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あ てぃーちゃー いん ぱられるわーるど 第三話(ネギま×Fate) 投稿者:phase 投稿日:05/22-23:13 No.586

Interlude  刹那

  ―――お嬢様に付けていた簡易式神から危険信号が届いた。
やはり見回りよりもお嬢様の護衛を優先すべきだった、と後悔しながら桜通りに向かう。
  数分後、到着した私が見たものは今日会ったばかりの副担任に抱かれ、ぐったりとしているお嬢様の姿だった。

  ―――その瞬間、やはりエヴァンジェリンが動いていたかとか、あの男はエヴァンジェリンの手の者かとか、そんな思考は全て吹き飛んだ。
頭に浮かぶのはただ一つ。
  あの男を――斬る。

 Interlude out



  第三話 『救いは意外な人物から』



  さて。俺、衛宮士郎は例によって例のごとく大ピンチである。
……何かもう、慣れきってしまった自分が怖い。
まあ、過去に色々あったからな。あれとか、それとか、そう言えばあんな事も―――

「……おい」

  ―――いけない。つい現実逃避しかけてしまった。桜咲さんが凄い顔でこっちを睨んでいる。
……よし、まずは話し合いをしてみよう。
「桜咲さん。一応言っておくけどそれは誤解――」
「黙れ」
  ……終了。話は通じなさそうだ。

「お嬢様を置いてゆっくりと下がれ。……妙な真似はするなよ?」
どうにか説得できないものかと考えている俺に、桜咲さんが冷たい声を掛ける。
 ……ここは素直に言葉に従おう。
桜咲さんは近衛さんに駆け寄り、無事を確認すると安堵の表情を浮かべた。
が、それも一瞬。すぐに顔を引き締め、こちらに向き直る。

「……衛宮士郎。少し、痛い目にあってもらう」
 誤解は解けてないようだ。………仕方ない。


  「――強化、開始」

小さく呟いて四肢を強化する。

争いたくはなかったが仕方ない。取り押さえてから誤解を解くしかなさそうだ。

  「――投影、開始」

次いで、陰陽の双剣――干将莫耶を投影する。
扱いに慣れているこの剣なら何とか怪我をさせずに済ませる事ができる……と思う。

「アーティファクト……! 貴様、やはりエヴァンジェリンの従者だったのか!!」


……あれ?  何か誤解されてる?  って言うかアーティファクトってなにさ?

「最早、言い逃れは出来んぞ! 覚悟!!」
  さっきより遥かに強い殺気を纏って斬り込んでくる桜咲さん。
しかし、正面からの攻撃に当たってやる気など無い。
  手にした干将で受け止め、そのまま打ち合う。

二合、
三合、
四合、

干将が砕ける。
再び、投影。

五合、
六合、
七合、
八合、

莫耶が砕ける。
再び、投影。

数分の競り合いの後、一旦、距離を取る。

  ……おかしい。
だいぶ薄れてきたが、どうも投影に違和感を感じる。
……世界が違うからだろうか?  投影特有の世界を上塗りするような感覚が薄く、どうにもやりにくい。
そんな事を頭の隅で考えていると、桜咲さんが声を掛けてきた。

「………17本。それだけ打ち壊してもまだ現れるとはな。そのアーティファクトの能力か?」
「…………」
未だ勘違いしている桜咲さんの問いに沈黙で答える。それは予想していたのか、気にする様子もなく再び斬りかかってくる。
高速の斬撃と、瞬間移動のような歩方に着いて行きながら、内心、嘆息した。


 この子は、強い。気を抜くとやられるくらいに。


 投影の繰り返しでもう魔力にも余裕がないし、これ以上長引かせる訳にはいかない。
そう判断した俺は、攻撃を避けつつタイミングを伺う。


―――袈裟斬り。
 受ける。
―――刺突。
  避ける。
―――逆袈裟。
  受け流す。
―――胴薙ぎ。
  弾く。
  少し、距離が空く。

今だ―――!!

  ―――手にした干将を軽く放り投げる。
身構える桜咲さん。

「―――I am the born of my sorwd」

呪文を唱え、解放する。刀身に宿す魔力を、爆発という指向性を持たせて――!!


「壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)」


―――轟音が、閃光が、衝撃が、ほんの一瞬だけ五感を狂わす。そして、その一瞬で勝負は決まる――

「―――強化、開始」

 全力強化した脚で、跳躍。
桜咲さんの背後に着地、振り向きざまに首筋に莫耶の背を当てる。


 ――これで、終わり。後は誤解を解くだけだ。
そう思って桜咲さんの顔を覗き込むと、親の敵を見るような顔で睨まれた。

「くっ………」
  悔しそうに声を洩らす桜咲さん。目の端には涙すら浮かんでいる。
………正当防衛のはずなのに、凄い罪悪感がする。
その罪悪感から逃れようと、桜咲さんに声を掛けようとする。と、

   ちゅいんっ。

  俺の前髪を高速で飛来した何かが掠め……っていうか多分、銃弾。
…………俺、狙われてる?  え、なんでさ?

よ、よし。冷静になって状況を確認してみよう。

  ―――状況確認(二回目)

  まず、(客観的には)謎の爆発。
  少し離れた木の根元には、気を失った二人の女の子。
  で、俺は涙を浮かべた女の子の首筋にナイフっぽいものを当てている、と。

よし、状況確認終了。
………ついでに俺の人生も終了の危機。
我ながら犯罪者以外の何者でもないぞ、これ。

  俺が逃げるべきかを混乱した頭で考えていると、正面から今朝見掛けた顔が現れた。

「やあ、衛宮先生。いい夜だね」

「……龍宮さん?」

現れたのは、俺が副担任となったクラスの生徒――龍宮真名さんだった。
その姿を視認した瞬間、さっきの狙撃は彼女か、と理解した。

  ……………銃、持ってたしな。

やけに似合うなあ、と一瞬考え、すぐにそんな状況ではない事を思い出す。
「た、龍宮さん! 誤解だ!」
半ば通じないとは思いつつ、訴える。それに対して龍宮さんは―――

「ああ。大方、刹那の早とちりだろう?」
「……………へ?」

と、ある意味予想外の答えを返してくれた。
自分で言うのも何だが、そんなに簡単に信じてしまってもいいのか?
そう問い掛けると、
「いいんだよ。最初から見てたしね」
と、またも予想外の答えを返してくれた。

俺が呆然としている傍らで、龍宮さんによる状況説明が桜咲さんに為されていく。


―――説明終了後、凄い勢いで謝られた。まあ怪我も無かったし、結果オーライってことで、とは言ったものの、ずっと申し訳無さそうな顔をしてたなぁ。


…………ところで、何か忘れてるような―――

「しかし、衛宮先生。お嬢様は一体誰に……」
「―――あっ」

しまった。ネギ君の事をすっかり忘れてた。
………どうしよう。

「―――先生」

死んではいないと思うが、無事かどうかまでは……

「――先生」

とにかく、すぐに様子を見に……

「―おい、衛宮先生」
「――っと。ゴメン、龍宮さん。ちょっとネギ君の様子を見に……」
「いや、だからあれはネギ先生じゃないのかい?」
「え?」
龍宮さんの指差した方向を見ればそこには確かにネギ君が――――いたんだけど、なんだろう、あれは。
一言で表すと、迷子の子供?
神楽坂さんに手を引かれて泣きじゃくる様子は、そんな感じにしか見えなかった。

……もう、何が何やら。

  ―――結局、ネギ君の説明は要領を得ないものだったので、明日改めて説明をする運びとなった。


  借りているホテルの部屋に入り、ベッドに倒れ込む。

―――明日は平和だといいなぁ―――




  そう願ったが、心の冷静な部分が否定を返してきて少し悲しかった。





続く

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後書き

どうも、phaseと名乗る者です。
第三話をお届けしました。
……話が進まないよぅ。何か微妙だし。
このSSはもともと思い描いたシーンを書きたいが為に始めました。
なので、そのシーンに至るまでがすっぽりと抜けている訳です、はい。
早くそのシーンを書きたいものです。

それではこの辺で。phaseでした。

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