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序章 再会 投稿者:ザヴィア 投稿日:08/25-14:26 No.2838

麻帆良学園。

初等部から大学部までをスッポリと治めた一つの都市を軽く凌駕する土地スケールを持つ学園である。


寮生活をする者の為に全ての生徒達が暮らせるだけの寮数。
専用の電車も走り、彼等のOB、OGの経営するホテルや喫茶店、服屋は勿論、銭湯でさえも存在している。

其処はすでに、学園と呼ぶには大きく、国と呼ぶには小さい……


そこはまさに紛れも無い一つの都市。


その巨大学園都市はもちろん交通の便も多様で、各地からバスや電車を初めとした交通機関の運行ルートの上にある。

今もひたすらに線路の上を疾走しているこの電車も、そんな数多いうちの一つである。
時は早朝、車内にはサラリーマンやOL、はたまた男子女子を問わず学生たちが狭い箱の中で苦しそうにひしめき合っていた。

そんなまるで獣の群の中のような列車内をスイスイと人をかわしながら進む青年が居た。
年のころは20代後半か、半そでシャツの上にチェックのジャケット、ジーンズを穿いて肩にはナップザックを背負っている。

足取りは軽く、小さく笑みすら浮かべてヒョイヒョイと踊るように隙間隙間を青年はくぐりぬける。
元々彼は最後尾の車両に乗っていた。
だが無意識下に足が動き、次々と車両を前に進んでいく。
どういう訳か、足が勝手に進むのだ。

確かに座る場所が無い程に進んできた車両は混雑している。

だからといっても、車両を変えてまで空いている所に行く理由は無い。

まるで、何かに……『誰か』に呼ばれている様な……

だが、青年はその気のよさそうな顔から笑みを殺すことはない。
むしろ状況を楽しんでいるようにも思えた。

そして目の前にあるちょうどこれで4両目になる車両の連結扉を開いた瞬間、視界が開けた。

前方に10m以上続く列車内、そのどこにも人が存在していないのだ。

「ん?」

流石にこれには驚いたのか、青年はキョロキョロと周囲に目を配る。
先ほどまでの喧騒は嘘のようで、聞こえてくるのは列車がレールの上を走る規則的な音。
そして時折聞こえてくるドップラー効果と伴った踏み切りの警告音だけだ。

ふと、青年は在る一箇所に目を向けた。

丁度列車中央部にある長いすの真ん中に、ポツンと一つ人影があるのだ。
目を凝らし、その正体を探らんとする青年。
だがその人影が誰なのかがわかったとき再び青年は笑みを浮かべていた。

「あぁ……」

思わずこぼれる納得の声。

確かに、彼女ならさっきのように自分をここへ呼んだり、こうして誰一人いない車両を作り上げることなど、朝飯前であろう。

青年は懐かしさと嬉しさを余すことなく顔に表しながら足を進める。

席に座っていたのは、フランス人形を思わせる美少女であった。
見た目は10歳前後、美しいブロンドの髪を腰の辺りまで伸ばし、どこかの学校のものであろう制服に身を包んでいる。
俯き加減ゆえに表情は前髪に隠れているが、口元は僅かにゆがんでいる。


「よいしょっと。ふぅ、疲れた。日本の人ってどうしてあんな慌ただしいんだろうね」

少女の傍にまでやってきた青年は、椅子を沈み込ませて少女に不快感を内容ゆっくりと少女の隣に座り息を吐く。

「貴様も同じ日本人ならば……いや、自由人であるお前には無関係の悩みか。それよりもどうだ? 少しは旅の疲れも紛れるだろ?」

少女もやれやれと首を振る。
意見には同意のようだ。

その後も二人は旧知の仲のように……否、実際に互いに既知なのであろう。
何事もないように会話を続けていく。

「まぁね。人が一杯居るのは嫌いじゃないけど、あぁ言うのは……ね」

「それは良かった。わざわざ人払いの魔法を掛けさせた甲斐があったというものだ。」

魔法

科学史上な世界においては子供だまし、迷信と穿き捨てられる言葉。
不可能を可能にする夢物語の産物。
多くの人はその言葉を聞きそう思うだろう。

だが、このように一車両のみを孤立させることは魔法でもなければ出来ないことだ。

「しかしお前が教師とはなぁ。あの頃に出会った身としては、あの無鉄砲小僧がどうすればこうなるのかと神に問いかけてみたいよ」

さも面白そうに笑う少女。
一方で青年の方は困ったように頭を掻いている。

「そりゃ俺の台詞だって。俺も1年ぶりくらいにマレーシアから帰ってきたと思ったらいきなり桜子さん……あぁ、俺の大学の知り合いね。その桜子さんに「君、今度麻帆良学園に行って先生することになったから」だって言われてさ。何か知り合いで麻帆良で先生やってる人が引退するから変わりに行ってくれって……俺に教えられることってあんま無いよ?」

「古代言語学や考古学で2、3個の博士号を持っているものの台詞とは思えんな」

「ありゃ……そこまで知ってる? でもまぁ持ってるって言ったってさ、俺の場合はいつの間にやら取ってただけでまともな勉強してないんだよ。……第一中学生の勉強に必要ないじゃん?」

あー、参ったなーとため息を漏らす青年。
その様子を少女はやれやれと笑って見つめる。

「まぁいいじゃないか。人間何事も経験だ、け・い・け・ん」

「……君からそう言われるともの凄く重みあるねぇ」

「やかましい」

仲の良い兄弟か、下手に見れば若いい父親と娘が会話しているようにも見える光景。
だがその内容はどこかおかしい。

「まぁ、とにかくだ。久しぶりだな、五代雄介。技はちゃんと増えているか?」

「こっちこそ。元気みたいだねエヴァ、花粉症治ったか?」

互いに顔を向け微笑みあう青年と少女。


これが16年ぶりの五代雄介とエヴァンジェリン・A・K・マグダウェルの再会であった。

魔法先生と凄まじき副担任

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