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page.6 ~悲しみの思い出~ 投稿者:戯言師 投稿日:04/19-20:22 No.338


―騎士は多くの人に出会います。

     ある人は太陽のように明るく、ある人は月のように静かで、ある人は本のように博学な人たちです。

          そこはまるで、かつての城のような所だと騎士は思いました。

                騎士はそこで何を思うかは判りませんでした―



     騎士と妖精と人形の
          page.6 ~悲しみの思い出~



麻帆良学園女子中等部の校庭、全校生徒の集まっている前の壇の上にネギと学園長が立っている。
学園長は、ネギを全校生徒に紹介をしていた。

「……ネギ先生には『3-A』を担任してもらう予定じゃ」

学園長の話しが終わると同時に歓声が湧き上がった。
しばらくネギ歓声に応え、壇から降りる。
少しの間歓声を聞いていた学園長がおもむろに口を開く。

「そして、もう1人の新任の先生がいての紹介しよう。天河アキト君じゃ」

そう言って学園等が壇の脇によける。
その後を追って一人の男性が壇上に上がる。その瞬間、音が消えた。
段の上に上がり見えたその容貌は、黒いスーツに180を超える背、茶髪の髪、顔の半分を隠す黒いバイザー、そして右手首にある金のブレスレット。
見た目はどこかのマフィアかSPのような姿だったためか生徒の大半が学園等の言う新任の教師だとは気が付かなかった。
周りからはあれ誰だろう等と生徒達が囁き合う声が聞こえる。
その見た目怪しい人物がマイクを前に口を開く。

「新年度から3-Aの副担任をする天河アキトだ。1年という短い期間だがよろしく頼む」

そして小さく会釈をする。
自己紹介としては短すぎるそれに全員がついてゆけなかった。
少しの間静寂が満ちる。そして直ぐに破られた。

―えぇぇぇぇぇ!!!???

全校生徒、そして一部教師による歓声と言うより驚愕に近い声。
そんな中、黒い副担任こと天河アキトは壇上から降りていった。


場面が変わって此処は2-Aの教室、教壇の前には副担任になる天河アキトと黒い大きなヘルメットを被った女子生徒が立っている。
周りの生徒の反応は興味心身なのが半分、怪しんでいるのが3割、地底図書室の件を知っている物が残りの1割、以前からの知り合いが残り、という感じだった。
生徒達の間でヒソヒソ声が響くなか、ネギが口を開く。

「この人達が新年度から副担任を勤める天河アキトさんと、転校生の黒乃サレナさんです。アキトさん、サレナさん自己紹介お願いします」

そう言ってネギが教壇の横に避ける。
ゆっくりとした動きでアキトが教壇の前に立った。

「天河アキト、担当教科は体育だ。これからよろしく頼む」
「黒乃サレナです。一年という短い間ですがよろしくお願いします」

そう言って会釈する。
簡潔に自己紹介をし終わったアキトは回りを見渡す。
目に付くのは俯いていてどこかプルプル震えているエヴァちゃんと、やや探る視線を送ってくる武道派の方々、地底図書室でであった面々だった。
それと超一味と鳴滝姉妹、幽霊のさよちゃん、視線を必死で外そうとしている美空ちゃん。
その他の生徒にも視線を向けてみると一人の少女に目がつく。

(あの子が木乃香ちゃんか……)

写真では見ていたが実際に見るのは始めてだ。―写真を見た時、見合い相手にどうじゃ?、などと言われたので叩き倒した―
パイザー越しに眺めていると殺気の篭った視線が感じられた。
視線を辿っていくと髪をサイドに纏めた少女が視界に入る。
竹刀袋を持っている事から例の護衛だと当たりを付ける。
が、護衛にしては向けられる殺気が強すぎた。

(殺気が強すぎる…もしかして連絡がきてないのか?)

確かに学園長の性格なら有り得るかも知れないが、ここまで殺気を向けられるとは思いもしなかった。

(理由はわからんが、後で話をつけよう)

