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改定版 二時間目 「転移のち出会い」(2) 投稿者:よみびと 投稿日:06/11-10:53 No.715



― Side 刹那 ―


期末試験を終え、終業式へと向かうだけの三月半ばの週末の事。
私は学園長の依頼で学園郊外の森に来ていた。どうも占いに奇妙な卦が出ているらしく、その調査の為だ。

本来ならばお嬢様の護衛の為に常に学園内で待機しておきたい所だが、代わりの護衛を置かれるという事と、私自身の修練も必要と言う事で納得した。
また麻帆良一帯は魔を引き寄せやすく、定期的に払わねば学園敷地内まで入り込むことが有る。

お嬢様の身の回りを守るという事ならば、ただその近くで守るだけで無く、あらかじめその周囲から迫る物も跳ね除けねばならないのだから。


数時間掛けて周辺を見て周り、様子を確認してみると確かに何時もの森とは違った。
どこかざわめいている様な、言うならば落ち着かない感じが全体に漂っている。

辺りの気配に当てられたのか胸騒ぎのする私がふと視線を上げると、突如強烈な魔力の気配と共に天から一筋の光が下りてきていた。
その光は私の前方の方角十キロといった辺りに下りるとやがて空に解けていった。

そして完全に光が消えた瞬間、私が感じたのは鳥肌が立つ程の濃密な魔の気配。
恐らく今の光が放った魔力に惹かれたのだろう。私の周囲にこそいないがその数はかなりの物で、それらが一斉に光の下りた先へと群がっていく。

私はどうするべきか。

正直あれだけの数を相手に私一人では厳しい物がある。
だからといってここで手をこまねいているわけにも行かないし、あれらの魔も放っておけば何時学園に向かって来るかも知れない。
あまり使いたくは無いが、いざとなればこの“翼”で退けば良い。

覚悟を決めた私は隠身の術を掛け、光の下へと向かう。
やや遅れて出た為か特に妖魔に会う事無く進んでいたが、やがて目の前に見える広場の方で何者かが戦闘を行っている事に気付いた。
広場に出るギリギリの所まで近付いて様子を伺う。


そこには、銀の髪の男が多数の妖魔を相手に一人戦っていた。


その戦いぶりは、同じ剣を扱う者として見事としか言い様の無い物だった。
柄から刃先までおよそ6尺(約180cm)有る野太刀を軽々と手足の如く振るい、
防ごうとした相手にはその防御ごと断ち、相手の放った攻撃を受け流しざまに斬り裂いて、攻撃が集中すれば霞の如くすり抜ける。
一つ一つの動作を行うごとに妖魔の数が減って行くその様に私は状況を忘れて見惚れていた。



やがて、その半数を倒された妖魔は数に任せての戦いを止め、包囲するように陣を広げ始めた。
それに相対する男は向き合ったまま、後ろ足に広場中央へと下がる。
彼の足元には荷物であろう袋と、それに乗る見慣れない白い生物(使い魔か?)がいて、彼は一言二言を交わしている。


ここまで眺めて、私はどうするかを決めかねていた。


普通ならば助けるべきだろう。
だが、目の前の存在は恐らく自分以上の剣の腕の持ち主であり、また麻帆良への侵入者やも知れぬ存在だ。
このタイミングに妖魔に襲われていることから先程の光に関係しているのは間違いないだろう。
下手に麻帆良に招き入れてしまった結果、お嬢様に危害が加えられないとも限ら無い。
ならばここで無理に介入する必要は無いのではないか。そんな考えが頭をよぎる。


――だが、それで良いのか?


小利口な理屈で妖魔に襲われている人間を見捨て、お嬢様の安全さえ守れればいい。
そんな考えで本当に正しいと言えるのだろうか。――ただ護衛としてあるならば良いかも知れない。

それでも私は、たとえお嬢様のお傍に居ることは叶わなくても、幼い頃共に在った者として恥じるべき人間になるわけには行かない……!

夕凪を引き抜き、上段に掲げながら気を練り上げ、声を挙げる。


「伏せてください!」


銀髪の男性が声に反応し、伏せるのを目の端に捉えた瞬間、夕凪を降り抜くと同時に気を解き放った。



「神鳴流秘剣 百花繚乱!!」




魔法先生ネギ魂(ソウルズ)! 二時間目 「転移のち出会い」(2)




「お前は……」

「助太刀します。話はその後で」

尋ねるアキラに告げると少女はそのまま魔物の群れに駆け抜けて行く。
確かに今はこの状況をどうにかするのが先だ、と少女に続く。

決して数は少なくない魔物達だが、元々の実力の違いと対象が増えたことで包囲陣が機能せず、殆ど何も出来ないままに屠られて行く。
互いに素性は知らないがその実力は感じられるのか、お互いに背中を気にせず戦えている事でより早く敵を倒すことが出来ている。
あっという間に残る敵は僅かになる。


