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黒衣の副担任 第1話 投稿者:KAMUI 投稿日:06/25-06:35 No.796

黒衣の副担任 第1話 「黒衣の剣神、新たなる世界へ」

海鳴市・某所

全てを凍てつかせる。時を壊す災害「ヒドゥン」からこの世界を守るため、高町なのはとクロノは
それぞれの武器「レイジンクハート」、「S2U」をもって、立ち向かっていた。

「なのは、集中して…一緒に、詠唱を」

「うん」

「レイデン・イリカル」

「リリカル・マジカル」

「…厄災なる氷河…」

「…その流れを止めて…」

「「…あるべき場所に…」」

「「…いるべき場所に……!!」」

同時に海鳴市を中心に大きな地震が発生した。その時高町恭也は、父「士郎」の眠る墓へと
赴いていた。

「むっ!地震か!?それに…」

地震の揺れと同時に何かを感じ取った恭也に

「ええ、なにかしらの強大な力をすぐ近くに感じます」

恭也の剣であり、パートナーの1人でもある霊剣「神楽」がその疑問に答えた。
現在は実体化して恭也に従っている。

「この力…、我らより大きいぞ」

その力の大きさを大まかに感じたのは、もう1人のパートナーである魔剣「ざから」であり、
神楽と同様に実体化している。

「これは、無視できないな…」

「恭也様、どうします?」

「ここは、行くしかないのではないか?」

「ざからの言うとおりだ、このだけの力の持ち主がもし、海鳴で暴れるようなことがあれば…」

「ええ、間違いなくこの地は壊滅的な打撃を受けるでしょう」

「なにせ、余波だけでもこれだけのものだからな」

ここ海鳴では、恭也が大切に思っている家族、知り合いが多く暮らしているため、この地にこの力が
暴走すれば、間違いなく大きな被害を被るだろう。それは、大切なものを護るために剣を振るう
恭也にとって、許しがたいものである。ゆえに、これからの行動は、既に決定していた。

「俺には正確な位置が特定できない。神楽、お前ならこの力の発生場所を特定できるか?」

「はい、少々お待ちください…、わかりました。こちらになります」

「だが、恭也よ。その場所へ行ったとして、どうするつもりだ」

「先ほども行ったが、この力の持ち主がこの地に災厄をもたらすことになるのならば、全力で
 立ち向かわなければならない」

「そうですね、場合によっては、私達全員の力を合わせて「封印している技」を使用しなければ、
 とてもではありませんが、かなわないでしょう」

「それについては、我も神楽と同感だ。それでは、今のうちに剣に戻っておくか」

「そうですね。それでは恭也様」

「わかった」

ざからと神楽が恭也に伝え、恭也が了承の意を発した瞬間、2人は光を発し、剣へとその姿を
変えた。恭也は、現在所持している小太刀「八景」を後ろに差しなおし、剣化した2本を腰の
横に差した。

「そういえば、2人とも剣化するのは、ひさしぶりだな」

『そうですね、しなくとも充分戦えましたし。逆に言えば、それだけの相手なのです。
 恭也様、心して向かってください』

「む、了解した」

『そんなことより、急ぐぞ』

ざからの言葉により、恭也は猛スピードで現場へ駆け出した。




「…リリカル・マジカル…」

「…みんなが待っている、あの場所に……帰ろう……」

「ヒドゥン」を倒したなのはは、レイジングハートの最後の力を使って、異空間からクロノと一緒に
脱出し、士郎の墓の近くの野原に帰ってきた。

「なのは…!!」

「くうちゃん!!」

なのはの帰りを待っていた妖狐「久遠」と熱い抱擁を交わしていれば、すぐ隣でも、クロノと
失くした記憶を取り戻していたクロノの母「リンディ」と感動の再開を果たしていた。

その時、神楽より力場の発生場所を知らされた恭也がやってきた。

「!!なのは!?」

「おにいちゃん!?それに、神楽さんにざからさんも!」

恭也だけでなく、神楽やざからが剣化した状態でやってきたのに驚いたなのは。恭也もなぜか
その場にいたなのはに驚きながらも、現場に着いた恭也は再度神楽に状況を確認した。場合に
よっては、なのはが襲われる可能性もあるのだ。それだけはなんとしても避けたい恭也は、辺りを
警戒しながら聞いた。

