プロローグ
「卒業証書授与!この七年間よく頑張ってきた、だがこれからの修行こそが本番だ。気を抜く出ないぞ」 広い聖堂のような場所で、ある卒業式が行われていた。そしてそこに立つ帽子を被りローブを着た四人の子供たち。 「ネカネ・スプリングフィールド君」 「はい!!」 順番に呼ばれていく中、最後に残った一人の少年だけは浮かない表情をしていた。唯一帽子をかぶらず、フードで全身を隠したその姿は、儚く虚ろに見えた。そして、その少年の名が呼ばれる。 「シキモリ・カズキ君」 「・・・はい!」 少年は精一杯の笑顔で、その創業証書を手に取った・・・。 「ねぇカズキちゃん。やっと卒業だね」 「ネカネちゃん・・・・うん、そうだね」 カズキと呼ばれた少年はそう言って優しく微笑む。それを見て僅かに頬を赤く染めるネカネ。 「私はアメリカってところでシスターをやるんだって。カズキちゃんは?」 「僕・・・・どうなんだろう・・・・魔法ほとんど使えないし」 「あ・・・・ごめんなさい」 ネカネがそう言って頭を下げるが、カズキは笑顔で「気にしないで」と答えた。 「あ、浮かび上がってきた・・・ん?」 「見せて見せて!・・・・え〜と・・・・日本で・・・生徒をやる事?」 二人は同時に首を傾げた。とそこへ一人の髭を生やした老人が歩いてきた。 「お、どうしたんだネカネ?」 「おじいちゃん。どうしてカズキちゃんは生徒をやるの?」 「それはワシにも分からん。その卒業証書にそう浮き出たのなら、それが運命なのかもしれんのう・・・」 「そうなんだ・・・・・カズキちゃんにしばらく会えないね・・・」 そう言うと、ネカネはグスりと泣き出してしまった。しかしそれをカズキが撫でて落ち着かせる。 「ネカネちゃん。僕たちはまた会えるよ、またいつか」 「・・・本当?」 「うん!だから僕も頑張る。だからネカネちゃんも頑張ろう」 「うん・・・・・約束だよ」 「うん」 「カズキちゃん」 「ん、何?」 カズキがそう言って尋ねると、ネカネはカズキの頬にキスをした。それによってカズキの顔は赤くなる。 「あうあう・・・ネカネちゃん」 「カズキちゃん・・・今度会えたら・・・・○○○○にしてあげる♪」 それが二人の・・・・・大切な約束だった。それから七年、一人の少年は麻帆良学園にいた・・・・式森和樹として・・・・。 場所は変わり麻帆良学園葵高等学校2−B。教室内では数学の教師の淡々とした授業が進められていた。そんな中、一人の赤髪の少女が小さく呟いていた。 「まったく、こんなくだらない授業受けて意味ある訳ないのに・・・・どう思う仲丸?」 少女はそう言って仲丸と呼ばれた男の方を見た。しかしその言葉が耳に届いていないのか、全く反応を見せない。 「ん?何真面目ぶってんのよ仲丸?」 少女はそう言って仲丸の目の前で手を振るが、全く反応がない。もしやと思った少女が仲丸の鼻を押した。すると・・・。≪プシューーーーーーーー≫小さな音を立てて、仲丸の姿が人形へと姿を変えた。 「・・・・・コピーロボットなんぞ使うとは・・・・・仲丸・・・」 少女はそう言って唸ると、制服に付いていたボタンを押した。するとその姿は消え、透明と化した少女は教室から出て行った。また場所は変わり、葵高等学校の保健室。そこでは、中等部2−Aの健康診断が行われていた。(何故高等部で行うかというと、高等部の保健室のほうが、医師的にも技術的にも安全だからである) 「紅尉先生〜♪悩殺しちゃうぞ〜♪」 「あぶぶ!!恥ずかしいから止めてよお姉ちゃ〜ん」 「はいはい風香君。私にはそういうのは効かないから止めたまえ」 「ちぇ〜」 ふーふみコンビが保険医とじゃれあってる中、二人の少女が保健室の窓を気にしていた。