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黒衣の副担任 第3話 投稿者:KAMUI 投稿日:06/26-03:09 No.801

黒衣の副担任 第3話 「黒衣の剣神 麻帆良学園へ行く」


恭也達がこの(ネギま)の世界に来てから約二年が経過した。その間に京都に存在する裏の人間には
恭也達の存在を認知されていた(詠春、鶴子が中心となって伝えていった)。

恭也達も詠春たちの恩を返すため、木乃香の護衛を中心に、他の関係者の護衛、警備の仕事をこなし
ていった。また、それと同時に各地に住む妖魔、鬼の退治(要するに神鳴流の仕事)も引き受けてい
た。そして、敵対者を次々と葬っていくその姿から海鳴にいたときと同様の二つ名「黒衣の剣神」が
ついた。これはある意味必然だろう。

現在では、恭也達の存在を恐れ、木乃香を付け狙う連中も一時的とは言えなりを潜めている状態で
ある。

それに伴い護衛の仕事に余裕ができた恭也は、裏の仕事だけでなく、表の仕事も出来るようになれば
と、以前にはやらなかった勉強を始めた。この地に来てから、木乃香や刹那の家庭教師の真似事をし
たり、刹那には別メニューで鍛錬(神鳴流がもちろんメイン)を手伝っていくうちに、どうやら自分
は、他人に物事を教えるのがうまいらしい(木乃香と刹那がそろって言っている)ため、教員免許を
取ることを目標に勉強をしている。



そして、木乃香達が小学校を卒業して、春休みに入る頃、恭也は詠春に呼び出されていたため、詠春
部屋へと足を運んでいた。その途中、目に付いたのは、詠春の部屋から出て行く神鳴流の当主の娘二
人であった。そのうちの1人である鶴子は恭也の姿を見つけると同時に瞬動を用いて恭也の脇に移動
し、その腕を抱えるようにして組んでいた。恭也もそのことに既に慣れたのか(某恭也の親友の行動
をと似ていた)特に表情変えずにそれを見つめていた。

「恭はん、お久しぶりどす♪」

「ああ、そうだな。3月前に鬼の集団を退治した時以来か」

「ううっ、恭はん、久しぶりの再会にしてはなんか冷たいどす」

と腕を組みながら上目遣いで恭也を見上げるが、鶴子については耐性がついたのか「はあっ」とため
息をつきながら答える。

「いやな、よく飽きもせずに俺なんかの腕を組んでいられるなと思ってな。そんなことを俺にするな
 ら、彼氏なり恋人なりにしてやれ」

「いややわ、恭はん。うちに彼氏も恋人もおらんえ。それにこれはうちの恭はんに対する愛情表現
 やし」

といいつつ、腕を組む力を込めるが、「鈍感の世界遺産」恭也には通じない。

「はあ、そんな冗談は言うもんじゃないぞ、俺なんかは鶴子とは絶対に釣り合わないと分かっている
 から問題ないが、あんまりそんなことはするもんじゃないぞ」

「はぁ…、相変わらず鈍いお方や。うち、恭はん以外の殿方にこんなことするはずもないのに」

「む、それは家族や周りの友人にもよく言われるが、俺はそんなに鈍くはないぞ」

その言葉を聞いて、今度こそ脱力する鶴子。ずいぶん長い間恭也にアタックを繰り返している鶴子で
あるが、この世界遺産級の鈍感さにはさすがに苦労しているようである。さらに恭也としては

 鶴子=某夜の一族の親友(スキンシップの方法など)

の図式が完成してしまっているためなお、性質が悪い。未だに報われない鶴子である。

さらに言うと、今回は恭也だけなのでこれだけで済むが、神楽とざからがその場にいると一変修羅場
と化す。ただ、その場で暴れるわけにもいかないので、鍛錬の時にその内容が濃くなるくらいか。



そんな光景をずっと眺めていたのは当主の娘であるもう1人の「青山素子」である。二年前のある日
厳格でありそれに見合った強さを持つ、尊敬すべき存在であり、目標である姉が突然豹変したことに
驚き、姉に問いただしたところ、「好きな人ができた」との一言でさらに驚愕した。

その真偽を確かめるべく、その人物を特定し、『関西呪術協会』総本山へ姉と一緒に行った。その時
に、その人物を子供ながらに見極めようとしたが、結果は陥落。ミイラ取りがミイラになってしまっ
たのである。

