第11話 新たな力と蘇る力 投稿者:TWIN,S 投稿日:04/08-04:13 No.56
学校では朝礼で橘が保険医として学校に就任する事が生徒達に言い渡された。
3-Aの教室でものどかが家庭の事情により暫く、古菲が不注意で怪我をして2、3日学校を休む事をネギが報告して1日が始まった。
当然の事ながら古菲がレンゲルと戦った事に関しては硬く口止めされている。
ネギま!剣(ブレイド) 第11話 新たな力と蘇る力
授業が終わり放課後になると生徒達は一斉に散り始めた、ある者は帰宅する為、またある者は部活動の為。
その中の一人である超と葉加瀬も教室に出ようとした時、後ろから明日菜達が声を掛けてきた。
「ねえねえ、二人共ベルトはもう出来たの?」
明日菜の質問に対して超は少し気難しそうな顔をしながら。
「本当は昨日中に完成させる筈だったんだけどネ…もう一日掛かりそうネ。」
「なんや、なんか問題でもあったんか?」
「違うネ、昨日古菲が怪我したから超包子の方が忙しくなって作業に手が回らなかったネ。」
理由を聞いた瞬間、一同はコケタ。
「あ・あんた達ねえ…。」
「烏丸さんも、相川さんに頼まれた事と両立してるみたいですし…。」
「それも、もう心配要らないネ。 今朝、助っ人を一人雇ったアル。」
「あの人ならば用心棒も兼ねられますからね。」
もう一日だけ待ってくれと言って超達は教室を出て行った。
自分達ではどうにも出来ないのを理解している明日菜達も超達を信じる事にして教室を後にした。
昨日の火災により内部の一部が燃えてしまった図書館島は職員達による片付け等で、いつもとは違う賑わいを見せていた。
「これだけ人が多いと進入はまず無理ですね…。」
図書館島へ通じる橋の向こうから夕映は図書館島を眺めていると
「1日とは言え停学中なんですから見つかったら先生に怒られますよ。」
図書館島を眺めていた夕映に刹那が声を掛けてきた。
「刹那さん、見回りですか?」
「はい、アンデッドの一件もあるので見回りを強化しているんです。」
「それと、ネギ先生からの依頼で宮崎さんの行方の手掛かりも探してます。」
のどかの行方を捜す為、夕映は刹那に行いていく事にした。
本来なら戦う力の無い夕映を連れて行くのは良くないと思った刹那だが、今の夕映はどんな無茶をする分からない為、連れて行くことにした。
そして二人は図書館島の周辺から探す事にした。
夕映は歩きながら図書館島を囲っている湖の湖畔を所々見ていた。
「綾瀬さん、何を探しているのですか?」
「いえ、確かこの辺に図書館島へ通じる秘密の抜け穴が有ると先輩から教わったんですけど…。」
まだ諦めが付いてないのか、と少々呆れ気味の刹那を余所に夕映は湖畔の岩場を覗き込んだ。
「ひっ!!」
岩場を覗き込んだ夕映は短い悲鳴を出して身体を仰け反った。
続いて刹那が覗き込むと、其処には男が岩を背に寄り掛かっていた。
刹那は急いで容態を確かめる為に男の許に駆け寄り、夕映も後ろから続く。
「どうやら気を失っている見たいです。 服を着ていて、分かりませんが酷い怪我をしてます。」
「医者を呼んだ方が良いみたいですね……。」
連絡を取ろうと携帯を取り出す夕映だったが、突如男は目を覚ました。
「お・俺に構うな……医者に見せても…無駄だ……早く此処から……立ち去れ…。」
どう見ても放っては置けない程衰弱した声で言うと男は再び気を失ってしまった。
「また気を失ってしまったみたいです……。」
「とりあえず、何処かで怪我を見ないといけないですね。」
夕映は放って置く事は出来ず刹那に協力してもらい、自分の部屋に連れて行くことにした。
