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麻帆良演義 第二回 投稿者:シュラーク 投稿日:06/11-20:37 No.718

―実際、能あるタカより能あるナマケモノの方が、鋭い爪を隠していたりする。







―【麻帆良演義 第二回 「10歳の少年と3000歳の・・・少年?」】―







―麻帆良学園図書館島 地下???階


「……特に変わった所はなし、か。まぁ、あっても困るだけだがのぅ……」

太公望は呟く。もちろんいつものジジィ言葉であり、やる気が感じられないのも彼なりの【流儀(スタイル)】である。
しかしいつもと違うところが一つだけあった。『表情』である。いつもの優しそうな印象は今の表情からまったく感じられない。
だが彼はその顔をやめず、先ほどからずっと下を見下ろしている。今、彼は少し高い場所にいて、結果的に『それ』を見下ろす形になっていた。

(……誰かに『管理』されているのか? こっちの方がオマケみたいだが……やはり来る途中にあったデカイ石扉が関係しておるのか?)

あれこれ考えてみるが、自分とあまり関係ないことについて考えるという事は彼にはなかなか難しいらしい。悪知恵ならすぐに思いつくのだが。
さっさと考えるのをやめて来た道をまた逆戻りした。背中越しに来る蒼白い波動を背にして、太公望はトコトコと出口に向かって歩いていく。
元々、それほど出口とは離れていなかったらしく、すぐに彼の先の方に淡い光が見えてきた。

ギィィィィィィィ

石で出来た扉を開けると、光る天井と滝、そして湖が目に飛び込んできた。普通なら光る天井なんて不思議すぎるのだが、ここでは別におかしくもなんともない。
太公望はその場所から出るとすぐに扉を閉めて、改めてその大きな石扉を眺めた。

(ここに異常がないのは助かるが……結局、こっちの扉とあっちの扉を管理しているのは誰なのだろうか……)

その場で考え込んでしまったが、すぐに音に反応した動物のような動きで左方向を見た。先ほど太公望が来た方向である。

(誰か来る……早々に切り上げた方が良さそうだのぅ……)

そう心の中で呟いた次の瞬間、太公望の姿は蜃気楼のようにその場所から消えた。
それと行き違いに今度は白いローブを来た人間がその場所まともや蜃気楼のように現れ、巨大な石扉を見て首を傾げた。

「おや……今、誰かいたと思いましたが……気のせいだったんでしょうかね?」

しばらく考え込み、それは「はぁぁぁ……眠い……。学祭まで暇で仕方ありませんね……」と呟いてその場から消えた。
この最強(といっても悪い方向で)の二人が出会わなくてよかったのかどうか――それは誰にも分からない。






「皆、頑張って勉学に励んでおるか~?」
「あ、太公望さん! 一日もどこにいってたんですか?」

ネギの質問に太公望は「ま、野暮用でな」と軽く流した。ネギはそれ以上訊いてこなかったので、別に重要なことでもないのだろう。続けてまき絵、古菲、楓が挨拶すると、太公望も同じく笑顔で返した。
前回のあの後、皆との食事で打ち解け、なんだかんだでこのメンバーに彼は溶け込んでいる。さすがに素性は明かしていないが。
なんだか平和に見えるが、一応ここは地底図書室の中であり、安全は無論保障されてなどいない。ぶっちゃけ皆、能天気過ぎだった。

「今はご飯食べてるの。キッチンとかあって便利だよね~ここ」
(そもそもそんなモノがあることに疑問を抱かないのか、おぬしは……)

彼女の頭の中が心配な太公望であったが、それでなぜそんなモノがあるかと訊かれたら答えられないので、あえてツッコミはしない。
そもそも頭が足りないからここに来たのだから、理解できなくても確かにオカシイところはない。
そんなどうでもいい心配を空の彼方にぶっ飛ばしたところで、彼は気づいた。