ようやく、姉の過剰なスキンシップが落ち着いたのか、自分も恭也に挨拶するべく話しかけた。

「恭也さん、お久しぶりです。妹の素子です」

「ああ、本当にひさしぶりだな。どうだ、修行のほうはうまく行っているか?」

「はい!日々精進しております!」

素子の場合は、まだ一人前になっていないこともあり、恭也と仕事をすることもなく、会う機会もと
ても少ないため、久しぶりに聞く恭也の声に少々舞い上がっていた。

ただ、それに納得がいかないのが姉の鶴子である。明らかに自分に比べて優しい物腰で話しかけてい
る恭也を見て、嫉妬していた(恭也としてはあまり頓着していないが)。そうなると自然に素子に向
く視線の強さが増すことになり、

「(素子はん、後で『おしおき』や(闇の笑み))」

「(あっ、姉上~『おしおき』はいやや~!)」

と目線と表情だけで姉妹仲良く?会話をすることとなる。もちろん恭也はそれに気付くことはない。

そうしているうちに、なにか不穏な空気を察した詠春が自室から出てきたためそれらが中断すること
となる。

詠春は、その光景を目の当たりにして、

「(「また」ですか、本当に恭也君は鈍感ですね。これでは木乃香の気持ちも分かっていないでしょ
 う。それに刹那君も…)」

ちょっとため息をつきながら、詠春は本題を切り出すべく、恭也に話しかけた。

「恭也君、待っていたよ。そこにいるのも何だから、私の部屋にこないかい?」

「そうですね」

と、詠春の呼びかけに素直に応じ、鶴子の組んでいる腕を自然な動作ではずし、

「それでは鶴子、素子。俺はこれから詠春さんと話があるから」

一声掛けてから、詠春と部屋の中へ入っていく。鶴子としてもそれに着いて行きたいが、自分もこれ
から仕事があるため、そうとも言ってられず、素子を伴ってしぶしぶ実家へと戻っていった。

もちろん、仕事の後、素子に鶴子の「お仕置き」が発動したのはいうまでもない。



「わざわざすまないね。急にこちらの都合で呼び出してしまって」

「いえ、特にこれといって何かをしていたわけではありませんから」

「それにしても、二年か…君達がこちらに来てから」

「そうですね…、もうそれだけ経っているんですね…」

少し思いに耽る恭也。恭也達がこちらの世界に来てから、裏の仕事を手がけてきながらあちらの世界
へ帰る手がかりを探しているが、今のところ有力な情報は入ってきていない。

あちらの世界では既にテロ組織「龍(ロン)」もなく、恭也がいなくとも無事にやってはいるだろう
が、それでもやはり心配であるのが現状である。

詠春はそんな恭也の表情を見ながら、適当な間を取って、再度話かける。

「でも、君達のお蔭でこの二年の間に周辺の不穏な組織は全て殲滅することができたし、それに付随
 して、木乃香を狙う輩も現在はなりを潜めている。本当に君達には感謝をしてもしきれません」

と言って深々と頭を下げる詠春。それを見て戸惑ったのは恭也だ。

「詠春さん、頭を上げてください。以前も言いましたがそれについてはお互い様ですよ。詠春さんの
 お蔭で俺達は不自由なくこの世界で暮らしていけますし、元の世界に戻る方法も一緒になって探し
 ていただいているのですから」

「元の世界に戻る」と恭也が言った当初、詠春はその考えに納得していたが、木乃香、刹那はそれに
猛反対した。恭也もさすがに二人がかりで泣きつかれた時は困り果てたが、その場はなんとか詠春の
仲介もあって、事なきを得た。但し、その後、木乃香達の前でその言葉は禁句となってしまったが。

一方、青山姉妹はというと、これが意外と素直に納得(素子は鶴子に睨みを効かされていた)してい
た。恭也もその反応に対し、素直に礼を述べたが、鶴子の深層心理は理解できなかったのだろう。

もちろん「反対」である。せっかく好きになった男性が探せないような所に行ってしまうそんなこと
は、鶴子には考えられない。ただ、表立って邪魔をすることもできないので、恭也の境遇が特殊だか
ら、「神鳴流」という組織としては、協力することができないとだけ話してある。

