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子供先生と仮面の男 プロローグ(ネギま!×仮面ライダー (オリ主・オリ有) 投稿者:紅 投稿日:04/08-02:15 No.24

注意 この作品は『魔法先生ネギま!』と『仮面ライダーシリーズ(一号~RXまで)をクロスした作品です。さらに主人公はオリジナルのライダーです。





子供先生と仮面の男

プロローグ





イギリスの山間にある小さな村。

世に決して広まらぬモノ『魔法』を扱う者たちが集う村。



そこに二人の少年がいた。



一人は『ネギ・スプリングフィールド』

かつての『大戦』の折、目覚しい活躍をしたと言われる英雄『サウザンドマスター』の血を引く少年である。



もう一人の少年の名は『リヒト・ウェントリッヒ』

ネギのような目立つモノは持っていないが、それでも並の人間が羨んで余りある才能を持つ少年である。



二人はふとしたきっかけで出会った。

ネギはリヒトに英雄である『父親』の事を語り、リヒトは自分の『夢』をネギに語る。

出会ってから一年、お互いの年齢が四つになる頃には親友と呼んでも差し支えない仲になっていた。



二人で悪戯をして怒られる事もあった。

二人で喧嘩をして睨みあう事もあった。

二人で悲しみにくれて泣き合う事もあった。



そこには確かな『幸せ』があった。



だが……そんな『当たり前な幸せ』は脆くも崩れ去る事になる。





余りに突然の出来事だった。

村に現れた悪魔の群れ。

ヤツらは平和だった村を薙ぎ払い、燃やし尽くした。

勇気を奮い立たせて反撃する人々、逃げ惑う人々の悉くは石にされ、実力者のほとんどは殺されていった。

それは正に『悪夢』と言える光景だった。



「ネカネお姉ちゃーーん! おじさーーん! リヒトくーーん!」



そんな猛火が蹂躙する村の中をネギは独りで彷徨っていた。

今日、この村に帰省してくるはずの姉とずっと一緒に生活してきた村のみんなの姿を捜して。

彼は走った。

まだ小さい身体を全力で動かして走った。

無事でいてほしいと強く願いながら。

だがその思いもむなしく、彼の叔父は変わり果てた姿で発見された。



「おじ……さん?」



目の前には杖を構え、何かを睨みすえた姿勢で石化した魔法使いたちの姿。

それらはまるで初めからそうであったかのように、ただそこに佇んでいた。



「う……」



とめどなく溢れてくる涙。



「ぼ、僕がピンチになったらなんて思ったから…? ピンチになったらお父さんが助けにきてくれるって……」



嗚咽まじりに搾り出される言葉。

それを聞き届けたのか。

彼の周囲に魔物たちが集まり始めていた。



五メートルはあろう巨躯の魔人。

痩せ細いが邪悪な面持ちでネギを見つめる悪魔。



ぞろぞろと集まってくる彼らに対し、ネギは対抗する術を持たなかった。

自分の置かれている状況に気づき、ガタガタと震えるネギ。

魔人はその拳を目の前の哀れな子羊を叩き潰すために振り上げる。



「……お父さん。………お父さん」



消え入りそうな声で尚も父を呼ぶ。

無情にも振り下ろされる巨腕。



風を切り、唸りを上げて迫るその一撃は……。



バシィイ!!



