時空を超えた友情 最終章 第51話 南の戦い 前編 投稿者:TAKUMA 投稿日:04/09-04:37 No.170
-Side NANOHA アースラ ミーティングルーム
防御プログラムを倒したエヴァ達はトラベリオンの補修と天道達への説明を兼ねて戦艦アースラへと来ていた。
一刻も速く『響鬼』の世界に行くとエヴァは言ってたが、
トラベリオンがオーバーヒートでメンテが必要だと言われ仕方なしに了承したのだ。
―――と言っても異世界での時間軸や流れが違うので多少長く居ても大丈夫だろうとスフィンクスも説明する。
例えば『なのは』の世界で2日過ごしても、『ネギま』の世界に戻る時、出発してから数時間後の時に戻れば大丈夫だという事だ。
それでは、事件が起きる前に戻れば―――となるが、何やら規制があって出来ない様である。
所謂、『タイムパラドクス』を起こさない為だと言う……………
そういう訳で此処―――ミーティングルームには、倒れたはやてと看病している守護騎士達、
先日の戦いで負傷したクロノ、ユーノ、アルフ、ザフィーラ以外の主要メンバーが集まっていた。
まずはエヴァ達が『ネギま』の世界での出来事を説明し始める。
リンディ「なるほど……それで貴女方は『アームドセイバー』と言う物を求めて時空空間を旅していた訳ですね」
出されたお茶にミルクを入れて啜るリンディが言った。
そんな彼女の飲み方に少し眉を顰めながらエヴァが説明を続け様とした時―――
なのは「あの……質問いいですか? さっきから聞いているエヴァちゃん達の世界での出来事は管理局は知らなかったんですか?」
その質問は正確に意図を突いていた。
なのはの質問に答えたのはリンディでは無く、エイミィだった。
エイミィ「じゃ簡単に図で説明するね」
そう言ってパネルを操作して画面に小さい丸を数個映し出した。
エイミィ「例えば、この一つ一つの丸が世界として、コレがなのはちゃん達の世界」
すると画面の中の1つの丸が赤く染まった。
エイミィ「そして……それらを包んで……コレが管理局が管理範囲」
そう言って画面は全部の小さな丸を囲む大きめの丸が描かれた。
大きめな丸の周囲に同じ大きさの丸が何個も出現した。
エイミィ「だけど、その周りには色々な世界があるんだ……彼女達はその中の1つから来たんだね」
なのは「うわ~ 何か凄いスケールが大きいんですね」
エイミィの説明を聞いて軽く目を回しそうななのは。
エイミィ「ま、確かにね……私らも『無限書庫』の記述が無ければ他の異世界の事なんて知らなかったし……」
リンディ「それだけ世界は広く……それこそ無限に広がってるのよ。 分かった? なのはさん」
リンディの言葉に「はい」と元気良く答えるなのは。
―――とその時、口を出したのは黙って聞いていた巧だった。
巧「だったら、俺達もその『異世界』って奴から来たって事か?」
エイミィ「はい。 私達管理局は『仮面ライダー』が実在する世界なんて知りませんし、
ましてそんな大事が起きているのなら管理局が見逃す筈がありません。
―――となれば、貴方方は外の異世界から来たとしか思えません」
大きめの丸の其々に『仮面ライダー555』『仮面ライダーカブト』『魔法戦隊マジレンジャー』『魔法先生ネギま!』と書かれていく。
すると巧が何かに気付いた。
巧「ところで……この『仮面ライダー』ってのは何なんだ?」
エイミィ「その事も全部調べてるよ。 コレを見て」
そう言ってパネルを操作するエイミィ。
すると画面が変わり景気の良い音楽が流れてきた。
ナレーター『新番組『仮面ライダー555』』
以前の雄介達の時同様にナレーターの声と共に『仮面ライダー555』のテロップが映し出された。
そして更に画面は次々と映しだしていく。
石の中から見えるファイズのベルト、オートバジンに乗る真理の姿とか……
ナレーター『全国各地で次々と奇怪な事件が起きた』
画面には死んで布を被せられた木場の姿や、真理が死体を発見した場面。
巧「おい……コレって……?」
巧が呟く中、映像は続いている。
ナレーター『人々が謎の死を遂げ、そしてまた人々が生き返る』
今度は死んだ筈の木場が蘇る場面が映り……
巧『バックを寄越せ』
ムッツリ顔の巧が画面に現れた。
巧「俺!? ―――ってこんなにムッツリして無いぞ」
ナイ「凄くムッツリしてるよ~」