何とか他の寮生に見つからないように部屋に運び込み、夕映は男をベットに寝かせた。
「良いのですか、綾瀬さん。 医者に見せるなと言う事はもしかして犯罪者なのかもしれないのですよ。」
「そうですけど、このままにしては置けないです。 それに、刹那さんが居れば犯罪者位、大丈夫ですよ。」
確かに放って置けない状況ではあるし、これだけ衰弱していれば迂闊に手は出せないだろう。
半ば諦めた表情で刹那は溜息をついた。
「…分かりました、私は部屋から薬を持ってきますので、夕映さんはその人の上着を脱がせてください。」
薬を取りに刹那は部屋から出て行った。
夕映は言われたとおりに男が着ていたボロボロの上着に手を掛けた。
刹那が薬を持って戻って来ると、夕映は上着を持ったまま尻餅を付いた状態で震えていた。
何があったのかと尋ねると夕映は怯えた表情でベットを指差し「血…血が……」と繰り返すばかりだ。
刹那は男の出血が酷いのかと思い男を見た、男は夕映に上着を脱がされていたが今だ気を失っていた。
上着を脱がされて露出した腕にある傷を見て刹那は身を引いた。
男の傷口から流れていた血は……緑色だった。
「な・何だこの者は…人間では無いのか……。」
「じゃ、じゃあ何でしょうか、妖怪か何かの類でしょうか?」
「いえ、妖怪と言えども血液の色は同じ筈です、このような色の血を持った者など聞いた事はありません。」
暫し、呆然としながら男を見ていた二人だったが夕映が持っていた男の上着から何かが床に落ちた。
「こ・これは!!」
二人は落ちた物を手に取った、それはアンデッドを封印したラウズカードと1枚の写真。
写真には今そこで寝ている男の他、数人の男女が写っていた。
「刹那さん、此処に写ってるの相川さんですよね?」
「確かに、それに橘さんに白井さんに広瀬さん、この女の子は多分、栗原さんだと思います…。」
アンデッドを封印したラウズカードと天音達が写っている写真。
これ等を見て二人はこの男は誰なのか理解した。
「も・もしかしてこの人が……剣崎一真さん…。」
目の前の人物が敵ではない事を知った二人は剣崎に治療を行った。
彼が意識を失っているのは怪我ではなく連日の戦闘による疲労らしい。
「……とりあえず応急処置ですが終わりました、彼に薬が効くかは分かりませんが。」
「やっぱり、ここは相川さんに診てもらった方が良いのでしょうか?」
始に連絡を取ろうとした時、ベットから剣崎の声が聞こえた。
「…止めてくれ、始を俺に近付けないでくれ…。」
「気が付いたですか……剣崎さん…ですよね……?」
「そうだ、君達は一昨日、始達と一緒に居た子達だね。」
再び目覚めた剣崎は夕映の質問に頷いて答えると息絶え絶えな声で始と会うのを拒絶した。
夕映はお茶の入ったコップを差し出すと剣崎はコップを受け取り礼を言おうとする。
「ありがと…ぐぅ! ぐあぁあああ~~~!!」
礼を言ってる途中突然、剣崎の喉から獣のような絶叫が漏れだす。
持っていた金属製のコップを紙コップの様に握りつぶすと胸を抑えて身悶え始めた。
「ど・どうしたんですか?」
「…近づくな……大丈夫…直ぐに収まる……。」
暫くすると身体の震えが止み呼吸も落ち着くと、剣崎は再びベッドに倒れこんだ。
「剣崎さん、もしかしてあなたは…?」
刹那の疑問に対して剣崎は今の自分にジョーカーの本能が抑えられない時がある事を話した。
4年前、自らジョーカーとなり皆の前から姿を消した剣崎は人目を避けながら孤独な日々を過ごしていた。
しかし今から半年前、突然ジョーカーの本能が剣崎の精神を支配し始め、気が付いたら麻帆良学園に辿り着いていた。
