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第12話 偽りなき心 投稿者:TWIN,S 投稿日:04/08-04:14 No.57

麻帆良学園の巨大な敷地には生徒はおろか教職者にも忘れ去られた建物が数多く存在した。

麻帆良の森の奥にある建物もその一つである。

しかし、その忘れ去られた建物の中、人が居ない筈なのに数多くの器具が並び。

その片隅にはベッドが備えられ、その中で一人の少女が静かに寝息を立てていた。



「(彼女は二度の渡りレンゲルの支配から解けようとしていた……。)」



何者かが眠っている少女を眺めながら彼女がレンゲルの支配から解け様とした事を考えていた。



「(図書館島の件は良いでしょう、あそこには目覚めの前に行く必要はもう有りませんから…。)」

「(問題は彼ですね……彼の姿を見ただけで彼女は支配から解けようとしていた…。)」

「(予定には有りませんでしたが、彼は少し邪魔ですね……可哀想な気もしますが、消えてもらいましょう!)」



何者かは机に置いてあったトランプのカードを手に取り投げ付けると壁に貼ってあった写真に突き刺す。

カードが突き刺さった写真にはネギの姿が。

何者かは気付いていなかったがその光景を少女は静かに眺めていた。





ネギま!剣(ブレイド) 第12話 偽りなき心

 