メア「そうそう~」
反論する巧にナイとメアが容赦無く叩き潰した。
真理『変身!!』
今度は真理の変身シーン、そして巧の驚く顔にファイズの姿。
なのは「コレを見て、すっかり騙されたよ。 お兄ちゃんも「騙された!!」って忍さん達に賭け金を払ってたし」
巧「一体、何に賭けてたんだよ……」
なのはの爆弾発言で気落ちする巧。
確かにあの予告を見る限り、ライダーに変身するのは真理と勘違いするだろう。
事実、作者も騙されて楽しみにしてましたし……
真理『これがベルトの力……』
ナレーター『人が人を超えた時、目覚めた力が運命を変えた!! 日曜朝8時スタート!!』
そして画面はファイズ等のハイライトを映す中、巧が呟いた。
巧「……………日曜の朝8時は早いだろ」
一同『ツッコむ所はそこか!!』
生活がズボラな巧にとっては日曜8時は早い方に入る様だ。
一同のツッコミが華麗に決まる中、黙っていた天道がファイズの映る画面を見ている。
天道「ところで……俺の映像が出てないんだが?」
真剣に画面を見ていた天道の言葉に一同の視線が集まった。
その表情は何処か言い難そうな顔をしている。
エイミィ「スミマセン……実は『仮面ライダーカブト』は来年放映予定で……資料画像が無いんです」
申し訳無さそうにエイミィが答えると天道は「そうか」とそれだけ答える。
その後ろで巧が勝ち誇った笑顔を天道がマジ殴りで殴ったのは言うまでもない。
天道「世界は自分中心に回っているんじゃないのか……お婆ちゃん」
天の向かって語る天道を見た一同は心の中で「それは結局、『番組』の世界だし」とツッコんでいた。
―――とその時、ナイとメアが思い出したかの様に口を開いた。
ナイ「そうそう。 番組の世界で思い出したんだけど……」
メア「確か、ウルザードが研究していた『資料』の中に『魔法少女リリカルなのは』ってあったよ」
『ウルザード』という単語に反応する深雪を尻目に、なのは達が驚く。
なのは「『魔法少女リリカルなのは』って……私!? てれるよ~」
フェイト「なのは……いいなぁ……」
本気で照れているなのはに何処と無く羨ましがるフェイト。
リンディ「確かになのはちゃんが主役っぽいものね。 艦長の私が主役じゃ駄目なのかしら……」
エイミィ「最近は『艦長』って時点で主役は無理みたいですよ」
リンディ「……………」
エイミィの容赦無いツッコミに泣く泣くミルク入りお茶を啜るリンディ。
やはり何か気になるのかエヴァがリンディを軽く睨んでいる。
リンディ「な、何か……?」
エヴァ「……………ん」
リンディ「え?」
エヴァ「納得いかん!!」
リンディ「え、ええ!?」
エイミィが『魔法先生ネギま!』の事をなのは達に語る横でとうとうエヴァが堪忍袋の緒が切れた。
エヴァ「貴様、よもや茶にミルクと砂糖を入れるとは―――コーヒーじゃないんだぞ!!」
リンディ「で、でも……コレが私の飲み方ですし……」
エヴァ「大体、そんな事をすれば折角の茶の風味が損なうだろう。 そもそも、お茶と言うのはだな―――」
リンディ「は、はぁ……………」
激しく怒るエヴァの説教を大人しく帰いているリンディ。
その様子を苦笑いで見ているなのは達だったが―――
――プシュー
その時、ミーティングルームにシグナムとヴィータ、そして銀髪の少女―――リインフォースが入ってきた。
シャマルはザフィーラ達の看病に着いている為に来ていない様である。
なのは「ヴィータちゃん」
フェイト「シグナム」
其々、守護騎士達の名前を口にしながら駆け寄るなのはとフェイト。
だが、シグナム達の顔は何処か哀しげな表情をしていた。
何かあったのかと見合すなのはとフェイト。
すると気を使ったのかエイミィが口を開いた。
ちなみにリンディの説教はエヴァの『お茶自慢』として続いていた。
エイミィ「クロノ君達の容態はどうだったの?」
シグナム「問題無い。 全員、大きなダメージを受けているが命に別状は無い様だ」
ヴィータ「だけど、1週間は入院生活だとよ。 今も気を失ってるけど」
そう言って空いてる席に座るシグナムとヴィータ。
続いて、リインフォースも席に座ろうとするが、「はやてが心配」と言って退室する。
その後姿を哀しげな顔を見詰めるシグナムとヴィータは何も言わなかった。
リインフォースが退室してから約1分後、ようやくシグナムが口を開いた。