まあ、そういうことで、実際に異世界探しで動いているのは詠春のみとなっているのが現状である。

「少し話がずれてしまったね。それでは本題に入りましょうか」

「はい」

「木乃香と刹那君が小学校を卒業したのは恭也君も分かっていますね。それでこれから入学する中学
 校が「麻帆良学園中等部」であり、私の義父であり麻帆良学園の学園長である近衛近右衛門が、
 「関東魔法協会」の理事を務めていることも」

「はい、確かに伺っています」

「それで、一つだけ問題があるのだけど」

「?、なんでしょう」

「私達親子の個人的な関係は良好なんですけど、「関西呪術協会」と「関東魔法協会」の組織として
 の仲はあまり良くないんです。だから、木乃香と刹那君を麻帆良に向かわせるのは何とかなるんで
 すけど、私本人が木乃香達に付き添って麻帆良に行くのは正直難しいんです」

「ひょっとして…」

「はい、恭也君の考えている通りだと思います。お義父さんのほうは受け入れ態勢ができているんで
 すけど、問題はこちらのほうだね」

「つまり、「敵地」に相当するところへ長ともあろう者が単身で行くのはどうかということですね」

「はい、その通りです」

少々苦い表情で語る詠春。本来なら娘の入学式には参加したいが、組織の長として周りの反対意見を
押し切ってまで行ってしまうと後々しこりが残ってしまう。そうでなくとも木乃香をこの地から遠ざ
けることにも反対されているというのに。

その心情を察したのか恭也が話を切り出す。

「で、俺にやって欲しいこととはなんでしょうか?」

「ええ、恭也君には私の代わりに木乃香達を麻帆良まで送って欲しいんですよ。できれば入学式にも
 参加していただけるとなお良いです」

「は?」

そんなことを想像していなかったのか、つい間抜けな声を上げてしまった恭也。親族でもない他人の
自分が木乃香達の入学式に参加することなどしても良いのだろうか?そんな疑問が浮かんだ。

それを察して詠春は話を続ける。

「恭也君に依頼した理由はちゃんとあるんですよ。まず一点、麻帆良学園に着くまでの木乃香の護衛
 です。学園についてからは、お義父さんが責任を持って木乃香を護ってくれるそうですし、刹那君
 も一緒に行きます。正直今のところこの地より麻帆良のほうが安全なのですよ」

「まさか、まだ」

「はい、おそらく内部の者にいるでしょう。もちろん恭也君達のお蔭で現在は表立った行動はしてき
 ませんが。それならばいっそうのこと、この地から引き離そうと言う結論に至りました」

「そうですか」

詠春の表情を見て、つい慰めの言葉を発しそうになった恭也だが、ここはあえて、頷くだけにする。

「ということで、麻帆良までの移動中を狙ってくる可能性もありますので、その間を恭也君に護って
 もらえれば特に問題はないと思います。最も、「恭也君がそばにいる」というだけでたいていの者
 は、寄っても来ないでしょうからね」

それだけ恭也の二つ名「黒衣の剣神」はこの地を中心に畏怖と共に広がりを見せている。

「そして、二点目。実を言うとお義父さんが恭也君たちに会ってみたいと言っていましてね。お義父
 さんに事情を話したら、『是非「黒衣の剣神」殿とその仲間と会いたい』と」

この裏には詠春から近右衛門へ「木乃香の婿となるに相応しい人間」と囁いたという経緯もあったり
する。もちろん神ならぬ普通?の人間である恭也にはそんな裏情報が分かるはずもない。

「最後に三点目。恭也君が木乃香と刹那君の信頼を一番得ているからなんですよ。裏の事情を抜きに
 して、木乃香達にこのことを話したら「それだったら恭也さんと一緒に行く」と言い出してね」

ちょっと苦笑いの詠春。何せ、木乃香は詠春が麻帆良に行けないことに腹を立てることなく恭也を
名指しで指名したのだ。父としては恭也のことを認めているとはいえちょっと、複雑である。

「はあ、俺なんかでよければ木乃香達と一緒に麻帆良へ行きますが、出発はいつです?」

「事前準備などはこちらのほうで充分に手配できますので、出発は入学式の前日でいいですよ。予定
 では、昼過ぎにここを出て、麻帆良についたあと、そのまま学園長室へ木乃香と一緒に行ってもら
 います。その後、木乃香達は学園寮で準備をしてもらい、恭也君達にはお義父さんのほうに手配し
 て貰っている部屋で休んでいただきます。それで翌日の入学式の後、こちらのほうへ戻っていただ
 く予定となっています。後は、向こうについた後はお義父さんのほうから連絡があると思いますの
 で、それに従ってください」