朝、超包子は超、葉加瀬、四葉が厨房に立ち、茶々丸、始、怪我から復帰した古菲が配膳を勤める。

超包子は何時もと同じ光景を取り戻し今朝も多くの客で賑わっていた……あの場所以外は。



「……お前達、何故此処に居る?」

「…別に。 只今日は此処で朝ご飯を食べ様と思っただけですけど。」

「右に同じく。 今日も此処で朝ご飯にしようと思っただけ。」

「そうですそうです!」



超包子の一角で天音、エヴァ、鳴滝姉妹が一つのテーブルを囲み只ならぬ雰囲気で座っている。

余りの気迫に近寄り難い状況の中注文を取る為に恐る恐る古菲が近づく。



「ち・注文は決またアルか……?」



その瞬間4つの鋭い眼光が古菲を突き刺す。



「し・失礼アル~~~!!」



明らかに実力が上である筈の古菲が凄い勢いで逃げ出すと、代わりに始が卓に近づく。



「どうしたんだい皆、注文はまだみたいだけど?」



始の姿を見た瞬間4人はさっきまでの態度を一変させ。



「ああ、お前が来るのを待っていたのさ…。」

「おはよう、始さん。 あのね…。」

「おはっよう~始さん。 え~とね…」

「おはようございます、始さん。 えとですね…。」



4人が一斉に喋り出すと今度は自分が話すのだと言い合いが始まる。

注文が取れない性か始にしては珍しくうろたえ、その喧噪を周りの者達が眺める。



「始さんに手を出さないでよ!」

「お前のモノではなかろう!」

「始さんは僕達のだ!!」

「そうです、そうです!!」



大胆な発言が飛び交う中この惨状を止める事は五月ですら不可能な状態になっていた。



「良いのですか、あのままにしといて…?」

「云いアル。 御蔭で見物客も増えた序に売り上げも上々ネ!」



一人の男性を巡って幼い少女達が繰り広げるこの愛憎劇は生徒はおろか教員の間でも話題となり超包子の名物となる。





校舎では真名が教室に行く前に保健室に立ち寄ろうとしていた。

昨日の負傷した所の治療を行おうとしたが、持ち合わせの薬が無くなっていた。



「橘先生、入りますよ。」



真名は保健室の中へと入ると以前は見掛けなかった大きな安楽椅子が目に入る。

其処に白衣を布団代わりにして眠っている橘の姿が有り、気配に気付いたか橘は目を覚まし来訪者の姿を見る。



「龍宮か…どうしたんだ?」

「ああ、薬を貰いに来たんだが……先生はこんな所で寝てるのか?」

「いや、ちゃんと教職用の寮を用意して貰ってるが、此処の方が落ち着くんだ…。」



橘の言葉を聞いて真名は辺りを見回す。

真名からすれば御世辞にもこの保健室が落ち着く空間には思えなかった。

その間に起き上がった橘が薬品棚の扉を開け薬を探そうとしている。



「それで、どんな薬が欲しいんだ?」

「あ、ああ。 普通の傷薬で良い。」



真名は上着の袖を捲くり包帯で覆われた所を見せる。

それを見た橘は薬と包帯を用意すると真名に椅子に座るよう指示する。



「これ位の怪我、自分で治せる。 心配するな。」

「血の滲み方からして一度診た方が良い。 それに包帯の巻き方が雑だ。」

「少し痛いかも知れないが、我慢出来るな?」

「子供じゃ有るまいし、平気だ。」



橘は真名を座らせると包帯を解き傷の治療を始める。

治療を受けている間、何もする事が無い真名は橘に一つ質問をした。



「橘先生…あなたは何故仮面ライダーになろうと思ったんだ?」

「……地球と人類の為だ。」



余りにも率直な理由に真名は堪え切れずに吹いてしまう。



「…すまない、余りにも率直過ぎたもので遂……。」

「気にするな、良く言われたよ…お前は真面目すぎる…てな。」

「分かっているじゃないか、どんな人なんだ、その人は?」

「……正義感の強い人で本来、彼がギャレンになる筈だった人さ…。」



橘達以外にもライダーになろうとした人の事を聞き真名は興味を抱く。



「先生達以外にも仮面ライダーに成ろうとした人が居たのか……その人は…?」

「…亡くなった……最後までライダーに成る事に憧れて…。」

「……その…済まない。」

「気にする事は無い…出来たぞ。 思ったより傷は深い銃を使う時に気を付けた方が良い。」

「そうか…あの…ありがとう。」

「もうすぐ、授業が始まるぞ。 怪我の具合が良くなかったらまた来ると良い。」



聞いてはいけない事を聞いたのではないかと、気まずくなる真名を橘は送り出す。



「…地球と人類の為か……あの人も私の怪我を直しながら同じような事を言ってたな…。」



