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【序章】王の来訪 投稿者:アイオーン 投稿日:08/22-15:31 No.1148
†
麻帆良学園が茜色に染まる頃
空の色は校舎と同じ茜色で、校舎と空の境界線がここからだと少し曖昧になる。
そんな曖昧な空をカラスが鳴きながら横切っていく。
きっと今頃がカラスの帰る頃なのかな……と日本の童謡のことを思い出しながら軽く現実逃避。
けど……
そんな原風景をぶち壊すように、辺りに大音声が響き渡る。
「ああああんた、やっぱり超能力者だったのねーーー!!」
夢なら覚めてほしかったな~。
だって、こんなのって無い。
自分の目標のために極東の島国“日本”を訪れた。
これから修行の日々が始まるというのに、開始早々『バレちゃいました』なんて…
アスナさんが指を突きつける。
その先にいるのはボク…ネギ・スプリングフィールド。
つまりアスナさんが指す超能力者とはボクのことで、それはあながち間違いじゃない。
ただ、ボクは普通の人が指すような“超能力”みたいな力を使うことが出来るけど超能力者ではなく、正確に言うなら魔法使いだ。
それでも、『はいそうです、。ボクは超能力者です』と開き直る訳にもいかない。
「い、いや、ちがーーーっ!?」
何というか必死になって否定しようとしたんだと思う
けれど、全然言葉になっていない。
日本語、結構勉強したんだけど…土壇場になるとやっぱり言葉って出てこない物なんだ。
と、冷静に混乱していた。
冷静に混乱することなんてあるのだろうかとも思うが、実際この時のボクはかなり混乱していました。
それにアスナさんはボクの言ってることなんか聞いていませんでした。問答無用です。
「ごまかしたってだめよ!目撃したわよ!現行犯よ!!」
確信した目。
確信しきった目。
確信しちゃった目。
今の動揺しているボクにはとてもじゃないけど説得できないだろう。
「あうう~~~~~~っ」
ばれた。完全無欠にばれてしまった。し、しかもボクが担任の勤めるクラスの生徒に。
仕方がなかった。宮崎さんが階段から落っこちていたのだ。
あの時、魔法を使っていなかったらきっと宮崎さんが怪我をしていた。
それを無視して、秘密を守っても仕方がない。
だから魔法を使って宮崎さんを助けた事に後悔は無い。うん、それだけは絶対だ。
立派な魔法使い(マギステル・マギ)を目指す身として当然の行動だ。
けれど、今のボクは仮免期間の修行中の身だ。
このままでは仮免没収の上に故郷に連れ戻されてしまう。
へ、下手したらオコジョにされてしまう。
まずい。
それだけはまずい。
何とかしなければ。
そ、そうだ。
それならアスナさんに黙っていてもらえばいいんだ。
いくらなんでも、それぐらいは……
「他の人には内緒にしてください。バレるとボク大変なことに~~~」
「んなの知らないわよ!!」
早いな~…1秒あったかな、断るまで…
だめだ。
だめでした。
だめなんです!
完全無欠に断られてしまいました。
アスナさんは朝のことでかなり怒っている。
こんな状態じゃ、説得なんて無理に決まっている。無理なんです!
どうしよう、どうしよう、どうしよう……
「ううっ、 仕方ないですね。」
もうこれしかない。
本当はこんなことなんかしたくないけれど・・・・・・
「な、何よ。」
ボクの雰囲気が変わって少し戸惑った様だが、それでもアスナさんは強気に振舞って言い返してくる。
「秘密を知られたからには記憶を消させていただきます。」
「ええっ!?」
仕方が無いのです。
どうしようもないのです。
「ちょっとパーになるかもですが許してくださいね。」
「ギャーーーちょっと待ってーーーっ。パーッて!?」
《忘却の呪文》を唱える。
呪文に呼応して体の中の魔力が一つの効果を成す為に収束していく。
だが……呪文の旋律は唐突に停止する。
・
・
・
あ、あれ、《忘却の呪文》ってどんな呪文だったっけ。
大変だ!呪文をど忘れしてしちゃった!?
けれど唱え始められた呪文によってボクの意思とは無関係に魔力がどんどん収束する。
まずい。このままだと魔力が暴走しちゃう。
でも、記憶は消さなきゃいけないわけで、
なんとかなるよね・・・・・・?
ともかくこのまま、
「き、消えろーーーーーーーーっ」
その瞬間、開放された魔力が制御を失って暴走する。
信じられないぐらい強い風が吹き荒れる。
そうして行き場を失った魔力が破裂して、辺り一面がまばゆい光に包まれる。
「きゃーーーー!!」
アスナさんの叫び声が聞こえる。
あまりの光に目を開けていられなくなって目をつぶる。
失敗した。下手をしたらアスナさんは……
だが、完全に僕の手を離れた魔力をどうにかする術を今のボクは持ち合わせていない。
眩い閃光に包まれる。
同時に浮遊感
まるで風に抱かれているみたいだ。
後悔と恐怖を感じながら眩い光に瞳を閉じる。
意識がなくなって視界がブラックアウトする瞬間、“何か”を捉えた気がした。
その“何か”はこの暴風の中でも平然と立っていた。
何者であろうと平伏させる圧倒的な暴力の中で、そんな物はそよ風同然だといった感じで……
――――“大嵐(タイラン)”――――
その姿が一瞬、遠い記憶の中の“あの人”に重なったような気がした。
風は未だに吹いている。
†
そうして風が鎮まり始めた頃、意識が戻る。
「っ――――痛っ…!」
頭がぼんやりとする。
背中に痛みが走る。
まだ十分に覚醒していない頭で周りの様子を伺う。
どうやら、今のボクは木にもたれかかっている様だ。
最初に立っていたあたりから大体5メートル。
あまりに強い風にボクは吹き飛ばされてしまったようだ。
そうして状況を把握している内に意識がだんだんハッキリしてきた。
活動を再開したボクの頭は今更ながら、大事なことを思い出した。
『そうだ、アスナさんは…!!』
一番最初に気になったのはアスナさんの事だ。
もしもボクのせいで怪我をしていたら・・・・・・
想像しただけでもゾッとしない。
彷徨う視線。
その時、“チリン”という軽やかな鈴の音が聞こえた。
音のした方へ視線を向ける。
アスナさんは意外にもボクのすぐ近くにいた。
木の陰に隠れてよくわからないけど、表情は穏やかなのできっと無事だろう。
アスナさんに駆け寄ろうとして、はっきりしてきた頭が初めて“彼”を視界に捉えた。
その“彼”は“あの人”に似ていた。
それは外見的な特徴でもないし、性格の事も知らないから違うだろう。
―――だが確信していた、ただ、漠然と……―――
その立ちはだかる者を嘗め切った不遜な笑みが、
見つめられた者が思わずとも平伏してしまう真っ直ぐ前だけを見つめる瞳が、
何人たりとも汚すこと叶わぬ輝く魂が、
己の全てを肯定する堂々とした立ち姿が、
―――感じさせていた……―――
その在り方の全てがとても似ていて……全く違っているということを。
「問うぞ……」
そこには…
「貴様が、我(オレ)のマスターか?」
――――夕日を返す“黄金”があった――――
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