「はい、わかりました。神楽とざからには俺から伝えますね」

「いきなりの不躾な願いですが、宜しくお願いします」





そして、出発の日

京都駅の前に出発組みとして恭也、神楽、ざから、木乃香、刹那が、見送りとして詠春とお供が数人
いた。

「それでは、木乃香、刹那君、知らない土地で新しい学園生活が待っていますが、くれぐれも注意し
 てくださいね。向こうにはお義父さんもいるから、なにかあったら直ぐにお義父さんに相談するん
 だよ」

「わかりました、詠春様」

「いややわ、お父様。そんなに気にせんといて」

素直に答える刹那に、心配性な父をなだめる木乃香。ただ、この後ちょっとした問題が発生する。

「だって、せっちゃんも一緒に行くし、何より恭也さんが一緒や」

と自慢げに話す木乃香だが、ふと恭也はその説明に疑問を持った。詠春は「しまった!」みたいな
顔をしている。

「木乃香」

「なあに」

「確かにこれから俺も一緒に麻帆良まで行くが、入学式が終わったら俺達は京都へ戻るんだぞ。だ
 から、それ以降は、刹那と二人きりだ」

「え?そうなん?」

恭也の予想通り、見事な勘違いをしていた木乃香はたった今知った事実についていけず、それを理解
したとたん、詠春の顔をすがるように見ていた。

刹那はちゃんとそのことを理解していたが、一緒に聞いていた木乃香が勘違いをしていたことには驚
いていた。

詠春も自分の説明不足がもとで木乃香が勘違いをしていたことに気付き、なんともばつの悪そうな顔
をしていた。しかたなく事実を木乃香に話す。

「そうだよ、木乃香。ごめんね、説明が不足していたみたいだ」

「いやや、うち、恭也さんと一緒にいたい」

当然、自分のあずかり知らない所でそんなことになっているとは露知らずの木乃香は、当然駄々を
こね始める。(と言っても木乃香の勘違いが原因でもあるのだが)

恭也はその様子を見て、現在は妹のような木乃香が悲しそうにしているのは耐えがたかったようで、
詠春に耳を寄せて、少し話する。それを聞いた詠春もそれならと納得がいったようで、うなずいて
いた。

木乃香はなんだろう?と思いながらも真剣な眼差しでその様子を見ていた。そして話が終わったで
あろう恭也が、木乃香にある約束をすることとなる。

「木乃香」

「何なん?お父様に何か話しているようだけど」

「ああ、そのことについてだ。木乃香、確かに俺は「今」は一緒に麻帆良にいてあげられない。ただ
 木乃香も知っての通り、俺は先生になるために勉強中だ、おそらく来年には先生になれるだろう。
 その時、木乃香のお祖父さんに麻帆良学園で教師をしてもらえるように話をしてみるよ。もちろん、
 今日、この後、麻帆良に行ったときにも会うのだからその時にも伝えておこう」

「ホントに?」

「ああ、俺が木乃香に嘘をついたことがあるか?」

と真剣な表情で問う恭也だが、

「ある!」

と力強く言われ少々へこむ恭也。周りの人間はどういうことか分かっているのか笑っていた。

「だって恭也さん、真剣な顔をして平気でうそをつくことあるやん」

どうやら、元の世界でなのは相手にやっていたことを木乃香にもしているようだ。

「でも、こういうときはうそをついたことがないから信じる」

と言ってくれた木乃香に感謝しつつ、その機嫌が治ったようでほっとした面々。

そうしているうちに時間が来たようで、構内アナウンスがかかっていた。

「それでは、皆さん、気をつけて行って来て下さい」

「はい、木乃香は俺達がちゃんと送り届けます」

「それじゃあ、行ってくるわ、お父様」

「行ってきます」

そういった後、恭也達は麻帆良へ向かうのであった。



約4時間後、新幹線を降りた後、電車を乗り継いで麻帆良学園へついた面々。

その圧倒的な広さに驚きながらも、事前に渡された地図をもとに学園長室へ向かう恭也達。

「いや、学園都市とはよく言ったものだな。まさに「街」として機能しているようだ」

「私も驚きました。あちらの世界にはないものですね」

「それも、この街全体に巨大な「結界」が張ってあるようだぞ」

「そのようですね」

木乃香と刹那が学園都市に純粋に驚いている中、恭也達は麻帆良の地の状況把握に努めていた。どう
やら、唯の「学園都市」では無いようで、要所に結界が張ってあり、侵入者を防ぐ役割も担っている
ようだ。

