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プロローグ 投稿者:SKY 投稿日:09/20-02:20 No.1317
――小さな頃から“音”がただ好きだった。それだけだ……――
夜の道、男が倒れている。
短い黒髪に白いスーツ。傍らにはバリトンサクソフォン。
男に意識はなく、安らかな表情の中にどこか険のある、そんな顔立ちをしている。
白いスーツは埃にまみれ、ところどころに血のような跡がついている。無数の細かい傷も目立ち、男が善良な一般市民ではないことを強調していた。
この男を見つけたとき、明石裕奈と大河内アキラは共に部活動で遅くなり、寮へと帰る途上だった。
――『永遠の苦しみを与えるんだ』
馬鹿げたルールの死のゲーム……。
どこにも逃げ場所などない――
「大丈夫ですか!?」
人が倒れている。
そう認識した途端、アキラは一も二もなく駆け寄っていた。
裕奈は夜道で男性に近づくことに少しだけ怯んでいたが、親友のアキラが真っ先に駆け寄ったのだ。自分も行かないわけにはいかない。
――もうすぐ終わるさ……
俺も……おまえも……光の無い世界で長い間あがき過ぎた――
倒れている男性は、少なくとも息はしているようだ。
むしろ、うなされているように息が荒い。
アキラは生きていることを悟ると、とりあえず声をかけながら男を揺り起こしてみる。
「大丈夫ですか!? 裕奈、救急車、救急車呼ばなきゃ」
――何を見張っているつもりだったかは知らんが、『中継』を嫌う俺の気持ちもわかるだろう? ここからのギグは、メンバーシップオンリーだ――
救急車を呼ぶというアキラの判断に、裕奈は内心ほっとしていた。
これで後は救急車が来るまで待って、救急隊員に任せてしまえばいい。
息を荒げ苦しげにしている男性には悪いが、自分たちにはその程度のことしかできないのだから。
――全てに牙をつき立てるというのならやってみるがいい。狼よ!!――
目が覚めた。
すぐ傍に人間が二人。一人は自分に触れるほどの近距離。
油断しすぎた。
疲弊しきって力の入らない右腕を強引に振るう。近距離にいる人間の襟首を掴み、引き寄せ。
そのまま地面に叩きつけその首をへし折ろうとしたところで、自分が掴んでいた相手が少女だと気づいた。
ミッドバレイ・ザ・ホーンフリークは、なぜこのような現状になっているのか露ほども理解できなかった。
【ブルージィ・マジック&クロス&ホーン】【プロローグ】
初めから思い出してみよう。
思い浮かんだものは、砂。砂の惑星。
そして、巨大な力を持つ天使の声。
『俺はナイフを集めている。大量によく切れるタフな奴らをな』
そして、あの方、ナイブズの実動部隊として、人を殺し続けていた。
逃げ出したかった。なんとしても、逃げ出したかった。
あんなモノの傍にはいたくない。一秒だっていられない。
だが、どこにも逃げ場所などない。
あの男がその気になれば、程なく本当にやってのける。人類の骨一本、血の一滴、肉の一欠片さえ残さぬ、完璧なる粛正を。
だから、逃げ場所などなかった筈だった。
『あいつを……あいつを斃す以外に……、もう生きる理由などないんだからな……』
復讐。
ナイブズには弟がいた。
ナイブズと同じ力を持つ、ヴァッシュという名の弟が。
そして、ヴァッシュに全てを奪われ、復讐をしようとしていた男が一人。
その男、ガントレットを利用すれば、俺は逃げられるかもしれない。そう思った。
『足跡はみんな……瓦礫の山で消してやるからさ』
『ガントレット!? いかん……!! あれを使うのか!?』
爆薬。
全てを吹き飛ばすために用意した。ヴァッシュ・ザ・スタンピードもチャペルも、ガントレットすらも吹き飛ばすために。
だが、先にガントレットが窮地に陥り、起爆させた。
そして、文字通り瓦礫の山が降り注ぐ瞬間。
巨大な光に呑み込まれた。
思い出すだけで震えが来る。あの恐ろしい力、あれに自分は巻き込まれたのだから。
身体が震える。恐怖の震え。がくがくと。
だが、不意に、その震えが自分だけのものではないことに気づいた。
