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其の三 謎の男、登場 投稿者:鉄人 投稿日:01/29-00:54 No.1949  


ドラゴンの口から光と熱を帯びて吐き出された最後の攻撃、
それは俗に火炎放射と呼ばれるものだった。

大気中の空気を焼き焦がし、全てを飲み込んでしまうかのように巨大な炎の塊、
それはこのドラゴン同様に、トランクスの何倍もの大きさを誇っている。
あきらかに今までの攻撃とは別格だ、質が違う
そう思うには充分すぎるほどの一撃なのだ。

ただ、圧倒的に威力が高いためか、スピードの方が遅いのだが、何度も言うように
火炎じたいの大きさが半端ではないので、生半可なことじゃ避けるのは難しいだろう。

目の先まで火炎が迫る。火炎が生み出す熱と風のせいでトランクスの特徴的な紫色の髪がひらひらなびいた。
そこでようやく、トランクスは火炎に対して仰ぐように両腕を上げたのだった。

至近距離で迫り来るコレを見てみると、なんとなく
「太陽って近くで見たらこんな感じなんだろうか……?」などとも、心のどこかで考えてしまっていた。



「はっ!」



気合一線でトランクスが短く叫び、両掌から見えない気弾を発射した。
火炎とは対照的な速度で、あっという間に火炎の先にぶち当たったそれは
巨大な火炎を押しつぶし、真っ二つに引き裂いた!

そして、気弾――気功波はそのまま勢いを衰えるそぶりを見せず、
ドラゴンのあらわになっている腹の部分へと一直線に飛び込む。
見事に直撃し、小規模の爆発がドラゴンを包み込んだ。

引き裂かれた火炎が、トランクスの右側と左側に分かれて落ちたのは
それとほぼ同時のことである。
爆発の黒い煙の中から、ぐったりとしたドラゴンが首から抜けだした。
人の何十倍かの質量ありそうなドラゴンは、上昇したときの倍近い速さを持って落下、地面に直撃した。
ずうぅんと地面を大きく揺らし、砂ぼこりをまいあげるとそのままピクリとも動かなくなった。

だが、うなだれた首の先にある顔――正確にはその瞳の奥が、
相変わらず眼も眩むような光と意志をはらんでいる。


すごい信念だ……


トランクスは自分の内面で驚いた。
だからこそ、余計にその生き物がかつての自分の師に、どうしようもなくダブって見えた。

心の中で尊敬の念を送り、今だトランクスを睨みつけて放さないドラゴンに彼は自身の左腕を向けた。

今度は、目に見える光球として掌に気を込める。
ドラゴンもトランクスも、その光景をただただ黙って見つめていた。
このドラゴンを気絶させるためには、生半可な一撃では意味が無いだろう、
ならば、ドラゴンの生命力で耐えうる限界まで気を溜める。
本来ならすぐに完了してしまう程度の量の気だが、トランクスは丁寧に……
それこそ、少しづつ心を込めて溜め込んだ。

やがて、超小型の太陽かと思えるほどのエネルギーを持った光球が完成した。

もう一度、ドラゴンの眼を見つめた。
その眼には、「ちくしょう」と歯噛みするほど悔しい思いが込められていて
それは今度は、かつてのオレ自身とよく似ているかもしれない。

トランクスは、そう思った……



      

              ……――やめなさい――……





突然、どこからか声が響いた。

そう、声は「聞こえた」のではなく、「響いた」のだ、まるで彼らを包み込むように
空間いっぱいに、世界いっぱいに、たいして大きくも無い声が響き渡ったのだ
トランクスもドラゴンも当然この世界の一部、あたりまえだが同時に声に気付いた。

「だれだ! どこにいる!?」

トランクスのもっともらしい質問は返されることは無かった。
ただ、その代わりとでも言うように、あの重々しくて硬く閉ざされていた扉が、
……ドラゴンがああまで必死になって守っていた扉が、ひとりでに開き始めたのだ。


ぎ、ぎ、ぎ、ぎぃ~っ……


やはり見た目どおりに重たいのだろう、扉を開いている“何か”も頑張っているのだろうが、
タイムマシンのものと同様、ゆっくりのろのろとしか扉は開いていかない。

やっと扉が全開になったのは、それからきっかり二十秒後のことだった。






     『N&D』
       其の三 謎の男、登場






光球を握りつぶして消滅させ、どこか釈然としない表情のドラゴンを尻目に、
トランクスは扉をくぐった。

中の光景は、外見から比べとって見ればまさに異様そのものだった。

まず、真っ先に眼に飛び込んで来たのは扉からさらに十数m位離れた所に建っている、
円柱状の、とても図太い建物。
建物の頂上からは、左右に足場が広がっていてその上にいくつかのイスやテーブルのようなものを
小さいながらにうっすらと見ることが出来た。
おそらくアレは、テラスといったところだろう。
どうみてもただ普通の家には見えない。

――……だが、最も驚くべき点は建物の形でもなんでもない。
建物を取り巻く、その環境に、トランクスはまぶたが持ち上がりっ放しになっていた。

「ど、どうなっているんだ? ……これは……」

口に出さずにはいられなかった。

扉に硬く閉ざされていたこの空間は、
建物と、それに続く道以外。周りは全て滝だったのだ、それも、やはり尋常な大きさではない滝の……

しかも、滝の……建物に対する自然に見えて不自然な避け方を見る限り。
           
この、“妙な建物の周りを滝が流れているのではなく”、
             
                
ごく自然に流れていた“滝の中に、ムリヤリ建物が入り込んでいる”と考えた方が正しいかもしれない。




              ……――こっちです――……



また、あの声が響いた。

「……あそこか!」

2、3回辺りを見回してみて、どうやら発生源は建物の突き出したテラスから
だということがわかった。
トランクスは声に導かれるまま、その、“左側のテラス”に向かって飛んだのだった。