「神楽、どこだ?例の力の持ち主は?まさかこのなかに?」

今いるメンバーを見渡しながら聞く恭也に

『確かに皆さんは力を持っていますが、先ほどの力の持ち主ではないようです。しかし…』

『うむ……!!気をつけろ!!まだ近場にいるぞ!!』

ざからの叫びにも似た警告に恭也を始めとするメンバーが警戒を強めた瞬間、その時がやってきた。
突如として上空に大きな力と共に別の場所に繋がった空間が発生しだしたのだ。それは、小さな点
から徐々に広がり始めている。

「これは反応はまさか、『ヒドゥン』!?僕となのはで確かに消滅させたはずなのに!」

確実に消滅させていたと思っていたクロノは驚愕のあまり立ち尽くしていた。

「どうしようクロノくん、私達もう魔力が残っていないよ」

先ほどこの場所に戻ってくるときにレイジングハートの力を全て使い切ったなのはも、動揺を
隠せない。

「…ようするにあの空間を消滅させればいいのだな」

「「えっ!?」」

突如冷静な声で確認を取った恭也に驚きのクロノとなのは。

「だめです、恭也さん!あれに対抗するには魔力が必要です!あなたでは無理です!!」

「それでも、やるしかないだろう?この中で、あの上空の空間に攻撃を加えることができるのは
 いまのところ、俺達しかいない。俺達の力を全てあの空間にぶつければあるいはどうにか
 なるかもしれんぞ。それに、まだ歪が小さい今がチャンスだ」

『恭也様の言うとおりです。我らの力を侮らないでください』

『ふん、アレくらいのもので我らがやられるはずはないだろう』

クロノが恭也を止めようとするが、本人達は止めるつもりはない。なにせ、その結果如何によっては
護るべき者に被害が発生するからだ。

「おにーちゃん…」

なのはが心配そうに恭也を見上げている。

「大丈夫だ、なのは、護るべき者を持った、御神の剣士に負けはない。必ず勝って戻ってくる」

そう言って恭也は、なのはの頭を優しく撫でてやる。そうするとなのはは落ち着いたのかしっかりと
した目で恭也を見据えた。

「おにーちゃん、必ず勝って帰ってきて」

「うむ、了解した。それでは、行ってくる。行くぞ、神楽、ざから」

『『承知』』

と恭也が声を発すると同時に恭也の全身に大量の霊力が行き渡る。そして空を見上げ、集中すると
同時に神速を発動し跳躍した。そして足元に霊力を集中させてさせ、それを踏みつけさらなる
跳躍を行い(虚空瞬動のようなものと考えてください)、歪へ向かっていた。
その歪へ近づくと同時に全身の力を二刀に行き渡らせ、同時に神楽、ざからも自分の力を最大限に
溜め込んだ。

そして、歪に向かって恭也は、あまりの威力のため、自主的に封印していた技のひとつを
解き放った。

「封神・楓華疾光弾(ふうしん・ふうかしっこうだん)!!!!!」

以前、ざからを相手に神咲薫、槙原耕介が放った神咲一刀流の奥義を見て、その後自分なりに研究、
取得した技である。(神咲薫には半ばあきれられたが…)さらに、自分の霊力の他に神楽の霊力、
ざからの妖力を共鳴させた場合は、想像を絶する威力となるため、自主的に封印技としていたのである。
そして放った放った技は寸分の狂いもなく歪に着弾した。それと同時に一瞬空が、雷でも落ちたかのような
光と音を発生させた。