其処で始めて剣崎はアンデッドの封印が解けている事を知った。
「俺はアンデッドを追っている内にカリスと出会い封印した。」
「そして、カテゴリーAの力でジョーカーの本能を抑えたはずだった…。」
「しかし、それだけでは完全に力を抑える事は出来なかった、それどころか戦う度にジョーカーの本能が強くなっている。」
「今、始に会えば俺はジョーカーとして始を封印しようと襲い掛かるだろう…。」
二人は何も語らず只黙って剣崎の話を聞いていた。
その後、刹那は自室に戻り剣崎はそのまま夕映の部屋で一夜を過ごす事になった。
余程疲労が激しかったのか、剣崎は食事を取る以外はずっとベットに寝たままだった。
暫く沈黙が続いたが、やがて夕映が剣崎に声を掛けた。
「剣崎さんは3年前はどちらに居ましたか?」
「3年前……日本に居たよ、不死になったからといって泳いで海外まで行こうとは思わなかったし。」
「そ・そうですね……その年に火事で女の子を助けた事はありませんか…?」
「火事で…女の子……確かにある、珍しく街に行った時に偶然現場に居合わせて…どうして君がその事を…。」
夕映は涙を流しながら剣崎に言った。
「その時の女の子が…私です。 そして、あなたは昨日も私を助けてくれましたね……。」
「君があの時の女の子…そうか何処かで見覚えのある子だと思ったんだ。 名前は何て言うんだい?」
「…綾瀬夕映です……ずっとお礼が言いたかったです…。」
「礼なんていいさ…夕映ちゃんが元気で居てくれる…それで俺はとても嬉しいのさ。」
夕映は尚も涙を流しながら剣崎の手を握る。
すると剣崎は夕映の頭を優しく撫でた。
外を見ると既に夜が明けていた、夕映は剣崎の手を握ったまま眠ってしまった事に気付いた。
夕映の身体には毛布が掛けられていたが、ベットには剣崎の姿は無かった。
辺りを見回すと夕映はリビングの机に手紙を見つけて読んだ。
『お世話になりました。 これを橘さんに渡して下さい。』
夕映は剣崎が残した手紙を暫く眺めていたが、手紙の下に置いてあった物を手に取ると制服に着替えて学校へ行く事にした。
麻帆良の駅を降りて改札を通った瞬間、夕映はいつもの通学風景とは違う光景を目にした。
本来学校へ向う筈の生徒達は恐怖の悲鳴を上げながら自分の方目掛けて我先へと雪崩れ込もうとしていた。
何が起きたのか分からない夕映は人込みの中から気絶した亜子を抱えながら逃げている運動部4人組を見つけて事情を聞こうとした。
「な・何が起こってるですか?」
「ゆ・夕映。 何がって…超包子で朝ご飯食べてたら、突然変な連中が手近に居た生徒達を……。」
「早く逃げないと。 あいつ等異常だよ…。」
慌てながら状況を話す彼女達の話を聞いてアンデッド達が出現したのを察した夕映は彼女達の制止を振り切り人込みを掻き分けながら超包子を急いだ。
超包子の周りにはトカゲの祖たるリザードアンデッド、ライオンの祖たるライオンアンデッド、猪の祖たるボアアンデッド、イナゴの祖たるローカスアンデッド、ジャガーの祖たるジャガーアンデッド、蛾の祖たるモスアンデッド、ムカデの祖たるセンチピードアンデッド、鯨の祖たるホエールアンデッド、シマウマの祖たるゼブラアンデッドと合計9体のアンデッドが逃げ惑う人々を襲い辺りの物を破壊していた。
今だ多くの生徒達が逃げ惑う中、ホエールアンデッドが逃げ遅れた二人の女の子に目を向けた。
二人の少女は隠れてこの場を過ごそうと思っていたが運悪く見つかってしまい、恐怖で震える少女の前にもう一人の少女が立ち尽くす。
「……お・お姉えちゃ~ん…。」
「こ・この、史伽に近づくな!!」
