麻帆良の月 第4話 二人の真祖 投稿者:蘭 投稿日:04/30-01:07 No.422
【エヴァ】
「・・・ふう、やはり茶々丸の淹れる茶はうまいな」
茶をすすりながら、そんな正直な感想をもらす。
ん?お前は誰だって?ふふ、いいだろう、本来なら答えてやるはずもないのだが、今は生憎暇だ、教えてやろう。 感謝しろよ?
私の名はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、吸血鬼の真祖だ。もう百年以上も生きているんだぞ、驚いたか?・・・・何?どう見てもそうは見えない?せいぜい十代前半だ?・・うるさい!!私だって好きでこんな姿になっているわけではない!もとはといえばあの忌々しき男、千の呪文の男・・サウザンドマスター、あいつがあんな変な呪文をかけてくれたおかげで、もう私は十数年、中学校でお勉強ごっこをさせられてるんだよ~!
はあ、はあ、少し疲れたが、だいたい私についてはそんなところだ。
「有難う御座います、マスター。ところで、先ほどは何をおっしゃっていたのですか?」
「わわ!?・・茶々丸か、いや、何でも無い気にするな」
いつの間にか私の隣にミニステル・マギの茶々丸が立っていた。そうそうミニステル・マギというのは魔法使いの従者・・パートナーと言えばいいか。で、私のパートナーであるのが、この茶々丸、なかなか優秀なパートナーだ。
「そうですか。驚かして申し訳御座いません。」
と、一礼する茶々丸。茶々丸の格好がメイド服だということはどうでもいいか。
「いや、こっちが勝手に驚いたんだ、お前が謝ることではない。」
そう言うと茶々丸はまた一礼し、向かいの椅子に腰を下ろした。私は残っていた茶を飲み椅子を立った。そしてカーテンを開け夜空を眺める。
「今夜は、満月か・・」
前の満月のときは最悪だった。あの坊やの血を狙い戦ったのはいいが見事に返り討ちにあった。笑えぬ話だ。そんなことを思い出していると結界に反応が見られた、どうやら何者かが学園に侵入したらしい。私はこの学園の護衛も任されていたのだ。
「めんどくさいな・・たいした魔力も感じられないが、何者かわからんからな。行くぞ、茶々丸」
「了解しました、マスター」
私の言葉に反応した茶々丸が椅子から立ち上がり、私の隣に来る。それを見て私はドアを開け外に出た。私の家は林の中にあり、周りは木々ばかりだ。風が吹き、木々がざわめく。この音が好きで私はここに家を建てた。
「さて・・いくか」
私は魔力を集中し体を宙に浮かす。隣の茶々丸は体のあっちこっちにジェットの様なものを出しその体を宙に浮かす。茶々丸はロボットなのだ。
「なるべく早く終わらすぞ」
「了解」
そして私たちは風になった。目の前の光景がどんどん後ろに流れていく。街灯が流れていく様は実にきれいだ。流星群のように見える。
そうしているうちに橋についた。周りを見渡すと金髪でショートヘアーの女性が歩いていた。
「茶々丸、お前は物陰に潜んでいろ。そして私が魔法を詠唱し始めたら飛び込んで来い」
茶々丸が無言でうなずき、橋の鉄鋼の陰に隠れる。そして私は気配を消して女の後ろに回りこむ。気づかれないようならこのまま排除する。もし気づかれたのならばそのとき考えよう。そして女との距離が20メートルというところまで来たとき、女が振り返った。
(馬鹿な!?気配は完璧に消したはず・・こいつ何者だ!?)
疑問ばかり浮かぶがとにかく気づかれたのならしょうがない。私は女に近づくのをやめた。そして敵意を込めなるべく冷たく言ってやった。
「貴様、何者だ?」
女は全く動じず、緊張感のかけらもないような声で問い返してきた。
「あなたこそ何者?」
カチンと来た、いくら殺意を込めていないにせよ、さっきの私の言葉は普通の人ならばふるい上がらせるくらいの威圧感を持っていたはずだ。それがこの女には全くきかなっかった。
女はこっちを見据えてくる。その目はとてもきれいな赤い色、例えるのならば鮮血。吸い込まれてしまいそうなほど清く澄んでいる。
そんな目に見入ってしまった自分を取り戻して、さっきのとはまったくの別の殺意を込めた言葉で言った。
「黙れ、聞いているのはこっちだ、さあ答えろ」
女は私が本気なのだろうと思ったのか素直に答えた。
「私の名は・・アルクェイド・・・・アルクェイド・ブリュンスタ ッド。吸血鬼よ」
【アルクェイド】
・・・・吸血鬼よ」
言い終わったと同時に女の子の眉が動いた。どうやらあの子は最後の言葉に反応したみたいね。そう私が考えていると女の子が口を開いた。
「貴様が吸血鬼?ははは!!笑わせてくれる。そんな魔力も全く感 じられない貴様が吸血鬼など信じられるものか!」
と豪快に笑いながら、なおかつ馬鹿にしながら大声で言う。
「む~、魔力が無いからって吸血鬼じゃないって言い切れるの?」
ちょっと怒りながら私が言うと、女の子は笑いをこらえながら言った。
「ククク、いやすまない。そうだな、ただそれだけで断定したのは 悪かった、謝るよ・・
ククク」
全然謝ってる感じ、しないんだけどな。なんて思っていると、女の子が何か思いついたかのように語りかける。
「そうだ、そんなに自分に自信があるならここで証明してみろ」
そんなことを言ってきた。しかもすごく楽しそうに。
「それってどういう・・・」
「お前の力を見せてみろと言うことだ!いくぞ!リク・ラク・ラ・ラック・ライラック・・・・」
私が困惑していると女の子は何かを唱えだした。それが何かはわからないが体が危険だと判断すると同時に動いた。体が空を裂き20メートルを一瞬で零にした。
「な!?」
目の前には驚愕する女の子の顔。殺すつもりはないから勘弁してね。
そして私は女の子に向けて腕を振り下ろした。