麻帆良に羽ばたく太陽の翼 第1話 投稿者:TWIN,S 投稿日:04/09-04:50 No.184
……許さん…貴様だけは絶対に許さん!!
……俺は約束したんだ…この星を守る為…例えこの身が滅びても貴様を倒す!!
……受けるが良い……これが俺達の……最後の力だ!!
暗黒の世界から地球を守る為、勇者達は炎の鳥となり強大な悪を打ち倒した。
しかし、悪を打ち倒した強大な力は次元の壁を破り勇者達を別なる世界へと送ってしまった。
そして、別なる世界に辿り着いた一人の勇者が目覚めた時、目の前には2人の少女がいた。
「……う・動いたアル…。」
「…信じられません、確かに超さんに言われたとおりに修理は完了しましたけど、エネルギーは入れてないのに…。」
「……そ・それも違うアル、あのロボットはとても動かせるような代物じゃなかったアル…。」
髪の毛を団子状に結った女の子と眼鏡をかけた女の子が後退りをしながら動き出したロボットを眺める。
うろたえる2人の少女を尻目に動き出したロボットは辺りを見回す。
すると何かを発見したのかロボットは立ち上がると歩き出し、部屋の片隅に置いてあったタンクの前で立ち止まる。
「…葉加瀬、あれは一体何アルか?」
「あれは茶々丸用に作った皮膚のコーティング剤です……まだ未完成ですけど…。」
葉加瀬と呼ばれる少女が作ったコーティング剤をロボットは取り出す。
それを全身に満遍なく塗るとコーティング剤は変化を始めた。
「…な・何ある…あのコーティング剤、形状記憶効果でも有るアルか?」
「そ・そんな機能有りませんよ…それに頭髪まで再現は不可能です……。」
変化が終わると先まで立っていたロボットは一人の青年へと姿を変えた。
超と葉加瀬は目の前の光景を信じられないような眼差しで眺めていたが、青年へと姿を変えたロボットは笑みを浮かべると…。
「…どうやらエネルギー同士の衝突の時にコーティング剤が剥がれ落ちたらしくて…。」
「戻れなくてどうしようかと思いましたが助かりました。」
「…勝手に人の家の物を使っちゃって、すいません。」
謝罪の言葉を言ってから頭を下げた。
「……しゃ・喋ったアル…。」
「…そ・そんな…メモリーには言語プログラムは無かったのに…。」
「どうかしましたか…確か地球の言葉はこれで良かった筈ですよね…。」
彼の行動は彼女達に更なる衝撃を与えたらしいが、本人はまったく理解してない様子である。
やがて、何とか気を持ち直した超が青年に向かい言葉を発っする。
「…お・おまえ何者アル?」
超の質問に青年は笑顔でこう答えた。
「…僕ですか……僕は火鳥勇太郎です…。」
「…火鳥!?」
「…勇太郎!?」
超が苗字を葉加瀬が名前を発する。
これが、魔法が存在する世界での奇跡の勇者(ミラクルヒーロー)登場の瞬間であった…。
麻帆良に羽ばたく太陽の翼 第1話
「……う・宇宙警備隊に、宇宙皇帝じゃと……!?」
麻帆良大学工学部に有る葉加瀬の研究室に呼ばれた学園長が火鳥から経緯を聞いて声を上げた。
本来なら火鳥を学園長室まで連れて行かねばならない所だが、火鳥勇太郎の身体を再生させただけの火鳥に服が無い為。
こうして学園長に来てもらったのだ、因みに現在は研究所から借りた白衣を羽織っている。
「はい、そうです。 僕達は邪悪なドライアスを追って遠い宇宙から来ました。」
「でも、皆さんはドライアスをご存じないですか…?」
「……火鳥、コレを見て欲しいネ…。」
火鳥の話を聞いていた超がパソコンを操作し画面に映し出されたものを火鳥に見せた。
「…これは!!」
画面に映し出された物を見て火鳥は画面に喰い付く。
映し出された画面には至る所が損傷した戦闘機とスペースシャトルが映し出されていた。
「次に、コレとコレネ…。」
画面を切り替えると、同じく損傷した戦車と他多数の機体、パトカーと消防車に救急車に飛行機。
「コレは3日前、火鳥と一緒に麻帆良の森の奥深くに突如現れたネ…。」
「そうじゃ、その時森の奥には巨大な空間の歪みが起こるのを見た者がおる…。」
「……つまり、火鳥さんは歪みの向こう…異世界から来た事になるんですか!」
葉加瀬が出した結論を言うと火鳥が超達に声を掛けた。
「それで、仲間は…仲間は無事ですか…?」
「な・仲間…アルか…。」
上手く伝える事が出来ない超に代わり学園長が結論を言う。
「これ以外に見つけた物は無かった…ワシは超君達に調査ついでに君の修理を頼んだのじゃが…。」
それだけ言うと学園長と超は黙り込んでしまった。
遠い宇宙の彼方からやってきた者が悲願を果たした結果が異界の地へと運ばれてしまったのだ。
おまけに仲間は行方不明、気の毒であると誰もが思ったが、火鳥は明るい声で…。
「そうですか、ならば仕方がありません。」
「…そ・そんなので良いのか……?」
「はい、俺の仲間達です。 これしきの事で参るような連中じゃありませんよ。」
「そ・そうか…そ・それでお前さんはこれからどうする…?」
「そうですねえ……どうしたらいいでしょうか…?」
自分の身の振り方が分からない火鳥に対して学園長は助け舟を出した。
「…フム、こうなったのも何かの縁じゃ暫くこの学園で暮らすと良い。」
「そうですか、ありがとうございます。」
「ぬぅあ!!」
感謝の言葉と共に学園長に抱きつく火鳥であったが学園長は裸の男に抱き付かれるのは微妙な感じであった。
「……何かとんでもない事になりましたね…。」
「そうアルか? 中々面白そうアルよ。」
こうして、魔法が存在する世界で火鳥勇太郎の新たな物語が始まろうとしていた。