妹を護ろうと震えながら身近に落ちている物を投げ付ける風香であったがホエールアンデッドは動じる事無く鳴滝姉妹に近づいてきた。
抵抗するのを諦めた風香に史伽は抱きつき、恐怖の余り泣き出す二人にホエールアンデッドの手が伸びる。
ホエールアンデッドの手が二人を捕らえようとしたその時、一振りの棍棒がホエールアンデッド目掛けて直撃した。
「ウチのお客様に手を出さないで貰いましょうか…。」
聞こえて来た男の声に二人は恐る恐る顔を上げる。
二人の目の前には背中に「用心棒」と書かれた男性用のチャイナ服を着て棍棒を携えた始が立っていた。
「さあ、早く逃げるんだ!!」
「……で・でも……た・立てないよ…。」
恐怖で腰を抜かしてしまった鳴滝姉妹を余所に不意を突かれたホエールアンデッドが始に襲い掛かる。
始は持っていた棍棒をホエールアンデッド目掛けて投げ付けるがホエールアンデッドは棍棒目掛けて回転蹴りを放つと棍棒は粉々に砕け散ってしまった。
しかし、始はその事を予想していたかの如く、ホエールアンデッド目掛けて蹴りを放ちホエールアンデッドを吹き飛ばした。
「簡易式の魔力供給か…これは使えるな…。」
始は昨日エヴァから教わった簡易式の魔力供給で自らの肉体を強化する事が出来るようになっていた。
ホエールアンデッドを吹き飛ばした始は鳴滝姉妹を抱えると超包子の屋台目掛けて飛び上がる。
屋台の目の前に着地した始は二人を降ろすと屋台の中に隠れてた超達に二人を預けた。
「二人を頼む。」
「分かったアル。 それと余り派手に暴れて物壊さないで欲しいネ…。」
「……善処しよう…。」
再び戦場に向おうとする始にようやく落ち着いた鳴滝姉妹が声を掛ける。
「あ・あの…助けてくれてありがとう…。」
「な・名前、教えてくれませんか…?」
「……相川始だ…。」
「ウチの新しいアルバイトネ!」
超の説明も余所に始は人々が逃げ仰せアンデッドだけが残る広場へと向っていく、二人はその姿を目に焼き付けていた。
持っていた棍棒が無くなってしまった始は懐から1枚のカードを取り出す。
昨日エヴァから貰った契約カードの複製である、使用方法を聞いていた始はカードを手にして一言呟く。
「来たれ!(アデアット)」
すると、カードは大鎌に変化し始めの手に握られる。
大鎌を手にした始はアンデッド達に立ち向かった。
「やはり相川さんを用心棒にして正解でしたね。」
「そうですね……残念ですが、私の戦闘力ではアンデッドに対抗出来ません。」
「…しかし、多勢に無勢ネ、このままじゃやられるアル。」
カリスに成らずとも戦う力を手にしたが9体のアンデッドを相手にするには流石に分が悪い。
戦いは圧倒的に不利な状況で徐々に始が追い詰められていく中、彼の許に援軍が到着した。
「相川さん!!」
彼の許にネギを先頭に明日菜、刹那、木乃香、楓、真名が駆けつける。
楓の姿を見た鳴滝姉妹が顔を出して彼女の名前を呼ぶ。
「「楓姉!!」」
「…2人ともどうして此処に?」
「相川さんが助けてくれたの。」
「…そうでござるか。 2人とも此処で待ってるでござるよ。」
「ちょっと待つネ! これを使うネ!」
始の援護に向おうとした一行を超は引き止めると中からアタッシュケースを取り出す。
アタッシュケースを開けると中には3つのバックルとカードが入っていた。
「これは、遂に完成したの!」
「ばっちりネ! さあ、これを使うと良いネ!」
超の言葉を聞き刹那、楓、真名がバックルとカードを手にした。
そして、カードをバックルに差込み腰に添えるとベルトが巻き付き装着される。
装着と共に機械音が鳴り響き、3人は掛け声と同時にバックルのカバーを開いた。
「「「変身!!」」」
「「「<OPEN UP>」」」
