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第三話『初仕事』 投稿者:疾風 投稿日:08/19-17:39 No.1132  




第三話『初仕事』



俺は警備員をしていると言う中学生で三人組の女の子(桜咲刹那、龍宮真名、長瀬楓)と共に侵入者撃退へと向かった。なるべく獣化はせずに撃退したい所だが、どうなる事やら。

「ガロンさん、あなたは何の使い手なんだい?」

突然、褐色肌の龍宮が俺の事について聞いてきた。俺としては君が背負っているギターケースが気になるんだが……。

「俺はこれを使って戦う」

俺は何処からともなくヌンチャクを取り出して三人の見せた。三人は少し驚いている様子だが、俺はこのヌンチャクを交えた中国拳法を主に使うんだよ。悪いか? もちろん獣化しても俺は主力武器としてこれを使っている。

「何を武器に使おうが本人の自由です。が、私達の足は引っ張らないでください」

う~む……。この長い竹刀袋を持っている桜咲刹那と言う子からあまり良い印象を持たれなかった様だ。軽蔑の眼差しを俺に少し向けた後、どんどん先に進んでいく。
他の二人から「気にしないでくれ」と言われたが、この二人からも俺は良い印象は持たれてはいない感じがした。



桜咲の後に付いていくと少し広い広場の様な場所に出た。確かにここからは怪しい気配を感じる、俺も武器を構えると他の三人も各々の武器を構え始めた。桜咲は竹刀袋から取り出した長い刀、龍宮はギターケースから取り出した二丁拳銃、長瀬はクナイと個性的な武器揃いだ(龍宮の武器には少し驚いた)。

「うふふ、あなた達がここの警備員やね」

「貴様が侵入者か……」

黒いローブを着た奴が笑いながら林の中から出てきた。奴からは結構な量の気を感じる、この気は以前に魔界で戦った事のあるレイレイの姉のリンリンと似ている事から札を使う術師だろうか。

「早々にここから立ち去ってもらおうか。去らなければ、それなりの覚悟はしてもらうぞ」

龍宮が侵入者に銃を向けるが、侵入者はそれに怯む様子も無い。何か俺達に適う秘策でもあるのだろうか……。

「残念やけど、ここをすぐに去るわけにはいかんのや。目的の物を手に入れたらすぐに出て行きます。けど、あなた達はとても邪魔。消えてもらいますえ」

侵入者がローブを脱ぎ捨て、出てきたのは着物を着た女だった。女は札を手に持つと何やら呪文の様な物を唱えている。何かヤバイ感じがプンプンしたが、俺の予想は当たった。札から次々と鬼が飛び出してきやがった、体長は二メートルぐらいある。

「はぁ~……これはまた沢山呼び出したな~。数は三十体以上か」

「新人のガロン殿にはちょっとキツイでござるか?」

「冗談言うな。これぐらいの場は何度も経験済みだ《魔界でだけど……》」

三人はかなり意外そうな顔をしている。そろそろ俺怒るぞ? まぁこの場で実力を示せば三人は見直すだろうな。そして女が鬼達に命令を出すと一斉に俺達に襲いかかってきた。上等だぜ!

「はっ!! たぁ!!」

襲いかかってきた鬼二体に俺は腹部目掛けて蹴りを見舞った。怯んだ後にヌンチャクで顔を一撃。顔が潰れた鬼二体は煙を出して消滅した。

「これじゃあ鬼侍のビシャモンを相手にした方がまだマシだな」

「ふっ、なかなかやるじゃないか」

銃を撃ちながら俺に話しかけてくる余裕そうな龍宮。鬼の足を正確に撃ち抜き、倒れた所を桜咲が刀で、長瀬がクナイでトドメを刺している。見事な三人のコンビネーションに俺は舌を巻いた。あれは長く一緒に仕事をしている証拠だな。



「これで……最後!!」

最後の一体になった鬼を俺はヌンチャクで腹部を貫いて倒した。すべての鬼を倒し、後は術者の女だけとなったのだが、女は慌てる素振りも見せなかった。まだ何か隠していやがるのか……。