教室に向う真名は橘が治療してくれた処を見ながら少し昔の事を思い出していた。





放課後になり職員室に戻ったネギは自分の机に就きながらのどかの事を考えていた。

暇を見ては自分も探しに出て、仮契約カードの交信も幾度と無く試してみたが何の反応も見せない。



「のどかさん…何処に言ってしまったんだろう…?」



暫く考えていると不意に携帯が震える、非通知にはなっていたがネギは職員室を離れ電話に出てみる事にした。



「…もしもし……どなたでしょうか?」

「……ネギ先生………助けて…。」



内容にも驚いたがそれよりもネギは聞こえて来た声に衝撃を覚える。

受話器越しに聞こえたその声は、のどかの声だった。



「のどかさん! ど・何処に居るんですか、のどかさん!!」



この後、のどかはネギにエヴァと最初に修行した場所と答えると電話は切れてしまう。

ネギは電話が通じなくなったのを知ると、すぐさま駆け出した。



「お・オイ、兄貴。 何処行くんだよ?」



職員室で留守番させていたカモを残してネギは人目が付かない所から杖に乗り、修行の場へ急いだ。

目的地に着くと辺りを見回しながらのどかの名前を叫ぶ。



「のどかさ~~~ん、何処ですか?」



のどかの名前を呼びながら辺りを見回すと、木の木陰から殺気が放たれ。

身構えるネギの前にヘラクレスオオカブトムシの祖たるビートルアンデッドが現われる。





その頃、葉加瀬の研究所では始がエヴァから魔法を習い、超達が昨日の戦闘のVTRを眺めていた。



「う~ん、どうにかしてこれを新型システムに使えないでしょうか?」



超達は昨日の戦闘記録、主にギャレンがコンボ技を発動させる所を繰り返し眺めていた。



「新型システムにはカテゴリーのカードが無いからな…。」

「それなら、無いなら借りれば云いアル!」

「「「…借りる?」」」



超の突然な発言に一同は声を上げる。



「カードの特性を見させてもらたけど、JとQのカードがあればケルベロスのカードを作る要領で出来るアルよ。」

「なるほど、吸収と融合のカードか…ケルベロスの製造データなら有るから可能かもしれない……。」



超達は新型ライダーシステムの改良についての検討を始めた。



もう一方では始がエヴァから回復魔法について教わり。

始が怪我をした風香の腕に向って手を翳し回復魔法を唱える。

温かな光が始の手から発せられて風香の傷口を塞いでいくのをエヴァは見つめていた。



「擦り傷を治す程度だが回復魔法はモノに出来たみたいだな。」

「本当だ、もう全然痛くないや!」



怪我が治った風香は嬉しそうに先程まで痛がっていた腕を振る。



「しかし、何故回復魔法を習いたいと?」



突然、回復魔法を教わりたい理由を夕映は始に聞く。



「……昨日、エヴァが俺の怪我を治した時に魔法を掛けてくれただろう。」

「…似ているんだ、この光がSPIRITの壁を潜る時の光に……。」



始はまだ自分がジョーカーであった時にハートスーツの2のカードの力で人間に変化していた事を話す。

始の言葉を聞いた瞬間、虎太郎が身を乗り出す。



「そ・それが、もし本当なら?」

「……そうだ、もっと強力な力とスペードのAが有れば、ジョーカーの本能を抑える事が出来るかも知れない。」

「何故、スペードのAが必要なのだ?」



夕映の話から始は剣崎が現在のどの様な状態でを在るかを知り。

それから、一つの推論を打ち立てた。



「恐らく、剣崎はスペードカテゴリーの力と融合を繰り返してアンデッドになった。」

「結果、ジョーカーでは有るが極めてスペードカテゴリーに近いアンデッドになってしまったのだろう。」

「それにより、ハートのカテゴリーであるカリスでは力を抑える事は出来ず、逆にカリスの強い戦闘本能の影響を受けていると思う。」

「ほな、魔法はウチが手伝えばええとして、そのAのカードは……。」



木乃香の言葉が言い終えぬ内に突然アンデッドサーチャーが鳴り響く。

広瀬はすぐさまアンデッドの出現位置を割り出した。



「アンデッドを3体確認、場所は……女子中等部に近いは。」



場所を聞いた始達は研究室を飛び出し、虎太郎は橘に連絡を入れた。





ビートルアンデッド目掛けて、ネギは無詠唱の魔法の射手を放つ。

しかし、ビートルアンデッドは怯む事無く自らの武器、破壊剣オールオーバーを振るう。