「む? 木乃香と夕映、それに明日菜はどうした?」
「アスナさんはまだ勉強してます。このかさんと夕映さんは……」
「先ほど拙者が見たときは読書をしていたでござるよ。飲み物片手に」
「微妙にサボっとるな、あやつら。日にちがないんじゃなかったんかい……」

サボリ魔の太公望に彼女達を非難する資格はなかったが、確かに正論ではある。
それに連鎖反応をしますように三人は「じゃあ、私達も少し休憩!」といってどこかに行ってしまった。
なんだかこうなるとネギが少し可哀想になってくる太公望であった。

「皆さん勉強してくださいよぉ……」
「ま、年頃の女子(おなご)の集中力などこんなものだ。というよりもネギ、おぬしも少しは休んだらどうだ?」
「え、あぁ僕ですか!? 僕は大丈夫です。これでも体力には自信があるんですよ」
「……おぬしが大丈夫というならそれでもいいのだが……」

彼が言いたかったのは体力のことではなくて集中力のことだったのだが、どうせそれが分かったところでネギはやせ我慢するに違いない。
なんだかんだでこの少年も自分と同じで仲間を先に優先する『自己犠牲タイプ』なんだな、と太公望は思った。無論タイプは違うが。

「それより……いつになったら魔法が使えるようになるのだ?」
「え? そうですね……あと一日といったところでしょうか」

ネギは自分の右腕を見てそう言った。その細く小さな腕にはまるで刺青のようにハッキリと黒い線が一本、描かれている。
本人の話によるとこれは魔法を封じる封印の術式で、一日に一本ずつ消えていき、三日で消えるのだそうだ。
なぜそんな封印などしたのか太公望には分からなかったが、別に興味もなかったのであえて訊かなかった。

「それにしてもスゴイところですよね~ここ。この教科書なんかずっと水の中に浸っていたのに全然痛んでないですし」
「どう考えたって『魔法』の類だろうな。わしは魔法とかに詳しくないからよくは知らんのだが……」
「う~ん……謎が多いですね。こんなモノを一体誰が……」

ネギは顎に手を当てて考え込むが、太公望は速攻でその答えを暴露した。

「ここの初代校長とその仲間……魔法使い達が作りあげたものだ。建設に10年近くはかかったかのぅ」
「え? なんでそんなことを知ってるんですか?」
「わしもここの建設に一枚噛んでいるからのぅ。おぬしから聞いた今の年号が正しいとすれば……もう軽く100年以上前のことか」
「え……えええぇぇぇぇぇ!!?」
「そ、そこまでして驚かんでも……」

あまりのオーバーリアクションにちょっぴり太公望も引き気味だった。少し驚かせようと思って言ったのは確かなのだが。
ネギはすぐに驚いた表情から新しいオモチャをもらった子供のように眼を輝かせた。・・・嫌な例えではあるのだが、その言葉が一番あっている。

「太公望さん、幾つなんですか!?」
「う~ん……3000は超えたと思うんだが……正確な数は覚えておらん。紀元前から生きとるし」
「へぇ~……さすが仙人……」

人間達が古くから抱いている不老不死の夢を『さすが仙人』の一言で片付けるのはなんだかスゴイが、子供だから仕方がない。
と言っても実際は不老不死ではなく、何千年に1歳とか少しずつ老いてはいくが、太公望は普通とは違うので例外だった。

「……って、そんなことより……あと一日しかないのであろう? 勉強せんでいいのか?」
「あ、そうですね! 早くみんなを探しに……ん?」

ネギはなにかに気づいて周囲を見回した。太公望も同じく気づいたようで辺りを見回す。

「……声だな。本棚の向こうの方から聞こえてくるが……」
「そうみたいですね。早くみんなに勉強するように言わなくちゃ!」
「あ、ちょっと待て……」

太公望は呼び止めようとしたが、ネギは駆けていってしまった。
ここは本棚が密集してあるため、ある程度先まで行かないと本棚の向こうまでは行けない。

(……オカシイ……あっちは滝しかなかった気が……)
『キャーッ!!』
「!?」

明らかにまき絵と思われる高い悲鳴が周囲に響いた。方向は先ほどネギが向かって行ったと思われる方である。
太公望はすぐにそちらの方にすっ飛んでいこうとしたが、時間が無いと一瞬で気づき、次の瞬間にはその場から消えた。