「まさか全部倒すとは驚きですわ。しかし、ウチはまだ切り札を出してはいまへんえ」

「何っ!!」

女が黒い札を取り出して呪文を唱える。するとその札から先程の鬼達とは比べ物にならない程の強い力を持った黒鬼が飛び出してきた。これだけの力となるとさすがに人間の姿のままではキツイか……。

「くっ……何という力だ」

「あんた等はこれでお終いや。あんた等を消したら、目的のこのかお嬢様を連れて行かせてもらいますえ」

「!? それだけはさせん!! 私の命に代えても!!」

このかお嬢様って一体誰だ? 疑問に思う俺だが、この言葉で桜咲の殺気が一気に高まった事からとても大切な人の様だ。っておいおい、桜咲! 一人で突っ込むな!!

「うぉー!!」

「刹那殿!?」

「あのバカ! また頭に血が上って。楓、ガロンさん、刹那を止めるぞ」

相手の様子も窺わずに突っ込んでいく桜咲を止める為に俺は龍宮、楓と共に黒鬼の方へ向かう。死ぬ気か!? あいつは。

【グオオオオ!!】

黒鬼が持っている棍棒を突っ込んだ桜咲に振り下ろす。避けきれなかった桜咲は何とか刀で受け止めている様だが、あれではいつ力負けして押し潰されてもおかしくない。

「うぁ……」

「刹那!!」

「刹那殿!!」

もう桜咲は限界の様で体がブルブル震えている。潰される、確信した俺は先行している龍宮を追い抜いて黒鬼の棍棒を蹴り上げた。
俺の行動に鬼と女は怯み、三人は驚きの顔をしている。

「そ、そんなアホな」

「悪いな。同じ警備員の仲間をお前の様な奴に殺させる訳にはいかない」

「ガロンさん……」

疲労している桜咲を龍宮と長瀬に預け、後ろに下がらせると俺は黒鬼と一対一で対峙した。
対峙してみると解る。やはりこいつは人間の姿のままで倒すには少しキツイ、獣化をするしか手はないか。

「あー……一つだけ良いかい?」

獣化をする前に後ろの三人には言っておかなければならない。あらぬ誤解を受けたくないからな。

「これから俺の姿を見て驚くと思うが、誤解はしないでほしい。俺は君達の味方だ、それだけは解っていてくれ」

「「「は、はぁ……」」」

三人は訳が解らないと言った様子だ。無理も無いか、突然こんな事を言い出したら誰だって混乱する。

「ウチ等を無視するんやない!!」

女と黒鬼が怒って地団駄を踏んでいる、そうあせるな。

「すぐに倒してやる」

俺の中の獣の血を抑えていた魔力と気を解放し、俺は一気に獣化を始めた。魔界で戦っていた時の感覚が徐々に戻ってくる感じがする。
そして俺は……魔界で『疾風の人狼』と呼ばれた姿になった。

「なっ……バケモンや!」

「バケモノか。だが、俺は獣の血に己を完全に支配されない限り人として戦う。俺は……人間だ!!」

黒鬼は棍棒を振り下ろしてくるが、俺はそれをヌンチャクで受け止めてはじき飛ばした。

「受けろ! 『ミリオンフリッカー』!!」

棍棒が無くなってスキだらけになった黒鬼の腹部にヌンチャクの連撃を叩き込んだ。苦しむ黒鬼にヌンチャクを捨て、俺は身体中に魔力と気をまとって構えをとった。

【グオアア……】

「これで終わりだ。喰らえ!!」

怯えた様子で後退り、逃げようとする黒鬼に魔力と気をまとった俺は一気に突進攻撃を仕掛けた。

「『ビーストキャノン』!!」

黒鬼が悲鳴を上げる間もなくバラバラになり、消滅した。術者の女は気絶しており、後ろの三人も開いた口が塞がらない様子で間の抜けた顔をしている。その滑稽な姿に俺は心の中で笑っておいた。
初仕事は上々の様だ。 

魔界から来た人狼

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