「これで最後だ! オーラブレイドォ!!」

「神鳴流奥義 斬岩剣!!」


二人同時に技を放ったあと、そこに立っているのはアキラとシロ、そして少女のみとなった。
ようやく終わったか、と刀を下げ鞘に収める。

そして礼を言おうと少女の方に向き直るが、少女は未だ戦闘状態を解いていない。
それどころかこちらに構えを取って殺気すら放っている。

「……何のつもりだ?」

「無礼なのは承知しています。ですが先ほど強大な魔力を放った光。それに誘われるように出現した妖魔。そしてそれらに追われながらも撃退し、圧倒する剣士。
 怪しい点だらけの存在であるあなたは、何の目的を持って麻帆良に来たのか。光との関係は何か。それを知るまでは私も剣を下げる訳には行きません」

「何故ってそれは…… っと、それよりここは麻帆良って言うのか」

「とぼけるのですか。この辺り一帯は麻帆良学園名義の所有地になっています。知らずに入り込むことは考えられない」

どうやら少女は自分が何らかの意図を持ってここに潜り込んだと思っているようだ。
やや殺気立った視線と態度ををこちらに向けてくる少女にどうしたものかと思案する。
そこに小さな足を動かし、緩やかな速度でシロが近付いてきた。

「落ち着くっちよ。そんなでは話し合いもできんっち。
 少なくともワシらはヌシに敵対するような行動は取っとらんし、取るつもりもない。
 ヌシのもつ疑問にもちゃんと答えるっち。じゃからまずは互いの名と素性を話し合う所から始めぬか?」

シロの台詞に理が在るのを感じたのか、僅かな沈黙の後、少女は構えを解いた。
だが未だに視線は鋭くアキラを見据えており何時でも動ける様にしているあたり、警戒を弱めたのではない事を示していた。

「……そうですね。私の名前は桜咲刹那。麻帆良学園に在籍しています。ここにはある事の調査のために来ました。あなた方は?」

「おれの名前はアキラ。六道明だ。で、こっちのちいさいのがシロ」

「だれがちいさいのっちか! そもそもワシの名前はシャルロワールと何度も言っているっち!」

シロはトサカを立てて講義するが無視するアキラ。

「おれ達が何でここに来たかって話だけどな。実は――」

天魔王やら神器の事は外して、旅をしていた事、遺跡を探索中に小部屋を見つけ、そこで罠に遭った事。
そしてどこかに飛ばされた結果ここに辿り着いたことを説明する。

「――という訳で、おれ達がここに居るのはあくまで偶然なんだ」

「そう、ですか……」

そう締めくくると、刹那は思案顔で黙り込むと何事か考えている。
その様子をアキラとシロは何も言わず結論が出るのを待っていた。自分達の事情は話したのだから後は刹那に判断を下して貰うしかないとの思いからだ。

やがて、顔を上げた刹那は小さく目礼をし、

「すみません。少し待っていてください」

と断りを入れると携帯電話を取り出し、何処かへと掛ける。

「!? それは……!」

「……何か?」

「何をそんなに驚いて居るっち。あの細長い箱がどうかしたっちか?」

アキラは刹那が取り出したものを見るなり目を見開いて驚く。
何故こんなことであんな反応をするのか分からない刹那と、純粋にそれが何なのか分からないシロは疑問を向けるが、アキラはそれに気付かない。
数回、特有の呼び出し音が鳴ると繋がったようなので、刹那はアキラに一瞬目をやると電話先の相手と話を始めた。

「桜咲です。……はい、終わりました。ただ、少々困った事態になりまして。実は――」





「――はい、分かりました。では、そちらに。失礼致しました」

数分の会話の後、小さな電子音と共に通話を切るとアキラに向き直る。
未だに呆然とした表情をしていたが、シロに何度も肩を叩かれようやく覚めたようだ。

「私の雇用主であり、このあたりの責任者の方に連絡を入れました」

「……あ、ああ。そうか。それで、何だって?」

「直接話をして判断をしたいとの事です。お手数ですが同行願います」

刹那の言葉に顎に手を当てて考え込むアキラ。シロは判断を任せるようで、

「ヌシの好きにするっち」

と発言した後は肩の上で黙って見守っている。
しばし考え込んだ後、顔を上げ刹那に疑問を投げかけた。

「一つ、聞いて良いか」

「どうぞ」

「いま使ったのは携帯電話だよな?」

「? ええ、もちろん」

急に当たり前のこと聞かれたのでやや戸惑いながら答える刹那。
だが、それを聞いた途端アキラは頭を抑えて、なんてこった……と呟き、そのままズルズルと脱力して座り込んでしまう。