3人の前に金、緑、赤の色の壁が出現し3人が其々の色の壁を通り抜け。
金の壁を通り抜けた刹那が仮面ライダーグレイブ、緑の壁を通り抜けた楓が仮面ライダーランス、赤の壁を通り抜けた真名が仮面ライダーラルクへと姿を変えた。
「やったネ、大成功アル!!」
「すご~い、楓姉が変身した!」
歓喜と感嘆の声を上げる超と鳴滝姉妹を背にして3人の仮面ライダーがアンデットが暴れる広場へと向う。
多数のアンデッドに囲まれた始を更に追い詰める様にアンデッド達は囲いを狭めて行く。
しかし、突然その囲いの一部が崩れ、崩れたアンデッドの後ろから3人の仮面ライダーが姿を現す。
突然の襲撃に囲いを崩し体勢を立て直そうとするアンデッド達をグレイブを先頭に3人の仮面ライダーが追い詰める。
リザードアンデッドの剣をグレイブラウザーで弾いたグレイブがリザードアンデッドの腹部を切り裂き。
剣を振り抜いたグレイブにライオンアンデッドが鋼のクローを振り下ろすがグレイブラウザーで弾くと上段から肩目掛けて振り下ろす。
2体のアンデッドを相手にしているグレイブに後ろからモスアンデッドが口吻から毒矢を放とうとしたが、口吻目掛けてエネルギーの矢が直撃した。
モスアンデッドが倒れた先にはラルクがラルクラウザーをボウガン形態にしてエネルギーの矢を連続で放つ。
放たれたエネルギーの矢がボアアンデッドとセンチピードアンデッドを捕らた。
2体を吹き飛ばすとラルクの目の前に現われたゼブラアンデッドが持っていたブーメランを振り下ろす。
しかし、ラルクはラルクラウザーをボウガン形態からソード形態に切り替えるとブーメランを弾きゼブラアンデッドの身体を斬りつけた。
垂直の壁を走るジャガーアンデッドをランスが追い掛け、持っているランス型のランスバイザーで斬り付ける。
ランスを捕らえる為に高く飛び上がったローカスアンデットに対して壁を蹴り飛び上がったランスがローカスアンデッド目掛けランスバイザーを突き刺した。
流れるような剣捌きで連続でアンデットを切り伏せて行くグレイブ。
「身体が軽い、それに力が漲ってくる。」
正確な射撃と接近戦でアンデッドを近付けないラルク。
「装填も不要な上、接近戦にも使えるとは中々良い武器だ。」
高速戦法を駆使し槍で戦うランス。
「槍は余り得意ではないのでござるが、調子が良いでござる。」
其々がベルトの力を駆使してアンデッド達と対等な戦いを繰り広げていた。
しかし、不死生物であるアンデッドは生半可な攻撃では決して倒れる事は無い。
ラルクは腰のホルダーからカードを取り出しラルクラウザーのスリットに通した。
「<MIGHTY>」
ラルクラウザーを構えると前方に光の壁が現われ。
ラルクがラウザーのトリガーを引くと放たれたエネルギーの矢が光の壁を通り抜ける。
通り抜けたエネルギーの矢が複数の矢に変わる必殺技「レイバレット」がボアアンデッドとモスアンデッドに貫いた。
複数の矢に打ち抜かれた2体のアンデッドの印が開くとラルクはアンデッド目掛けてカードを投げた。
ジャガーアンデッドと並んで走っているランスはお互いに隙有らば得物を繰り出す高速戦が続いていた。
そして互いに垂直の壁を登り始めた時、前に出たランスがジャガーアンデッドの胸部に蹴りを放ちジャガーアンデッドを地面に叩き付ける。
蹴りの勢いで宙に居たランスは腰のホルダーからカードを取り出し、ラウザーのスリットに通した。
「<MIGHTY>」
カードの力を得てランスバイザーが輝き。
ランスの必殺技「インパクドスタッブ」が倒れているジャガーアンデッドを突き刺した。
「悪く思わないで欲しいでこざる。」
