第17話「麻帆良戦隊バカレンジャー!! EPISODE4『100円の魔導書(笑)』」 投稿者:偽・弓兵 投稿日:06/05-00:12 No.676
第17話「麻帆良戦隊バカレンジャー!! EPISODE4『100円の魔導書(笑)』」
地底の奥底――――図書館島の深部に存在する『地底図書室』…そこで彼らバカレンジャーとその仲間達は――――
「では、コレわかる人――――」
「は~い!!」
「それじゃあ、佐々木さん」
「35です」
「正解でーす」
おお~、パチパチと驚きの声が上がる。
なんと、こんな時でも勉強していた。
始めにここに辿り着いた当初は、
「こ、ここは――――!?」
驚きの声をあげた夕映に、
「知ってるんか~? 夕映」
「地底なのに明るい光に満ち溢れ、数々の貴重書があると言われている場所――――本好きにとってはまさに『全て遠き理想郷(アヴァロン)』!!」
「へー、そんなトコなんや~~~」
感心したような木乃香に、
「ただし、この図書室を見て生きて帰ってきた者はいないとか!!」
キュピーン!!! と目を光らせる夕映。
「「「「「な、なんだって~~~~~~!?」」」」」
M○R風に驚くバカレンジャー。
それに、
「いや、なんでさ。それじゃなんで綾瀬が知ってるんだ?」
士郎のツッコミが入った。
そんな事もありながら、彼らはこの地底図書室での生活に順応していた。
「まあ、なぜかココには教科書から生活用品から食料まで色々取り揃えているから、のん気に勉強できるんだが」
おそらくここの準備をした学園長に苦笑しつつ、勉強する一同をみながら、ジャガイモの皮むきをする士郎。
彼は教えられるほどの能力は無いので、ここでの生活では食事やその他雑用を自分からしていた。
バカレンジャーの5人と木乃香、ネギ、そして士郎の8人分の料理をするのは大変であったが、慣れた手つきの士郎には一瞬の狂いも無い。さすがはスキル『家事:A』の持ち主。いまだ剣の腕や『心眼』のレベルでは赤い弓兵に負けてはいるが、投影の小技や、家事一般に関しては僅かながら超えてしまっていた。
「ん。これで一通り準備は出来たな」
昼食の準備を終えた士郎は、今だ続く授業の様子を見て、暇が出来た事に気付いた。
「そうだな…折角だし、本でも見ながら散歩でもするか…」
そう言って、その場を離れてあたりをふらつく。
本棚を見る。さすがに夕映が言った通りに、珍しい本ばかりがある。
「ん~~、と、なになに…『ネクロノミコン』…『屍食教典儀』、『無名祭祀書』――――ってオイ!? ヤバげな本ばかりじゃないか!?」
はっきり言って、見習い魔術師ぐらいの知識しかない士郎でも聞いたことのある有名な魔導書ばかりである。いくらこんな場所に来る人間が皆無に等しいとはいえ、こんなに無造作に置いておけるモノではない。
が――――
「んん? でもこれ…確かに魔力を感じるけど、大層な名前にしては小さいな。 まさか写本の類か?」
そう呟きながら『ネクロノミコン』を手に取る。
「よく見れば…新釈って書いてあるなぁ…やっぱり写本の類か…しかもなんか安っぽいし」
パラパラとその本を捲って見るが、他の本と比べても全体的に安っぽい感じは拭えない。例えば大学を中退して貧乏探偵を営む日々の食事に困って協会のシスターにたかりに来る人間が書いたような。
「作者は――――『大十…九…郎』? かな? 字が汚くて読みにくいなぁ」
しかもどうやらコレを書いたのは、日本人らしい。
しかし――――
「でも、コレがこのヘンの本の中で一番高い魔力を放ってたりするんだよなぁ…」
そして、何気なくその本の裏表紙を見て驚愕する。
「な――――!?」
ソレを見てあまりのありえなさに絶句する。
「なんで――――」
それは、この学園に来て1,2を争う驚き。学園長の頭を見たときくらいの驚きであった。
「なんで、ブッ○オフの値札がついているのさ!?」
そう――――その本、『ネクロノミコン新釈』はかつてブック○フで売られていた証である値札がついていたのである。――――しかも100円。
「こんな、魔導書が100円!? ありえないから!! いや、それより何で写本とはいえ、魔導書がブ○クオフで売ってるのさ!?」
世の魔術師、魔法使いが見たら士郎と同じ感想を持つであろう。
それほどのアリエナイ事である。
「あ~…なんかコレに興味が湧いてきたなぁ…ちょっと調べてみるか」
そして士郎は、興味本位でその本の来歴を自分の魔術で調べてみる。
「“同調開始(トレースオン)”――――」
この本の作者の辿って来た歴史を士郎は僅かながら見ることが出来た。
それは――――
銀髪の幼女に吹き飛ばされる男。
ツインテールの金持ちお嬢様にこき使われる男。
金髪爆乳シスターに毒舌を吐かれてへこむ男。
エレキギターをかき鳴らす、キ○ガイじみた男と戦う男。
あまりの空腹に、猫を獲物を見るかのような目で睨みつける男。
etc――――
その男を一言で表すのならば――――貧乏? もしくは女難?