シグナム「今、1番の問題は主はやてでは無い。 夜天の書―――リインフォースだ」
一同『―――――ッ!?』
その場に居た者達全員がシグナムの発言に驚愕の表情を見せた。
シグナムとヴィータは夜天の書の防御プログラムが復活する前に完全破壊しなければならないと語った。
その為には『管制プログラム』―――リインフォースを破壊しなければならないと言うのだ。
フェイト「そしたら、シグナム達はどうなるの?」
シグナム「私達、守護騎士プログラムは切り離されているから残れるが―――」
シグナムが顔を背けた。
残れるのは嬉しい事―――だが、リインフォースは……と思うと辛い様である。
流石に話を理解できたマジレン組も無言のまま静寂が続いた。
その時、話に着いていけなかった巧はある事に気付いた……………天道が居ない事に。
-アースラ 休憩室
リインフォース「……………」
その頃、リインフォースははやての病室―――では無く、誰も居ない休憩室のベンチに座っていた。
休憩室と言っても、広い廊下の一角に自販機とベンチが置かれている簡易的な物である。
はやての元に居たかったのだが、何故か行く気にならず知らない内にこの場所に居たのだ。
本当は自分だって消えたくない―――だが、それでは主であるはやてや他の人達に迷惑を掛けてしまう。
その2つの想いが心の中でぶつかり合って葛藤していた時だった。
――ガランガラン
リインフォース「―――――ッ!?」
突然に横から聞えた何かが落ちる音に顔を上げた。
そして、音の方を見ると、其処には自販機の前で缶ジュースを取り出している天道が居た。
リインフォース「貴方は……」
天道「……………」
リインフォースが声を掛けたのを無視して、その場で缶を開ける天道。
一口飲むと、何処か難しい顔をした。
天道「添加物を多く含みすぎだな。 やはり、ジュースは100%じゃないとな」
そう言いながらも残すのは気が引けるのか中身を飲みながらリインフォースの隣に座る。
隣でゴクゴクとジュースを飲む天道をジッと見詰めるリインフォースに天道が気付いた。
天道「……………欲しいのか?」
リインフォース「あ、いえ……違います」
天道の言葉にリインフォースが顔を真っ赤にして慌てて否定して、再び顔を伏せた。
また2人の間に沈黙が流れる。
天道「悩んでいるのか?」
リインフォース「え?」
突然の天道の言葉にリインフォースが顔を上げて再び天道を見た。
天道は缶を弄びながら語り始める。
天道「そうでも無ければ、こんな場所に居ないからな」
リインフォース「……………たまたまです」
天道「……………そうか」
まだ人見知りなリインフォースが簡単に見知らずな人に相談する筈も無く、其処で会話が途切れた。
また再び沈黙が2人の間に流れた。
天道「お婆ちゃんが言っていた……二兎を追う者は二兎とも取れと……」
天道の言葉に一瞬理解不能だったが、それが直ぐに諺と言う事が分かった。
だが、天道の諺は何処か違っていた。
リインフォース「それを言うなら『二兎を追う者は二兎とも取れず』では?」
天道の諺を訂正する。
だが、天道は自信満々の態度を変えなかった。
天道「『自分の幸せ』と『他人の幸せ』……両方を得る為に妥協するなと言う意味だ」
リインフォース「……………―――ッ!?」
天道の言い回しの意味が漸く理解出来た。
彼は自分が消えて他人を救う事と自分が残りたい想いの事を言っているのだと―――
だけど、それは彼女にとっては身勝手な意見だった。
リインフォース「魔法の事を知らない貴方が何を言うんですか!!」
天道「確かに俺は『魔法』なんて物は知らない。 だが……壊す事が『簡単』なら、何故に考えない?」
リインフォース「え?」
天道「『簡単』な道を選ぶ前にどうして何か別な道を見つけない?」
リインフォース「それは―――他に方法が……」
天道「違うな。 他の方法を考えれば、それが難しい事は必須。 だから『壊す』という道に逃げた」
リインフォース「……………」
天道の言葉を黙って聞いているリインフォース。
天道「お婆ちゃんは言っていた……何事も遠回りすれば、必ず道は開かれると」
そう言うと立ち上がり、空になった缶を数m離れたゴミ箱に投げた。
缶は放物線状に飛んでいき、見事にゴミ箱の中に入る。
それを見届けると天道は踵を返して元の道を戻っていった。