突如、現れた男が受け止めた。



「……えっ?」



ネギの目の前ではためくローブ。

バチリ!と音をたてて男の腕から雷が迸る。

その挙動に身の危険を感じた魔人はとっさに腕を引き、逆の腕で身体を庇う。



「――――――――雷の斧!!」



だが男は魔人の防御などお構いなしに魔法を放った。

一瞬の閃光と共に魔人に振り下ろされる雷斧。

その一撃は男の四倍はあるだろう体躯の魔人を一撃の元に両断して見せた。



あまりの光景にへたり込むネギ。



乱入者の出現に戸惑い、様子を窺っていた魔物の群れはまるで示し合わせたかのように一斉に男に襲い掛かる。

圧倒的な物量でもって叩き伏せる心算なのだろう。

だがその考えが余りにも浅はかで楽観的なものだったという事を彼らはこの後、自分たちの全滅という結末で知る事になる。





時を同じくして。

リヒトもまた燃え盛る炎の中、生き延びている人間の姿を求めて彷徨っていた。



「ネギーーー!! 父さーーーん!!! スタンのじいちゃーーん!! みんなーーーー!!!」



息を切らせながら走る。

「大丈夫、みんなきっと無事だ」と自分に言い聞かせながら。

だが胸の内に根付く不安は消えてはくれない。

この惨状を見てしまってはそれも無理からぬ事だろう。

むしろ五歳という年齢で、これだけの行動力を発揮している事を賞賛するべきなのかもしれない。



「はっ…はっ…はっ……。もしかしてもうみんな村の外に逃げたのかな………?」



希望的推測を述べながら周囲を見渡し、誰もいない事を確認してからまだ火が届いていない民家の影に隠れる。

安心感からか両足の力が抜け、地面にへたり込んでしまう。

子供の体力、気力でこの猛火の中を駆け続けたのだから無理もない事だろう。

張り詰めていたモノが切れた途端に襲い掛かってくる眠気に身を任せてしまいそうになる。

だが彼は自分の頬をキツク叩くとすぐに立ち上がった。



「(村の外にでよう。だいじょうぶ、みんなきっとボクを待ってる……)」



そっと首だけを通りに出して周囲を窺う。

猛る炎の勢いは留まるところを知らず、徐々にだが確実に建造物を蹂躙していく。



これ以上いれば自分がいる場所も危ない。



そう思った彼は大きく深呼吸をしてから駆け出した。

目指すは村の外。

きっとそこに自分の求める人々がいると信じて。

だがリヒトのその想いは裏切られ、彼は人生を大きく狂わされる事になる。





一度も魔物と遭遇する事なく村の外に出た彼を待っていたのは。

真っ白な雪を彩るように散る紅い液体と、自分が最も敬愛した人の無残な姿だった。



「父……さん?」



うつ伏せに倒れ、鮮血の海に沈んでいる男。

呆然と呟くリヒトの言葉に答える兆しは見えない。

その血の量と冷たくなった身体は彼が二度と起き上がる事がない事を鮮明に表している。

だがリヒトは物言わぬ父の亡骸に近づくとその身体を揺する。



「こんなところで寝てるとカゼひくよ? 父さん……」



亡骸は応えない。応えられるはずもない。

彼も頭ではわかっていた。

もう父は生きていないのだという事が。

だが認める事ができなかった。

あんなにも強かった父が、あんなにも雄雄しかった父が、あんなにも優しかった父が『死んだ』などと。



「……う、うぅ………」



嗚咽が洩れる。

リヒトの瞳からは涙がとめどなく流れ、ほとんど何も見えていない。

父の亡骸、杖を強く握り締めたままの手に触れる。



「ほう? まだ生き残りがいたのか……」



背後から聞こえてきた声に身体を振るわせる。

恐る恐る振り返ると、そこには白衣を纏った科学者然とした出で立ちの男がその後ろに魔物たちを従えて立っていた。



「あ……」

「恐怖で声も出ないか、小僧? 安心しろ、すぐにただの肉塊に変えてやる。……やれ」



しわがれた声で命令する男。

魔物たちは無言のまま、命令を全うするべく少年に近づいていく。



「あ……ああ………」



じわりじわりと迫ってくる死の予感にリヒトは震える。

男はその様子を見つめながら口元を歪ませた。



「死ね」



短いその言葉は男の狂気と喜悦に満ちていた。

命令を受け、口から閃光を放つ魔物。

その閃光は狙いを外すことなく力の無い少年と亡骸を貫いた。



次いで巻き起こる爆炎。

骨も残さぬとばかりに広がるその炎に男はまた口元を吊り上げる。



「さて……村に放ったヤツらはやられてしまった様子。これは想定外の事態じゃな。早々に引き上げるとしよう」



その痩せこけた顔に笑みを貼り付けて背を向ける男。