ネギは間一髪で避けるが、彼の後ろの在った樹が音を立てて倒れる。



既に、幾度と無く魔法を放っているネギの体力は限界を迎えていた。

地面に膝を付いて逃げる事が出来ないネギに向ってビートルアンデッドが剣を振り下ろそうとした時。

突如、誰かがネギを抱かかえて、ビートルアンデッドの攻撃をかわした。

ネギは自分を助けてくれた人の顔を見て驚きながらもその者の名前を呼んだ。



「…ね・ネギ先生に手を出さないでください!!」

「……の・のどかさん!」



しかし、ネギの声を聞き入れる事無くのどかはバックルを取り出すとカードを挿入する。

するとバックルからベルトが現れ、のどかの腰に巻き付くと掛け声と共にバックルのカバーを開いた。



「変身!」

「<OPEN UP>」



バックルから現れた光の壁を潜り抜けたのどかの姿を見てネギは絶句した。

のどかの姿は深い緑色の鎧を纏った戦士仮面ライダーレンゲルへと姿を変えていた。



「ま・まさか…のどかさんが……。」



今だ事態が飲み込めないネギの姿を一目見るとレンゲルはビートルアンデッドに挑んでいった。





学校の外れでは一足早く到着したギャレンが海蛇の祖たるサーペントアンデッド目掛けてギャレンラウザーを放つ。

しかし銃弾は亀の祖たるトータスアンデッドと三葉虫の祖たるトリロバイトアンデッドによって防がれる。

2体のアンデッドがギャレンの攻撃を防ぐとサーペントアンデッドとトリロバイトアンデッドが鎌と鉤爪でギャレンを襲う。



「くぅ!!」

「……ぐわっ!!」



何とか2体の攻撃をかわしたギャレンにトータスアンデッドの体当たりが決まり吹き飛ばされた。

吹き飛ばされたギャレンに向おうとする3体のアンデッドの後方で始が乗るバイクと虎太郎が運転する車が駆けつけ。

車から刹那、真名、楓が降り立つとカードをバックルに装填して掛け声と共にバックルのカバーを開いた。



「「「変身!!」」」

「「「<OPEN UP>」」」



変身した3人がアンデッドに向って行くと、始もバイクから降りて向おうとした時、突如広瀬から連絡が入る。



「別の場所でレンゲルとカテゴリーAが出たわ! 場所は…。」

「…分かった、其処には俺とエヴァで行く。」

「無茶だよ始、相手はレンゲルとカテゴリーAだよ!」



しかし、虎太郎の制止を振り切りエヴァをバイクの後ろに乗せた始は現場へと向っていった。





レンゲルはレンゲルラウザーを振り下ろすが、ビートルアンデッドは剣で薙ぎ払う。

薙ぎ払われてよろめくレンゲルに向ってビートルアンデッドは剣を振るう。

のどかは闇雲にレンゲルラウザーを振るうが全て防がれて反撃を受ける。

アンデッドに対抗出来るライダーシステムと言えど、バトルファイトを戦い抜いた戦士相手に少し前まで普通の中学生だったのどかには分が悪すぎる相手だった。

しかし、負けじと今度は突きかかるが難なくかわされ、反撃を喰らい吹き飛ばされた。



「のどかさん!!」



ネギはビートルアンデッドの攻撃に倒れるのどかの許に駆け寄ろうとするが彼の前にビートルアンデッドが立ち尽くす。

レンゲルことのどかはネギを助ける為にダメージが残る身体を必死に起こそうとする。

その間にもビートルアンデッドはネギに近づいて行く、既にネギにも抵抗する力が残されていなかった。



「(こ・このままじゃ…ネギ先生が……。)」



尚も必死になって身体を起こしビートルアンデッドの前に立つのどかに対して直接のどかの心に語り掛ける者が居た。



「(コノママジャ、アノオトコハコロサレルゾ……オレニ、ソノカラダヲユダネロ……。)」

「(で・でも、そしたらあなたは、また人を傷つけるんじゃ……)」



のどかは戦いながらも自分に語り掛けてくる邪悪な存在と対峙していた。



「(…イイダロウ、トクベツニアノオトコハタスケテヤロウ……ソレデモイヤナラ、コノママアノオトコガコロサレルトコロヲミテイルガイイ……。)」



迷っているのどかに対してビートルアンデッドが剣を振り上げる。

避ける事は出来ないと確信していたレンゲルだったが其処にネギの魔法が届く。



「ラス・テル マ・スキル マギステル」

「風花!! (フランス)」

「武装解除!! (エクサルマテイオー)」



ネギの呪文によりビートルアンデッドの剣がビートルアンデッドの手から離れる。



「…僕の生徒……のどかさんに手を出さないでください!!」

「……ね・ネギ先生…。」



