァのセンスは良いと分かったのでどんな物になっているか実に楽しみだ。

「……おっとここか店名は『ロサ・カンディータ』? 聞いた事があるような無いような……まいっか」

ドアを開ければそこには服、服、服

壁一面が服だらけである。

「あら、いらっしゃい今日はどんな御用で?」

中央に立つカウンターからの声。

服の量に圧倒されていた俺は言葉を掛けられてようやく人の存在に気付いた。

店主らしきその人は目を隠すような髪形に目の覚めるような青いドレスを着ていていかにもセレブな感じがする。

「あの……藤堂といいますが、服が出来たと聞いて来たのですが」

「ああ。エヴァちゃんの注文の品? 出来てるわよ。奥で試着してもらえるかしら」

店主に促されて奥の試着室に入る。

用意されていたのは身体にピッタリと張り付くようなシャツに趣味の悪い事に背中に赤字で「人修羅」の文字の入った脚まで届く長い外套、つーかマント

何でまたこんな珍妙なデザインのマント?

まあ着なきゃいいか……

あとは小物類として変な紋様入りの手袋に

「仮面?」

ただ、目と口の位置に穴が開いているだけのかざりっけの無い白い面。

着けてみれば思いのほか馴染む。

「顔をばらしたく無い時もあるし有り難く頂いておくか」

一通り着て特に問題も無かったので試着した服を持って外に出る。

「どうでした?」

出てすぐの店主さんの言葉

「いや素晴らしい出来だと思いますよ」

縫製も凝っていたし、かなりの力で引っ張っても破れなかった。

本当に素晴らしい代物だとは思うがこの質だと……

「それは良かった。材料の入手には苦労しましたわ。黒龍の皮、ジャイアントバットの翼の皮膜、どれも一級品ですから」

値段を聞くのが怖ひ……

「それでは商談に参りましょうか……お値段は此方になります」

差し出された電卓を恐る恐る覗くと……あれ?

「安い……ですね」

世間一般からしたら高額ではあるが、自分の考えていたよりも相当に安い。

「エヴァちゃんからちょっと料金は頂いているから……それにお得意様のエヴァちゃんの彼氏になら負けてあげないとね」

何を言っているのかなこの人。

俺がエヴァの彼氏? そんなロリータな趣味はございませんよ。

「いやいや……俺はそんな者じゃありませんよ? 大体エヴァと出会ったのはほんの最近の事ですし」

「ふぅん……エヴァちゃんが男の服を注文してくるからそうだと思ったんだけどねぇ」

それはアイツが義理堅いからそうなっただけですよ。

「それじゃあエヴァちゃんとの事はそう言う事にしておくとして、御代を頂けるかしら?」

「あ、はい」

代金を手渡して俺は店を後にした。












たまの休日、『ロサ・カンディータ』からの帰り道に公園へと寄り道をしてベンチで寛いでいる。

学園都市だけあって学生が多く目の前を通り過ぎていく。

彼女にでも約束をすっぽかされたのか沈んだ顔の男子生徒。

嬉しそうにクレープを頬張る女子生徒。

そして幸せ一杯といった表情で手を繋いで歩くカップル。

そのどれもを見ていて微笑ましいと感じる。

世界にはやっぱり綺麗な所だってたくさんある。

先生もこの光景を見ていれば……

そこまで考えて止めた。

過去に『たら・れば』は無い。

考えたところで無駄な事。

それにしても本当にここの空気は優しいな……

「「あーー。藤堂先生だ!」」

「ん?」

誰か俺の事呼んだか?

辺りを見回せば此方に駆け寄る二つの人影。

「風香と史伽か……どうした?」

やってきたのは鳴滝姉妹。

彼女達が姉と慕う長瀬と俺が仲が良い(実際は向こうが一方的に話し掛けてくるだけだが)のでそのせいか、俺を恐れずに話し掛けてくれる数少ない生徒である。

「先生こんな所で何してるの?」

姉の風香のほうが聞いてくる。

「ちょっと出歩いていたんだけど疲れてな。そういうお前らは今日はどうしたんだ?」

「私たちは部活動中!」

部活?

こんな街中でする部活というと何だ?

「先生も散歩部の活動一緒にしてみない? 楽しいよ」

散歩部……個性的な部活だが、中々楽しそうだな。

「ふむ……散歩か、気分転換に良さそうだな。良しやってみるか」

二人の顔が笑顔に変わる。

「じゃあ決まり!! 今日は歩くよーー」

「お姉ちゃん周りの人がが見てるよ……」

そうして俺たちは3人で歩き始めた。

ポジショニングは俺が中央で両脇を鳴滝姉妹に囲まれる格好。

鳴滝姉妹が歩く先に有る建造物の説明をしてくれたり、麻帆良学園の部活について語ってくれたりで楽しい時を過ごした。

でだ、その学園内の案内をしてくれたお礼にカフェで奢ったわけだが、その時周りから

「やはり『ロリコン魔人』の名は本当だったのか」

とか

「あんな幼い子を毒牙にかけるとは……鬼畜め」

とか

「両手に花かこの野郎!」

と、まぁ心にグサグサと突き刺さるような発言が俺の無駄に良い耳に聞こえてくるんですよ。

「先生……どうしたのそんな悲しそうな顔して?」

史香が心配げに俺の顔を覗き込む。

そういう行動されるとさらに誤解が……

もう……どうにでもなってしまえ!