そう判断して思考を一旦停止させると周りでは話が進んでいた。

「では質問タイムに移りますがいいですか?」

ネギが此方を向いて聞いてきた。

「あぁ、いいぞ」
「構いません」

その言葉を聞いたネギは生徒達に向かって「質問がある方~」と呼びかける。
そして、ハイ!と元気よく手が挙がる。

「え~と、指名はアキトさんがしますか?」
「私は構いませんが」
「わかった、それじゃあ…君」

そう言って髪を右のサイドテールにしている少女を指差す。
指されると最初、えっ! 私!? と驚きながら席を立ち。

「はい! え~と年齢とか趣味とかは何ですか?」
「年は27だ。趣味や特技は特に無い」
「年齢は14です。趣味は料理などの家事です」

予想通りの質問に同じく予定通りの返答をする。

「次は?」

聞かれたくない事もあるので早めに終わらせたい。
そう思い次を催促をする。
またハイ! と元気よく手が挙がる。

「…そこの君」

次は四角い眼鏡を掛けた娘を指名する。
何故かフフフ…と笑いながら立ち上がる。
何処となくかつての知り合いと同じ感じがするのは気のせいだろうか。

「では、早速質問ですが、そのサングラス? みたいなのとヘルメットはなんで付けてるんですか?」

その言葉に生徒の大半がピクッと反応した。全員気にしていたらしい。
これもあまり聞かれたくなかったが、と心の中で嘆息を吐く。

「これはな、目に障害が在ってな。これが無いとろくに物が見れないんだ」

意外な言葉に教室が静まり返る。
教室の空気が重くなる。聞いてはいけなかったのか、と先ほどの少女がオロオロとしている。
が、次のサレナの一言によってそれは覆される。

「私は趣味で着用しています」

重い空気が一瞬で変わる。それは先ほどとは違う驚愕だった。
教室内は生徒達による―趣味か―趣味ね―趣味なんだ―等の呟きに満たされた。

「………趣味?」
「趣味です」

少女のどこか呆けた感じのする問いに微笑みを持って返す。
その様子にはアキトはただ苦笑するしかなかった。

―気を付かわせたな

サレナは人形―と呼んでは失礼か―にして人の心の動きに敏感だ。
恐らく重くなった空気を取り払うために言ったのだろう。
感謝の意を込めてサレナに視線を送る。
視線を感じたのだろうサレナが少し頭を下げた。
そんな様子に先ほどの少女が、むむっ、と眼光を光らせた。
その眼光がどこかで見たような感じがするが気のせいだろう。

「ふぅ、それで次は」

アキトの一言で周りの生徒が我にかえる。
そして一番に手を上げたのはデジカメを持った少女。
その娘を指名すると生徒達がややざわめいた。

「フフフ…私を指名したからには覚悟してよ先生」

などと怪しげな台詞を吐きつつ目の前に一瞬で移動していた。
嫌な予感が思わず後ろに下がる。

「それじゃズバリ! 先生は結婚してますか!?」

何処から出したかマイクを突きつけながらの質問。
その問に心臓が―ドクン―と高鳴る。
どうせ下らない質問だろうと思っていたがこれは予想できなかった。

「いや…結婚はしていない」

感情をできる限り出さないようにして辛うじて答える。
周りの生徒達がざわめいているようだが耳に入らない。
今はこの感情を表に出さないよう精神を集中する。

「ふむふむ、そうですか。なら付き合っている人とかは?」

そんな俺の様子に気が付いている様子もなく再び質問してくる。

「付き合いなどはない」

出来る限り平静を装って答える。
だがその裏側は今にでも漏れそうになるほどの嵐。
体内のナノマシンがざわめくのが解る。今はまだ見えない範囲でしか反応してないがこれ以上は厳しい。
そんな俺の様子に気が付いたのだろうサレナが心配げな様子で此方を伺う。
それに大丈夫だと目線で返事する。だがそれは気休めにもならなかった。

「それじぁ最後に…好きな人は!?」

好きな人。その単語で思い浮かぶのは太陽のような人。
それが合図となって数々の思い出がよみがえる。
再開。衝突。すれ違い。怒り。悲しみ。喜び。
そして最後に思い浮かぶのは、

(あなた、誰ですか?)

その瞬間殺気が、怒気が、憎悪が漏れた。
一瞬で教室が凍る。漏れたのは一瞬だけだったが殺気が強すぎたのだろう。
多くの生徒は顔を青くしていた。
誰も口を開かない静かな空間。
まるで全てが凍ったかのような瞬間は直ぐに崩れる。

―キーンコーンカーンコーン

HR終了のチャイム。
凍った教室が一瞬で溶かされる。
まだ青くなっている生徒も居るが色々と聞かれると不味いので直ぐに退散する。

「ネギ君、済まないが用事を思い出してな。先に戻っていいか?」

何時も通りに言おうとしたが声が震えていた。
ナノマシンが一層騒ぎ出す。それが表に出るのも時間の問題だ。

「えっ? あ、はい。わかりました。後の事はやっておきます」

殺気に当てられたのだろう。少し青くなった顔で返してくる。
そして逃げるようにドアへと向かう。


アキトが出て行った後ネギが連絡事項を言いHRは終了した。
今は大半の生徒が持ち直し、この後の予定について話し合っている。
その後ろではエヴァが先ほどのアキトの様子について思案していた。

(あいつのあんな様子は見た事無いな……)

アキトはエヴァと共に修行をして来た。
情緒不安定になる事はあったがあそこまでの殺気を出す事は珍しかった。

(まだ私でも知らない事があるのか)

自分と同じく望まずに闇に堕ちた者。
それでも道を失わず真っ直ぐに進むその姿には眩しさを感じた。
そのアキトでまだ自分が知らなかった事があると思うとどこか悔しさを感じる。

(あいつは昔の事を言いたがらないからな)