それをみたクロノは、自分が恭也のことを過小評価していたと同時に、恭也に霊力のほかに別の力を
感じた。

「す、すごい…これほどの力とは…(それに、この力は魔力!?)」

そして光がやむと同時に見た時、既に空間の歪はなくなっていた。恭也はそれを確認して、
宙を落下しながら神楽に『ヒドゥン』の力の確認を行った。

「どうだ、歪はなくなったが、例の『ヒドゥン』とやらの力は?」

『はい、どうやら消滅させることに成功したようです』

『ふん、当たり前だ。我がいたのだからな』

神楽の言葉と同時にざからが悪態をつき、恭也もそれを聞いて緊張を和らげた。それはなのは達も
同様で、驚きと同時に『ヒドゥン』の力の消滅も確認し、ほっとしていた。
ただ、恭也達の計算にもないことが起こった。突如として『ヒドゥン』発生とは別の空で大きな
空間が発生した。そしてそれは、落下中の恭也達を飲み込もうとしていた。

「な、なに!?まだ消滅していなかったのか!」

『いえ、あの空間からは例の力は感じられません。おそらく、さきほどの衝突の際に空間に別の歪が
 できたのではないかと思われます』

『それに見ろ、あの空間の先に、別の地が見えるぞ。それになんだ?あれは、鬼!?』

『確かに私もそのように見えます』

さすがに、想定外のことに驚く恭也に、冷静に状況を確認する神楽、そして常人以上の視力をもつ
ざからは、その空間の先の状況も見えていた。それに神楽も同意した。

「お、おにーちゃーーーーーーーーん!!」

「恭也さん!!」

突如のことになのは達も付いて行けなかったが、恭也がその空間に飲み込まれそうなことが
わかると、すぐさま助けようとするが、その力も残っていなく、ただ、呼びかけることしか
できなかった。それが聞こえたのか恭也はなのはに向かって大声で叫んだ。どうやら、この状況を
脱することは不可能、空間の先にあるのが地上であったため、死ぬことはないだろうが、どこへ
飛ばされるかわからない、つまりそれは場合によってはしばらく海鳴に帰って来れないことなので、
なのはを少しでも安心させようと思ったからである。

「なのは」

「おにーちゃん!」

「この先は別の土地に繋がっているようだが、場合によってはすぐに帰れないかもしれん。その間、
 家族のことを頼むぞ、ついでに説明もしてくれるとありがたい」

「おにーちゃん………」

こっちは必死に心配しているのに、意外と冷静な声(それでも離れているため大声だが)で恭也が
しゃべるため、思わず力が抜けてしまうなのはであった。

「クロノ」

「恭也さん」

「…なのはをたのむ」

「はい」

クロノとしてもすぐに恭也を助けたかったが、自分の魔力もさきほどの戦いで使い切ってしまった
ため、どうすることもできなかった。だから恭也からの一言を重く受け止め、なのはを支えて
いこうと考えた。さらに、恭也は別の場所に飛ばされることもわかったので、自分の故郷ミッドの
科学力(ちから)を使って探すことも考えた。それならば、例え恭也の行き先が平行世界だった
としても見つけることが可能だからだ。

そう考えているうちに空にできた空間は恭也(と神楽、ざから)を飲み込み、閉じてしまい、
いつもどおりの青空が広がっていた。







京都・某所

現在、2人の少女が正体不明の何かに襲われていた。
事の始まりは、少女の1人である「近衛 木乃香」がもう1人の少女「桜咲 刹那」を連れて遊びに
行ったのは良かったが、いつの間にか木乃香が住む家の結界(木乃香はわかっていない)を超えて
しまい、それに気付いた刹那が木乃香を連れてすぐに引き返そうとしたが、結界付近を張っていた
何者かに阻まれてしまい、数的に不利と考えた刹那が木乃香と一緒に逃げ出した。
木乃香は、始め訳がわからない思いに駆られたが、刹那の必死の表情を見て、素直に付いていった。

「このちゃん、大丈夫?」

「うん、なんとか、でもせっちゃん、これはどうなってん?」

「わからない。ただ、うちらを追ってきていることだけはたしかや(くそ!もっと私が注意して
 いればこのちゃんが狙われることもなかったのに)」

必死に逃げる2人だが、所詮木乃香は一般人、通常の身体能力(魔力は膨大だが未覚醒)と体力しか
ないため、それほど時間を掛けずに囲まれてしまった。
刹那はくじけそうになる心を抑えて、この包囲網を突破すべく気丈にもはっきりとした声で、刺客に
向かって叫んだ。