アンデッドの印が開いたジャガーアンデッド目掛けてランスはカードを投げた。
グレイブはグレイブラウザーを展開させカードを取り出すとラウザーにスリットさせる。
「<MIGHTY>」
「はぁあああ~!!」
カードの力を得て刀身が輝き出すとグレイブは地面を蹴って飛び上がる。
跳び上がったグレイブは必殺技「グラヴィティスラッシュ」をゼブラアンデッドの頭上から振り下ろす。
ゼブラアンデッドを斬り伏せたグレイブはゼブラアンデッドの脇を通り抜け。
後ろに居たローカスアンデッドを斬り付けると2体のアンデッドの印が開くと空かさずグレイブは2体目掛けてカードを投げ付けた。
アンデッドを封印した3人の仮面ライダーに向ってリザードアンデッド、ライオンアンデッド、センチピードアンデッドが突っ込んで来る。
しかし、3人の仮面ライダーは臆する事無く、カードをスリットに通して行く。
「「「<MIGHTY>」」」
ラルクのエネルギーの矢が3体のアンデッドを貫くと跳び上がったグレイブがリザードアンデッド目掛けて剣を振り下ろし。
ランスがセンチピードアンデッドに槍を振り下ろすと、更に身体を回転させ後ろに居たライオンアンデッドを切り裂いた。
3体のアンデッドの印が開くと3人は一斉にカードを投げつけ3体のアンデッドを封印した。
「「やった~~!!」」
「すごい、予想以上の成果です。」
屋台の中から戦闘を眺めていた、超達が仮面ライダー達の勇士を見て感嘆の声を上げた。
歓声が上がる中、3人の仮面ライダーは始達が戦っているホエールアンデッドに向って走り出す。
しかし、彼女達の前に黒い風が走り抜けると3人は勢い良く吹き飛んだ。
「きゃあ!」
「くぅ!」
「…な・何事でござるか?」
3人が起き上がると、彼女達の前に孔雀の祖たるピーコックアンデッドが姿を現わす。
「大変です相川さん、新手が現われたみたいです。」
「…アイツは。 気をつけろ、そいつは上級アンデッドだ!」
始の警告を聞いた3人はピーコックアンデッドを囲むように立つと、グレイブがピーコックアンデッド目掛けて切り掛かった。
しかし、ピーコックアンデッドは持っていた剣でグレイブラウザーを払い落としグレイブを斬りつける。
「きゃあ!!」
斬られた勢いでグレイブは吹き飛ばされる。
「刹那! …貴様!!」
ピーコックアンデッド目掛け、ラルクはラルクラウザーを放つが剣で矢を撃ち落しながら詰め寄って来る。
間合いを詰められたラルクはバイザーをソード形態に変え切り掛かるが武器を左手で押さえられると剣で斬り付けられた。
今度はランスがランスバイザーで挑むがピーコックアンデッドはランスが繰り出す槍を剣で捌いてゆく。
一度間合いを取る為に後ろに下がろうとした時、ピーコックアンデッドが羽手裏剣を放つ。
ランスバイザーで羽手裏剣を落としてゆくが捌き切れない羽手裏剣がランスに突き刺さった。
「「楓姉!!」
「何て奴ネ、さっきの連中とは段違いな強さネ!」
受けたダメージが大きいライダー達に近寄るピーコックアンデッドに立ち上がったラルクはカードを取り出しスリットに通す。
しかしラルクラウザーは何の反応も起こさず、彼女の目の前にピーコックアンデッドが立ち尽くす。
剣を振り上げるピーコックアンデッドにラルクは身を屈めるが突如ピーコックアンデッドの頭上からレッドランバスが突っ込んできた。
「大丈夫か龍宮。」
「……橘。」
ピーコックアンデッドを吹き飛ばし、龍宮の無事を確認した橘は屋台に目を向ける。
「やはりお前だったのか超。 完成したベルトを持ち出していたのは。」
「え!? 超さんベルトを勝手に持ち出しちゃったんですか?」
「えと…いや、その……御免アル…。」
