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子供先生と仮面の男 第七話(ネギま!×仮面ライダー (オリ主・オリ有) 投稿者:紅 投稿日:04/08-02:21 No.31

子供先生と仮面の男

第七話 『回想。新たな出会い』





それは少し前の話。



―――――ヘヘ、この■■様に追いつけるかよ。



―――――■■、『落ちる鷹』か。なるほど、コソドロくさい名前だな。



出会いは偶然。



―――――なんてヤツだ! 未練はねぇのか!? これっきりになっちまう身内によ!!!



―――――身内……いないね。

―――――俺は守れなかった。お前は守ってやれ。



彼らは同じような『傷』を持っていた。



―――――勝負だ、■■■ィィィィ!!!!



―――――■■ィーーーーマッハキイイイーーーーーック!!!



―――――クソォオオオオオオオ!!!!!!



だが彼らは戦った。

出会いは偶然。

だが戦いは必然だった。

いや二人の立場を考えればその出会いすら偶然を装った必然だったのかもしれない。



―――――クソ、■■■……負けたぜ。だがどうだい、途中まではまんまと俺にはめられてただろ?



倒れた男をもう一人はどこか哀しげに見つめていた。



―――――家族の話、あれもか?



―――――へっ、いやあれは本当さ。俺が組織に身体を売ればあいつらももうヤバイ仕事する必要はないって言われてよ。……あとはよく知らねぇ。



―――――会ってないのか?



問いかけた男自身、倒れた男がどう答えるかよくわかっていた。



何故なら彼らは似ているから……。



―――――会えるかよ、こんな身体で……。アンタもそうだろ、■■……■……。



彼は口元を歪めながら予想通りの答えを吐き出し、押し黙った。

サングラスに隠れた猛禽類の瞳は霞んでしまい、ほとんど何も見えなくなっている。

耳ももう聞こえていないだろう。



―――――かも、な。



だが最後にかけられた言葉だけは確かに、男の耳に届いていた。



―――――だが……今はこの身体が俺のプライドだ。



―――――強いヤツだよ、お前は。

―――――お前なら神様だって倒せるのかもしれねぇなァ。



もはや口を動かすこともできない男は、背を向けて立ち去っていく彼に目で語りかけていた。



―――――……なんで俺は、もっと早くお前に会えなかったんだろうな?

―――――そうすりゃ俺も………この…身体を………誇れたかも………しれ、ねぇ……のに。



皮肉げで、少し子供っぽい笑みを湛えながら。

男の意識はそこで途切れた。





――エジプト・カイロ――



「あの戦いが終わって、もう三年か……」



その土地では珍しい服を着る者に周囲からの視線が集中するが本人は気にも留めない。

タチの悪い露店商売に声をかけられても無視する。

引き結ばれた唇は先ほどの独白を除けば一度として開かれていなかった。



「よぉ、『カザミ』のダンナ。今回も墓参りですかい?」

「アンタか」



小太りの中年に声をかけられ、男は初めて口を開いた。

鉄面皮を思わせていた表情も少しだけ柔らかくなっている。



「毎年よくもまぁこんな辺鄙な所に来る気になりやすねぇ? そんなに大事な人だったんですかい? 墓参りの相手は……」

「……どうだろうな?」



気安く声をかけてくる男に曖昧に言葉を濁す男、『風見志郎』。



「ま、こっちとしちゃアンタが来てくれるお蔭で稼がせてもらえるんだから文句なんてありやせんし、深く追求もしませんがね」



そう言って少し悪戯っぽく笑いながら男は持っていた包みを差し出す。

志郎は包みを受け取り、中身を確認すると無造作な手つきで代金を払った。



「それじゃまた次の機会に……」

「ああ」



小走りに去っていく男の背中を見送ると、志郎も踵を返す。



その手には包みを解かれた粗末な花。

それを大事に抱えながら彼は街を出て行った。





三年。

『BADAN』と名乗った組織が起こした戦い。

その終結から既に三年の月日が流れていた。



だがその戦いの事を『覚えている』者はほとんどいない。

戦いに深く関与していた者たちにしかその『記憶』は残っていないのだ。



それは『BADAN』の首魁である『JUDO』と『仮面ライダーZX』の最後の戦いの際に生じた膨大なエネルギーの余波が引き起こした奇跡。



人々は『BADAN』の猛攻の前に生きる気力を無くしていた。

そんな彼らに、世界に絶望し自分の力の無さを嘆き逃げる事を選んだ人々に、『それらに関する全ての記憶の抹消』と言う名の奇跡が起こったのだ。



一体、何がそうさせたのか?



