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第5話 カリス 投稿者:TWIN,S 投稿日:04/08-04:01 No.50

麻帆良学園、魔法使いが作った巨大な学園都市には空想の産物とも言える物の怪が度々出現する。



そこで一般の生徒および市民への被害を防ぐ為、学園側は学校の秘密を知る一部の教職員と生徒達に秘密裏に物の怪を駆除する仕事が与えられている。



ある者は学園への善意で、ある者は報酬目当てで、この者達の御蔭で今の所一般の者達への被害は出てはいない。



それは、その者達が確実に学園に出没する物の怪の駆除に成功しているからである。



しかし……





ネギま!剣(ブレイド) 第5話 カリス





「氷爆!!(ニウィス・カースス)」



詠唱と共に投げた魔法薬が発動し凍気と爆風が発生し、異形なるモノ達を飲み込んだ。



「やった!!」



巨大なハリセンを持ったツインテールの少女は魔法が炸裂したのを見て歓喜の声を上げたが、爆風をかき分け巻貝の祖たるシェルアンデッドが槍状の右腕を構えて少女に襲い掛かる。

そこに刀を持った少女が割って入り、刀でアンデッド右腕を抑えた。



「刹那さん!」

「明日菜さん、今です!!」

「ええい!!」

「神鳴流奥義・斬岩剣!!」



刹那の言葉を理解した明日菜は巨大なハリセンでシェルアンデッドの頭を横殴りにし、それに合わせて刹那の奥義が決まる。

しかし硬い装甲を持つシェルアンデッドには大して効いた様子は無く、今度は標的を刹那に変えて槍状の右腕で攻撃し刹那は必死で攻撃を捌く。



「刹那!!」



アンデッドの攻撃を防いでいる刹那を加勢すべく、真名は持っていたライフルをシェルアンデッドに向けたが蛙の祖たるフロッグアンデッドが阻止する。



「貴様、邪魔だ!!」



真名はフロッグアンデッドに向かいライフルを放つがフロッグアンデッドは木から木へと飛び移り真名の放つ銃弾をかわしていく。

フロッグアンデッドが木々を飛び回る中、その下をアルマジロの祖たるアルマジロアンデッドが身体を丸めると背に背負っていた弾丸を一斉に発射する。

その時不規則な軌道を描きながら飛ぶ弾丸に一部が木乃香が隠れていた木に向かって飛んできた。



「お嬢様、お逃げください!」

「木乃香!!」



アンデッドの戦闘で助けに行けない刹那に変わり明日菜が木乃香の前に立つ、しかし弾丸を避けられないと思った明日菜は木乃香を庇う為そのまま立ち塞がった。

明日菜が覚悟を決めた瞬間、すざましい爆音と共に緑色の髪の少女が明日菜の前に舞い降りる。



「…弾丸軌道予測…迎撃します…」



無表情で機械的な喋り方の少女の瞳が一瞬輝くと彼女の前を飛んでいた弾丸は爆音と共に弾け飛んだ。



「あ・ありがとな、茶々丸さん。」

「いえ、構いません…それより木乃香さんはもう少し奥に隠れてください。」



木乃香に隠れるように指示する茶々丸はアルマジロアンデッドと対峙する。



一方エヴァは鷹の祖たるホークアンデッドとの空中戦を挑んでいた。



「魔法の射手!!(サギタ・マギカ)」

「氷の17矢!!(セリエス・グラキアリース)」



魔法薬を触媒とした氷の矢はホークアンデッド目掛けて飛んで行く、しかしホークアンデッドは氷の矢を掻い潜りエヴァに向かってカギ爪を振るおうとする。



「くっ…氷盾!!(レフレクシオー)」



とっさに張った氷の盾で防ぐ事が出来たがホークアンデッドの一撃は氷の盾を砕き、砕けた衝撃でエヴァとホークアンデッドは地上に向かって吹き飛ばされた。



「マスター!!」



アルマジロアンデッドと戦っていた茶々丸は戦いを中断し空中へ飛び出す、そして落下してくるエヴァを受け止めて再び地上に降り立った。



「大丈夫ですか、マスター。」

「ああ、助かったぞ茶々丸。」

「マスター…現在の戦況は長瀬さんが戦力から外れた事も有りこちら側の圧倒的不利です。」

「ああ、まさかあの様な事態になるとはな…。」



本来ならばこの戦列に加わるはずだった長瀬楓だったがアンデッドの中に蛙のアンデッドであるフロッグアンデッドの姿を見た途端、卒倒してしまい戦線離脱してしまったのだ……合掌。