――――タッ…

ほこり一つ舞い上がらせることなく、彼は静かに降りたった。
右から左へと目線を移し、この場所にいるはずの何者かを探し、
感覚をナイフのように研ぎ澄まして、当然気にも探りを入れた。

――しかし、誰もいない。何も感じない。

どこかの喫茶店のように配置してあるテーブルやイス、また、円状のテーブルに控えめに刺さっている
小さなパラソルなどの家具に、きちんと手入れをしてあるとこから見て
誰かがここを使っていることは確かなのだろう……が、当人は姿かたちに加えて気も感じられない。

声が幻聴だった、気のせいだったと言ってしまえば簡単なのだが、
それでは声が聞こえた後に扉がひとりでに開いたことと、ドラゴンの釈然とした
表情の理由がどうにも説明つかないものだ。

悩んでいても聞こえてくるのは滝の、激しく流れ落ちる水の音だけ。
仕方がないのでトランクスはもう一度この辺りの気を探ってみることにした……



「……フフフ、いらっしゃいませ……」



トランクスの、その背後からとうとうあの声が聞こえてきた。
慌てて後ろを振り向いた彼は、ついさっきまでは確かに存在していなかった奇妙な存在に――

――ニッコリとした、けれどどこか胡散臭い微笑みをプレゼントされていた。


「な、なんだおまえは!? いつの間――「『コーヒー』と『紅茶』……」――に……?」

トランクスの言葉は遮られた。
対する謎の人物は、近くにあったテーブルの上にティーカップを二つ、
向かい合うように置いていく。

続いて謎の人物はどこからともなく二つのポットを取り出し、それぞれ右手と左手に握った。
その状態で、いきなりの質問に不覚にもポカンとしてしまったトランクスを見て
謎の人物はキザっぽくまた「フフフッ…」と小さく笑い、言う。

「客人に対して飲み物ぐらい出しますよ。
で――……あなたは『コーヒー』と『紅茶』の、どちらがよろしいのかと思いまして……」

「え、あ、ああ、ではコーヒーを……」

「…………」


答えたにも関わらず、謎の人物は何もしゃべらず、微笑んだ顔のままピクリとも動かなかった。
聞こえてないのかな……? 思ったトランクスが、もう一度、今度はさっきより大きい声で言った。

「あの~……コーヒーをお願いします」

「………………」

結果は、さっきと比べて微塵も進歩していないものに終わった。
そこまできて、トランクスはようやく一つのことに気付いた。そしてそれは、
非常に大事な一つのことである。

はぁ、とため息をついた後、トランクスは言う。

「…………紅茶を、お願いします……」

「はい、かしこまりました……」

やっと、やっと謎の人物が氷河期から復活した。
嬉しそうに即答すると左手に持っていたポットをどこへともなく消し去り、
右手で持っていたほう――おそらく、紅茶の入っているほう――を、ティーカップに注ぎ始めた。

「いや、思っていた通り。私とあなたは随分気が合うのかもしれませんね」

ニコニコした声で言ってくる謎の人物。

――ああ、そうか、この人はこういう性格なんだ……

“呆れた”と“諦めた”を交えたような、どんよりしたため息を心の中で吐いてやると
なんだかんだでトランクスは、謎の人物が座り込んだテーブルの向かい側に座り込む。

席に着くと、不思議なことに、突如としてティーカップの中から嗅覚を刺激する
爽やかないい香りが漂ってくるではないか。
トランクスは何かにつられるようにして、気が付いたらカップの中身を口に含んでいたのだった。


口の中で、それはすぅーっと香りを広げて口内を爽やかにしてくれるのだが、
それにつりあうように丁度よく渋めの味わいが同時に舌を満たしていた。

「! おいしい……」

ポツリと漏れた言葉に、謎の人物の方も手に持っていたティーカップを下ろした。
かちゃ、とカップが鳴ったた後、謎の人物はさっきよりは少々胡散臭くない笑顔になり、口を動かし始める。

「“ダージリン”と言う種類の紅茶です。発酵度が低めなので飲みやすいでしょう。
元となっているリーフもファーストフラッシュの新鮮なものでつくってますから、さらに特別に美味しいのですよ」

「そうなんですか……」

もう一度口をつけ、残りを全部流し込んだ。
再び爽やかで、しかし渋みのある独特の世界が口内で展開される。

「どうです、おちつきましたか?」

謎の人物が聞いてきた質問にはっとした。

確かに、紅茶を飲み終わった瞬間に胸を撫で下ろすような安心に似た
あったかい感覚が体中を満たしてくれた。
おかげでオレがアレだけピリピリ張り詰めさせていた空気は一瞬にして消え去ってしまい、
その代わりに、なんとなくホッと一息をつけるほどの落ち着きを取り戻していたからだ。

「ご馳走様でした」

「どうも、では、本題に入りましょうか。どこか遠くから来た戦士さん♪」










――どうもトランクスは、「この人物が苦手だな」と思い始めていた。

N&D

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