もしかすればそれは、『人々に安らぎと平和を』というZX、『村雨良(むらさめ・りょう)』の願いが起こしたモノなのかもしれない。

いやあるいは『JUDO』の……。



真相を知る者はいない。

良本人ですらあの時の事はよく覚えていないと言っているのだ。

二人の戦いに対して傍観者でいるしかなかった他の者たちにわかるはずがない。



ただその奇跡のお蔭で今も人々は日々の平和を享受できるというのなら受け入れよう。

それが彼ら、『深く関わった者たち』の共通の見解なのだ。





「……」



砂漠の真ん中にジープを走らせる志郎。

まったく同じ景色が続く砂の絨毯を走っているというのに彼の運転に迷いは無い。



「そろそろだな」



揺らぐ地平の果てに見え始める黒点。

志郎はアクセルを踏み込み、目印である黒点目指して車の速度を上げた。



徐木に大きくなっていく黒点。

それは残骸だった。

原型がなんだったかわからないほどに風化しているがそれがかなりの大きさだった事だけは彼の乗っているジープとの対比でよくわかる。



志郎は車を止めると助手席に置いていた花を片手に歩き出す。

彼の向かう先には、縦長の黒い石が立てられていた。



「……」



志郎は石の前に無造作に花を手向けるとただじっとその『墓石』を見つめる。

そう、それは墓だった。

かつて彼が戦い、そして打ち破った一人の男の。



「……何かが始まるらしい。恐らくまた『戦い』になるだろう」



物言わぬ墓石に語りかける。



「ここならそう騒がしくはならないだろうが、頭上が五月蠅いからと言って迷って出てくるなよ?」



そんな冗談のような言葉を、彼は真面目な顔で言う。

そう冗談では済まないのだ。

彼らの戦う相手の場合。



再生怪人。



かつて彼らの前に敵として姿を現した異形たちのコピー。

そのデータや戦いの後に回収した素体などを用いて作られた者たち。



BADANとの戦いの時には、それまでに『仮面ライダーたち』が叩き潰したほぼ全ての組織の再生怪人が現れていた。

今回、始まるという戦いに彼らのような『亡霊』が現れる可能性も決して低くないのだ。



「……これはお前に言っても仕方ない事だな。お前の意思の有無など『行う側』の人間は気にも留めないのだから」



墓石に背を向ける。



この地に眠る者を呼び覚ますことのないようにと。

かつて戦い、少なからず共感した男を意志無き操り人形にさせない為にと。



誓いを新たにして。



「またいつか来る。じゃあな、『ベガ』」



ジープのミラー越しに墓石に言葉をかけてから、彼は去っていった。

風が舞い、さらさらと音を立てて砂が散っていく。



彼は知らない。

墓石の下に深く埋めてあるはずの男の身体が既に消えている事を。



彼は知らない。

『再会』の日はそれほど遠い事ではない事を。



運命と言う名の歯車は、ここでもゆっくりと回り出していた。





――日本・麻帆良学園都市――





「あーー! ッタクどうしてこの国はこうグチャグチャしてるかナぁ!」



一人の男が駅前で地図を握り締めながら叫んでいた。



どうやら道に迷っているようだ。

遠巻きにその様子を見て笑っている人々もいるというのに男は一目も気にせずに白いバンダナを巻いた頭をガシガシと掻く。



男は目立っていた。

その行動は勿論だが、それ以上にその容姿に注目が集まっているのだ。



褐色の肌にその瞳を覆い隠すように付けられたサングラス。

身体にフィットした、動きやすさ重視の真っ黒な服。

軟派な雰囲気の中にも野性味を感じさせるという奇妙な風格。



それらが相まって彼は必要以上に注目されていた。

本人の自覚はまったく無いが。



「道を聞こうニもこの国のチップなんて持ってネェシ……あー、クソ!」



溜まりに溜まったイライラを電柱にぶつける男。

さすがにその行為を見咎めたのか、警備員らしい男が声をかけてきた。



「そこの貴方、公共物に八つ当たりしないでください。他の方にも迷惑ですから」



ピタリと動きを止める褐色の男。

サングラス越しに、声をかけてきた男に射るような視線を送る。

品定めでもするかのようなその視線に警備員は戸惑いながら頬を掻いた。



「じゃあ道を教えてクレよ。そしたら今すぐニでも消えるからヨ。あ、チップなんて持ってネェから期待して声かけタなら失せナ」



所々のイントネーションがおかしい話し方。

どうやらまだ日本語に不慣れなようだ。



「チップ? そんな物はいりませんよ。それよりどちらへ行きたいんですか?」



警備員の一言に彼はキョトンとする。



「へ? マジでいらねぇノ?」

「と言うか何故、道を聞くだけでチップなんて発想が出てくるんですか?」



二人の男が向かい合って首を傾げるという微妙な状況。

数秒間の奇妙な沈黙を経て、褐色の男が急に笑い出した。



「アッハッハッハ! 済まネェ、そういやコッチじゃそういう事しなくテいいんダッケ? 悪い悪い。地元じゃ何するにも金が必要でナ。色々、誤解してたゼ」



そう言って軽く頭を下げる。

警備員も彼の気軽な様子に毒気を抜かれたのか苦笑していた。



「いえ、かまいません。それでどちらに行きたいんですか?」

「ああ、悪いな。ここで教員しテル『ユウキジョウジ』って男に用があるんダガ……居場所、知ってルか?」



男の口から出た名に警備員は驚きの声を上げた。



「え? 結城さん、ですか?」

「お、知ってンのカ? なら丁度良イぜ。ソイツの所まで連れてっテくれ」



褐色の男は「早く行こうぜ」と警備員の身体を押しながら急かす。



「連れて行くのはかまいませんけど、結城さんにいったいどんな用事があるんです?」



並んで歩きながら気になる質問をぶつける警備員。

彼はその言葉に皮肉げに口元を吊り上げるとこう答えた。



「なぁに。ちっと野暮用でな。詳しくは聞かないでくれよ。お前さんにゃ迷惑かけねぇからさ」

「そう、ですか。……そういえばまだ名前を言ってなかったですね?」



男の砕けた態度の中に僅かに垣間見えた神妙な様子に警備員はこれ以上の追及は駄目だと思い、話題を変えた。



「おお、そういやそうだったな」

「俺の名前は本郷嵐です。嵐って呼んでください」

「おう、アラシだな。俺の名は……」



―――『ベガ』だ。



「よろしくな、アラシ」

「はい、よろしくお願いします」



軽く差し出された手を握る。



一度、死んだ男は知らぬうちに物語へと身を投じる。

彼の先にあるものは二度目の死か? それとも……。

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