それは闇を抱える者ならば皆同じ事。
それでも悔しさは紛れない。

(まぁいい。あいつに直接聞けばいいことだ)

そう結論付け席を立つ。

「茶々丸、アキトの所に行くぞ」

出口に向かう。
その後を茶々丸が無言で追う。


世界樹前そこでアキトは夕日を前に佇んでいた。
そこには先ほどまでとは違い落ち着いた様子だ。
後ろには何時ものようにサレナが立っている。
その顔には主を心配している表情が現れている。

「マスタ―。大丈夫ですか?」
「あぁだいぶ落ち着いた」

サレナの声に心配の色を感じ、安心させようと答える。
その声には先ほどの様子は殆ど感じられず、何時もの様子だった。

「それならいいのですが…」

まだ心配は取り除けていないのか最後のあたりはハッキリしていない。
其れほどまでにあの時は凄かったのだろうと思う。

(あの時は予想すらしていなかったからな)

いや予想は出来ていた。
だが自分の中でタブーに繋がる事を自分から考える事を遠ざけていた。

(まだまだ俺は弱いな)

自嘲気味に笑う。強くなったと思っていた。
あの時の言葉を思い出す。忘れる事は出来ない相手の。

「たとえ鎧を纏っても心の弱さは隠せない……か」

だからこそ仮面を被った。
弱い心を隠す仮面を。だがそれすらも脆かった。

「マスター?」

呟きが聞こえたのか、サレナの言葉には心配の色が一層増していた。
その問いに、何でもないと応える。が、やはりサレナの心配の色は取れていない。
心配させていると判っていても考えを止める事は出来ない。

「まぁいい。今はそれでも」

彼女を助け出すまでは。
と、気配を感じ後ろを振り返る。

「おいアキト。此処で何をしている」

エヴァちゃんだった。後ろには自分と同じく従者を引き連れている。
その様子はやや不機嫌で此方を睨んでいる。

「それは此方の台詞だ。エヴァちゃんこそ何の用だ」

大体の予想がつくが一応聞いておく。

「貴様の様子が変だったんでな。様子を見に来てやったんだ」

ふん、と言って脇を向いた。
顔がやや赤くなっているその様子は可愛かった。

「おい貴様! 人が折角来てやったのに笑うとはなんだ!?」

口が緩んだのが見えたのだろう。顔を更に赤くして怒鳴られた。
その様子が可笑しく、自分の中の渦巻いていた思いが吹き飛んでいたのが判った。

「いや、可愛くてついな」

そう言うと更に顔を赤くした。本音だったが、正直に言いすぎたようだ。
どこかで見た光景な気がすが、気にしないておく。

「―――――っ! まぁいい、その事は気にしない」

意外にも怒鳴らずに持ち堪えた。
普段なら、貴様っ! と叫び追いかけてくるが、今回は違った。

「それよりも! あの時の様子は変だった。一体何があった」

話を本題に戻す。
できれば聞かれたくなかったから逸らかそうとしたが、答えなければならないだろう。

「予想外の質問でな。昔の事を少し思い出してしまった」

俺の言葉にエヴァはどこか納得しかねる表情をする。

「言いたくないか……まぁ、今はそれで納得しよう」

いつかは聞かせてもらうがな、と言ってエヴァは近くの森に眼をやる。
できれば言いたくないなと内心思いながらエヴァと同じ方向を向く。

「それであいつ等はどうする」
「俺が相手をする」

先ほどから感じていた気配。
敵意が混じっていたが此方に向ってくる様子が無かったので無視していたがエヴァが来てから敵意が増していた。

「そうか、それでは私は行くぞ」

そう言って茶々丸を引き連れて離れていく。
茶々丸は離れ際に一礼して去っていく。
エヴァ達の後姿が見えなくなるまで見送る。

「それで、そろそろ出てきたらどうだ」

彼女達が居なくなるのを確認すると、先ほど視線を向けた森の方向に向かって声を掛ける。

「気付いていましたか」

そう言って出て来たのは教室で見た護衛の少女だった。
今は竹刀袋ではなく直に刀を持っている。

「まぁあそこまで敵意が剥き出しだとな」

教室の一件の事が原因だろう。
少女はその目に敵意を込めていた。

「マスター。北西約800mに狙撃手を確認。発砲体制についています」

サレナからの報告。
相手は二組。手際、準備から相応の実力があると判る。

「戦闘が始まったらそちらに向かえ。彼女は俺が相手をする」

報告を聞いてサレナに小声で指示を出す。
Yes.マスター、とサレナは返してくる。
小声だったため向こうには聞こえていない。

「ならば言わずとも判るでしょう」

そう言って刀に手を掛け、重心を落とす。

「出席番号15番桜咲刹那。天河アキト先生、お相手願います」

眼光により敵意が増す。
そして銃声、戦闘が始まる。



―騎士は昔の事を思い出しました。

     太陽のようなお姫様との思い出でした。

          でも騎士には悲しい思い出です―

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