「あ、あの大丈夫ですか?」

良く分からないながらも自分の受け答えがなにか不味かったのかと刹那が心配して声を掛けるが反応が無い。
何故、携帯電話であることを確認しただけでこんな状態になってしまったかといえば、ネバーランドでは『ありえない』物であり、またその単語で通じてしまう事が
アキラのよく知る世界の物であることを示しており、ここがネバーランドではない事を悟ってしまったからである。

召喚された当初ならともかく、今の彼はネバーランドで新たに生きて行こうと考えていた。
チキュウへの帰還方法を探していたのは、家族に別れを告げる事が出来なかった事が心残りでせめて連絡だけでも取れないかと考えた為であった。
それが何の因果かまた別の世界に飛ばされてしまった事で様々な感情が彼の中で渦巻き、突発的に無気力状態になってしまっていた。

「こりゃしっかりするっちよ。ワシには事情が良く分からんが、落ち込んでても仕方ないじゃろう」

「そう、だな……」

肩に乗るシロの言葉と、ぺしぺしと小さな足で頬を叩かれてようやく正気付いて立ち上がる。
確かにネバーランドから飛ばされてしまったことはショックだが、恐らく自分の故郷のチキュウであろう事や、異世界に飛ばされるのが二回目であることもあって
何時までも落ち込んでいて仕方ないと結論付けた。

何より、シロにとっては完全な異世界に来てしまったことになるのだから、自分がしっかりしなくてはならないという気持ちが出てきていた。
その顔には先程までの生気は無いものの、ある程度は回復したようで心配してくれた刹那に対して声を掛ける。

「もう大丈夫だ。悪いな、急に座り込んだりして」

「いえ、かまいせん。それでは行きましょう。案内します」

声と態度から状態が回復したのを見て取り、一声かけて先導し始める。
その後ろに随伴して歩くアキラは、肩に乗るシロににも礼を言う。

「悪いな。世話掛けて」

「なに、ヌシがへたれるのには慣れてるっち。」

「へたれ……って、お前な」

小さな体でむん、と胸を張る様子は微笑ましく、軽口まじりのいつものやり取り行ったことで気が楽になる。

「まあ、ああなった理由は後で話すよ。お前にも関わりあることだからな」








道中に見た自動車やら自転車に二人して反応したり、バイクを見て懐かしそうに眺めるアキラを引っ張り、シロが道々ですれ違う女性に反応したりと、苦労しながら案内する刹那。
何よりアキラの服は血や泥などで汚れており、また己の身長とほぼ同じ長さの刀を袋にも入れずに持ち歩くという、非常に悪目立ちする状態なのが問題だった。
今までのネバーランドの街や村ならば問題ないが、こちらでは下手をすれば警察沙汰になってしまうのでなるべく人目に付かないように進む。

そうして(主に刹那が)苦労しながらようやく一行は目的地に到着した。
目の前にある扉の横には「学園長室」と書かれたプレートが下げられている。
刹那が一歩踏み出し、扉を軽く二回ノックをし、

「桜咲です。先程お話した方達をお連れしました」

と声を掛ける。
続けて「入りたまえ」と声が返り、「失礼します」と言いながら扉を開ける刹那。
アキラとシロがその後に続いて入ると、広い部屋中には応接用と思われるソファと机が備えられており、奥は壁と一体となったような大きな窓に為っている。

部屋の中に居るのは二人。

窓の前に有る執務用の机に座る、長い後頭部と仙人のような髭が特徴的な老人と、その横に立っている眼鏡を掛けた無精髭の男性。
三人が部屋の中に入るのを確認すると、老人が重々しく口を開く。

「ご苦労じゃったな刹那君」

「いえ、これも私の役目ですから」

労いの言葉にも淡々と答える刹那だが、老人はフォフォフォと特有の笑い声を挙げるだけで特に何も言わない。
学園長、と隣に立つ男性の呼びかけに笑い声を止めると、アキラとシロに視線を向けて話し出す。

「麻帆良学園へようこそ。ワシは麻帆良学園の学園長であり、東魔法協会の長である近衛 近右衛門。こちらが教員の高畑・T・タカミチ君じゃ」

「よろしく頼むよ」

顎鬚を撫でながら話す学園長と、紹介されて気さくに片手を掲げて挨拶する高畑。

「おれはアキラ。六道 明だ。で、こっちが――」

「シャルロワールっち」

それに返す様に二人が自己紹介をすると話は本題に入った。

「さて、六道君。君達の話は大まかに聞いておる。じゃが、確認の為にもう一度話してもらってもよいかな?」

「ああ、わかった」

頷き、刹那に話したものと同じ話をする。
だが今度はある意図をもって、旅して来た時の地名、そしてスペクトラルタワーの名称を挙げながら説明をした。
一通り話し終えると、三者三様の困惑顔が向けられる。