もはやここに用はないとばかりにその挙動には迷いも躊躇いもない。

だから彼は気づくのが遅れた。



「……る…ない」



爆炎の中、一対の瞳が自分を睨みつけている事に。



「ッ!?」



それは動物が持つ本能的な直感。

男はその導きに従い、横に飛んだ。

彼が先ほどまでいた場所を打ち抜く膨大な熱量。

それは地面を抉り、草木を消滅させながら突き進んでいく。

その桁外れの威力に目を剥く男に再び光熱波が迫る。



「ぬぅ!? 風花・風障壁!!!」



避けきれない事を察すると同時に無詠唱で防御魔法を行使する。

掲げた右手を中心に広がる暴風。

それは何者も寄せ付けぬ壁となって男の周囲に展開される。

それとほぼ同時に創り上げた風の壁と光熱波がぶつかり合った。



「ええい! ふざけた真似をしてくれる!!」



障壁に掲げた右手を介して自身の魔力を上乗せし、迫り来る魔力の塊を打ち消す。



「小僧!! 貴様かぁ!!!」



怒号と共に睨みつける。

その視線の先には無傷のリヒトの姿があった。



「許さない……。オマエはぜったい許さない!! あああああ!!!!!」



右手に集中させた魔力を放つ。

それは先ほどまでの光熱波とは似て非なるモノ。

膨大な魔力で練り上げられたソレは先ほどの数倍、いや数十倍の熱量を持っていた。



「舐めるなぁあああああああ!!!!」



最大出力で展開される障壁。

激突する二人の魔力。

その余波は周囲に集っていた魔物たちを消し炭へと変えていった。



「ふっ、フフフ……くくく、あっはっはっはっはっは!!」



拮抗する魔力の押し合いの最中、男は突然、笑い始める。

それは純粋に目の前の少年を評価する笑み。

そう、男は少年の力を認めた。



その凶悪かつ残忍な性格の為、才能に溢れながらも魔法協会を追放された自分。

協会からの追っ手から身を隠し、密かに魔法の腕を磨き研究を続けてきた自分。



その自分と真っ向からぶつかり合いながらも拮抗してみせる目の前の少年を。

男は素直に賞賛し、賛美した。

そして同時にこうも思った。



コイツは使える、と。



「小僧!! ワシは貴様が気に入った!! その溢れる才気を! まだ成長しきっておらぬ肉体を! まだ熟しきっておらぬその頭脳を! このワシの為に利用させてもらうぞっ!!!」

「あああああああああああああああああああああ!!!!!!」



男の狂喜に満ちた言葉も理性という名のブレーキの外れたリヒトには聞こえていない。

なぜならリヒトは最後の光熱波を放った折に自分の意識を手放しているからだ。

彼に残っているのは目の前の男を『殺す』という殺意のみ。

ただそれだけがリヒトの身体を突き動かしているのだ。



「くくく! 面白い! 実に面白いぞ、小僧!!! だが茶番はもう終わりだ……魔法の射手! 光の一矢!!!!」



空いている左手を頭上に掲げ、高らかに呪文を唱える。

バチチッと帯電する音と共に男の手中に現れる一つの光球。

それは男の意思を受け、未だに魔力を放出し続けるリヒトへ弧を描いて飛翔した。



「あああああああがっ!?」



放たれた光球は男の狙い通り、リヒトの後頭部を直撃。

彼は糸の切れた人形のようにその場に倒れ伏す。

しかしリヒトには意識こそないが、これといって外傷があるようにも見えなかった。

自身の計算通りの結果に男は口の端を吊り上げる。



「予測済みとはいえ驚嘆すべき頑強さよ……。研究対象としては正にうってつけじゃな。く、くくく! ははははははははっ!!!!」



鳴り止まぬ凶笑が周囲に響き渡る。

やがて男は気絶した少年と共に姿を消した。



リヒトとネギ。

幼いながらも意気投合した少年たちの進む道は。

この日、この時、この瞬間に。

本人たちの意思とは関係なしに別たれてしまった。





三年後。



電灯のほとんどない暗い廊下を男が一人歩いていた。

幽鬼じみたその表情をわずかばかりの灯りが照らす。

白衣を揺らし、猫背気味な身体をゆらりゆらりと揺らしながら男は歩く。



彼の目的はタダ一つ。

三年前に偶然、手に入れた『実験体』。

今までの月日の全てを注ぎ込んで作り上げた自身の誇る『最高傑作』であり『研究成果』。

ソレの最終調整を行う為に、彼はいつもなら決して行わないだろう急ぎ足で歩く。

そう、彼はかつてない程に昂揚していた。



「もうすぐだ。もうすぐ完成する。ワシの最高傑作、コードネーム『VOID』が……」



堪えきれぬ笑みを浮かべ目的地へ急ぐ。

だが彼のそんな子供じみた高揚感は。



ドゴーーーーーーーッン!!!!