「いつまで、隠れているつもりだ、堂々と出てきたらどうだ!」

『へっへっへ、ようやく諦めたか』

と言って、出てきたのは明らかに人間とは容姿が異なるものたち。ある者は身長が3mほどもある
巨漢で額に大きな角が生えており、またある者は、鳥のような顔で背中に大きな羽が生えいてる。
いずれも人間では発することのないような禍々しい気を発しており、その姿に刹那の後ろに控えて
いた木乃香の体が震えた。
刹那が周りを見渡して見れば、その数約50。とてもでないが、突破出来そうにない。

『まあ、今回の仕事はそこにいるお嬢ちゃんを連れてくることだから、素直に引き渡せば、見逃して
 やるぜ?』

そう言って、木乃香を指差し話す鬼だが、どうみても刹那のほうも逃すつもりはないらしい。
その状況を刹那は察して、木乃香に小声で話しかけた。

「このちゃん、今からうちが攻撃して、突破口を開くから何も考えず、空いた道を走って」

「せっちゃんは?」

「うちはその間、こいつらを足止めするから」

「せっちゃん、それはあかん。いくらせっちゃんが強くても数が多すぎる」

木乃香はこれからの刹那の行動を察したのか、やな予感しかしないので、必死に止めようとするが
それをさえぎったのは刹那ではなく、周りの異形の者達だった。

『おっと、逃げる算段でもしているのか?そうはさせないぜ、考える暇も与えるか。おう!者共
 こいつらを逃がすんじゃねえぞ』

というと同時にどんどん包囲網を縮めていく。これには刹那も焦ったが、もうどうしようもないと
思ったので、決死の覚悟で突撃を行おうとしていた。

「くる!このちゃん、それじゃあうちは行くから、さっきの言葉忘れないでね」

「だめや!せっちゃん!!」

その瞬間、上空が晴れているにも関わらず、雷が落ちたような光と音が発生した。

『な、なんだ~?』

と、異形の者達が思っていたもののそれもすぐに止み、首をかしげながらも当初の目的を果たそうと
再度動き出した。本来なら刹那達が逃げ出すチャンスだったが、その本人達ですら同様に驚いて
しまったためそれをふいにしてしまった。

ただ、発生したのは光と音だけではなかった。それらが止んですぐに上空から大きな穴が発生する
ではないか。そして良く見ると、その穴の先に大地が見え、そこに人が立っていた。これには、
異形の者達も刹那達もこの場を忘れて魅入ってしまった。さらによく見ると、こちらに1人向かって
来ている。これには、さすがに異形の者達も驚き、空を飛べるものに偵察を命じた。
それと同時に上空の穴がこちらに向かっている1人を残し閉じてしまった。





「どうやら、海鳴との繋がりが途絶えてしまったようだな。それに、こちらに向かってくる者も
 いる」

『そのようですね』

『こちらに向かってくるのは烏人型の下級妖魔か?それに下のほうには4、50くらいの妖魔、
 鬼がおる。…ちょっと待て、どうやら何かを取り囲んでいるようだな。あれは少女?』

「なに?」

『1人は、半妖?もしくはそれに準じた力を内包しています。もう1人は、内になにか巨大な
 力を秘めています。ひょっとしたら恭也様に匹敵するかもしれません。どちらもなのはさんと
 同じくらいの年の少女ですよ』

『おそらく、妖魔達は力を持つものを利用して何かしようとしているのだろう。下賎な輩が
 よくやる手段だ。我は気に食わん!やるなら己の力のみでやるものだ』

「まだ状況がよく飲み込めんな、取りあえず、その少女達のところへ行くか、襲われているなら
 助けよう」

そう言うが早いか、恭也の体は一瞬にして掻き消えた。


一方、偵察に向かわせた異形の者達は、突如消えた男に驚き、気付いたときには自分達の標的の前に
いたのにさらに驚いた。上空を再度見てみると、偵察に行った者も周りを見回していた。