「それよりどうするのよ、あっちはまだ余裕な感じだけど…。」

「そんな事は分かっている、坊やは一体何をしている!!」



不利な状況に対する苛立ちをネギにぶつけているエヴァに対して茶々丸は冷静に答える。



「先程、ネギ先生に連絡を入れたのが3分15秒前でしたのでこちらに到着予定時間は5分…マスターこちらに何者かが接近してます。」

「何、坊やか? それにしては速過ぎるぞ。」

「いえ、違います。 エンジン音が聞こえます接近してくる者はおそらくオートバイに乗ってくるかと…」



茶々丸が言い終えないうちに彼女達の頭上を1台のバイクが飛び越えた。

彼女達はまだ名を知らないがカリスが駆るバイクは飛んだ勢いを利用してフロッグアンデッドに体当たりをして吹き飛ばす。

フロッグアンデッドを吹き飛ばしたカリスはバイクから飛び上がりシェルアンデッドに向かって飛び蹴りを喰らわす、飛び蹴りを喰らい仰け反るシェルアンデッドにカリスアローで斬りつけた。

幾度と無くシェルアンデッドを斬りつけた後唯一硬い装甲に覆われていない顔の部分目掛け刃を突き刺す、それが止めとなり腰の部分のアンデッドの印が開く、そしてカリスは直接カードを刺し封印した。



「う・嘘、消えてしもた!」

「イヤ、アイツが持っているカード、おそらくあれに封印されたのだろう。 それより何者だ、アイツは!?」

「分かりません。 ですが戦闘開始当初からあの怪物達の身体に不明なバイオリズムが確認できます。」

「そして今戦っている黒い怪物からも同じモノが検出されてます。」

「なんだと、そうするとアイツは今戦っている奴等と同属と言う事か?」

 

エヴァ達の会話を尻目にカリスはアルマジロアンデッドと戦っていた、アルマジロアンデッドは再び身体を丸めると背に背負っていた弾丸を一斉に発射する。



「あぶない! 隠れろ!!」



慌てて木陰に隠れる明日菜達とは裏腹にカリスは銃弾の雨の中を走り抜ける、途中カリス目掛けて飛んでくる銃弾もあったがカリスアローで弾き落とす。

アルマジロアンデッドに接近したカリスはベルトのバックルの部分を外しカリスアローに取り付け右腰のホルダーからハンマーヘッドアンデッドのカードをバックルの中心部にスリットする。



「<CHOP>」



ハンマーヘッドアンデッドの力を借りて強化された手刀はアルマジロアンデッドに振り下ろされる。

しかし、手刀が決まる寸での所でフロッグアンデッドがカリスに向かって体当たり喰らわせカリスは吹き飛ばされた。

吹き飛ばされたカリスは身体を起こし身構えるが今度はホークアンデッドがカリスに向かい突風を巻き起こす。

ホークアンデッドの突風に必死に耐えるカリスだがそこに、フロッグアンデッドとアルマジロアンデッドが攻撃を加える。



「いけへん、あの人ピンチだよ!」

「敵か味方か分からん者を助けられるか! それにこの突風ではどうにもならん!」



アンデッド達の攻撃を必死に耐えるカリスは自分が乗ってきたバイク、シャドーチェイサーに目を向ける。

そして、乗る者が居ないシャドーチェイサーに向かって無言で呟いた。



「(来い!)」



すると誰も乗っていないバイクから爆音が鳴り響き、カリスの所に向かって走り出す。

主の危機を救うのか、シャドーチェイサーはアルマジロアンデッドに向かって前輪を浮かしてそのまま振り下ろした。



「なあ刹那、今時のバイクは誰も乗らずに走ることが出来るのか?」

「私が知るか!」



カリスはシャドーチェイサーに跨るとホークアンデッドに向かって、マシンを駆る。

しかし、すぐに反転するとホークアンデッドの起こす突風を追い風にしてマシンを加速させる。

加速したシャドーチェイサーに対応できないフロッグアンデッドに対しカリスは流鏑馬の如くマシンの上からフォースアローを連続で放つ。

アローを連続で喰らい吹き飛んだのを確認すると、再びマシンを反転させホークアンデッドに向かって突進するがホークアンデッドは空中へ逃げようとする。

それを予測していたのか、カリスはシャドーチェイサーの前部に付いている簡易式ラウザーにカードをスリットさせる。



「<THUNDER>」



シャドーチェイサーから青い雷が発生しマシン全体を纏う、閃光を発したマシンは空中へと跳ね上がりホークアンデッドにぶつかる。

落雷が起こった様な衝撃が周囲を包むとシャドーチェイサーが地面に着地し、遅れてアンデッドの印が開いたホークアンデッドが落ちてくる。

カリスはすぐにカードを投げ付けホークアンデッドを封印し投げたカードは再びカリスに手に戻った。

カードを手にしたカリスは残っているアルマジロアンデッドに再び目を向け、今手に入れたホークアンデッドの他にハンマーヘッドアンデッドのカードを取り出しラウザーにスリットした。