「――――なんか、この人にはシンパシーを感じるなぁ…」
もし、この場にいるのなら志貴に続く心友にさえなれそうである。
「しかし…これでこの本がなんでこんな値段なのかわかったな…」
そう、この『ネクロノミコン新釈』がこんな値段の理由は――――
「おそらく、作者であるこの人があまりにも貧しいからこの本にもそれが写ったんだな」
普通、そんな事はありえないが、コレは魔導書の類である。作者が魔力をこめて書いた本であるから、作者の特性が写ったのかもしれない。
「しかし――――ホントにこの男の人、貧しいなぁ…大金が入っても色々あって懐に残らんし。――――まさか、この人の“起源”は“貧困”だったりして…」
そんな、作者である『大○字九郎』が聞いたら、泣きながらク○グヴァとイ○クァ乱射しそうなことを言う士郎。
「まあ、いいか。 それより他の本を探すか…」
そう言って、ソレを元の本棚に戻した。
「しかし――――ホントに色々あるなぁ。 娯楽小説やマンガまであるし」
士郎が次に見た本棚には、マンガからファンタジー小説までたくさん揃っていた。
「あ? このヘンの『聖闘○星矢』が借りられてる。こんなトコまで借りにくる人がいるんだなぁ…」
またも興味本位で、そこの棚にある図書カードを見る。そこには――――
「『クウネル・サンダース』? ヘンな名前…」
さすがに、こんなトコロにある本をワザワザ借りに来る人。名前も変わっている。
「え~と…なんか面白い本あるかな?」
そういいながら、本棚を見渡す士郎。
『ロー○ン・メイデン』、『灼眼の○ャナ』、『終わりの○ロニクル』、『ま○らほ・メイドの巻』、『風の○痕』、『魔法少女リリ○ルなの○A’s』――――
多数のライトノベルやマンガの題名をみながら、本を探す士郎。
『ダ・○ーポ』、『kan○n』、『A○r』、『おね○いティーチャー』、『おねがい○インズ』――――
段々、妖しくなってきた。
『はじ○てのおる○ばん』、『大番○』、『ラ○ス』、『妹で○こう』――――
「――――ってオイ!? コレって18禁ゲームじゃないか!?」
いつの間にかライトノベルではなく、18禁ゲームが立ち並ぶ棚に来ていたらしい。
「なんでさ。――――なんで図書館に18禁ゲームがあるのさ?」
士郎が知るよしも無いが、これは先ほどの『クウネル・サンダース』が、“萌え”を追求するために集めたコレクションである。――――切嗣とあったら一日中“萌え”について語りつくしそうである。
「――――み、見なかったことにしよう…」
頭を抱えながら、その場を立ち去る士郎。
そして、また別の本棚を見てみる。
このヘンは、雑多に色々集まっている。参考書から、娯楽小説までジャンルがバラバラだ。――――共通しているのは、どこかしらオカシイ事。
『ギ○バート・デュラン○ルのデス○ィニィープラン計画書』
『キ○・ヤマ○の婚約者のいる女性を寝取る100の方法』
『ギ○ン・ザ○著“立てよ!! ジオ○国民!!”』
『ゾーンブ○ク家が伝える先祖直伝の制裁特集』――――
「これ、ヤバクないか…?」
さらに――――
『ほうき少女まじかるあんばーVS魔法少女カレイドルビー!! 地球最後の日!!』
『洗脳探偵のマル秘事件簿~メイドは見た~』
『あ~ぱ~吸血姫VSカレー司祭!! 眼鏡少年の悲劇』
『黒桐幹也調査ファイル~遠野家当主の胸部に対する調査~』
『黒桐幹也調査ファイル~遠野家長男の女性遍歴~』
『両儀式が選ぶ名刀百選』
『蒼崎橙子人形集』
『蒼崎青子の食べ歩きマップ』
『荒耶宗蓮著 たのしい結界の作り方』
『ネロ・カオス著 喋るシカ育成日記』
『割烹着の悪魔著 3分でできるメカヒスイ』
『実録!! こんな騎士を部下に持った王様の話 “ランスロット、あなたには本当に手を焼かされた…”今、騎士王が語るランスロットの真実!!』
『実録その2!! 今明かされる衝撃の真実!! かの騎士王は実は暴食王!? 調査協力R・T』
『実録その3!! 義理の兄が語る義妹の正体!! “あいつは、姑よりもヒドイよ…” 間桐家の真実とは!?』