その時、木乃香と刹那もつい今しがた上空にいた男性が突如自分達の目の前に現れたことに驚きを
隠せなかった。

「(いまのは虚空瞬動!?それも速い!この人は一体何者?見る限りやつらの仲間ではないよう
 だけど…、油断はできない!)」

「うわー、お兄さん、どうやってあんなところからここへ来たん?」

自分の目でも追いきれなかった実力と、周りの状況から警戒を解かない刹那。それに対し、純粋に
驚きを隠せない木乃香は正直に目の前の青年(恭也)に質問をしていた。それに反応した恭也は、
木乃香達の方へ向き直り、腰の横に差した神楽とざからを二人の目の前に置き、怖がらせないよう
目線を二人に合わせて出来るだけ優しく話しかけた。

「すまないが、正直自分でもどうやってここに来たのかがうまく説明できない。ただ、ついた先に
 妖魔達に囲まれている君達がいたから状況を確認しに来たんだ。できれば、説明してくれない
 か?なぜこのようなことになっているかを」

「…(うわー、めっちゃ美人さんや~、うちドキドキしてまうわ~)ええっと、せっちゃん?」

恭也に真剣な(で優しい)で質問され、一瞬思考が停止しかけた木乃香だがなんとか事情を知って
いそうな刹那に話を振った。

「…(…っは!)は、はい、ここにいる妖魔達は、お嬢様の力を利用することが目的で、隙を
 見てはいつも連れ去ろうとしているのです」

刹那も先ほどの警戒心が一瞬吹っ飛んでしまった、木乃香の声でようやく己を取り戻したかに見え
たがどうやらまだテンパッているようで、見ず知らずの人間に対外用の丁寧語で素直に全てを話し
てしまった。
それを聞いた恭也の目が険しくなり、神楽・ざからの気が一気に増大した。
ただ、神楽・ざからの気が増大した理由は恭也と全く違っていた。

「(どんなところでも、このようなことがありえるのだな、それも人の力を利用する?なにを考えて
 いるのかはわからないが、どうせろくなことではあるまい)」

『『(恭也(様)、別の地に来て早々、女の子を落とさないでください(くれ))』』

まあ、こんな感じである。
恭也は、自分の都合で他人を勝手に利用する妖魔どもに怒りを覚え、神楽とざからは、行く先々で
無自覚に女性(年齢層は幅広い)を落としていくため、パートナーとして気が気でない。
(といっても恭也は、神楽とざからのことを戦う上でのパートナーでしか考えていなく、恋人・伴侶
 としては全く考えていない)

とりあえず、まわりの妖魔達はどうしたのかというと、突如発生した巨大な気(霊力)で硬直して
しまったりしている。刹那も同様に硬直していた。
そんなことは露知らず、恭也はまずは周りにいる妖魔達を片付けるため後ろの腰に差していた
八景を抜き、戦闘体制に入った。

「わかった、それでは二人ともそこを動かないでくれ。神楽とざからが護ってくれるから」

「神楽とざから?」

目の前には恭也1人しかいないため、当然木乃香は新たに挙がったであろう名前に疑問を持った。
ついでに刹那はまだ硬直中である。

「(そうか、突然言われてもわからないか、ここは海鳴でも知り合いがいるわけでもないからな)
 すまないが二人とも、これから起こることは秘密にしてくれないか?」

「ええよ」

「…わかりました」

即答の木乃香に対し、刹那はようやく硬直が解け取りあえず様子見も兼ねて了承の意を示した。

「よし、神楽、ざから、俺が戦っている間二人を護ってやってくれ」

そして、恭也が話すと同時に地においた二刀が輝き、それが収まると同時に、二人の人が現れた。

「私は神楽と申します。宜しくお願いしますね」

と言って現れたのが、腰の手前まで伸びた黒髪に、深青の瞳、真っ白な着物を着た日本人形のような
姿をした美人であり、恭也のパートナーの1人である霊剣「神楽」である。ただ、その姿に似合わな
い日本刀を1本腰に差している。