「<CHOP>」

「<TORNADE>」



宙にハンマーヘッドアンデッドとホークアンデッドの絵が浮かびとカリスの身体に吸収される、するとラウザーからさらに機械音が発せられた。



「<SPINNING WAVE>」



強化された右腕と共にカリスの周りに発生した竜巻が手刀に更なる力を与え、二つのカードの力を加えた手刀がアルマジロアンデッドに炸裂した。

カリスの強力な手刀を喰らったアルマジロアンデッドのアンデッドの印が開き、カリスは三度カードを投げ付けアンデッドを封印した。



「す・すごい…」



誰もがカリスの戦闘に感嘆しているなか、エヴァだけが冷静にカリスの戦い方を分析し一つの結論を出していた。



「アイツはどうやら、封印した奴の力を自分に使う事が出来るらしいな…オイ、貴様は一体何者だ。」



戦闘が終わり立ち尽くすカリスに向かい話しかけた。

するとカリスはエヴァ達の方を見る事無く立ち去ろうとする。



「貴様! 話を聞け!!」



カリスに無視されたのが癪に触ったのかエヴァは声を荒げ、カリスに近付こうとすると上空から聞き覚えのある声が聞こえてきた。



「師匠!」



一行が見た先には杖に乗ったネギが降りてくる、ネギの姿を確認したエヴァは声を荒げる先をネギに変更した。



「遅いぞ坊や!! 特訓にも来ないで何をしていた!!」

「す・すいません師匠……そ・それでアンデッドは…?」

「戦闘ならもう終わったわよ、それよりアンデッドて何よ?」

「恐らく私達が戦っていた連中の事じゃないでしょうか、何故ネギ先生がご存知なんでしょうか?」

「そ・それはですね…」



ネギが明日菜達の質問に答えようとするが、そこに1台のバイクが現れる。

杖に乗って空を飛べるネギとは違い、普通のバイクに乗ってきた始が遅れて到着した。

バイクを止め降りようとした始に突如一筋の閃光が襲い掛かった。



「くぅ!!」



始は咄嗟にバイクから飛び降り閃光をかわし閃光が飛んで来た先を見た、始が見た先には一人の少女が立ち尽くしている。



「な・何をするんだ、茶々丸! 相手は普通の人間だぞ!!」



エヴァは突如、人に向かって攻撃しようとする茶々丸を止めようとするが、茶々丸は彼女の警告を聞き入れず自分の意見を言った。



「マスターあの男からネギ先生が言うアンデッドと同じバイオリズムを検知しました。」

「な・なんだと!!」

「よって、現在の相手の行動から敵と見なし攻撃します。」

「ま・待って下さい、茶々丸さん。 相川さんは敵じゃ…。」



ネギの制止を振り切り攻撃をしようとする茶々丸、始は避けようとするが後ろから追いかけてきた天音達がやってくる。



「始さん!!」

「(今避けたら天音ちゃん達に当たる!)」



天音達を守る為、動く事が出来ない始に向かって茶々丸からの閃光が届く筈であった…。

一瞬目を覆っていたネギが始達の事を確認しようとすると、始達の前にカリスが立ち塞がっていた。



「あ・アイツ、あの人達の事を庇った…?」



始達を庇ったカリスは茶々丸の攻撃にダメージを受けたのか片膝を付いた、そして息切れしながら喋り始める。



「は・始は…コイツは敵じゃない……傷つけないでくれ……。」



カリスの突然の行動に呆然とする一同であったが、始はゆっくりと近づきながらカリスに声を掛ける。



「そ・その声は…やはりお前なんだな……剣崎…。」



尚も近づこうとする始にカリスは声を荒げに叫んだ。



「来るな、始!! 俺とお前は出会ってはいけないんだ!!」



突如カリスの目の前にシャドーチェイサーが現れる。

カリスはシャドーチェイサーに跨ると去り際に始に向かい呟く。



「始、あいつ等は俺が何とかする…お前は何も関わらず人間達と生きるんだ。」



そう始に呟きかけると、シャドーチェイサーを走らせ暗い森の中へと消えていった。



「……剣崎…。」

「ま・まさか、あのカリスは剣崎君なの…?」



虎太郎の問いに答えられず、始はカリスが去った先を見つめていた、自分達の宿命を知っている始にはカリスを追うことが出来なかった。



呆然と立ち尽くしていた始の後ろで突如叫び声があがった。

全員が後ろを向くと一番後ろにいた木乃香に向かって傷だらけのフロッグアンデッドが迫っていた。



「奴め、逃げたと思ったら隠れていたのか!!」

「お・お嬢様!!」



護るべき人を救う為、咄嗟に走り出す刹那、他の面々も木乃香を救う為の行動を起こしていたが、誰よりもフロッグアンデッドの行動が早かった。

誰もが「間に合わない」そう確信していた時、何者かが木乃香の前に割って入りフロッグアンデッドに向かって一撃を繰り出した。

全員が木乃香の前に現れた者に見入っていた、黒い鎧に金色の仮面、右手には金色の刀身の剣を持った戦士。

やがて、虎太郎が搾り出すかの様な声を出した。



「…ま・まさか……か・仮面ライダー…」

ネギま!剣 / 第6話 錯綜するA

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