「ラウズカードはラウザーのAPを消費して使うんだ。 恐らくAPが無くなったんだろう。」
橘はラウザーが何の反応を起こさない理由を説明する。
その間にピーコックアンデッドは起き上がり再びライダー達の許に近づこうとする。
生徒が危機の状況にネギ達は助けに行こうとするがホエールアンデッドが行く手を阻む。
ダメージを受けているライダー達を庇う様に橘は前に出ると後ろから夕映が走り寄って来た。
「橘さん!」
「どうしたんだ綾瀬、早く此処から離れろ!」
逃げる様に言い聞かせる橘だが夕映は制服の中から出した物を橘に手渡す。
剣崎が夕映に渡した物、それはカテゴリーAを初めとするダイヤスーツのカードだった。
「橘さん、これを!」
「……これは! どうして君が?」
「理由は後で説明します。 さあ、これを使ってください!」
「…分かった。 早く此処から離れるんだ。」
橘にカードを渡した夕映は言われた通りその場から離れた。
夕映が離れたのを確認した橘は懐から3人が使っていたバックルとは違うデザインのバックルを取り出す。
それに今渡されたダイヤのカテゴリーAのカードを差し込み腰に添えてベルトを巻きつける。
そして、掛け声と共にバックルのハンドルを引く。
「変身!!」
「<TURN UP>」
バックルの中心部分が反転すると同時に目の前に光の壁が出現し、橘は光の壁を走り抜けた。
それにより橘はボードが開発した初のライダーシステムで変身した姿、仮面ライダーギャレンへと姿を変えていた。
「はぁあ!」
舞い上がったギャレンはピーコックアンデッド目掛けて蹴りを放つ。
よろめくピーコックアンデッドは体勢を立て直すと剣を振るうが難なくかわされ拳を放たれてしまう。
「つ・強いアル…。」
「そんな、データで見た限りでは新型のライダーシステムは旧型を凌ぐはずなのに…。」
超達はライダーシステムを作っている時に参考として旧ライダーシステムのデータも見せてもらっていた。
新型はあらゆる面に置いて旧型を凌ぐ性能を有しており、如何に橘がアンデッドの戦闘に慣れていたとしても3人が苦戦した相手に引けを取らず戦えるのが信じられなかった。
だが超達は知らなかった旧ライダーシステムは融合係数が高い者にしか扱えない。
しかし装着者の強い意思や決意は強力なエネルギーとなり予想を上回る力を発揮する事、それを行う事が出来るのが仮面ライダーになれる者である事を。
ピーコックアンデッドが振るう剣をギャレンは腰に携帯していた醒銃ギャレンラウザーで打ち払いピーコックアンデッド目掛けて銃弾を放つ。
銃弾を喰らい怯んだピーコックアンデッドはギャレン目掛けて羽手裏剣を放とうとするとギャレンラウザーのオープントレイを展開する。
オープントレイからカードを取り出すと先端のスリットに通した。
「<BULLET>」
「<RAPID>」
2体のアンデッドの力を吸収すると同時にピーコックアンデッドは羽手裏剣を放つ。
しかし、強化され連射の力を得た弾丸が羽手裏剣を撃ち落す。
やがて羽手裏剣が尽きるとギャレンはピーコックアンデッド目掛けて拳を放った。
「橘さん、すごく強いじゃない。」
「しかし、橘は今だ完全じゃない……ネギ、今お前が出来る最大の魔法を頼む。」
「は・はい。」
今だホエールアンデッド対峙していた始達はホエールアンデッドを封印する為に。
ネギは最大魔法の詠唱を開始し、始と明日菜は詠唱時間を稼ぐ為ホエールアンデッドを足止めする。
「ラス・テル マ・スキル マギステル」
「来たれ雷精(ウエニアント・スピーリトウス)風の精!!(アエリアーレス・フルグリエンテース)」