「我は、ざからだ。恭也よ、我はお前達のように護ることは苦手だ。周りは雑魚でも、数が数だ、
 我も一緒に戦うぞ。護るのは神楽だけで充分だろう」

次に現れたのが、背中の中くらいまで伸びた真っ白な髪に、灼熱の炎を思わせるような真っ赤な瞳、
こちらもやはり着物を着ているが、とちらかというと機能性を重視した着こなしをしている。
恭也のもう1人のパートナーである魔剣「ざから」である。ざからは、どうやら暴れたいようで、
背中に背負っている太刀の柄を握りながら周りを睨みつけいている。

ざからの台詞でようやく硬直から解けた妖魔達は、突然現れた女が自分達を雑魚呼ばわりしたこと
怒りを感じた。確かに発する気は巨大だが、どうみても見た目ひ弱な女達と男である。それにこちら
には数がある。目的の少女は目の前、これ以上手勢が来てもまずいことになるので一斉に襲い掛かろ
うとした瞬間、

「いくぞ、ざから」

「承知」

恭也とざからの二人の姿が消えた。


そこからは、一方的な展開だった。妖魔達が恭也達を認識する間もなく次々と切り伏せられてい
く。反撃しようにも相手の姿が見えないため、それもできず、だからといって、残ったもので木乃香
を襲うにも神楽により全て阻止されていた。

1分後、全ての鬼、妖魔は送還され残ったのは恭也達のみとなった。

「ふう、終わったか」

「ふむ、つまらんな。弱すぎる」

「それより恭也様、先ほどの攻撃に加え、神速の多用ですが、お体のほうは大丈夫でしょうか?」

「ふむ、それほど疲れてはいない」

恭也は、万が一のことが無いように出来るだけ早く終わらせるため、神速を使用していたが、その前
にも『ヒドゥン』を倒すために封印技を使用したため、神楽は若干心配していたが、それほど問題は
なさそうである。ざからはあれくらいの戦いでは満足できるものではなかったらしく、不満そうで
ある。

それらのやりとりを呆然と見つめていた木乃香と刹那であったが、ようやく気を取り戻し、助けて
くれたお礼を言うべく恭也達に話しかけた。

「「あっ、あの」」

「ん」

「危ないところを助けていただきありがとうございます」

「いや、礼はいらない。俺はああいったやつらが気に入らなかっただけだからな」

「それでも、うちらが助かったことには変わりがないんやから。ほんにおおきにな。ああ、そうだ、
 うちは、近衛木乃香。こっちの子は桜咲刹那いうんよ。ところでお兄さんの名前はなんていうん?
 お姉さん達の名前はさっき教えてもらったけど」

「そういえばそうだったな。俺は高町恭也だ」

「高町さんか、うち助けてもらったお礼をしたいんだけど、家のほうに来てもらえる?」

「いや、先ほども言ったが、礼はいらない。それよりも、ちょっと聞きたいことがあるんだが、
 いいかな」

「なに?」

「ここはどこだ?」

「えっ?わからんの?…そうや、高町さん達は空から来たんやもんね。ここはきょう…」

「木乃香!大丈夫ですか!?」

と木乃香が恭也の疑問に納得がいき、場所を教えようとした時、恭也達の後方から木乃香を呼ぶ
声が聞こえた。一瞬警戒態勢を取る恭也達であったが、木乃香の行動により、敵ではないと判断
した。

「お父様」

「ああ、木乃香、無事で何よりです。刹那君も無事で良かった」

「詠春様、私がいながら申し訳ありません」

「いや、いいんですよ。とにかく二人とも無事で良かった」

といって現れたのが、木乃香の父親である近衛詠春であり、木乃香達がいなくなったことに気付き
数人の手勢を引き連れて来たのである。木乃香は詠春の姿を確認するとすぐに抱きつき、詠春もその
木乃香の無事を確かめるかのように抱擁した。

その姿を恭也は見て、自分が剣を振るっている理由を再度認識した。恭也は自分の大切な者達を
護るために剣を振るっている。その成果が今目の前にある、それだけで充分なのだ。

