第2話 書き換えられたJ 投稿者:TWIN,S 投稿日:04/08-03:59 No.47
ネギ達一行は学校を案内しながら高台へ移動していた、天音は相変わらず始にべったりで、夕映は虎太郎に質問攻めの最中であった。
天音と楽しそうにお喋りしている始を見てネギは安心した面持ちで歩いていた。
「(やっぱり気のせいだよね、あの人は悪い人には見えないし)」
「(油断は禁物だぜアニキ、タカミチが言っていたんだ気をつけたほうが良いぜ)」
自称ネギの使い魔であるカモと聞こえないように始の事について話し合っている内に一向は目的地である高台へと到着した。
ネギま!剣(ブレイド) 第2話 書き換えられたJ
「どう始さん、ここからなら学校の殆どが見渡せるんだよ。」
「この学校てこんなに広いんだ~!」
あまりの広さに感動する虎太郎と始だったが天音の説明は続いた。
「それと学校に来て初めて気づいたんだけど、あの樹がすごく大きいんだよ。」
天音は高台から見える世界樹を指さす。
「……!!」
世界樹を見た瞬間、始の顔は穏やかな笑顔から険しい表情に変わった。
世界樹を見ている始は今より遥か昔の記憶が見ていた。
大きな樹の下に立つ二つの人影、片方は人の形をしているが姿はあまりにも異形な存在、もう片方は相川始であった。
しかしその時、彼は相川始ではなく、他の者から人間の祖と呼ばれていた者。
「始さん…始さん!!」
「……そ・そうだったのか……此処は…。」
心配している天音を余所に始は何かを呟こうとした、しかしそれを遮るかのように始達の前に何者かが天音たちの前に降り立った。
「きゃあ!!」
「な・何ですか、この人達は!!」
「(な・何者ですか、魔族…いや、こんな魔族見た事がない……。)」
夕映は人と呼んだが、明らかに人とは違う異形な存在であり、良く見ると所々が地上にいる動物を連想させ全員が腰に同じ形のベルトをしていた。
「一体何者なのか?」と考えていたネギに代わって虎太郎が引き攣ったような悲鳴を上げながら答えた。
「な・なんでこんな所にアンデッドが?」
「あ・アンデッドですか、そ・それって本に書いてあったあの…ですがアンデッドすでに居なくなった筈じゃ……。」
突然のアンデッドの襲来に驚く中、始は一歩前に進み出て3体居る内の1体に話しかけた。
「お前達は封印された筈だ、何故こんな所に居る?」
するとアンデッド達は奇妙な聞いた事も無い声を出し始めた、誰もが鳴き声の意味が理解できない中、始だけがこの声を理解していた。
「(見ての通り、我々の封印は解けたのさ。 そして此処は知っての通りバトルファイトを行う者にとっての最後の地だからな…。)」
「(それよりも今は神聖なるバトルファイトを放棄した貴様だ!! いくらジョーカーと言えどもバトルファイトを放棄した罪は重い、封印させてもらう!)」
ラクダを連想させるアンデッドが始に向かって飛び掛かるが避けて逆に蹴りを放つ、しかし始の蹴りにアンデッドは動じる事も無く逆に足を捕まれて放り投げられてしまった。
「始さん!!」
始の下に向かおうとする天音の前に今度はサメを連想させるアンデッドが立ち塞がり、天音に向かって腕についている刃を振り下ろそうとした。
思わず身を屈める天音、しかしアンデッドの一撃は天音には届かず逆に天音の背後から飛んできた光の矢がアンデッドをよろめかせていた。
天音の背後には杖を構えたネギが立っていた。
「ね・ネギ先生…。」
「まずいぜアニキ。 いくらあの子の危機だからって魔法を使うのは。」
「で・でも仕方ないよ、このままじゃ栗原さんが……。」
「な・何なんだよ……オコジョが喋ってるよ……。」
ネギの行動に驚いてる天音と虎太郎を気にしつつ夕映とカモの制止を振り切り、ネギは怯んでいるサメのアンデッドに杖を向けて構えた。
「ラス・テル マ・スキル マギステル」
「闇夜切り裂く(ウーヌス) 一条の光(コンキデンス・ノクテム) 我が手に宿りて(イン・メア・マヌー・エンス) 敵を喰らえ(イニミークム・エダツト)」
「白き雷!!(フルグラテイオー・アルビカンス)」
ネギが放った雷はサメのアンデッドに届くはずだった、しかしサメのアンデッドの前に今度は鹿を連想させるアンデッドが現れた。
鹿のアンデッドは角から雷は放ちネギが放った雷はアンデッドの放った雷によって掻き消されてしまった。
「そ・そんな馬鹿な、あ・兄貴の呪文を掻き消しやがった!!」
呪文を掻き消された呆然としているネギに対し、鹿のアンデッドはサメのアンデッドを見ると顎を動かした。
その先には身を屈めていた天音を指していた、理解したサメのアンデッドは天音の下に向かったがそこに立ち直った始が立ち塞がった。
「彼女に近づくな!!」
アンデッドに向かって拳を放とうとするが、その前にアンデッドの一撃を喰らい天音の前に倒れこんだ。
「(どうする、このままでは皆が……)」
立ち上がりながら策を考える始、その時起き上がった始に近づいた天音は今にも泣き出しそうな顔をしながら呟いた。
「始さん…例え始さんが何者でも、私は始さんの事が好き…だから…。」
天音の言葉を聞き、始は彼女の頭を軽く撫でると優しい笑みを浮かべて答えた。
「……ありがとう、天音ちゃん……(……忌々しい姿だろうと構わない、今は天音ちゃんを守る為に……)」
「うわぁ~~~~!!」
叫び声と共に意を決した始は自ら隠していた力を解放した、かつての真の自分、殺し屋と恐れられていた存在。
天音の前では決してなりたくなかった異形な姿に戻るはずだった、しかし…。
「……な・何故だ、何故ジョーカーに戻らない……」
「な・何が…始さんに何が起こったんでしょう?」
「……ネギ先生、あれを!!」
「こ・これは……!!」
夕映に指摘された一同は始の腰についている物を見て驚愕した、彼の腰にはアンデッドと同じベルトが付いていたからだ。
「な・何故俺にアンデッドの印が……」
自分でも理解できない始に対し、アンデッドの一人が始に語り始めた。
「(どうやら、心だけではなく体まで同化してしまったようだな、ジョーカー……いや、ヒューマンアンデッド!!)」
「(しかし、このまま放ってはおけない、そこに居る人間共々始末してくれる)」
互いの獲物に向かって牙を向けるアンデッド達、その時ネギ達の背後から黒い人影が飛び上がった。
黒い人影はネギ達の前に居る鹿のアンデッドに飛び蹴りを喰らわせると、その反動を利用し今度は始の前に居るサメのアンデッドを殴りつけた。
「こ・今度は何ですか?」
「あ・あれは!!」
「……お・お前は…。」
事態が飲み込めない夕映に対して、虎太郎は黒い人影を見て驚きの声を上げ、始は絶句した。
黒いボディーに銀色の胸と真っ赤に輝く大きな目、バトルファイトにおいて伝説とまで呼ばれた者。
「……カリス…。」
始達の前にはカリスと呼ばれたアンデッドが降り立っていた。