必死になって自分を護ってくれるネギの姿を見てのどかは決心した。

のどかは自分の意識が再び闇に落とされる前に声を上げて叫んだ。



「た・例え悪魔になっても…。 ね・ネギ先生は……ネギ先生は私が護る!!」



叫び終えた瞬間レンゲルはビートルアンデッド目掛けて駆け、ビートルアンデッドにレンゲルラウザーを打ち込む。

戦いは形勢逆転しレンゲルは幾度と無くレンゲルラウザーをビートルアンデッドに叩きつける。

そして、渾身の一撃でビートルアンデッドを跳ね上げると、腰のホルダーからカードを取り出し、石突に付いているスリットに通した。



「<RUSH>」

「<BLIZZARD>」

「<POIZON>」



「<BLIZZARD VENOM>」



3枚のカードの力を得たレンゲルはその力をレンゲルラウザーに収束させビートルアンデッドに突き刺した。

突かれた反動で吹き飛んだビートルアンデッドの印が開くとレンゲルはカードを投げ付け封印する。

カードが手元に戻って来たのを確認するとレンゲルはバックルのカバーを閉じ宮崎のどかの姿へと戻った。



「の・のどかさん、無事だったんですね。」



ネギは今の状況よりのどかの安否を気遣う為にのどかの許へ近づく。

しかし、ネギがのどかの許へ近づいた瞬間のどかは突然ネギの喉許を締め付け始めた。

突然の行動ながらネギはのどかの顔を見ると、のどかは獣の様な目でネギを見つめていた。

のどかがネギの喉許を締め付けている中、ネギは抵抗する事無くのどかの名を呼びかける。



「の・のどかさん…のどかさん……。」



何度かのどかの名を呼びかけると、のどかは手の力を緩めて表情も何時もののどかに戻る。

そして、我に返ったのどかは喉許から手を離すと涙を流し誤りながらネギを抱き上げる。

解放されたネギは弱々しくものどかが戻ってきた事を喜んでいた。



「……の・のどかさん、無事で良かったです。」

「…ね・ネギ先生……私は…。」

「…そ・それと、またのどかさんに助けて貰っちゃいましたね……。」



のどかに向って笑顔を見せるとネギは気を失ってしまう。

意識が闇から戻ってきたのどかはネギを近くの岩場に寝かせる。

すると、のどかは後部に鋭い衝撃を受けて気を失ってしまう。

倒れたのどかの後ろには何者かが倒れたのどかを見ていた。



「(突然居なくなったと思ったらこんな所に居ましたか…。)」

「(しかし、レンゲルの支配から完全に逃れるとは……やはり彼を消しておきますか…。)」



何者かの手がネギに伸びようとした時、遠くからバイクの音が聞こえてくる。

今、自分の姿を見られるのは良くないと考えた何者かはのどかを抱えてその場を後にする。





グレイブとランスがサーペントアンデッドに斬りかかる。

しかし、グレイブの剣はトータスアンデッドの甲羅でランスの槍はサーペントアンデッドの鎌で弾かれて反撃を受けてしまう。

ラルクが2人を援護しようとラウザーを構えるが怪我をしていた腕に痛みが走り照準が合わない。

照準を合わせるのに梃子摺っているラルクにトリバイトアンデッドが鉤爪を振るう。



「しまっ……。」



かわす事が出来ないので身構えるラルク。

しかし、ギャレンの銃弾がトリバイトアンデッドに届き、怯んだ所をラルクは蹴り飛ばした。



「大丈夫か、龍宮。」

「…すまない、橘先生。」



二人の下にグレイブとランスがサーペントアンデッドの攻撃を喰らい吹き飛ばされて来た。

トータスアンデッドとトリバイトアンデッドは再びサーペントアンデッドを護るような体制でサーペントアンデッドの前に立つ。



「アイツも上級アンデッドでござるか……厄介な相手でござる。」

「それに、他の2体が自分の頑丈な身体で上級アンデッドを護っているから攻撃が届きません。」

「様はあの2体を足止め出来れば良いのだろう……。」



4人は僅かな間、会話を交わすとギャレンとラルクがサーペントアンデッド目掛けて銃弾を放つ。

その銃弾を2体のアンデッドが自らを盾にして防ぐと、グレイブとランスが2体目掛けて駆けて2体のアンデッドを踏み台にして飛び越えた。

2体のアンデッドを突破されて怯んでいるサーペントアンデッド目掛けてグレイブとランスはラウザーを構えてカードをスリットに通す。

2体のアンデッドを蹴った事でサーペントアンデッドの姿が見える様になったラルクも同様にカードをスリットに通した。



「「「<MIGHTY>」」」