残されたリインフォースは自販機の横に置いてあったゴミ箱と天道が缶を入れたゴミ箱を見比べた。
すると、側のゴミ箱は満杯で天道が入れた方は殆ど空だった。
リインフォース(二兎を追う者は二兎とも取れ……か……………)
先程の天道の言葉を噛み締め立ち上がり、天道が戻った方に歩き出した。
探してみよう、二兎とも取れる方法を―――それで無かったら……諦めよう。
その想いを胸に秘めて彼女は歩き出したのだった。
-アースラ ミーティングルーム
リインフォースが入ると何やら室内が騒がしかった。
なのは達が何やら白熱に激論しているのだ。
その奥では魔法関係にサッパリの巧は静かにコーヒーをフーフーしており、
天道はエヴァとスフィンクスの将棋を見ていた。
ヴィータ「あ、リインフォース!! 聞いてくれよ!!」
リインフォースの姿を発見したヴィータがはしゃいだ調子で駆け寄った。
ヴィータ「見つかったかもしれないんだ!! リインフォースが消えない方法が!!」
リインフォース「えっ!?」
驚いた様子に天道を見ると、天道は何事も無かった様に静かに将棋を指している。
どうやって、彼女を救う方法が見つかったのか―――それは数分前の事である。
一同は悩んでいた所、天道が戻って来て「なら、防御プログラムとやらを書き直せば良い」と素人意見を言ったのだ。
そんな素人意見に「破壊されて元の姿が分からないだが無理」とシグナム達が反論。
―――とその時、スモーキーが「それニャら、残ってるかも知れないニャ」と口にしたのだ。
元々、今回の『デストラクション・ファイヤー』は魔力の補給を目的にした為に罐に吸収したのだ。
だから『破壊』した訳でないので、一応残っている―――という訳なのだ。
ヴィータ「問題なのは……防御プログラムのコアをトラベリオンから出した後なんだよ」
ヴィータの言う通り、防御プログラムのコアを取り出した所でプログラムを書き換えないといけない。
その為には、豊富な知識と書き換えの間に抑えつける強大な魔力が必要なのだと言う。
なのは「リンディさん、管理局の人達じゃ無理なんですか?」
リンディ「う~ん……むずかしいわね。 管理局員も万能じゃないから……」
なのは「そうですか……」
リンディの答えにガッカリと落ち込むなのは。
エイミィがパネルを操作して動けそうな局員のリストを見てみる。
エイミィ「でも、知識が豊富な人ってそう中々居ないよ……それに彼女達が出発するまでに人材が揃わないし」
今整備しているトラベリオンの修理が終るのが遅くても翌日。
どう見ても人材が揃う余裕は無いのだ。
なのは「何処かに居ないかな~」
フェイト「物凄い知識を持っていて……」
シグナム「莫大な魔力の保持者……」
ヴィータ「そんな化け物みたいな奴が居るのかよ」
考え込むなのは、フェイト、シグナムに諦め半分のヴィータが呟いた。
その時、ずっと黙って存在を忘れられていた深雪が口を開いた。
深雪「化け物って……………あ」
クスクスとヴィータの言った『化け物』という単語を口にして何か思いついた。
そして、彼女の視線がある方向に向いた。
他の者達も深雪の視線を追って同じ方を見る。
其処に居たのはエヴァと天道を相手に将棋で余裕の表情をしているスフィンクスだった。
苦悩している天道が珍しく巧が将棋盤を見ると「あ、負けたな」と直ぐに分かった位に追い詰められている。
スフィンクス「この冥府神一の頭脳を誇る私に勝負を挑むなんて無謀なんですよ」
持ち駒を弄びながら自慢するスフィンクス。
流石は伊達に数千年以上も生きている訳ではなかった。
―――とその時、一同の視線が自分に集まっている事に気付いた。
スフィンクス「……………何ですか?」
スフィンクス「なるほど。 貴女方の言いたい事は分かりました」
なのは達の説明を受けて一息吐いた。
豊富な知識を持つ冥府神―――スフィンクスと『闇の福音』と呼ばれデバイス無しで莫大な魔力を持つ不死の吸血鬼―――エヴァンジェリン。
この2人が居れば防御プログラムの修復は可能の筈なのだが……当の本人は何か進まない顔をしている。
深雪「どうしたんですか?」
スフィンクスの様子に深雪が話し掛ける。
すると、スフィンクスは重々しく口を開いた。
スフィンクス「それは不可能に近いと思います」
スフィンクスの言葉が部屋内に静かに響いたのだった……………