「どうした……って……え?」
「ネギ君ったら10歳のワリにはおませさんだね♪」
(これは……なんと反応しておけば……?)

わざわざ亜空間転移までして駆けつけたのだが、今自分の目の前で起こっているのは惨劇ではなく―――拷問?
楓がネギを掴み、まき絵と古菲が胸を見せたり体を触ったりとセクハラ紛いの行動をしている。
これは10歳のネギにとって拷問に他ならないだろう。今の10歳がどこまで精神的に成長しているか太公望は知らないが。

「……おぬしら、なにやっとるのだ……」
「あ!? 太公望君、いたの?」
「まき絵……わしを君付けで呼ぶなと何度も言っておろう……実際、呼ばれる度に寒気がしてくる」

実年齢を明かしていないので、まき絵の頭の中では太公望は自分より年下、ということになっているらしい。
というよりここにいる目的も話していないので皆の頭の中で太公望は『昔からここに住んでいる子供』という脳内設定になってるとかいないとか。

「そういうのは俗に言うわいせつ行為に入るのではないか……下ろしてやらんとそやつ、そのうち泣くぞ」
「はなしてください~!!」
「あいあい」

楓はあっけなく手を離し、次の瞬間にネギは10歳とは思えない速度でこちらに逃げてきた。
すぐに太公望に抱きついてきて泣き始め、それを受けて太公望はまるで危険物を見るような目で三人を見る。
さすがにその視線が堪えたのか、三人は急いで太公望の方にかけてきてネギに謝った。

「ご、ごめんね~ネギ君! お姉さん達、調子に乗りすぎたかも……」
「ごめんアル~」
「すまんでござる……」
「…………」

三人の言葉に耳を貸そうともせず、ネギは太公望に抱きついたまま沈黙を守り続ける。その後三人がなにをやっても完全にシカト状態。
さすがにオカシイと思い、太公望がネギの頭を揺すると、ヘナヘナと力が抜けて身体を太公望に任せて寄りかかった。

「スー……スー……」
「……寝とるのか、こやつ」
「まぁ、私達に付き合って徹夜で勉強してたもんね~。さすがに10歳の体力じゃ無理があったかも……」
「まったく……人騒がせアルな~」
「それは寧ろおぬし達の事がと思うが……まぁいい。このまま寝かせてやろう」

そう言って太公望はネギの手を腰から外し、背中におぶった。さすがに体力のない彼でも10歳の子供だと軽く持ち上がる。
すぐに安全な場所に移ろうと歩きだしたが、すぐに立ち止まり、三人の方を振り返った。

「……あと、お前達……服、着た方がいいぞ」
「え……あ!! そうだったアルね!!」
「キャーッ!! エッチーッ!!」
「安心せい。別に興味もな~んもない」
「ひどっ!!」

若干、乙女達の心を傷つけたまま、太公望は何食わぬ顔でネギを寝かせられる場所を探しに歩き出した。

『…………』

だが彼を含め、三人は気づいていない。今、この湖の下で石像が怪しげな光を点灯させて動き出したのを・・・







あとがき

久々に更新しました。英語のレポートやら英検やらボキャコンやらで(あ、全部英語だ)パソコンを起動する暇もありませんでした。
……すみません。パソコンはちゃっかりつけてました……。でも書いている暇はあまりありませんでしたよ。
次回、やっとこさ戦闘に行けると思います。お楽しみに~

麻帆良演義

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