一人は褐色で背が高く、もう一人は色白で髪をサイドテールにしていた。 「刹那、どうやらまた2−Bの馬鹿どものようだぞ」 「らしいな・・・・どうする龍宮?」 「迎撃したいが、さすがに衣服無しでだとあいつ等が何をしでかすか分からんのが問題だ」 二人が話していると、褐色で背の小さい少女と、背が高くサラシを巻いた少女が話しかけてきた。 「アイヤー。またあのクラスがきたアルか?」 「懲りないでござるな〜。どこまで我々を潰す気でござろう?」 2−Bは優秀なクラスではあるが、自分たちより優秀な者を潰すという傾向があり周りから恐れられている。たとえそれが中等部だろうが初等部だろうが・・・・。 「今回も何か武装してたら厄介でござる。何か手を打たねば・・・」 「ですが・・・・下手に動けませんし・・・・」 保健室内では、すでに戦闘の準備が進められようとしていた。そんな事は露知らず、仲丸はなんとか保健室内をのぞこうと企んでいた。 「うぐぐ・・・相変わらず防犯設備が周到じゃないか。だが、これでなんとか「何してるの、仲丸?」」 仲丸が力説していると、一人の少年が話しかけてきた。仲丸は振り返ると、そこには黒髪に微妙に茶髪の入った少年・・・式森和樹の姿があった。 「おお!我が親友の式森よ!!」 「別に親友になった覚えないよ」 和樹は苦笑しながら答えるが聞いている訳もなく、仲丸は和樹の肩を組んできた。 「いいか式森?今日はあの憎き2−Aの健康診断だ!!この意味何だか分かるか?」 「何って・・・・健康診断でしょ?」 「ちがーう!!全くお前という天然な奴は・・・・まぁいい。この奥には、かの雪広財閥の次女や学園長の孫などがいるのだぞ!!そいつらの弱みさえ突けば、俺は一瞬にして大金持ちだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」 不可能な妄想を叫ぶ仲丸に和樹は呆れていた 「はぁ・・・・・あまりそういう事しないほうがいいよ」 「何を言う!!こういう事こそ燃えるのだ!!見ていろ!!」 そう言うと、仲丸はドアに何かガムのような物をくっつけた。そして仲丸が離れてボタンのような物を押すと・・・小さく爆発しドアが外れた。 「ち!!爆弾とか恐れ入ったよ!!」 「まずい、いくぞ龍宮!!」 真名と刹那は互いに武器を手に取ると、外れたドアの方向に向けようとした。そしてその先には・・・・・仲丸を“組み伏せた”和樹の姿があった。 「「・・・・・・え?」」 真名と刹那はポカンとしてしまい固まった。それは他の皆も同じであり、皆はそれぞれ武器を用意していた。 「・・・・・・うちの大馬鹿かつセクハラ魔神がご迷惑をかけました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 そう言うと、和樹はどこから現れたのか先ほどの赤毛の少女に仲丸を連行させる。 「ま、松田!!」 「いい度胸じゃない仲丸・・・・B組協定で単独での利益奪取は厳禁だってのを忘れたの!!」 「松田!!お前いつから権力側についた!?」 「ついたのはお前だろうが〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」 そう言うと、松田と呼ばれた少女はどこから取り出したのかロケットランチャーを取り出すと、容赦なく仲丸へと発射した。断末魔の悲鳴が上がる中、和樹はふと目の合った真名に苦笑しながら (ごめんね) と念で伝えた。そしてそのまま和樹はクラスへと去っていった。 (今のは念・・・・それも凄く優しい感じだった。何者なんだ・・・・・) 真名は心で疑問に感じながらも、和樹が見せた笑みに胸をきゅっと締められるのを感じていたのだった・・・・。 |