『冬木市の謎“冬木の虎の真実とは!?”』
『第七司祭著 究極のカレーの作り方』
『言峰綺礼著 至高のマーボーの作り方』
『遠坂先生が教える上手い脱税のやりかた』――――
「あああああああああ…お、俺はナニもみなかった!! オレハナニモミテイナイ…オレハナニモミテイナイ…オレハナニモミテイナイ…」
そんな事をブツブツいいながら、皆の下に戻る士郎。
「よ~し!! できた!! お~い!! 昼飯できたぞ~~~!!」
士郎の声が当たりに響き、飢えた欠食児童たちが走ってくる。
「あ~、おなかすいた~~~~って、ナニ!? この豪華な料理は!?」
士郎は、先ほどのことを忘れようと料理に没頭して、思いっきり腕を振るってしまった。
「あ~、まあいいじゃないか。皆、たくさん食べるんだし」
苦笑しつつ、明日菜にそう言う士郎。
「まあ、いーけど――――って、アンタ達!? もう食べてるし!?」
明日菜が食卓の方を見ると、そこは戦場であった。
「モグモグ…早いモノ勝ちアルよ~~」
「ムグムグ…そうでござるよ~、こんな美味しい料理は早く食べないといかんでござる…ムグムグ」
「美味しい~~!! 衛宮先生って、料理美味かったんだね~~~!!」
それぞれ、古菲、楓、まき絵の言葉。
「しかし――――モグモグ――――士郎殿、中華も――――パクパク――――プロ並みでござるな?――――ハムハム」
「楓。食べるか喋るか、どっちかにしろよ…まあ、一番得意なのは和食だけど、中華も結構できるぞ?」
かの衛宮家では、某『料○の鉄人』ばりに和食の士郎、洋食の桜、中華の凛――――とプロ並みの料理人が揃っていた。しかもたまに乱入してくる弓兵などとも対決しながら互いに切磋琢磨しながら、料理の腕を磨いてきた。そして、最後に剣の丘ならぬ料理の丘に残ったのが衛宮士郎である――――ちなみに、その判定をしていたのはもちろん我らが騎士王と冬木の虎だ。
「しかし…ホントに料理上手いわね~~。実は、満漢全席とかも作れたりして?」
冗談っぽく笑う明日菜に対して、
「? 作ったことならあるぞ? 満漢全席」
とんでもないことをおっしゃる士郎。
「「「「「「「へっ?」」」」」」」
士郎以外の7人の声が揃った。
「マ、マジ…?」
顔を引きつらせながら言う明日菜に、
「ああ…ウチの家に住み着いている暴食王が、TVをみて食いたいって言ってな…」
遠い目をして言う士郎。
「で、でも、あれって凄く手間がかかるんとちゃうの?」
木乃香の言葉に、
「ああ…ホントに大変だったよ。ギルガメッシュから金を借りて…小の方だから助かったけど、大だったら殺しあって金を強奪したろうなぁ…勝てるかどうかはともかく」
強盗は犯罪だぞ? 正義の味方。
「ライダーには、ペガサスで遠くに買いにいってもらって…」
大変そうに、その時のことを語る士郎に、一同言葉もない。
「え~と、なんでそこまでして作る羽目になったのよ? 断ればいいじゃない」
そんな当然の疑問を放つ明日菜。だが、それはかの騎士王の実態を知らない者のみがいえる言葉である。騎士王のことを僅かにでも知る者ならば、そんな死刑判決の書類に血判を押すような真似はできない。
「だって――――にっこり笑いながら、『シロウ…満漢全席を所望します。かつて、中国の皇帝も食べたのですから、英国の王である私が食べないわけにはいきません。出来ないとは言わないでしょうね? もし、出来ないと言うのなら――――』とかいいながらエクスカリバーをぺしぺし頬にあてる暴君にどう言えと?」
虚ろな顔をして呟く士郎に、もはや誰も言葉がなかった。
しかし、一人の少年が勇気をだして士郎に質問した。
「え~と、士郎さん? 今の話の中に、聞き捨てならない言葉があったんですが…」
顔を引きつらせながら質問するネギ。
「英国の王とか、エクスカリバーって…まさか、その暴食王ってアーサー――――」
ネギの言葉を遮り、士郎が言う。
「ネギ君。――――世の中には、知らないほうが良い事もあるんだよ…」
ふっ、と磨耗した笑みを浮かべた士郎に、ネギはもはや何も言えなかった……。
第17話了
士郎とネギの麻帆良騒動記 |