ブレイブII 邪心を蹴り飛ばす勇気
「第三セット、開始!!」 それと同時に、両チームはボールを取るため疾走した。そして、最初の戦いは2−Aにより始まった。 「いくぞ、龍宮」 「分かっている」 二人は同時に頷くと、ターゲットを浮気に絞った。 「はっ!!!!!!」 刹那は異常な速度でボールを放った。 「な、なんだその加速力はぁぁぁぁぁ!!」 浮気は回避するが、時間差で真名が放ったボールが直撃した。それにより浮気は吹き飛ばされ、フェンスへと叩きつけられて終わった。 「ぬうう、浮気!!お前の命、無駄にはせんぞ!!」 そう言うと、仲丸と松田がボールを取り、ステルスを起動した。 「そんなもの・・・・・我が魔眼の前では・・・・・」 真名はそう小さく呟きながら、自身の魔眼を起動させる。 「・・・無意味」 真名は飛んできたボールを正確にキャッチした。 「私を忘れてもらっちゃ困るわよ!!」 どこからか松田の声が響き、ヒュンとボールが放たれる音がした。軌道から察するに真名の方向である。しかし・・・。 「甘いよ、松田さん」 そう言って、流れるように現われた和樹によってそのボールはキャッチされた。 「すまないな」 「気にしないで。さぁ、いくよ」 和樹と真名は構え、ターゲットを松田と仲丸に絞った。そしてそのまま同時に、ボールを放つ。 「痛っ!!」 「なんとぅ!!」 仲丸はなんとかボールを取ったものの、松田は取り損ないボールを落としたが、沙弓がそれを確保する。 「くぅ・・・・こうなれば・・・・いくぞ!!!!!!」 仲丸はそう言いながら何かのボタンを押した。すると、仲丸が履いていた靴の底からブースターが現われ、一気に大跳躍したのだ。 「喰らえ〜〜〜!!式森〜〜〜!!」 仲丸の宣言を受け和樹は身構えるが、仲丸の狙いは別だった。そのまま投げる方向を変えたのだ。その方向に居たのは・・・・・動きの止まってしまったアキラ。 「アキラ!!逃げてーーーーーーーーーーー!!」 ベンチからまき絵の声が上がるがもう遅く、容赦なく仲丸の放ったボールが・・・・・・・和樹に直撃した。 「あぐっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 和樹が苦悶の表情を浮かべた瞬間、ボールに付いていたガムが爆発した。それにより、和樹はフェンスに激突し、地面に倒れこんだ。 「ち!!2−A用に入手した超小型爆弾『セムテックス』が無駄になったじゃねえか式森!!」 滅茶苦茶な事を和樹に言うものの、和樹はフラフラながらベンチへと倒れこんだ。 「あわわ!!しっかりして〜な〜!!」 亜子が急いで救急箱で応急処置をし出す。そんな中、和樹に庇ってもらったアキラが和樹に近づく。 「・・・どうして・・・・私を?」 「どうしてって・・・・・君みたいな可愛い娘が傷つけられるのを・・・・・黙って見てられなくて」 和樹は苦笑しながら答える。それを見たアキラの目からは・・・・大粒の涙が。 「必ず勝ちます。だから、休んでいてください」 「うん・・・・頑張って」 そう言って、精一杯の微笑みを浮かべる和樹。それを見たアキラは微笑むと、コートへと戻る。その表情は、悲壮と呼べるものだった。そしてもう一人、コートには悲壮とは反対で無表情だが、魔眼の回転率が急速に上がった真名の姿があった。 「貴方達・・・・・許しませんから」 そう言うと、アキラはボールを構えた。そしてそのまま走り出し、サイドスローで御厨へとボールを放った。 「そんなも・・・・ぐは!!」 御厨はボールを確保しようとしたが、ボールは凄い回転で下から上へと急上昇し、御厨の顎を捉えた。それにより、奇声を上げながら宙へと舞った。 「御厨!!貴様〜よくも我が同志をーーーーーーー!!」 仲丸はそう言うと、またステルスを起動させ、更にブースターを起動させた。(気配は消したぞ・・・・喰らえ褐色女!!)仲丸はそう心で叫びながら、真名めがけてボールを投げた。しかし・・・。 「・・・ふん」 真名は軽々とボールを受け取った。そしてそのまま投げようとしたが、後から現れたエヴァにより止められる。 「・・・なんだ?」 「さっきの坊主にはお茶の借りがあるんでな・・・・・私も打たせてもらう」 エヴァの言葉に真名が頷くと、二人は軽くステップを踏んだ。そしてそのリズムのまま、同時にボールを投げた。標的は・・・仲丸と沙弓。 「ぬわ!!」 「く!!」 仲丸はボールを避け、沙弓はなんとか受け止めるが、エヴァの放った豪速球により腕にはアザが出来ていた。 「よ〜し、これで復活よ〜!!」 沙弓が取った事により、松田が復帰した。これで現在の状況は4対3である。 「刹那、ちょっといいか?」 「どうした龍宮?」 「私は僅かに魔力を肉体に供給する。お前は気で肉体を強化しろ」 「さ、さすがにやりすぎではないのか?」 「心配するな。あの2−Bを懲らしめれば、間違いなくこのかお嬢様の好感度アップだぞ」 真名の言葉に顔を赤らめる刹那は、少し考えた果てに頷いた。 「ふっふっふ、ガキの2−Aにはこれでも食らわせてやるわ!!」 松田はそう言うと、手に付いていた時計にあるボタンを押した。すると、時計から『START UP』という機械音が流れた。そして次の瞬間、松田は時間の感覚を超越した感覚の中にいた。 