叩きつけようとした少女が俺の肩の辺りで震えている。恐怖のためか目には涙が浮かび、唇はガチガチと歯がぶつかり合う音を立てている。
少し離れたところにいるもう一人の少女も似たような有様。だが、こちらはまだ理性の光が強い。
こんな少女を殺そうとしていたことに気付き、ただ自然に、掴んでいた少女の長い髪を優しく撫でていた。
「すまなかった。気が動転していたらしい」
立ち尽くし、今にも声をあげそうだった少女は唖然とした表情で固まっている。
その表情を尻目に、ようやく周りを見渡せるほどに心が落ち着いてきた。
そして、驚愕。
緑がある。
道はコンクリートで舗装され、その脇には樹が一定間隔で植えられている。
さらに驚いたのは少し離れた場所に見える巨大な森。こんなものが存在するなど。
「ここはどこだ? まさかジオプラントか……?」
「えーと、ジオプラント……? ここは麻帆良ですけど」
立っている少女がこちらの呟きを聞き取ったのだろう。律儀に答えを返してくる。
だが、マホラ? そんな場所は聞いたことがない。
「すまないが、龍津城砦という場所は知らないか? カルカサスでもいい」
「ごめんなさい、聞いたことないです」
「そうか」
どういうことだろうか。聞いたことがない? そもそもマホラなどというジオプラントが存在しているなど……。
そこで、一つの可能性が閃いた。
俺が最後に見た光景、あの光。
あの強大なエネルギーに呑み込まれ、なぜ俺は生きている?
傍らには愛用のサックス、シルヴィアまである。あれほど強大なエネルギーに呑み込まれて無事でいられるはずがない。
そして、閃いた可能性。
ワープドライブ。
あの時入っていた情報によれば、地球(ホーム)の科学者達はワープドライブを完成させていたらしい。恐らく、その技術もプラントを利用しているのだろう。
ならば今回も、プラントの力の暴走に巻き込まれて飛ばされたのではないだろうか。
もしもそうなら。
逃げ切れることが出来たのかも知れない。あの存在から。
「あの」
立っている少女が控えめに話しかけてくる。初めの警戒心は大分薄れているらしい。聴き取れる心臓の鼓動も穏やかなものになっている。
「なんだ?」
穏やかな心臓の鼓動?
ならば、この激しいビートを刻んでいる鼓動は誰の……。
「そろそろ放してくれないと、アキラが死んじゃいそうなんだけど……」
ふと、自分が髪を撫でた姿勢のまま抱き寄せていた少女が、これ以上もないというほど赤面しながら硬直している姿に気がついた。
「ここは、どこや……?」
最後に見た光景を思い出す。
爆薬で吹き飛んだらしいビルと、巻き添えを喰らわせかねなかった“大きい嬢ちゃん”。
そして、全てを呑み込む白い光。
失明したと思っていたが、それは一時的なものだったらしい。こうなると無駄に頑丈な自分の躰がありがたくなってくる。
目の前には巨大な十字架・パニッシャーが転がっている。細やかな疵こそあるが、破損はしていないらしい。
周囲が薄暗い。まだ視力は完全に戻っているというわけではないようだ。
「早く、ホーンフリークを仕留めんとあかんな……」
十字架を担ぎ、歩き出す。どこに奴がいるかはわからない。
だが、戦わないと。戦って、戦って、戦って。“トンガリ”を“あの男”の許へ連れて行かないと。
そうしなければ、ディセムバの孤児院を守れなくなる。
不意に、人の気配を感じた。
歩いてくる。
随分とのんきな歩調。どうやら奴らではなく、一般人が歩いてくるらしい。
“状況わかっとらんちゃうか!? ワイら、ここでドンパチやってんやで!?”
内心そう吐き捨てながらも、気配を探ることは忘れない。ホーンフリークがどこから襲い掛かってくるかわからないからだ。
「阿呆!! ここは危険や! さっさと逃げんかい!」
これが、天ヶ崎千草とニコラス・D・ウルフウッドの出会いだった。
後書き
初めまして作者のSKYです。
今回は無謀クロスをここまで読んで頂いてありがとうございます。
プロローグなので短めですが次回からはもっとボリュームを増やしてお送りします。
実に無謀なクロスオーバーですが皆様愉しんで頂けたらありがたいです。
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