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-Side NEGIMA 南の地下闘技場
一方その頃、入れ替わったレンゲルと真名は困惑していた。
真名「ど、どどどどうするんですか? 僕……どうなっちゃうんですか」
今まで見た事も無い泣き顔の真名に、
レンゲル「落ち着け。 奴を倒せば問題ないだろ」
こっちもまた珍しい冷静なレンゲルがトードを見ている。
真名「そ、それはそうですけど……………」
レンゲルの言葉に落ち着く真名。
深く深呼吸をした時に視界に2つの山が見えた。
真名「……………ゴクリ」
顔を真っ赤にして恐る恐る真名の手が山に伸びる。
しかし、その手が途中で止まった―――レンゲルラウザーによって。
レンゲル「妙な真似をすれば……殺す」
真名「ご、ごめんなさい!!」
そう言って伸びていた手を急いで戻した。
その後ろで雄介達が「馬鹿……」と呟いていた。
―――とその時、またしても何処からかサイクロプスの声が響いた。
サイクロプス「随分と余裕だな。 ゲームは始まっているんだぞ!!」
――ダァン
突然に聞えた銃弾に一同が反応し、その場を直ぐに離れた。
地面が少し弾け銃弾が当たった事を証明している。
威吹鬼「くそ、何処に居るんだ!!」
――ズダダダダダ
烈風のオートモードで弾幕を貼りながら警戒する威吹鬼。
だが、その隙にトードが『福音のハンマーホルン』を地面に叩き付けた!!
――ズゴゴゴゴゴ
地面を伝わって衝撃波が威吹鬼を襲う。
威吹鬼「うわぁぁぁぁぁ!!」
サイクロプスにばかり注意の行っていた威吹鬼が衝撃波の直撃を受け吹っ飛ぶ。
トード「相手はサイクロプスだけじゃないんだな」
イフリート「そう言う事だ。 はぁ!!」
イフリートがレンゲルと真名に向けて鉄球を放った。
迫り来る鉄球を軽々と避ける真名と何とか避けるレンゲル。
真名「凄い。 この身体、軽くて動き易い!!」
レンゲル「何だ、思うように身体が動かん」
自分の跳躍力の高さに驚きを隠せない真名。
一方のレンゲルは身体能力の低下に驚きを隠せなかった。
1年のブランクがある上に元々一般人だった睦月の身体は、日頃から鍛えている真名に比べて体力が低いのだ。
それをライダーシステムが何とか支えているという感じである。
レンゲル「日頃の運動不足だな」
真名「すみません……」
レンゲルの愚痴に真名が素直に頭を下げた。
ライダーとしての戦いの後、普通の生活に戻った睦月は特に鍛えていなかったのだ。
―――と言っても、ライダーだった時も特に鍛えていたと言う訳でもないのだが……
レンゲル「お前は隠れていろ」
真名「は、はい」
流石にライダーの能力を取れば一般人の真名(睦月)は戦力外だった。
銃器類を持っているのだが、扱い方も知らないのだ。
レンゲル「いくぞ!!」
レンゲルラウザーを構えて地を蹴る。
向かう先は攻撃して来たイフリートだった。
レンゲル「はぁ!!」
イフリート目掛けてレンゲルラウザーを振るう。
だが、イフリートは棍棒でレンゲルラウザーを捌いて避けた。
次々とレンゲルが攻撃を続けるが一向に当たらない。
縦、横、突きと3段攻撃も型がなってないのか、ダメージを受けていなかった。
レンゲル(やはり、棒術は苦手だ―――)
レンゲル(真名)が心の中で舌打ちをする。
本来は射撃が得意分野の彼女は剣や棒とかは滅多に使わない。
使ったとしても素人よりも少し上と言った感じだ。
唯でさえ動き難い上に苦手の棒術でレンゲルもタジタジである。
―――とその時、真名の声が聞こえた。
真名「真名ちゃん、カードを使って!!」
レンゲル「―――――ッ!?」
真名の声に気を取られた一瞬にイフリートに吹っ飛ばされた。
レンゲルラウザーを杖にヨロヨロと立ち上がる。
そして、腰のカードホルダーの存在に気付いた。
レンゲル「これか」
そう言って適当なカードを引くレンゲル。
だが、カードを片手に戸惑っていた。
真名のアドバイスで引いたのは良いが、その先が分からないのだ。
イフリート「ふははは!! 隙だらけだぞ!!」
戸惑ってるレンゲルに向けて棍棒を振り上げる。
レンゲルラウザーで受け止めようとするが右手のカードが邪魔で両手で握れなかった。
振り下ろす棍棒に舌打ちするが、咄嗟にカードを投げる!!