そこで詠春が木乃香達の無事を確認した後ようやく、恭也達のほうへ体を向けその姿を確認し、
驚愕することとなる。

「(三人がそれぞれ、恐ろしいほどの手練。それに、そのうちの1人から感じるのは抑えている
 ようだが凄まじい妖気!一体この人達は…)」

と思考の海に飲まれそうであった詠春を引き上げたのは娘の木乃香である。

「ねえ、お父様。ここにいる高町さん達がうちらを助けてくれたの」

「…っあ、ああ、そうなのかい?紹介が遅れてしまい申し訳ありません。私はここにいる木乃香の
 父で近衛詠春と申します。娘が危ないところを助けていただきありがとうございます」

「いえ、当然のことをしたまでですから、お礼をいただくようなことはありませんよ。ただ、先ほど
 も娘さんにお伺いしようかと思ったのですが…」

「はい、なんでしょう?私にわかることでしたらお答えいたしますが」

「それでは…、ここはどこですか?」

「えっ?」

まさかそんなことを聞かれるとは思わなかったのか詠春はつい聞き返してしまう。それを聞いていた
木乃香が先ほど見た現象を詠春に伝えた。

「お父様、高町さん達は、空に開いた穴から飛び出して来たんよ」

それを聞いて詠春もさすがに驚きが隠せない。自分達も先ほど遠目からその現象は見たが、まさかそ
こから人が出てきたとは思わなかったからである。

「そうですか…、それでそのような質問が出たんですね」

「はい、正直俺達も現在の状況が把握できなくて」

「そうですね。それでは私達もあなた達に伺いたいことがありますので、よろしければ、家まで一緒
 に来ていただけませんか?」

「はい、そういうことでしたら、こちらからも宜しくお願いします」

「それでは、参りましょうか。でもその前に、一つだけすぐにお聞きしたいことがあるのですが…」

「はい、なんでしょうか」

一応、詠春の計らいで詠春の家(というか屋敷)に恭也達を案内し、そこで腰を落ち着けて話すこと
となったが、詠春がどうしても事前に確認したいことがあるらしく、恭也に向き直り話し始めた。

「そちらの白髪の方ですが」

「ざからのことですか?」

と、詠春と恭也が黙って話を聞いていたざからのほうへ顔を向けた。ざからはその後の詠春の質問の
内容が判ったようで少し顔をしかめた。神楽もしょうがないといった顔をしていた。

「ざからさんですか。抑えているようですが、あなたからは、かなり強い妖気を感じます。木乃香達
 を助けていただいたことから悪い方とは思いたくないのですが…」

「まあ当然の反応ですね。なにせ「ざから」さんですから」

「なんだ神楽、皮肉か?それとも我に喧嘩を売っておるのか?」

「まあ待て二人とも。詠春さん、出会ったばかりの俺を信用してくださいと言っても無理があるかも
 しれません」

じゃれあう神楽とざからを制しながら、詠春に説明しようと言葉を一度区切って恭也は話し出す。

「確かにざからは以前魔獣と呼ばれていましたが、それはある事情があってのこと。今は俺の家族も
 含め、周りに迷惑を掛けているようなこともありませんし、逆にいろいろと助けられています。
 まあ、若干じゃじゃ馬なところもありますが、悪いやつではありません」

「じゃじゃ馬というところが少し気になるが…、まあよい。取りあえずそこらの鬼や妖魔と違って
 我はもう人間に対し何かするといったことは考えておらん。恭也もいるしな」

と言って恭也を見つめるざからを注意深く観察するようにして見ている詠春。そこから問題はない
だろうと判断したのかふうっ、と少し息を吐き出してから話す。

「わかりました。その点については特に詮索するつもりはありません。ただ別の意味で少し問題が
 ありまして」

「問題?」

「はい、詳しい説明は今は省きますが、我が家の周りには結界が張ってありまして、その結界の
 能力の一つに妖魔達が入れないよう妖気に反応してその進入を防ぐものがあるので」