学園都市の広さに苦労しながら、それでも地図を見て、ようやく学園長室へ辿り着いた。ドアの前で
ノックをすると入室の許可が出たため、中へ入る恭也達。そこで見たものは

「ふぉふぉふぉっ!久しぶりじゃな、木乃香。それと初めましてじゃな、「桜咲刹那」君「神楽」殿
 「ざから」殿、そして「高町恭也」殿」

と、それぞれを見ながら挨拶をする学園長「近衛 近右衛門」。木乃香はすぐさま祖父である近右衛
門に駆け寄る。その間、恭也達はというと…、

「(なんだ、あの頭は!?あれで人間か?何か似たような妖魔を見たような記憶があるが)」

「(恭也様!それでは相手に向かって失礼ですよ。まあ、気持ちは分からないでもありませんが)」

「(我をその存在だけで驚愕させるとはなかなかやるな)」

と、本人に聞こえないような小声でとても失礼なことを話している面々。そして、ざからさんを驚愕
させるとは…。と考えていたのはその小言が聞こえていた刹那である。

そうしている間に、近右衛門と木乃香の再会が無事済んだみたいなので、気持ちを切り替えてこちら
も挨拶する。

「こちらこそ、初めまして。お世話になっている詠春さんからお話は聞いております。俺が高町恭也
 です」

「神楽です」

「ざからだ」

「桜咲刹那です」

「まあ、木乃香を連れてよくここまで来てくださった。道中、何か問題があったかの?」

「いえ、特にありませんでした。どちらかと言うと、この麻帆良についてからが大変でしたね。この
 地図がなければ、ここまで辿り着くことができませんでしたよ」

「ふぉふぉふぉっ!まあ、ここは、街としても機能しておるからの。他にはない広さをもっておるの
 じゃ。それでは木乃香よ」

「なんや、お祖父様」

「積もる話もあるだろうが、今日はまだこれから学園寮で準備があるじゃろう?既に、一緒に暮らす
 クラスメイトも部屋におるぞ」

「そうなん?それじゃ、うちらは寮のほうへ行くわ。いこう、せっちゃん」

「うん」

近右衛門が促すと木乃香も刹那を連れて学園長室を出て行った。万が一のこともあるので、恭也達も
一度学園長室を出る前に、再度戻ることを近右衛門に伝えてから木乃香達を追いかけた。

木乃香達を女子寮の前まで送った後、再度、学園長室へ赴いた恭也達。そこで待っていた近右衛門は
恭也達に改めて挨拶をした。

「今日は孫の木乃香の護衛についてもらい礼を言わせて貰うぞい、「黒衣の剣神」殿」

「いや、その呼び名は周りが勝手に言っているものなので普通に名前で呼んでください」

近右衛門に裏の名前で呼ばれた恭也は少し顔を顰めながらも、呼び名の訂正をした。

「すまんの。それでは恭也君でよろしいかな」

「はい、それで結構です」

「ふむ、どうやら婿殿の話どおりの青年のようだのぉ」

「婿殿?」

「詠春じゃよ」

ああ、と納得する恭也。

「それでは、俺達のことは一通り」

「うむ、聞いておる。なにせ、現場を木乃香達が見ておるしの。疑いようがないわい。後は、おぬし
 達の強さも人づてで聞いておるよ。あの神鳴流の天才に土をつけた初めての人間、それにその後の
 活躍もな」