「ふむ、ワシの知る限りでは今の話の中の地名は聞いたことがないのう。タカミチ君はどうじゃ?」

「僕も無いですね。魔法界の知られざるごく一部、という訳でも無いようですし」

刹那君はどうかね、と水を向けられた刹那も黙って首を横に振る。
三人に嘘を言っている様子が無い事にシロはどういうことかと頭を捻っている。
それを横目で見ながらこの場において劇的な言葉を発するアキラ。

「まあそれは当然だろうな。今の話に出てくるのは全て異世界の場所だから」



「「「 異世界!? 」」」



学園長と高畑、刹那の驚きの声が重なる。

「ああ、ネバーランドという名前で人と魔族、エルフや獣人に竜と言った多種多少な種族が入り乱れる世界だ。
 まあここがネバーランドじゃ無いのに気付いたのはさっきだけどな」

「ネバーランドとな…… 何とも信じ難い話じゃのう。そうじゃな、何かそれを証明できるものはあるかの? 例えばその世界特有の物など」

そう言われ、しばし考え込むとアキラは荷物の中から幾つかのマジックアイテムを取り出す。
火・水・土・風といった四元素の魔力のみで出来た結晶や、身に付けた者に様々な加護を与える指輪等。
それらを適当に机に並べると学園長ら三人が集まって真剣な顔でそれらを眺めている。

「とりあえずこんな所かな。もしかしたらこっちにも有るかもしれないけど」

並べられた品を調べている刹那と高畑が感嘆の声を上げる。

「これは……!」

「魔力の塊、それも純粋なそれだ。こんな物は見たことも無いな」

「ふーむ、魔術付加された装身具などはともかく、この各属性の魔力そのもので出来た純結晶というのはワシも初めて見る。
 これは作ろうと思っても難しい、と言うより知る限りでは不可能じゃな。なるほど、これなら異世界から来たという話も頷ける。いや珍しい物を見せてもらったわい」

そう言ってフォフォフォと楽しそうに笑う。
見る限り三人とも納得したようなので話を続けるアキラ。

「まあ、異世界から来たといっても元々おれはネバーランドの人間じゃなくて、チキュウからネバーランドに召還された日本人なんだけどな」

「ほほう、道理で日本名なわけじゃな」

納得したわい、と頷く。


その後、幾つかネバーランドについて種族の事、文化の事、魔法の事などの話の他、アキラが異世界に行く前に済んでいた場所の事や、
アキラの知る世情とこちらの違い、そして魔法使いの事など、世間話をした後に学園長が締め括る様に話を切り出した。


「さて、色々と長話をしてしまったが最後に一つ。君はこれからどうするつもりかね?」


言葉と共に、室内にいる人物の視線が全てアキラに集まる。
その質問にはもともと考えていたのかすぐに答える。

「まずはおれの居た世界なのかどうかを確かめようと思う。よく似た別の世界の場合、戸籍無しの身寄り無しって事になるし」

こいつの事もどういう扱いにするべきか分からないから、とシロを見ながら言う。

「ふむ……そのことなんじゃがな。失礼ながら先程の会話の間に少し調べさせて貰ったのじゃよ。
 君の言う住所、名前、年齢と言ったデータから戸籍関係をのう。
 じゃが、君の言う住所に六道と言う名の家は無く、過去にも無いとの事じゃ。何より君自身の戸籍自体が存在せんかった。
 もちろん君が嘘を言っている訳ではなかろう。すぐばれる嘘などついても仕方ないしのう。
 となると、君自身が言ったようにこの世界は良く似た別の物、と言う事に為る訳じゃが……」

ここで話を一旦切って、どうするかねと視線で問い掛ける。

「そう、か……」

しかし、水を向けられたアキラは目を伏せ、考え込んでしまう。

覚悟はしていても実際に戸籍なし、つまりは己の存在を証明するものが無いというのは精神的に結構な負担だった。
ネバーランドに召喚された時は文化上戸籍など存在しなかったので、身一つと一芸があればどうとでもなったのだ。
しかしここは現代の地球。それも日本に置いて戸籍が無いのは何をするにも大変で、何より容姿の点(自前の銀髪金眼)で不法入国者と見られればどうなることか。
先行きを不安に思うのは仕方ないことであった。

だが、そうなることが分かっていたのか続けて学園長が言ったのは


「そこで一つ提案なのじゃがな。君、ここで働いて見ないかね」

「は?」


という言葉だった。

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