第4話 人間の力 投稿者:TWIN,S 投稿日:04/08-04:00 No.49
気がついたネギは自分がベッドに寝ていたのを確認してから起き上がった。
「此処は…?」
自分が住んでいる部屋と同じ間取りではあったが置かれている家具が違う、そして至る所に本棚がありその本棚に入り切らない本が散りばめられている。
ネギま!剣(ブレイド) 第4話 人間の力
「気がつきましたかネギ先生、此処は私とのどかとハルナの部屋です。」
「ゆ・夕映さん達の!」
「はい、本来なら明日菜さん達の部屋にお送りしようと思ったのですが、なにぶん皆様もいらしたので…。」
夕映が見た先には出されたお茶を飲んでいる天音、疲れているのか黙り込んでいる始、そして興奮気味の虎太郎が座っていた。
「すごい、此処が女子寮か…どんなに頼み込んでも、こんな場所は絶対取材させてくれないからな……。」
「叔父さん止めて、見ているこっちが恥ずかしい…。」
「まったく…バカです…。」
女子寮入れた事に感激している虎太郎に呆れている天音を見て夕映は一言呟いた。
「そ・それで、どうして僕達は夕映さん達の部屋に?」
「それはですねえ、あのアンデッド達が引き上げた後、ネギ先生は急に倒れちゃったんです。」
「多分、魔力の消耗し過ぎだろう、遂最近は特訓が忙しくて休んでなかったからな。」
「そして、騒ぎが大きくなりそうだったのでとりあえず隠れる事にしたんです、因みに寮までは虎太郎さんの車で来ました。」
夕映の話を聞いて一先ず納得したネギであったが、一つ不安があったので尋ねた。
「で・でも、のどかさんはまだいいですけど、ハルナさんが戻ってきたら…。」
「ハルナの事でしたら大丈夫です、ここの所会報に載せる漫画を連続で落としているので漫研に監禁…もとい缶詰にされてますから当分帰って来れません。」
「そ・そうですか……あ・あの、相川さん。」
ネギに呼ばれたので顔を上げる始、返事に応えてくれたのを確認するとネギは話を続けた。
「ちょ・ちょっと聞き辛い事なんですが……あなたは何者ですか?」
「そ・それは、始は僕の姉さんの店で働いている、カメラマン志望のアルバイトで…ちょっと無愛想な所もあるけど。」
「始さんは悪い人じゃないです。」
あからさまに怪しい態度で必死に始を庇おうとしている虎太郎と天音を制して始は語った。
「君の察しの通り僕はあいつ等と同じアンデッドだ。」
始の一言で部屋全体に凍りついた空気が流れた、その中でカモが始に問いかける。
「お・オメェがあの連中の仲間だとしても、あいつ等とは似ても似つかねえじゃねえか、一体オメェは何アンデッドだ?」
「今の俺か……今の俺は俺の知っている人の言葉を借りれば、俺は君達の先祖と言えるだろう。」
「ご・御先祖様…ですか、ま・まさかあなたが本に書いてあった人間の…」
自分達の祖と言える存在に驚く夕映であったがカモの質問は続く。
「それで何で人間のアンデッドが魔法を使えるんだ?」
「魔法…あの力の事か、あれは元々ヒューマンアンデッドの力だ。」
「ネギ君だったか、君があの力を使えるのはヒューマンアンデッドの力をより強く受け継いでいるからだろう。」
始の説明によるとアンデッドは自分の力以外にも自然の力の一部を利用する者達がいた、先程戦ったディアーアンデッドが雷を使う様にヒューマンアンデッドは自然の力の殆どを扱う事が出来たらしい。
「ヒューマンアンデッドは地上の覇者になった時全ての者が幸福になる世界を望んだ、その為に自分の子孫達に力は不要と思い封印させたのだろう。」
「君が唱えていた……詠唱と言うのか、あれは多分封印された力を呼び戻す為の行いだと思う、それ以外にも自分の力を高めたりする事も出来るけど今はまだ完全には使いこなせないようだ。」
「魔法が人間の祖の力…。」
魔法の秘密を聞いて呆然とするネギであったが今度は虎太郎がネギに問いかけてきた。
「そう言えば君はさっき杖から雷を出したり、喋るオコジョがいたり、君はもしかして魔法使い?」
「え・えと…そ・それは…」
何とか誤魔化そうとするネギであったが時すでに遅し、あれだけ派手に魔法を見せていて誤魔化す事など到底出来なかった。
「やっぱりそうだ、仮面ライダーの次は魔法使い、ノンフィクションライターとしての直感が新たな謎に導かせたんだ。」
「やった~、これでまた本が作れる、白井虎太郎4年の沈黙を破り復活だ!!」
「や・止めて下さい~、ばれたら僕オコジョに…。」
「まったく…バカです…。」
新たな謎に直面し有頂天になる虎太郎と必死に懇願するネギを無視して夕映は始に尋ねる。
「使いこなせない…さっきから聞いているとまるで他人の事を話してるみたいです、あなたは本当に……。」
しかし夕映の質問はネギの携帯電話によって遮られてしまう、同時に始は立ち上がり血相を変えて部屋を飛び出した。
「もしもし…。」
誰かと尋ねる間も無くネギの携帯から興奮気味の少女の声が発せられる。
「ネギ君、今何処に居る!」
「も・もしかして、木乃香さんですか?」
ネギの問いに答える事無く木乃香は喋り続ける。
「エヴァちゃん家から出たら、けったいな連中がやって来て…長瀬さんや龍宮さんが来たけど大変なんや。」
必死に助けを求める木乃香から割り込んで今度はエヴァンジェリンが怒鳴り込んできた。
「坊や!! 貴様、特訓サボって何処をほっつき歩いている、さっさと来い!!」
「師匠、わ・わかりました、すぐに向かいます。」
ネギは電話を切ると杖を掴みベランダから飛び出す、天音が驚いて窓を覗くがネギの姿は既に見えなくなっていた。
「あ・あれ、せ・先生は!?」
「杖に乗ると姿が見えなくなるらしいです、それより私達も行きましょう。」
「え!? ど・何処へ…ちょ・ちょっと…」
夕映は強引に虎太郎を車まで引っ張ると半ば強制的に運転席に乗り込ませ車を発進させた。
ネギがエヴァの家に向かう途中、エヴァの家の方向に向かって走る1台のバイクを見つけた。
「あれは、相川さん…」
ネギは高度を低くしてバイクの横付けにする、すると始は脇目も振らずにネギに話しかけた。
「アンデッドが出たんだろう。」
何故分かるのか、と言う疑問を問う前に始は話を続ける。
「アンデッドにはアンデッドを感じ取ることが出来るんだ、急ぐぞ。」
「は・はい!」
二人は互いに速度を速めて麻帆良の森へと向かった。