イフリート「うっ!!」
カードは一直線にイフリートの眼に刺さり、怯ませる事に成功した。
しかも、カードはアンデットが封印されている為か燃えておらず刺さったまま。
棍棒を落とし、苦しむイフリートの眼からは血が流れていた。
何とかカードを抜き去りその場に捨てた。
レンゲル「そうか、こういう使い方か」
カードの間違った使い方を覚えるレンゲル。
ちなみにこの様にその辺の物を何でも投げる術を『乱定剣』という。
―――と間違った使い方に真名が軽くコケた。
真名「違います!! レンゲルラウザーのリーダーにカードを通すんです!!」
レンゲル「レンゲルラウザー……は、コレか。 リーダー、リーダー……リーダー?」
真名「『溝』の事です。 刃の反対の場所にある!!」
レンゲル「刃と……反対……コレか!!」
ようやくスラッシュ・リーダーの存在に気付く。
―――と同時に血が止まったイフリートが再度、棍棒を握った。
イフリート「貴様……よくもぉぉぉぉぉ!!」
片目を潰されたイフリートが怒り狂い棍棒を振り回す。
その一撃一撃は大振りで大した事が無いので今のレンゲルでも十分に避けられた。
避けながらカードホルダーから1枚カードを引きラウズする。
――〝SMOG〟
機械音声と共にレンゲルラウザーから物凄い勢いで煙幕が放たれた。
黒い煙幕はイフリートを直撃して片目になった彼の視界をゼロにする。
好機とレンゲルが距離を取ろうと踵を返した時だった―――
――ダァン
レンゲル「―――――ッ!?」
突然の銃声に俊敏に反応したレンゲルが地を蹴り転がる。
――ダンダンダンダンダン
次々と聞える銃声と共にレンゲルの転がった後の土が跳ねていた。
避けながら銃弾の発射地点を割り出して物陰に隠れるレンゲル。
無駄だと悟った銃弾は直ぐに止んだ。
余計な弾を打ち続けたら場所が確定されるからだ。
レンゲル「しまった、奴の存在を忘れていた」
舌打ちするレンゲルが恐る恐る物陰から顔を出そうとした時―――
――ドゴォォォォォン!!
飛んで来た『マグマ火炎弾』がレンゲルの隠れていた岩を破壊した。
吹っ飛ぶレンゲルが何とか着地する。
イフリート「今度こそ覚悟しろ―――!!」
身体の口の部分に炎が溜まって行く。
避けられないと判断したレンゲルは適当なカードを引いてラウズした!!
――〝―――――〟
イフリート「死ねぇぇぇぇぇ!!」
機械音声がイフリートの声が掻き消され何のカードか分からない。
何も起こらないカードを確認する前に身構えるレンゲル。
―――もう駄目だ!!と思った次の瞬間、『マグマ火炎弾』が放たれた!!
――ゴォォォォォ!!
物凄い勢いで燃える火炎弾がレンゲルに迫り来る!!
避けられないと身構えた時だった―――
――バシュゥゥゥゥゥ!!
突然に横から飛んで来た白い糸の様な物が烈火弾を弾き飛ばし壁に引っ付いた。
パチパチと壁で燃える糸を見たレンゲルが飛んで来た方を見返した。
其処に立っていたのは蜘蛛をモチーフにした怪人の姿があった。
レンゲル「敵か!?」
レンゲルは何とか立ち上がり現れた怪人に身構えた。
だが、怪人は再度攻撃する様子は無い。
すると怪人の姿が変わり人間の男の姿になったのだ。
???「安心しろ。 僕は君達の味方だ」
男はそうレンゲルに告げる。
その男の姿を見た真名が徐に立ち上がった。
真名「嶋……さん……」
呟きながら男の名前―――タランチュラアンデットこと嶋の名前を呼んだのだった。
続く。