プロローグ 竜と剣士 投稿者:too 投稿日:04/09-04:05 No.154
世界が赤に染まり、神の尖兵が舞い降り、生けるモノ全てを喰らう。
全てを壊し、『世界』という基盤を白にする。
それを行わんとしている神の尖兵こそが天使、無垢な赤子。
赤子は無邪気故に恐ろしい、帝国兵・連合兵に関係なくじゃれつくようにその身を喰らう。
赤の空より生まれし赤子、それは帝都を中心とし徐々に世界を満たそうとする。
天使を飛ばしてはならない―――
神の思惑を超え、神の法を覆した、神の尖兵による破滅。
その中心地、帝都。
そこには一人の剣士と紅き竜の姿があった……
紅き竜と復讐の剣士 プロローグ 「竜と剣士」
「心が強さを決める」
こんなことを言う者は正義に夢想する者か、実際にそうだったと勘違いしている者か。
いくら心が弱かろうと一撃で山を消し飛ばす力を持つ者がいたならば、その者は間違いなく強い。
いくら挫けぬ心を持っていようと、力を持たぬ者は弱い。
強さが心に依存することは無い。
思いが強さを左右するだけ。
中でも負の感情は一際強い、それはここにいる血塗れた剣士が六年間で体験してきたこと。
悲哀、悔恨、憎悪、やがては復讐へ。
人の心を持たぬ殺人鬼と恐れられた傭兵は、とても人間らしい、人の心を特化させた存在だった。
戦場を駆け、敵を斬り、敵を斬り、敵を斬り、敵を斬り、屍の山を築き続けることが人外とも言える力を育て。
生き延びるために結んだ紅き竜との契約が拍車をかける。
親友が裏切り、妹を失いながらもそれさえ力の糧にし復讐に生きた。
戸惑わなかったわけでもない、悲しくなかったわけでもない、だがそれを理由に意気消沈するわけにはいかなかった。
そして復讐を終えた今、剣士は世界の破滅に剣を向ける。
とても人らしい、生を望むという感情で。
その力をもって生を掴み取る。
それを理由とし、殺人鬼は世界の守り刀となる。
「…………」
『神の使いは破滅をもたらすか……』
竜族、それは『神の世界の番人』と呼ばれる存在。
神の意思に背けず、しかし自らの意思も持つ、それ故思うことがあった。
『竜がこの破滅に加わらぬ……なるほどな』
紅き竜は剣士を背に乗せ、翼を広げ天へ飛翔する。
『もはや……神の理を超えた世界……』
「…………」
『それとも、我が既に番人の任を解かれたのか……』
ありえぬ事と思うが、同時にそれをなんと素晴らしい事かと思い低く喉を鳴らす。
「…………」
地上を離れ、空へ。
周りは赤く染まった空、眼下には炎上する都、人の血肉で赤に埋まった地面。
そこに目立つのは破滅の白。
そしてその母体となる巨大な白に剣士と竜は目を向ける。
『……死ぬ覚悟はできておるか?』
出会った当初では想像もできない、竜から人への気遣いの言葉。
竜族の中でも高位にあり、誇り高き紅き竜。
それはそれ故孤独でもあった。
だがこの紅き竜に剣士は「力を貸せ」「生き延びるために契約しろ」と媚びへつらうことなく意思を貫いた。
時を共にし、紅き竜は剣士に徐々に魅せられ孤独を癒され、剣士も紅き竜を信頼を置くようになり、2人の間には種族を超えた絆ができていた。
「…………」
竜の問いに剣士は『声』で応える。
―生きる覚悟ならばいくらでもできている―
『……くくく、そうか、それは言えておるな』
紅き竜は『敵』を避け、加速する。
『我々が我々たるために、ゆくぞ……』
竜は飛ぶ、敵どもの『母』に向かって。
阻むモノは自身の色を表す灼熱の業火で焼き払い、近づくモノは剣士が身の丈よりもさらに大きい大剣で叩き潰す。
群れを抜け眼前に『母』が迫る時、竜の口が再度開く。
「カイム」
『母』に迫り、光の奔流に飲まれながらも言葉は続く。
「アンヘル、それが我の名だ」
それは紅き竜が剣士を、種族を超えた真の友であることを認めた瞬間。
~あとがき~
お久しぶりです、初めて見てくださった人はじめまして。
再起動する際に「同じのもう一回投稿するのはなんだか……」ということで新規で全て書くことにしました。
流れは同じになるかと思うんですけどね。
しかし、今ガンパレードオーケストラにはまってるのでペースは遅いかも。
あと何気にガンオケの影響出てます。
『世界の守り刀』とかそのまんまです。
あれです、世界の決戦存在、豪華絢爛たる光の舞踏ですよカイムが。
ただ『竜』は敵じゃないですけど。
……すみません長くなりました、ではまた。