「はあ、そうですか」

特に自分の強さの評価についてはそれほど頓着がないため、つい気の無い返事を返してしまう。それ
を見た近右衛門は、それを愉快そうに見ていた。

「ふぉふぉふぉっ。どうやらそんなところも、婿殿の言う通りじゃのう。あくまでも強さとは護る者
 がいてこその強さか」

「はい、少なくとも俺はそう考えています。確かに強いものと戦いたいという気持ちもありますが」

「そこの二人もそんな恭也君に惹かれたのかの?」

「そうですね。そうだと思います(それにあの反則的な「微笑」もですけどね)」

「うむ、確かにその通りだ(まあ「アレ」も一因だがな)」

神楽とざからは、言動も考えていることも一致しているようだ。恭也はそれを見てそうなのか、くら
いしか考えていない。相変わらずの鈍感振りである。

「それでの、話は変わるが、恭也君達、正確には恭也君と神楽殿にお願いがあるのじゃが良いかの」

「お願い、ですか?実を言うとこちらからもお願いがありまして」

「ふむ、何かの?まずそちらの話から聞くとするぞい」

「はいそれでは…」

恭也達は京都駅での出来事を近右衛門に話した。それを聞いて近右衛門は、これまた愉快に笑った。

「ふぉふぉふぉっ。そういうことなら、こちらからお願いしたいくらいじゃよ。もしよければ、準備
 が出来次第、教育実習生から始められるように設定するぞい」

「ありがとうございます。それでは今度はそちらのお願いをお伺いします」

「うむ、まず一つ、神楽殿は、結界に対する知識と力がとても優れていると伺っておるがどうかの」

「どうでしょうか?自分ではなんとも評価しにくいものですからね。なにせ、判断材料があまり無い
 のが現状ですから。知識については、数百年の積み重ねがありますからそれなりに自負しています
 が、こちらの世界で主流となっている魔法に関する知識がまだ不足しているので」

「それについては大丈夫かと思うがの。婿殿が見た限りでは、相当の物と判断しておるし」

「それでは一応、お話だけは聞いてみます」

「この学園都市全体に結界が張ってあるのは感じたかの」

「はい、それは入って直ぐに。それに要所に別の結界が張ってあるのも確認しております」

「ふむ、さすがじゃの、そのとおりじゃ。それで神楽殿が言う学園全体に張ってある結界を強化して
 いただきたい」

「結界の強化ですか?確かに、結界の属性さえ分かれば、既存の結界の強化、入れ替えが可能です」

「それでは、お願いしても良いかの」

「確かにあの結界であれば強化が可能です。後でその結界の中心へ案内していただけますか」

「後で案内しよう。それでは、もう一つのお願いじゃが、恭也君」

「はい」

「実を言うと、恭也君の噂を聞いて、是非戦ってみたいと言っている魔法先生がいての」

「魔法先生、ですか?ひょっとして扉の前で待っている」

「気付いておったか。さすがじゃの、それでは入ってきなさい」

「失礼します」

近右衛門に呼ばれて出てきたのは麻帆良学園内の魔法先生の中でも近右衛門に次ぐ力を持つ
高畑・T・タカミチである。

「彼は、この麻帆良で教師をしている高畑・T・タカミチ君。木乃香の担任になる先生じゃ」

「初めまして。さすがだね。気配を消してなおかつ認識阻害の魔法も掛かっていたはずなんだけど」

「高町恭也です。俺はもともと気配に敏感でしたが、神楽のお蔭で結界の中にいた者にも反応できる
 ようになったんですよ」

タカミチの疑問に答える恭也。

「で、先ほど学園長が言った件なんだけど、どうかな?」

「一つ、お尋ねします」

「なんだい?」

「なぜ、俺と戦いたいんですか?」

「それもつい先ほど学園長が言っただろう?」

なぜ、同じ事を聞くんだとばかりに聞き返すタカミチ。

「それが嘘だと感じたから再度、聞いているのですが?」

その言葉に目が鋭くなっていくタカミチ。

「どうして、と聞いてもいいかい?」

「はい、半分はカンなんですが、そう思った理由は、高畑先生の表情です」

「表情?僕のかい?」

「はい、そうです。俺は以前、同じような状況で、鶴子に仕合を申し込まれました」

「うん、それは聞いているよ。それに君は勝ったんだよね」

「そうなんですが、俺が言いたいのはその時の表情です。戦う者特有の「強い者と戦いたい」という
 気持ちが、鶴子からは感じられましたが、高畑先生からは感じられない。ようするに戦うにあたる
 理由が純粋な物ではないのです」

さらに話を続ける。

「おそらく、関西と関東での組織のしがらみが関わっているのではないのですか?俺は、戦う時は誰
 かを護るためか、純粋に戦いを欲する時と決めています。なので本気で戦おうと思っていない高畑
 先生とは戦えません」

これには、タカミチだけではなく近右衛門も驚いた。まさに恭也の指摘したとおりだったからだ。
図星を見事に疲れたタカミチは、近右衛門に目線で伝え、近右衛門もそれを了承するように頷いた。