「ふふ・・・・周りが馬鹿みたいに遅いわね・・・・さぁ、これで終わりよ!!」 松田はそう言いながら、エヴァに向けてボールを投げた。しかし・・・。 「貴様はアホか・・・・ガキめが」 エヴァは加速空間で放たれたボールを受け止めたのだ。 「な、なんで!?なんで私の加速装置が」 「科学では説明出来ない力・・・・見せてやるわ!!!!!!!!!!!!!!」 エヴァはそう言うと、ボールに闇の魔力を流し込んだ。そしてそれを回転させると、松田に向けて放った。それは綺麗に松田のいる場所に飛び・・・・・直撃した。 「あぶ!!」 変な声を上げながら、松田は宙に飛ばされた。そしてそれから三秒後・・・・ベンチに落下した。 「ま、松田!!」 仲丸が驚愕する中、今度は刹那が攻めに入る。 「喰らえ!!神鳴流奥義・・・斬岩剣!!」 刹那はボールに夕凪の腹の部分でボールを叩き、それを仲丸向けて放った。それはみるみる加速し、仲丸に迫る。 「早いな・・・だが切り札はまだあるのだ!!!!」 仲丸はそう言うと、どこから取り出したのかまるでロボットの手のようなグローブを手に装着した。 「これこそ、前局面型アーム『オールストッパー』だ!!これに取れないものはないぞ!!」 仲丸はそう叫ぶと、ボールに向けてアームを向けた。それはすっぽりとアームに収まった・・・しかし。 「な、何!?回転率が増えている!!」 そう。ボールはアームの中で更に回転率をあげていたのだ。そしてその加速度は増し・・・・そして。 「がはああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 アームを切り裂き、風圧で仲丸を吹き飛ばしたのである。そして仲丸はフェンスに当たり倒れた。 「さぁ、貴方が最後のようだな」 「そうね」 「敗れていただく」 「簡単にはいかないわよ」 真名と沙弓がボールを宙に投げると、真名はボールを指で弾くように、沙弓は拳で叩き込むように放った。ボールは互いに激突し火花を散らす(ボールなのにw)そして次の瞬間、片方のボールが弾けとんだ。そのボールは・・・沙弓が放ったものだった。 「見事・・・・・よ」 真名の放ったボールは、沙弓の腹部にめり込んでいた。ボールが地面に落ちると同時に、沙弓はその場に倒れこんだ。 「わーい!!勝ったよ〜〜〜〜〜!!」 「これでネギ君が2−Bに連れ去られずにすむよ〜〜!!」 まき絵や裕奈などが喜ぶ中、アキラはベンチで休んでいる和樹の側にいた。 「・・・大丈夫ですか?」 「うん、平気だよ。あのクラスじゃ多少タフさを持ってないとやっていけないからね」 そう言って苦笑する和樹につられて微笑むアキラ。その様子を遠くから見ていた真名は、軽くため息をついていた。それを見た刹那が真名に話しかける。 「どうした龍宮?あの人を見ながらため息ばかりついているようだが」 「気にするな。昔の知り合いに似ていただけさ」 そう言ってベンチに戻ろうとする真名。しかしそれを狙う者がいた。 「うぐぐ・・・おのれ2−Aめ。こうなれば最後の手段!!一人でも道連れをーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 そう言うと、多量のセムテックスを付けたボールを取り出し、ブースターと加速装置を重使用して放った。 「・・・・な!?」 さすがの真名もしぶとい仲丸の攻撃を予測できず直撃・・・・・・だったのだが。 「・・・いい加減にしなよ仲丸。彼女を傷つけようとしたね?」 真名の目の前で、ボールを片手で受け止める和樹の姿があった。その瞳が普段の黒色ではなく、美しい蒼色に輝いていた。 「し、式森・・・・・・こ、これはだな」 「問答無用・・・・・・・覚悟はいいね?」 そう言うと、和樹はボールを宙高く投げた。そして自身もまた宙へと飛ぶ。 「あ、あれって!?」 「も、もしかして!?」 「もしかするかも!!」 「するかもです!!」 ふーふみコンビがわくわくしながら騒ぎ出す。それを見た楓が二人に尋ねる。 「一体なんなのでござるか?」 「一号の大技だよ(です)!!!!」 二人の言葉に「おおっ」と何か理解したのかポンと手を叩く。 「電光でござるな」(何故知ってるw) 「「その通り!!」」 二人が勢いよく答えた瞬間、和樹はこう叫んだ。 「電光ライダーーーーーーーーーーーキィーーーーーーーーーーーーーーーック!!」 激有名な技を叫びながら、和樹はボールを蹴飛ばした。そしてそれは勢いよく飛ばされ、仲丸に激突する。 「ぐはああああああああああああああああああ!!な、何故お前が・・・・ぎゃあああああああああ!!」 何かを言いかけた瞬間、仲丸は大爆発に巻き込まれた。そして煙の中から、髪の毛をアフロにした仲丸が姿を現した。 「はらひれ・・・・・ほ」 伝わらない言語を喋りながら、仲丸はぱたりと力なく倒れた。 「これにて一件コンプリート!!麻帆良の正義は・・・・・僕が護る!!」 これまた有名な決め台詞を叫びながら、和樹は地面に降り立ったのだった。それを見て頬を染める真名を見ながら、自分には合わないセリフと思いながら刹那がこう呟いた。 「龍宮にも・・・春がきたな・・・」 これにて、ネギをかけたドッチボール対決は幕を下ろしたのだった。 |