「ざからの妖気に反応して、ざからがその中に入れない」

「はい、そういうことです」

「ふむ、確かに問題だな。我ならば大抵の結界などは破ることができるが、それではそちらが大騒ぎ
 になりそうだな」

と困った表情をした面々の中、神楽は少し考えるように目を閉じ、その考えがまとまったのか詠春に
話しかけた。

「詠春殿でしたね、すみませんが、まずその結界のそばまで移動していただけませんか?私に少し
 考えがありますので」

「はい、そういうことでしたら移動しましょうか。それでは皆さん行きましょう」

そうして、全員でその結界があるそばまで移動した。そこで神楽は目には見えない結界が見えるかの
ようにそれに手を触れるようにして集中をしていた。

「この結界は、複数の種類の術を霊具を使って増幅し広範囲に渡って張ってあるようですね。これで
 したら破ることなくざからさんを中に入れることができそうです。ざからさん」

「なんだ」

「少々窮屈になるかもしれませんが、力を封印する類のものではないので、これから行う術を受けて
 いただけますか?」

「まあ、おぬしのそういった術に関しては信頼がおけるからな、まかせる」

「はい、では」

神楽はざからの額に手を当てて再度集中しだした。そうすると神楽の手が光りだす。ざからはその
様子にも特に反応せず、されるがままになっていた。逆に詠春を始めとする者達は、興味深々と
いった感じでその光景を眺めている。

「神楽流 練気封換(れんきふうかん)」

神楽の術の発動と同時にざからから放たれていた妖気が消え、通常の人間が放つ霊気のようなものが
放たれ始めた。それを見た詠春は、驚愕の表情で神楽を見、ざからも自分に掛けられた術の内容に
驚きながらも少し窮屈そうに顔をしかめていた。

「うむ、確かに力はそのままだが…、それにしても、これは窮屈と言うより違和感を感じるな。
 なにか自分が発している物でないような気がするぞ」

「はい、そういう術ですから。これでざからさんが大きく力を解放しない限り、この結界も抜け
 られますし、先ほどの詠春殿のような反応を他の方々にされることもないと思いますよ。まあ、
 根底にある妖気を抑えた訳ではないので、気配に鋭敏な方には気付かれてしまいますが」

「凄いですね。確かにそれなら結界を簡単に超えることができます。できればその術のことも含めて
 いろいろとお話を伺いたいですね」

「まあ、話せることは話しますよ。それよりも私からいうのもおかしな話ですが、問題も取り除いた
 ところで先へ進みませんか?」

「そうでしたね。それでは行きましょうか?」

そういって歩き始める者達の中、恭也は唯1人空を見上げて思いに耽っていた。

「(おそらく、ここは俺達のいた世界ではないだろう。携帯を掛けても全て使われていない番号だっ
 たし、先ほど戦った妖魔達も今まで戦ったものと違った印象を受けた。護るべき者達がいないこの
 世界で俺はどうすべきだろうか)」

「「恭也(様)」」

「ああ、今行く」

ざからと神楽に呼ばれ、思考の海から抜け出した恭也はこれからのことを思いながら歩み始めた。






あとがきみたいなもの

この投稿図書で皆様方の作品を読んでいて、自分もとうとう我慢しきれなくなって作品を投稿してし
まいました。執筆速度、シナリオなど、まだまだ拙いものですが、ほんの少しでも皆様がこれを読ん
で喜んでくだされば幸いです。
一応感想掲示版に、スレッドを立ち上げます。もし、感想、誤字脱字などの指摘事項があればどしど
し投稿してください。作者もできるだけ早くレスをする努力をしますので。
また、「○○と恭也が関わったシナリオを見たい」などの要望もありましたらご連絡ください。
作者の執筆速度と電波受信状況と相談して載せられそうなものは番外編か本編に載せますので。

最後に、作者は一般人です。特に文章に優れているものでもなく、電波を頼っても執筆速度が他の
作者様方に比べてめっちゃ遅いです。それでも力をいれてこれから頑張っていきますので宜しくお
願いします。

黒衣の副担任 黒衣の副担任 第2話

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