「まいったね。まさに君の言うとおりだよ。簡単に言ってしまえば、『関西呪術協会』からやってく
 る最強と噂される「黒衣の剣神」、ようするに恭也君だね。その力を僕がこの場にいる時に図って
 おこうと他の魔法先生が言い出してね。学園長も僕も詠春さんから君のことを聞いていたからね。
 あまりそういった理由で試すマネはしたくなかったんだよ。それでもこちらには体裁というものが
 あってね。なんとか、君に受けてもらえるのであればという条件付で納得してもらったんだよ」

「そうですか…、そういうことでしたら、せめてこの場で「力」を開放しましょう。そうすれば今、
 この周辺で待機している方々も納得すると思いますしね」

恭也は静かな怒りを持っていた。正直こんなくだらない争いをしている原因となっている組織に対し
て。いくらトップの人間が出来ていようとも周りの人間がそうでなければ結局組織としては正常な物
ではなくなる。関西と関東のいがみ合いはまさにそれである。

「神楽、一応力を開放するだけだから問題はないと思うが」

「はい、分かっております。無駄な被害が出ない様簡易結界を張ります」

「すまないな」

「いいえ、恭也様の考えもわからなくもないですから」

神楽が学園長室の周りに結界を張っていく(物理被害を抑えるための結界)。その手際の良さを近右
衛門とタカミチは眺めていた。そして恭也が力の開放を始める。

「はあっ!」

ドン!とでも言うような感覚と共に恭也の体の回りには輝く何かが漂っていた。恭也のことを事前に
聞かされていた近右衛門とタカミチであったが、実際に目の当たりにすると驚愕することよりほかな
かった。

「これが、俺の力です。どうやら、「咸卦法」と言われているらしいですが、正直わかりません」

と言ってから開放をやめる。

「一応、これが俺の「力」です。と言っても、この力を使うことも早々ないのですけど」

「なぜじゃ?」

なぜ、これほどの力を使用しないのか純粋に疑問に思った近右衛門。

「あくまでも俺の力はこの小太刀であり、御神流です。本当は、俺にとってこの力は過ぎたものなん
 ですよ。ただ、護るべき者が危機に陥った時は迷うことなく使用します」

その真剣な目を見た近右衛門は、ふむ、と頷いた。

「今は、せいぜい、鶴子、ざからと仕合う時ぐらいですか、使用するのは。こればかりは無意識の内
 に使用してしまうので」

苦笑いで話を続ける恭也。

それを見た近右衛門とタカミチは笑い始めた。

「ふぉふぉふぉっ、そちらの事情はわかったぞい。こちらの都合で不躾な願いをしてしまい本当に
 申し訳ない。他の魔法先生も恭也君のアレで十分納得するだろうしの?高畑先生」

「はい、そうですね。それにしても、恭也君の力は凄いね。実をいうと僕も「咸卦法」を使うんだけ
 ど、今度お互い「咸卦法」を使って勝負してみないかい?新しい発見があるかもしれないよ」

「そういうことでしたら、日を改めて是非お願いします」

近右衛門とタカミチの配慮に感謝する恭也。その気持ちを込めて礼をする。


「それでは、この件はこれでおしまいじゃ。それでは次に結界のほうへ行くかの?」

「学園長、僕もついて行ってよろしいですか?神楽さんのお手並みを拝見したいので」

「ということじゃが、どうかの?神楽殿」

「はい、特に問題ありません」

「それでは、皆さんついて来てくれ」

そうして、神楽による結界の強化が無事に行われ、近右衛門が用意した部屋で一夜を明かした。



入学式当日

朝の鍛錬を終えて朝食と取った後、恭也達は木乃香を迎えるために女子寮のほうへ足を進めていた。
ただ、昨日の時とは状況が違うようで、入学式のためか、入寮者である女子中学生が数多くいて、
恭也達を見て何かを囁かれていたため、これなら神楽に任せるか、携帯で連絡すれば良かったと後悔
していた。


そんな後悔の中を漂っている恭也にようやく救いの女神がやってきた?