「雷を纏いて吹きすさべ(クム・フルグラテイオーニ・フレツト・テンペスタース)南洋の嵐(アウストリーナ)」
「…出来ました、相川さん!」
詠唱が完成した事を聞いた始はホエールアンデッドの隙を突きホエールアンデッドを空中に投げ付けた。
「ネギ、放て!!」
「はい。 雷の暴風!!(ヨウイス・テンペスタース・フルグリエンス)」
空中に放たれたホエールアンデッドにネギの呪文が炸裂しアンデッドの印が開く。
始はカードを投げホエールアンデッドを封印すると刹那達の許に駆け寄り1枚のカードを手に取る。
「橘、使え!!」
ギャレン目掛けて始は2枚のカードを投げ。
ピーコックアンデッドを蹴り上げ吹き飛ばしたギャレンはカードを受け取る。
カードを受け取ったギャレンはオープントレイを展開させカードを取り出してスリットに通した。
「<DROP>」
「<FIRE>」
「<GEMINI>」
ギャレンの後方に拡大された3枚のカードの姿が浮かび上がりカードの力がギャレンに吸収される。
仮面ライダーは複数のカードをラウズする事で能力を同時に使用できる。
カードは最大3枚まで使用可能であり、3枚のカードの力が合さった時、その力は上級アンデッドの力を上回る。
「<BURNING DIVIDE>」
「はあぁあああ~~~!!」
ギャレンが跳び上がったと同時にギャレンの姿が2人に増える。
双身のギャレンの両足から炎が上がり回転蹴りが放たれ、ピーコックアンデッド目掛け灼熱の戦槌が振り下ろされた。
ギャレン最強の技を喰らったピーコックアンデッドの印が開くと、オープントレイから1枚のカードが出てくる。
ギャレンはカードを取り出すとピーコックアンデッドに向って投げ付けた。
ギャレンはバックルを反転させカードを引き抜き変身を解き。
変身していた3人も変身を解き、ネギや始、屋台に隠れていた超達も出てくる。
「(ジョーカーを誘き出す為に用意したのに……しかもギャレンまで復活しましたか…。)」
「(しかし、消耗している今なら…レンゲル出番ですよ…。)」
影からギャレン達を眺めていた何者かはレンゲルに戦うように指示する。
しかし、レンゲルになる少女は何者かの声を聞き入れず、彼女は一人の少年の姿に見入っている。
そして、少年の姿を見入っていた少女は少年の名前を呟いた。
「……ネギ…先生…。」
「(彼の姿を見て支配から解け様としている…ここは引いた方が良いですね…。)」
何者と少女を引き連れその場を後にした。
広場ではネギ達が魔法を見てしまった鳴滝姉妹に事件の事情を話し、魔法に関しての事柄を口止めしていた。
「……と言う訳なんです、お願いですからこの事は喋らないで下さい。」
「うん、分かったよ…その代わり…。」
「そ・その代わりなんですか…? (2人の事だから一体何を強請るのかな…?)」
口止めを制約に何かを強請ろうとする鳴滝姉妹にネギは蒼ざめる。
すると2人は突然、始の両腕にしがみ付いた。
「始さんを僕達の恋人にちょうだい!!」
「「「ええ~~~!!」」」
突然の恋人宣言に驚く一同、しかし始本人は何の事だかまったく理解していない。
その時であった…。
「始! 貴様…これは一体どう言う事だ!!」
「始さん、これはどう言う事なの!!」
鳴滝姉妹の恋人宣言直後にエヴァと天音が広場に到着したのだ。
4人の少女に囲まれている始を見て明日菜はどうしても聞かずに置く事は出来なかった。
「…橘さん……始さんてもしかして……ロリ…。」
「神楽坂……それ以上言わないで挙げてくれ…。」
麻帆良学園の朝、戦いは終わった。
しかし始を取り囲むように天音とエヴァと鳴滝姉妹による新たな戦いが始まろうとしていた。