腕に痛みが走り照準が定まらないラルクにギャレンが後ろから回り込み腕を掴んで腕を固定する。



「これで良いのだろう、早く撃て!」

「…わかった!」



放たれたラルクの必殺技がサーペントアンデッドに決まるとグレイブとランスも続く。

3人の必殺技を喰らったサーペントアンデッドの印が開くとラルクがサーペントアンデッド目掛けてカードを投げ。

封印されたカードがラルクの手元に戻ってきた。



「龍宮、そのカードを俺に。」



ラルクはギャレンに封印したカードを手渡すとギャレンは左腕に付けていた機械、ラウズアブソーバーに差し込む。



「<ABSORB QUEEN>」



QUEENのカードを差込み、ラウズアブソーバーを起動させる。

ラウズアブソーバーにダイヤと孔雀の紋章が浮かび上がる。

アブソーバのホルダーからJACKのカードを取り出すと横に付いているスリットに通した。



「<FUSION JACK>」



瞬間、強烈な光がギャレンを包み込み光はやがて孔雀の羽を連想させる形へと変化する。

光が収まるとギャレンは孔雀の翼を背負い金の鎧と仮面を得た、ギャレンジャックフォームへと進化した。



「……橘先生!!」



突然、ギャレンの姿が変わった事に呆然としていた刹那だったがトータスアンデッドとトリバイトアンデッドがギャレンに向って襲い掛かってくるのを確認した。

ギャレンは慌てる事無く同様に進化したギャレンラウザーからカードを取り出しスリットに通した。



「<BULLET>」

「<RAPID>」

「<FIRE>」



「<BURNING SHOT>」



3枚のカードの力を得ると背中の翼を展開させ突っ込んできた2体のアンデッドを飛翔してかわす。

そして、上空から2体のアンデッド目掛け灼熱の銃弾を放つ。

降り注がれる灼熱の銃弾の前に防御力の高いトータスアンデッドとトリバイトアンデッドと云えど防ぐ事は出来ず2体のアンデッドの印が開く。

ギャレンは着地すると同時に2枚のカードを放ち2体のアンデッドを封印した。



「上級アンデッドのカードはこの様に使うのさ!」





ネギが目を覚ますと目の前には始とエヴァの顔があった。

辺りを見回したがのどかの姿は無かった。



「…あれ、のどかさんは…?」

「のどかだと? 此処には坊やしかいなかったぞ。」

「そ・そんな…確か、此処に来たらアンデッドが出てきて……。」

「それで、アンデッドは何処に?」

「そ・それは……。」



ネギが立ち上がろうとした時、懐から1枚のカードが落ちる。

始が拾い上げてカードを見るとそれはレンゲルが封印したカテゴリーAのカードだった。





のどかを連れ戻した何者かは金色の藻が浮かぶ浴槽に眠っているのどかを漬け込む。



「(出来ればこの様な事はしたくは無いのですが、彼女は以外にも意思が強かった様です…。)」

「(目覚めた時は、今度こそ……。)」





ネギは一人銅像の前で物思いに耽っていた。

其処に偶然通り掛かった橘が話しかける。



「どうしたんだ、ネギ?」

「…橘さん。 ……実は…。」



ネギは橘にのどかの事を話す。

のどかが自分を助けてくれた事、その後再び姿を消してしまった事。



「…のどかさんは、もう2度と戻って来ないんでしょうか…。」

「……4年前に睦月と言ってレンゲルになった男が居た、そいつも一度はレンゲルに支配されて俺達の前から姿を消した事があった。」

「そんなあいつを帰ってくると信じて待ち続けたのが恋人だった望美だった。」

「その子は睦月を救う為にレンゲルに支配された睦月、時にはアンデッドにですら立ち向かった。 何でもない普通の女の子がだ…。」

「のどかと言う女の子を大切に思うならその子を信じて、お前も彼女を救う事を諦めない事だ…。」



橘は立ち去ろうとした時一言呟く。



「俺は、その人の思いに気付かず、本当に大事な者を無くしてしまった。 そんな男を知っている……。」





麻帆良の森の奥で剣崎はジョーカーの本能と戦っていた。

しかし、傷ついた身体と度重なる戦いは押さえ込んでいたジョーカーの本能を呼び起こさせようとしていた。

そして……。



「……は・始、済まない…も・もう、俺だけでは…う・うぉおおおおお~~~~~!!」



深夜の麻帆良の森の奥で封印されていた残酷な殺し屋が再び目覚めた。

ネギま!剣 / 第13話 蘇る剣

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