「恭也さーーん!(抱き)」

恭也の名前を叫びながらその胸に向かってダイブしてきたのは言わずと知れた近衛木乃香嬢である。
突然飛び込んできた木乃香を優しく受け止めつつも周りの状況を考え少々恥ずかしい思いをしながら
もその頭を撫でてやっている。

「木乃香、もう直ぐにでも行かないと、入学式に遅刻するぞ」

「いややわ、まだ十分に時間はあるわ。それよりも、友達を紹介したいんやけど」

と言いつつ、後ろからやってきたツインテールの少女を自分の傍まで呼んで、自己紹介させた。

「うちと同じ部屋で友達になった「神楽坂 明日菜」や。アスナ、この人が高町恭也さんや、それで
 こっちの女の人が神楽さんにざからさんや」

木乃香に紹介された少女は少々無愛想な表情で仕方がないといった感じで自己紹介する。

「神楽坂 明日菜よ」

そういった表情にいい意味でも悪い意味でも鈍感な恭也は特に気にせずに返事をする。

「高町恭也だ。そうか、君が木乃香と同じ部屋の友人か。木乃香はとても良い娘だ。仲良くやって
 くれると嬉しい」

そういって(ある意味悪い癖でもある)明日菜の頭を優しく撫でる。どうやら木乃香と同年代の女の
子は全てなのはのような扱いをしてしまうらしい。

それに驚いたのが明日菜だ。まさか頭をいきなり撫でられるとは思わず、恭也をキッと睨んで弾こう
としたが、目に映るのは恭也の優しげな表情。これからやろうと思っていた行動を取るに取れなくな
り、顔を少し赤くしながら木乃香に助けを求めようと視線を向けるが、そこにあったのは、人差し指
を口に持っていって物欲しそうにしている救援者。さらにその後ろにいつの間にか来たのか刹那も同
じような表情をしていた。(刹那は入寮の時と同時に木乃香から紹介された)

そうしてさらに困ってしまった明日菜だがどうやら、恭也が木乃香達の表情に気付いたらしく、明日
菜へやっていた手を外し、木乃香達を撫でていた。

困っていた明日菜だが、いざ手を退かされてしまうと何かが物足りないような気がしてしまい、別の
意味で困ってしまった。

そんな明日菜の心情も露知らず、一通り撫で終わった恭也は、麻帆良学園へ行くべく皆を先導する。

「それでは、刹那も来たことだし、そろそろ行くか」

そして、無事に木乃香達の入学式が無事に終わり、恭也達は木乃香と刹那に再会の約束をした後、
京都へ戻るのであった。



そして、さらに月日が経っていった…。


<おまけ?>

入学式の最中、そこにはとある呪いのため、「また」中学一年から始めることとなった「闇の福音」
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルがいた。その傍らには今年から自分の従者として仕える
こととなった「ガノノイド」絡繰 茶々丸の姿がある。

エヴァは始めはつまらなさそうにしていた(本来は参加するつもりは全く無かったが、近右衛門に
強制され仕方なく参加している)が、ふと自分の後ろの方、つまり保護者の席にいままでに感じた
ことのない「力」をいくつか感知した。注意深くその位置を特定すると、それらは全て一箇所に
集まっていた。一人は20歳くらいの黒髪の男性、もう1人はやはり20歳くらいの黒髪の女性、
最後の1人は17,8くらいの白髪の女性であった。

三人とも力を抑えているようだが、明らかに裏のものと思わせるような力を持っている。さらに
白髪の女性の気をさらに探ってみるとなんと妖気が感じられた。

エヴァがそれに驚いていると視線の先の三人が一斉にこちらに向くではないか。エヴァは自分で
出来る最高の演技で目をそらす。満月時なら自分の魔力も感じられるだろうが、今日はそれとは
程遠い月齢であり、いまは昼間、バレることはないだろうと思っていた。

あの程度の視線で感知するほどの人間、いや、一部は人間でないか。そんな者達が堂々とこの
麻帆良に来ていることにも素直に驚いた。近右衛門はなにをやっているのだろう?
そういえば、自分でも結界侵入を感知できなかった。

何者だ…。エヴァは茶々丸にあの三人を記憶させ、素性を調べることにした。

「ついでに近右衛門にでも聞いてみるか?」





あとがきのようなもの

ふうーーー、ようやく本編の前までの話が終了しました。
但し、今まで書き溜めした分を手直しして投降していたのでそれほど時間が掛かりませんでしたが、
本編以降は、各話の設定のみしか用意しておりません。ううっ、頑張らないと…(涙)

本来は、まだ「教育実習生 恭也」があるのですが、それは番外編で投降しようかと考えております
要望があれば、○○と恭也のからみを用意することが可能です。現時点では簡単な設定のみしかない
ので。

それでは皆様、本編でまた会いましょう。

黒衣の副担任 黒衣の副担任 第4話

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