突然の轟音とそれに伴う震動によって吹き飛ばされた。



「な!? なにが起こったッ!?」



その言葉に答えるモノはいない。

なぜならこの地下研究所にいる『人間』はこの男ただ一人だけなのだから。

耳を劈く警戒を促す騒音。

男は近場のコンピューターを操作、何が起こったかを確認し絶句した。



「ば、バカな!? 侵入者じゃと!?」



研究所の全容を知る事ができるマップに映る識別不明を示す赤い点。



「地下五十メートルに設けられたこの穴蔵を探し当てる者がいようとは!! ヤツらの狙いは……まさか!?」



赤い点は三つのルートに別れ、まるで『何か』を探すような素振りで研究室を廻っていた。

その動きを見て、男は一つの推測を立てる。



「狙いは『VOID』じゃな!? おのれぇ、どこの回し者かは知らぬが、アレは渡さぬぞぉ!!!」



狂気交じりの憤怒に顔を真っ赤にさせながら駆け出す。

爆発音は止む事なく続き、次第にその規模を増していった。

もしもマトモな神経を持つ者がこの研究所にいたならば口を揃えてこう言っただろう。



「ここはもう終わりだ」

と。





爆発の震動を感知した彼は閉じていた瞳を開く。

頭の中は霞がかり、思考はまとまらない。

ただ漠然と視線を動かすだけ。



「(………ココは……?)」



彼は青白い光が照らす水槽のようなモノに浮かんでいた。

直立した姿勢のまま動く事ができない。

腕にも足にも力が入らず、動かす事が出来るのは首から上だけ。

そんな自分の状況を彼は慌てる事無く冷静に分析していた。



「(……ボクは…? ……ボクはダレだ? コこは、どこダ?)」



視線だけを動かし周囲を見回す。

周囲には青白い光の元であるモニターが十数個。

いずれも何かの計測器であるらしく、常に変動している。

そんな計器の山に囲まれている中、自分の浮かぶ水槽は鎮座していた。

配置的には部屋の中心なのだろう。



「(ワカラナイ、ワカラない、わからない……)」



冷静に分析する傍らで彼の思考は徐々に渦を巻き始めていた。



自分が誰か? 

ここはどこか? 



最も必要であるはずの情報が手に入らない。

そしてもう一つ。

自分がここにいる経緯が彼にはわからなかった。



何故、自分がここにいる?



思い出そうと必死に記憶を探るが何も出てこない。

知識として引き出される記憶は存在する。

世界情勢や複雑な数式を解く為の様々な公式などは記憶の棚から引き出す事ができる。

だが……。

彼にとって最も重要であるはずのモノは思いだせなかった。



いや、思い出せないのではなく。

記憶が消え失せていた。



「(ボクは……だれだ? だれ、なんだ?)」



ドガーーーーーーーン!!!



彼の思考を遮るかのように爆発音が響き渡る。

そちらに視線を巡らせると、唯一の出入り口であるだろう自動ドアが粉々に破壊されていた。

破壊されたドアから昇る煙が一時的に視界を遮る。



「(……ナン、だ?)」



脳内で起こるパニックを保留し、そちらにのみ意識を集中させる。

コツコツと言う足音と共に煙の中からソレは姿を現した。



全身をフィットする形で包みこむ黒を基調にしたスーツ。

頭部を包み込むのは緑を基調にした仮面。

その赤い瞳が水槽の中にいる彼を見つめていた。

男の腹部に装着されたベルトの中心の風車が力強く旋回する。



「待っていろ。今、そこから助け出す!」



その雄々しい姿に違わぬ力強い言葉に彼は我知らず頷いていた。



「ライダァァアアパーーーーンチ!!!」



水槽を直撃する鋭くそして力強い一撃。

それは水槽に見事な風穴を開ける。

腕を引き抜くと同時に水が溢れ出し、彼の身体が重力に従って地面に落ちていく。

水槽の中でぐったりと横になった彼を、仮面の男は優しく抱き上げた。



「こちら、本郷だ。一文字、光太郎。捕らわれていた人間を一人、助け出した。そちらはどうだ?」



抱き上げられたままの姿勢で彼は呆然と仮面の男の会話を聞いていた。



「……そうか。首謀者は取り逃がしたか。……わかった。脱出するぞ!」



『誰か』との会話を終わらせた男は、彼を抱えたまま走り出す。

彼はなぜか遠のき出した意識のままかすれた声で男に問いかけた。



「アナタは……だれだ?」



男は数瞬の間を作るとこう答えた。



「仮面ライダー一号。正義の戦士だ」



そして名を失い、記憶を失った少年は……。

この日、新しい名をもらう事になる。

『本郷 嵐』

と言う名を。



こうして彼らは出会い、物語の歯車が動き出した。



これは運命に翻弄されつつも、成長していく二人の少年の物語。

子供先生と仮面の男 / 子供先生と仮面の男 第一話

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