「いや何でもないぞ。それより何でも頼んでいいぞ。お前らはちっちゃいからな食って大きくなれ」

俺はそう言ってぐりぐりと鳴滝姉妹の頭を撫でた。

吹っ切ってしまえば怖いものなど無いのかもしれない。







「「先生また明日ねーー」」

「気をつけて帰れよ」

手を振る二人に手を振り返す。

周りの人が俺を変態を蔑むような目で見てくる。

今日一日で俺は『ロリコン魔人』の名を定着させてしまった事だろう。

その事は置いといて、今日の出費で俺の財布の中身はスッカラカン。

銀行に行って金を下ろしてこないと。

とまあ、銀行へ来たは言いのですが、何この状況? 俺に対する嫌がらせ?

「金出せっつってんだろ! 早く出しやがれ!」

目出し帽を被った二人組が銀行の受付のおねーさんに銃らしき物を突きつけている。

周りの人ははこの状況に騒然としている。

「動くなっつってんだろうが!!」

乾いた音

訂正しよう銃らしき物ではなく何処で手に入れたのかアレは本物らしい。

さて、俺がちょっと手を洗う為にトイレに行っていた内に何やらこの銀行は銀行強盗に押し入られたようです。

幸いにも俺はトイレの中から盗み見るようにしているので強盗たちには気付かれていない。

…………どうしましょうか?

こうなった以上はあの強盗たちを捕らえるべきなのだが

「顔がばれるとまずいよなぁ」

一般人を装って銃を持った強盗二人を周囲の人を傷つけず取り押さえるのは無理がある、つまり人外の動きを見せねばならないのだ。

そしてその際もしも俺の顔がばれてしまったら一発でクビだろう。

さて、どうしたものか。

そうだ、着替えて仮面をつけてしまえば俺だとは誰もわかるまい。

決まってからの行動は迅速。

トイレの個室の中ですばやく今日買った外套を身につける。

仕上げに手袋と仮面をつければ、謎の人物の出来上がり。

鏡で見れば自分でも引いてしまうほどに怪しい。

外套の中身はさっきまでの服装だから晒さないようにすれば誰にも俺とは分からないはず。

……行きますか。

「早くしろ、早く!!」

銀行員のおねーさんに銃を突きつけている強盗。

可哀想に泣いてるじゃないか。

どんな理由があろうともこんな事をする人間に容赦は不要。

移動は迅速

意識を刈り取る為に膝を銃を突きつけている男にブチ込む。

崩れ落ちる男

「な、なん」

だ、とは言わせない

振り上げた脚をそのまま回しもう一人の男の顔面に足の裏を叩きつけた。

靴底から伝わる感触からして鼻骨ぐらいは折れたかもな。

だが、後遺症が残るような攻撃をしなかった俺に感謝しろってもんだ。

銀行内はあまりの出来事に静まり返っている。

……逃げますか。

ゆっくりと俺が出口に向かって歩き出すと俺の先にいた人達がまるでモーセの前の紅海のように割れ、一筋の道が出来上がる。

「待って!!」

背後からの声に反応して歩みを止めてしまった。

「あの……助けてくれて有り難う」

俺はその声に右手を上げる事で応え、そして銀行を出て行った。

……その後は全速力で路地裏に入って隠れながら家に帰りました。

情けない事この上なし。










翌日。

登校路を俺はトボトボと歩いていた所で声を掛けられた。

「藤堂……どうした? 何をそんなに落ち込んでいる」

「おお、エヴァか……これを見てくれれば分かる」

俺は手に持った新聞を手渡す。

「む。麻帆良スポーツか、何々……『魔法少女、魔法オヤジに続く、謎のヒーロー人修羅仮面現る!』?」

エヴァは一瞬の沈黙の後

「アハハハハハハハハハハッッアハハ!!」

無茶苦茶にそりゃもうこれ以上無いくらいに馬鹿笑いした。

「クク……貴様は一体何をやっているんだ? 悪魔だ何だと名乗っておいて今度は謎のヒーローか。面白すぎるぞ、これだけ笑ったのは久しぶりだ」

「……こんな事になるとは思ってもいなかったんだよ」

なんだよ人修羅仮面て、その安直過ぎるネーミングセンスの持ち主に全力『気合』付きの『至高の魔弾』をたたっこんでやりてぇ。

「まあ落ち込むな。人の噂も七十五日と言うだろう? しばらく何もしなければ噂も消えるだろう……何もしなければな」

そんな言葉を残してエヴァは去っていった。

……何もしなければって何も起きなければ俺も何もしないんだけど、何かがこれからも起こりそうだよなあ。

そんな不安を胸に抱きながら、俺は教師の仕事を果たす為頬を叩いて気合を入れて学園に向かった。

人修羅先生!

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